「Wake Up, Girls! 青春の影」は、2015年9月25日に公開された劇場版アニメ。
アニメを振り返る途中で、中の人にもハマったことから過去のライブ映像も見て楽しんでいた。WUGはもしかするとアニメよりも中の人の物語の方が楽しいのかもしれない。
てなこともあり、テレビアニメ1期を見てからちょっと間を置いて続編の劇場版も見る。
こちらはそれぞれ50分くらいの内容を前後編に分けて公開したものであり、「青春の影」は前編の物語にあたる。
波乱のアイドル業界を生きる少女達の物語を描いたテレビアニメ版の最終回から直接続く続編作品になっている。中身はもっと波乱なものとなっている。WUGの明日はどっちなのかなかなか見えてこない点にスリルがあって面白い。
劇場版用の独立した特別な物語ではなく、テレビ最終回からの直結で物語が進行するから実質アニメ2期みたいな感じ。こういう事をするのもちょっと珍しいかも。そんなことをされると見るしかない。
内容
仙台から全国に向けて自身の魅力を売り込んだWUGは、大手プロデュース「bvex」と契約し、正式なデビューシングルとして名曲「7 Girls War」を売り出す。
これの売上は好調で、本格的に東京での活動を開始する。がしかし、東京は夢を叶える力とそれをボコボコに打ち砕く凶悪な力の2つを持っていた。WUGはボコられるのだ。
なんと二枚目のシングルは鳴かず飛ばず。加えて音楽活動以外でも調子が落ち、一行はハートに大きなダメージを受ける。
仙台と東京、2つの拠点での活動で心身にも疲れが出て、もう仙台に引っ込もうかという意見も出てくる。
売れないシングルを手売りするため、WUGは公園でミニライブを行う。そこでも客は集まらず、地べたを這いずり回る屈辱と苦労を味わう。
そこへ登場したのが、いけ好かないけど腕前は一級品の音楽プロデューサーの早坂だ。早坂は迷えるお芋ちゃんに次なる楽曲「少女交響曲」を授ける。
この神曲を引っ提げ、WUGは再起をかけてアイドルの祭典を目指すのだ。
前後編に分かれた本作の前編はここで終わり。
感想
まず地方だろうが都会だろうが、アイドルとしてやっていくのは大変。その最も大変な東京での戦いへと物語はシフトして行く。
デビューシングルの売れ行きも良く、東京での仕事もスムーズに進んでWUGちゃんも救われたと思いきや、東京の壁はやはり厚かった。これは芸能人をしないと分からないらしい。
大手会社と契約した後には、厳しいダンスレッスンが待っている。ここでグループ内格差が顕著になって来る。これ、見ていてきつい内容だった。
まゆしぃは元プロアイドルだからまた始めてもプロレベルで行ける。他はそこに追いつけないからダンスレッスンのクラス分けはそれ以下になる。
中でもあいりが最低ランクになっているのは可哀想。7人中一番下にいることで、プロアイドルがこのレベルなのは不味いと思うあいりの心境はリアルにきつい。でも実際にあいりの中の人はダンスが達者なので、そこだけは安心出来る。
レッスンはかなりきつく、疲れまくったみなみが風呂の中で全裸で寝落ちするレベル。ここは良きシーンだった。
ダンスレッスンの途中でもおにぎりを食って「んめぇにゃ~!」になっているみなみが可愛い。
ダンススクールの事については、かつてPerfumeがテレビで話していたことがあったな。バカでも分かりやすく力の差で人間をグループ分けする内容となるから、それで精神的にズシリと来ることもあれば、上を目指すハングリー精神も育つらしい。なんたる厳しい世界。
同じプロアイドルでも力の差で分けるのは逃れようのないことなのだろう。これもアスリートの世界みたいなもので、強い者しか生き残れないのが常なのだろう。華やかであるが、同時に残酷な業界でもある。
WUGが意気込んで放った二枚目のシングル「素顔でKISS ME」がゴミ曲扱いされている。
今回は早坂プロデュースではない。早坂の曲でなければ光れない三流アイドルなのかと世に問われ、アイドルたちの立場が危なくなるスリルある展開が見えた。
この曲はリアルライブで聴いて見る分にはノリも良いし格好良くて確実に盛り上がっている。ていうか普通に格好良いし好きな曲。
でも本編では本来のWUGの良さを引き出すだけの力が無い曲としてオタクたちにもゴミ曲扱いされ、セールスも格段に落ちている。
これはあくまでもWUGの不調、早坂が如何にやり手音楽家なのかを演出するための仕掛けであり、この曲の本来の価値は高い。そこは勘違いしてはいけない。
プロアイドルなのに、CDが捌け過ぎないことから各地で手売りするという大変な目にも合うことになる。アイドルも大変だ。あの「モー娘。」も最初は手売りしていたらしいて親が言っていた。
「素顔でKISS ME」を引っ提げてフェスでのライブを行っても、トイレタイムにされて客が見てくれない。これを受けてガチオタの大田さん以下ザコ数名もハートをボコボコにされるのだった。
シングルの売上が落ち、番組レギュラーも降板になってしまう。これはWUGがピンチすぎる。正直見てらんない。
自分達がアイドルとしてやっていく方針についてグループで考えていく点も印象的。
ただ歌うだけでは表現者として足らず、歌い方、カメラに抜かれた時の映り込みについても研究していくことになる。確かにコレはどのアイドルもやることだろう。ちなみにここであいりはウインクが出来ないと判明。
突っ立っているだけでも綺麗なアイドルとはいえども、さらに追い込んで自分を良く見せる研究は必須のことだ。
WUGの中の人のライブを先に見てきたが、確かに各員が抜かれた時に光る魅せ方をしていると分かる。映り込みが良いのだ。ここでこの表情やしぐさを見せることで、グッと観客を引き込むマジックをかけるという計算が取れている。
最近だとラブライブとかを見ていても、キャストの抜かれ方が良いと実感するものな。良きアイドルは、見る者を自分の世界へと堕とす戦法を考えている。なるほど~と分かるアイドルの成長過程も見えて来る。
リアルなアイドルロジックが見えて勉強になった。
バラエティではぶりっこが必要ということで、売れている芸能人に色仕掛け的にすり寄るサービス精神も必要ということも話題に上がった。
みゆが売れっ子芸人におべっかを使い、ツンとしたカヤはそれが下手なので、下手なままにテレビに流れる。難しい問題だが、こういう所で上の人のご機嫌を取って気に入られることも、業界で生き残る戦法のようだ。
後になってこのぶりっこが自分達の本当にしたかったことなのかと自問自答する彼女達の青春にも注目できる。とにかくアイドルに限らず、年頃の乙女をやっていればあれこれをもがくものである。
何人もの夢見る少女が来ては夢破れて去っていく。それが東京だ。アイドル達にそう説明する社長の言葉にはリアルにずしりと来るものがあった。基本的にはふざけた社長だけど、色んな事が見えて分かっているから注目出来るキャラ。
その社長とアイワンの白木さんが二人で会っているシーンも印象的。二人の過去について少し触れている。社長も元はプレイヤーとしてステージに立っていた過去が分かった。そうだったのか。
WUGについての意見を発するネット掲示板のシーンが今回も印象的。
一発屋アイドル扱いされ、仙台に帰れという厳しい意見もネットに見られる。これを受けてサイトユーザーの大田さんは頭を悩ませるのだ。
このオタク達も、推しの浮き沈みに一喜一憂するという充実オタクライフを送っている。苦悩はあるが、これをコレを越えて推しアイドル達と希望の未来に到達した時、オタクは昇天するのである。良き良き。
相変わらずうるさい会議をファミレスでしては店に怒られる日々も継続中だと分かった。
とにかくアイドルは厳しい。その都合は天下のアイワンにも見られる。今回はこちらの事務所でも波乱が起きそう。アイワンの動向にも注目出来る。
アイワンのシングル連続ミリオン記録が途絶え、栄光に陰りが見えるようになった。
コレを受けて白木さんは立て直し作業にマジになる。彼がアイワンに賭ける想いがすごい。
現代社会に夢や希望を抱くことが出来ない者達がそれを託して盛り上げるのがアイワンである。時代の栄光であるアイワンの失墜は、社会全体の希望が落ち込む時。だからこそアイワンは堕ちてはいけない。そこまでの事を思い、白木さんはより一層スパルタ軍隊式仕込でアイドル達に鞭打つのだ。
一流の名馬は、実際に鞭に打たれずとも、鞭を振り上げた主の影を見ただけで走ると言われている。より早い段階でヤバさに気づいてちゃんとやれ、その例えとして白木さんはこの話を引き出していた。彼の人間的厳しさと怖さが分かる語りとなっていることも印象に残る。
ていうか、ここまで重いものを背負ってやっているアイドルもいないだろう。AKBとかモー娘。にだって責任はあるだろうが、アイワンに比べればもっと伸び伸びとやっているはず。
アイワンの次なる売り込みは、グループ内でチーム分けをして同日に異なるシングルを出すこと。売り上げで買った方がグループ全体のセンターになれる。コレ、なんか面白そう。
グループ内での食い合いになるが、こういうのって昔話でも例があったよな。壺にたくさんの虫を入れて殺し合わせ、最後に残った一匹が最強で最高な証という実験。それみたいな感じでアイワンを強くする戦法が取られた。
これを受けて意気込む志保の言動にも注目。志保も時代のチャレンジャーとして熱いアイドル魂を見せてくれる。最初は怖いしムカつく女と思ったけどだんだん好きになる。
思えばこの作品のとっかかりは、アイドル達の物語ではなく、冴えない会社員の松田の物語からスタートしていた。
東京の友人に再会した松田が、アイドルのマネージャーとして青春の熱を燃やしていると分かる描写も良い。
早坂さんに意見しに行くなど、WUGを想って動いてくれるのだな。松田も好きになる良いキャラ。
それからこちらの劇場版からの大きな変更点といえば、誰もがすぐに気づくだろうよっぴーの髪型。派手にバッサリ行ってもうとる。
これの前にやったスピンオフの動物園アニメでは、まゆしぃと髪型が被っていて見分けづらいとネタにされていた。その指摘を受けてか、よっぴーがかなりのショートカットになっている。これはこれで良いではないか。ちなみに中の人である青山吉能の話をすると、私は完全にショート派です。
この変更は大胆な仕掛けだった。これといって髪型に触れることなく普通に短いままスタートだからどうした?ってなった。
それから1人になるのは怖いから、自分が風呂に入っている間に先に寝ないでとななみに釘指しているよっぴーも可愛かった。こんな一面もあるのか、萌える。
そして最後に一曲披露したエンディングが良い。
早坂さんが作ってきた「少女交響曲」はめっちゃ格好良い。
先にライブ映像を見て予習したが、この曲でWUGがオタクを飼い慣らし過ぎと分かった。というか勝手に忠誠心がすごい。合いの手のパートでオタクがめっちゃ喋っている。まともにライブを見れていないだろうってくらい、ライブだと謎にオタクのパートが多いのだ。
そんな曲がアニメに降臨したラストはゾクゾク来る。今回はパンチラなしです。さすがに東京アイドルには見せパンの用意があるしスカートじゃないし。
「極上スマイル」「7 Girls War」に次いでこれだから、早坂は伊達に態度がデカいわけではない。確実に神曲メーカーとしての腕前を発揮している。てかこいつすげぇな。
早坂もそうだけど、東京で世話をしてくれたプロデューサーのカルロスもクセがすごいというか酷かったな。島崎信長史上一位くらいにウザいおっさんの芝居で笑えた。
いっぱい悩んだけどそれは無駄ではない。そう意気込むアイドルたちは、前回大会では惜敗の結果に終わったアイドルの祭典を再度目指す決意を固めるのだ。この新たな旅立ちを決め込んだ所で前編は終了。
アイドルの厳しいところがかなり濃く見えてくるシリアスドラマだったが、後編はここからどう進んでいくのか。読めない展開が楽しみ。続きもゆっくり見よう。
それから最後にもう一つ。WUGちゃんが仲良くプリクラを撮るシーンが気になる。
ここでは仲良しグループらしくふざけた変顔写真も撮るのだが、その際に各員が見せた必殺の変顔がヤバい。BD化に向けて封印した方が良いのでは?と思うくらいに酷いブサイク顔なのである。笑ったわ。もちろんBDにもしっかり入ってるので、そこも一時停止して楽しむと良い。
スポンサードリンク