「はれときどきぶた」は、1988年に公開されたアニメ映画である。
現在、愛すべきブタアニメ「とんでぶーりん」を視聴中。この懐かしブタアニメを見て、もっと懐かしい時代には「はれぶた」ってのもあったよな~と回顧してしまう。
じゃあ同時進行でそっちも見てみよう!
そして令和に入って昭和ラストの名作映画(多分。違っていても最後にかなり近いはず)を見たのだ。
はれぶたといえば、映画をやった約10年後にはテレビアニメ版も展開した。そっちも相当ぶっ飛んでいて面白かったなぁ。そっちもその内に再視聴したいものだ。
私はこちらの映画版に大変思い入れがある。
私がまだチビスケの時、レンタル落ちのVHSで親が見せてくれた作品だった。元々ダメージの行ったレンタル落ちを更に追込む勢いでめっちゃ見たのだ。今はもうテープが死んでいるのではなかろうか。そのくらいこの作品には、クセと愛嬌と子供の夢が詰まっていてとにかく素晴らしかった。
我が家の大人は英才教育方針を強めに押し通す質の人間ばかりだった。その方針で私と趣味が合ったので、家庭における子育ては常に円滑だった。良いことだ。
そんなわけで大人達は、教養と娯楽を一度にぶち込める優良コンテンツとして本作の原作本も用意してくれた。
原作者 矢玉四郎の手掛ける児童文学のはれぶたはシリーズ化され、それら全作を我が家で抑えていた。
アニメも本もしっかり楽しんだぜ。矢玉四郎氏は偉大である。拍手を送ろう。
私的にはしんちゃんの「電撃! ブタのヒヅメ大作戦」「ぶーりん」そしてコレが日本3大名作ブタアニメだと思う(多分他にもあったはずだが、パッと思いつくのがここらへんだけだった)。
幼い頃から何度も見てきた本作を、この度随分久しぶりに視聴することになった。久しぶりの再生になんだかワクワクするぜ。
そして現在。ワクワクしたままに見終わったので、テンション高めに感想とかを殴り書いて行こう。
内容
冴えない主人公少年 畠山則安には絵日記をつける習慣があった。
ある日、それを母に勝手に見られたことで、彼は怒るのだった。
日記に書く事は今日あった本当のこと。それがバレるとプライバシーの侵害だ。そう思った則安は、見られて問題ない嘘ばかりを前日から書き込むことにした。
すると翌日から嘘の日記通りのありえない事件が連発するようになった。
その内容とは、自宅トイレに大蛇が出る、金魚が空を飛ぶ、お母さんの首が伸びる、お父さんが鉛筆の天ぷらを食う(← は?と思うだろうけどマジで食ってる)などの荒唐無稽なものばかりだった。
そして極めつけの嘘日記の内容が空からブタが降ってくるというものだった。
その珍現象は遂に現実の事となり、則安はブタまみれの不思議な青春を迎えることになるのだった。
感想
子供心をぐっと掴む最高にユニークな冗談話だった。懐かしいし主人公の則安が可愛い。今の子供にも見せてあげたい。
原作本そのままって感じの暖かい絵のタッチが好ましい。昭和の街って感じがありありと伝わる舞台風景はノスタルジックで良い。
内容は二部構成で、前半は日記、後半は壁新聞がキーアイテムとなり、どちらも則安が書いた荒唐無稽な嘘話がことごとく真実になっていくというもの。
これを見た当時は、日記も壁新聞も真似して書いたものだ。日記なんかは今でも続けているし。「あずきちゃん」を見て交換日記をやりたいって思ったこともセットで思い出す。
今思えば「デスノート」や「未来日記」の作者ってここからヒントをもらったのかな?とかも思う。要素としては、はれぶたの方が先輩作品になっているんだな。
あと則安のクリクリな大きなお目々と間抜けな顔を見ていると、ワンピースのルフィにちょっと似ているとも感じる。
勉学、運動共に成績が振るわず、それでもとにかく元気で夢見がち。勉強は駄目でも頭は柔軟で面白い事を考えつくユニークさもある。そんな則安に見るリアルな同級生感が愛おしい。こんなクリクリ坊主の少年なら確かに同級生にいそう。
則安が元気に走り回るシーンが多く描かれるのも印象的。元気な昭和の子供の感じが良い。
「10円安」のあだ名はいじめっぽいけど響きが良くセンスが良い。
久しぶりに見て知ったけど、畠山則安の声が子役時代の浪川大輔だった。マジかよ、こんな名作に出ていたのか。声がガキ過ぎて今とは何にも似ていない。
よく見ると脇を固める声優にも有名人の名前がちらほら。妹が佐久間レイでお父さんが玄田哲章だったことも気づかなかった。
則安のクラスメイトのモブの1人を野沢雅子が演じているのも意外。声が少年漫画主人公すぎてモブでも普通に気づく。
皆、昔から仕事をしていたのだなぁ。
「おできはれこ」のネタとかは、小学生くらいなら確かにネタにして言っちゃいそう。このあだ名は響きが良いのでずっと覚えていた。
おできと則安の喧嘩話なんかは、実に等身大の小学生のやり取りって感じがして和む。なんて平和な少年世界。
日記や新聞に書いたありえない事が起きても、則安の家族や学校の友人達を含めた街の人々は大して怯まない。そんな事もあるよねってくらいのテンションで普通に受け入れている。ここに面白さと強めの違和感がある。
昔見た時は、そこにちょっとした怖さも感じた。ちょこちょこトラウマ要素があるよな。
ドーナツ人間のネタ、平然と鉛筆天ぷらを食べるお父さん、お母さんの首が伸びるあたりのネタにはユニークさを感じたが、同時にちょっとの恐怖も感じたものだ。
特に鉛筆天ぷらはちょっと美味そうに描いていることもあって強烈に記憶に残っている。自分の親にも作ってくれって言っちゃったし。その後の消しゴムを大根おろしみたくして食べるのもインパクトが強い。
お母さんがさも当然のように天ぷらの食材として鉛筆を選ぶ点にはツッコミを入れたい。次は色鉛筆を揚げてもいいかなとか言ってるのも面白いけど普通に怖い。
鉛筆天ぷらを考えつく則安の斜め上の発想力もすごいなぁ。
それからトイレに出てくる蛇のうねうねした動きも小さい時に見たらちょっと怖かったと記憶している。
そしてハイライトは日記、新聞それぞれで扱われるブタの事件。
空からブタが降ってくる、街中がブタまみれになるといっても街の人々は楽しいイベントくらいに思っている。
則安の家族はたくさん捕まえる気で張り切っているし。おとうさんはブタ捕獲用にブタ取り網を買ってくるくらい意気込んでいた。てか捕まえてどうするのだろうか。食べる気なのか。
日記では最後に一匹だけ消しゴムで消し忘れたブタがいたけど、テレビ版はあの感じで一匹だけ残して則安の仲間にしたんだったよな。
後半のブタの大行進シーンは気合が入っている。ブタだらけの間抜けなシーンだが、作画はかなり迫力がある。蛇口をひねってもブタが出てくるのはファンタジーすぎて良い。
日記編だと空から来るけど、壁新聞編のブタはその時間になるとまるでゴキブリのごとく畠山家の中から出てくる。今思えば、既に配置済みってどういうことやねん。
街中にブタが溢れて交通機関も麻痺するレベルになっているし。これはもう災害。
ブタ災害になると消防隊が出てくるのかというのも一つの発見。水を放射してブタをぶっ飛ばそうとホースを構えるが、水までブタになって出てきて余計に数が増える。ここは笑った。
ブタの進撃シーンはやりたい放題だし、作画も元気でとにかく素晴らしい。子供が喜びそう。
壁新聞では、何気にマスコミのモラルについても触れている。
本当の事を書いて悪いことはないと思っていた則安だが、本当の事を書かれて傷つく人もいると後で理解するようになる。こうなると新聞屋も楽じゃないし、書き方を考えるのは大変だ。そんな事も言っている。
ここは子供にとって教養となる。真実が全て正義だとは限らない。あえての嘘や一貫して秘するのもまたコミュニケーション手段の定石である。そんな事も学んでおくべき。
OPの謎に間抜けな歌は頭に残る。これは今でも覚えていた。
久しぶりに見て深いなぁと思うのは、最初に則安の日記を褒めてくれる先生の言葉。これは彼にとって救いになる。学業と離れたアイデンティティについて褒め言葉をもらえば誰だって嬉しいだろう。チビの時に大人がくれるこういう深い言葉が、後になって良い働きをするんだよな。
で、当時は気づかなったが、今見るとやっぱり人の日記を見るお母さんが悪い。そもそもお母さんが勝手に日記を見なかったら、嘘日記の事件は起きなかったわけだ。このお母さんも図太くて良いキャラをしていたなぁ。
改めて見ると思った以上にカオスでハチャメチャな内容だった。しかしこれは間違いなく名作だ。トトロと並べて、子供の時にだけどこかの誰かに訪れる軌跡の物語だと思う。丁度トトロもコレとセットで見て楽しんでいたし。
そんなわけで、たまには空からブタが降って来たっていいだろう。
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