こしのり漫遊記

どうも漫遊の民こしのりです。

弾よりも速いぞ!頼もしき第8の勢力「エイトマン」

エイトマン」は、1963年11月から1964年12月まで放送された全56話のテレビアニメ。

 

 先日「人造人間キカイダー」を見た時、これが50年前のテレビ番組とはマジで古いなぁと思った。そこから約10年も前に世の少年少女達を沸かせた名作がエイトマンだった。すげぇな、60年前のアニメじゃないか。古すぎる。

 

 この時代なのでさすがに白黒放送。令和の世に見る白黒作品ってのも乙なものだ。当時だと今みたいにどこの家でもテレビがあったわけではなかったのだと思う。現在なんて普及が極まった後の「テレビ離れ」なんて現象が広まっているというから歴史も確実に変わっていくのなと確認できる。今度はテレビ減ってるし。

 聞いた話によると、テレビ離れの原因の一端は、単純にネタ切れで面白いのが生まれないから。また一端は、NHKのせいだとどこかで聞いたことがある。

 

 そんなテレビが死にかけた時代に見るテレビアニメ黎明期作品に感動するものがあった。

 エイトマン、死ぬほど古いけどとても面白くて素敵な作品だった。親戚のチビにも勧めたい。

 

 まずこの作品、とても懐かしい。

 親の生存だって確認出来ない古の世界の作品なので、リアタイ視聴には当然間に合っていない。しかしこの作品は有名なので、我が家の大人が漫画を持っていたし、ビデオも見せてくれた。というわけでザックリと履修済み。今回改めてアニメを全話視聴した。フィルムの欠けがなく全話しっかり残っていた事に感謝したい。

 

 全然関係ないけど、5年位前にネジを食う男が主役の面白いアニメ「EAT-MAN」を見たんだよな。エイトマンのタイトルだけで思い出した。あちらの作者もちょっとくらいはエイトマンを意識したのかな。語感は似ている。

 

 というわけで、ネジを食うあいつの事も思い出しつつ、頼もしき第8の男の物語を振り返っては書き殴って行こう。

 

ベストフィールド創立10周年記念企画第6弾 エイトマン HDリマスター DVD-BOX BOX1【想い出のアニメライブラリー 第33集】

 

内容

 捜査一課の刑事 東八郎(あずま はちろう)は、悪党の罠にかかって死んでしまう。

 

 科学者の谷博士は、スーパーロボットエイトマンに東の記憶を移し替えて起動させた。

 

 エイトマンは正義のパワーを全開にして巨悪と戦うのだ。

 

感想

 エイトマンの造形は美しいな。シンプルながらもクールでイカす。ブラックボディも格好良い。

 近い時期のロボならアトムや鉄人28号がいた。子供型のアトム、めっちゃ巨人の鉄人と違い、クールでスタイリッシュな大人のお兄さんタイプという点から、エイトマンは新しいロボ像の売り込みに成功した。

 

 エイトマンも東探偵もイケメンだしめっちゃ良い声をしている。本当に特徴のある良い声をしているな。今回視聴するまで存じ上げていなかったが、高山栄という人が演じている。こんな良い声の役者もいたのだな。

 

 漫画だと「8マン」になっているが、アニメタイトルだと「エイトマン」になっている。ハチマンと読む人もいるかもだから、全部カタカナで正解だったかもしれない。 

 

 エイトマンという名前は東八郎から来ているのもあるし、谷博士が作ったロボット08号からも来ている。

 エイトマンは警察と組んで巨悪と戦う。捜査一課メンバーは49人いて、7人ワンチームで7つのチームが作られている。エイトマンはそのどこにも属さない50人目の第8の勢力として捜査を行う。

 これら「8」にまつわるあれこれが絡んでこのタイトルなんだな。我々が待っていた正義の第8勢力として活躍するエイトマンのポジには、少年心くすぐる要素があって良い。

 

 東探偵とエイトマンが同一人物と知るのは、警察内部でも田中課長のみ。警察と連携して任務を行う時には、田中課長とのコネクションが重要。エイトマンのミッション成功にも、警察の事件解決的にも、ここ二人は切っても切れないバディの関係にある。

 クールで賢明なエイトマンがいるから、その相棒はもっと無骨で強そうな刑事かと思いきや、田中課長は完全にギャグ要員だった。可愛いおじさんって感じの好きなキャラ。かなり良いキャラをしている。エイトマンと共にこちらのおっさんも看板キャラだな。キャラ性に凸凹感のあるバディ関係を見ても楽しむことが出来る。

 これを見れば、鉄人の正太郎くんと大塚署長のコンビを思い出す。大塚署長ってあの感じで九大天皇の一角なんだよな。後で知った時にはマジかよってなった人間はわんさかといるはず。

 

 エイトマンといえばOPの歌詞にもその要素が含まれているがめっちゃ走るのが速い。速いロボといえばサイボーグ009かこちらかだな。本当に弾丸よりも新幹線よりも速いのだ。

 最近のオタクが知るところの十傑集走りのような感じ。下半身の回転がとにかく速く。上半身は止まっているように見える。

 あと数分で核弾頭が落ちてくるのを止めるミッション回では、彼の足がないと話が成り立たなかった。それくらい足が速いことは、物語に膨らみを出す要素があった。それから核弾頭をなんとかする回では、核弾頭着弾までのカウンターが画面に出たりして緊迫感があった。住民を見捨てて逃げるなら一緒に滅びる事を選んだ大臣の言動とかにも良さがある回だった。あの回はお気に入り。

 

 私が小さい頃に親から見せてもらったビデオで最も印象的だったワンシーンといえば、悪党が撃ち放った銃の弾丸をエイトマンが一瞬で全部掴んでバラバラと地面に落すシーン。

 銃弾など当たったところで硬いからそもそも効果がない。見切っているから避けることも出来る。だが一番「無駄だぞ」と力の差を示して相手の戦意を殺すのは、弾丸キャッチからのリリース。これに限る。これをされると並のギャングならもうお手上げだ。

 たくさん飛んでくるのを面倒がらずに掴んでバラバラと地面に落すエイトマンの圧倒的超人感には、子供ながらになんかゾクゾクした。

 

 この超人が弾丸を掴んでリリースする演出は、後の色んな作品でも見ることが出来る。具体的に何で見たかは思い出せないが、結構よく見るシーンというイメージがある。私が見た人生初の弾丸キャッチはエイトマンだった。もしかして日本で初めてこの超技をやってのけたのってエイトマンなのでは?誰か超暇なヤツがいたら調べて欲しい。

 

 超人のエイトマンもメンテや補給は必要。

 タバコ型のエネルギーチャージアイテムがあり、それを一日に4本吸わないと頭がぐらついてまともに立っていられなくなる。4本もいるのかと思うと、結構燃費が悪い。 

 スーパーヒーローがタバコを吸っているイメージとなると、子供たちの間にもその要素がバズる。というわけで、放送当時はシガレット型の固形ココアが売れたという。皆学生の時には、タバコを吸っている振りということで、大人の前であれを食って反応を楽しんだものだ。私はやったことないけどね。タバコも吸わないし。

 このタバコ型アイテムでの補給シーンはいつしかなくなった。子供がたばこのお菓子を食いまくって困るからかな。

 

 エイトマンって変身ヒーローのイメージもあったけど、実は違ったのな。

 エイトマンには怪人二十面相どころではない変身能力があり、誰の姿にでもなれる。エイトマンが裸の状態であり、そこから変身機能で東探偵の姿になっているのだった。男女問わず変身出来るので超便利だな。

 

 これだけでスゴいロボを作った谷博士は、それを発表せずに世から姿を隠してひっそりと暮らしている。

 その理由は、発明が戦争に悪用されないため。

 アインシュタインだって己の研究成果がいつしか戦争に使われるなんて予想しなかったはず。でも予想を越えて他の大人は悪事にまで発明を使おうと考えるものだ。完成したからといって何でもかんでも発表すべきではない。

 そのような意見を示し、谷博士は己の研究成果を秘密にしているのだ。この考えは深いし納得できる。

 

 エイトマンが立ち向かうミッションは実に様々。いろいろあってとても面白い。

 シンプルな人間の悪党から大小問わずのロボット、宇宙から来る勢力、最終回では人間越えの超人ミュータントまでを相手取った。色んな話があって面白い。

 人間ならゲーレン、デーモン博士などが強敵で、奴らは複数回に渡って登場した。

 

 デーモン博士は憎しみに取り憑かれたマッドサイエンティストにも見えるが、回を追うごとにエイトマンの良きライバルにも見えて来るようになる。見ていくと最後には好きになるおっさんだった。あんな博士にも娘がいたのは意外。娘からは愛されていたみたい。

 

 デーモン博士は悪者だけど、一本筋が通ったダークヒーローという見方も出来たかもしれない。

 自分がエイトマンを討つ事に拘ることから、エイトマンが他人に狙われた時には助け船を出してくれることもあった。最終回では、ミュータントに対抗するために自分の研究まで提供して完全に味方についてくれた。良いキャラだったな。

 エイトマンはイケメンだけど、悪者キャラは本当に悪そうな顔に描いてるんだよな。そこも印象的。 

 

 エイトマンはもちろん、警察だって強いので、敵も徒党を組んで来る。その結果、国際ギャング連合なる軍団を結成した。すげぇ軍団が出来ているな。今すぐ解体して欲しいとツッコんでしまいたくなるものだった。

 地上にアホみたく悪党が蔓延る中、宇宙からの勢力を相手取ることもあったのでエイトマンも警察もマジで暇が無いな。

 

 今思えば、この時代にやれば時代を先どった要素かもと思える科学やSFを絡めた深い話も見られた。たまに大人向けかもという内容もあって楽しめる。

 第20話「スパイ指令100号」の回では、ロボが社会を管理する国にエイトマンが乗り込むことになる。

 この時代からだって、調子こいていると人がロボに食われて立場が入れ替わるぞと警告した内容が見えた事が印象的。この回では、スパイ99号として派遣されたジェームズ・ボンドとコラボしてる。お前が99号だったのかとびっくりするラストが良かった。

 それから女スパイのマタ・ハリとコラボしている回もあった。かなり前に見た「R.O.D」というアニメで学習済みな歴史的女スパイである。女スパイっていうワードになんかグッとくる物があるよな。

 

 第30話「サイボーグ人間C1号」の回では、人間がロボにされたことで手術を行った博士に復讐にやってくる。

 この博士達が結構頭イッちゃってて、科学の発達の礎のためとか言いつつも、恐らく多くは科学への向上心から人間の改造を行っている。人間の向上心とエゴが不幸を招いたこの回にも深みがあった。ウルトラマンジャミラの回をちょっと思い出す。

 

ガンダムX」を見てイルカはニュータイプ並に可能性を持つ賢い動物だと学習した。もっと前のエイトマンでもイルカの賢さにスポットを当てた回があった。科学の力でイルカを改造して喋れる兵隊にするみたいな内容だった。これ、当時だとよく考えついたよな。でも兵隊にしたところで、争いを好まない性質のイルカは戦闘に不向きだと分かるオチになっていた。喋るイルカ達が可愛かった。

 

 海関係の話といえば、海洋分野に強い博士が人類逆進化を提唱した回も印象的だった。

 かつて人類の先祖は海で過ごしていたが、そこから進化を遂げて地上に上がって暮らせるようになった。その末が今日の私。でもこの博士は、人類が地上に上がったのが間違いの素であり、そのせいで地球は壊れて行ったという。だから命を海に返して、地上の命を更地にするという恐ろしいことを言い出すのだ。エコかもしれないが、破滅的過ぎる。 

 これって怖いけど、人間のエゴのせいで地球の課題に上がってくるエコについても考えさせられる内容だった。結構難しい問題にも切り込むアニメだった。

 博士が学会でこれを発表すれば普通に「きちがい」という批難の言葉が飛びまくっていた。現在だと地上波では言ってはいけないこの言葉は、色んな回で結構出てくる。それから「ノータリン」とかも出て来た。今日日聞かない死んだワード達が聴けるのも60年代作品の特徴だと言えよう。

 

 デーモン博士の親子問題もちょっと重い感じだったが、谷博士も家族関係が良好ではなかった。第34話「決闘」では、谷博士の息子が改造人間となってエイトマンと決闘する。この回は面白かった。にしても科学者は研究が忙しくて家族サービスが疎かになりがちな職業なのか。

 マジもんの息子と科学の息子のエイトマンが決闘するのを見ているしかない谷博士の葛藤が見える重い回だった。悲しいことに本当の息子が助からない。シリアスで悲しい回だった。

 

 シリアスで衝撃が強かったのは、エイトマンの正体を知ったサチ子さんの物語の決着。

 東探偵は普段探偵事務所で働いていて、サチ子さんはそこのスタッフ。助手に一郎くんというガキもいたが、3クール目くらいから宣言なしに急に消えた。多分学校でも行くことにしたのだろう。

 探偵事務所に田中課長が間違い電話をかけるのを集合合図にし、エイトマンは警察と合流する。最初の方だと毎週間違い電話が来るので、それを受け取るサチ子さんはムカつくだろうなと思って見ていた。

 このように、ミッションを伝える田中課長のみがエイトマンの正体を知っている。ヒロインのサチ子さんもそれを知るなら最終回の展開で、というのが普通だろう。でも中盤くらいでエイトマンの正体が東探偵だとサチ子さんにバレてしまう。

 仕事仲間であり、好いた男でもあった東探偵が実は死んでいてロボになっている。そう知ればショックはデカい。ここでサチ子さんが取った言動は、それはそれでリアルかもしれないけど悲しいものだった。

 その事実は悲しくショックだったので、知りたくなかった。以前の関係のままでいるのが幸せだった。戻りたい。そう切に願うサチ子さんを救うには記憶を消すしかない。

 事実よりも、事実を知る前の偽りの時を生きることを選んだサチ子さんは、谷博士の発明で記憶をぶっ飛ばす道を選ぶ。

 この女心は分かるけど、東探偵としては、ロボの自分を受け入れてくれなかったわけだから、絶対に悲しいだろう。この流れはきついと思って見ていた。

 その後の回から最終回まで、サチ子さんはいつも通り事務所スタッフとして登場する。彼女だけには自然でも、全てを知っている東探偵と我々視聴者にとっては違和感が残るだけなのだった。切ない。

 ヒロインが事実と向き合った結果「逃げ」にも取れる選択を選ぶこの流れは、他の作品ではあまり見ないかもしれない。エイトマンという作品に最も悲哀が見えるシーンがココだった。

 サチ子さんはショートカットの美人でさっぱりとした性格のお姉さんだから好だった。だがこの点については、心が弱い女だったのかもしれないと思える。

 

 そして最後の物語も気になる。

 基本一話完結の物語が連続するアニメだが、ラストは前後に分けた2話連続の物語をお届けして最終回となった。

 最後の敵は、超人類ミュータントというもの。敵は子供の姿をしているが、すごい力を持っていて、かつてないくらいエイトマンを追い込む。ビームが効かないバリアを張り、重力を操ってエイトマンを地球の外の宇宙空間にまで追い出すという荒技までやってのける。

 人類を滅ぼす勢いで来る最強の敵が、見た目的には子供の姿をしているのが印象的だった。次なる時代を作るのも、前時代を壊すのも命の新顔、つまりは次なる時代の子供達から始まるわけである。そう考えれば、最後の破壊者が子供の姿をしているのも納得。

 この超人類は、エイトマンの力をもってしても遂に撃退ならずだった。どこかにワープして撤退させまでに留まっている。

 

 この子供の姿をしたボスキャラが去り際に残した言葉は、子供らしくないものでちょっと怖い。

 地球を壊すのは愚かな人類だから、いつまでも調子こいていると超人類が乗っ取りに来るぞ。生き方を改めよ的な事を言って去っていくのだった。

 これを受けて谷博士は、地球人類同士で争っている場合ではない。外部にはああいう敵もいるから結束が必要。いつまでも争っていると、超人類の乱入なくとも人類は勝手に自滅する。という怖いようで確かにそうだと思える意見を示す。そして次には、そうならないため、人類はただ他人に優しく接する心を育てることだと提唱した。

 

 最終的にエイトマンで言いたかった事は、よそからの侵略の有無に拘わらず地球は自滅の道を辿る可能性がある。そうならないよう内部での結束を強めて平和にしていこうという事だった。良いことを言っている。

 

 子供には、巨悪に立ち向かう正義のヒーローの痛快アクションとして普通に楽しめる。一方で、たまにシリアスで深い事を言っているドラマ性も見えることから大人になってから見たらまた楽しめると思う。そんな良さがあるアニメだった。

 

 古いからアニメ技術は今よりも拙い。だが今では見ない動きの画に、古いなりに活き活きとしたものを感じられた。こんなに古いのに素晴らしい作品じゃあないかと感動出来た。私が懐古厨ぶりたいからだけではなく、実際にコレは熱がこもった良いものだと判断出来る。

 

 OP曲はキャッチーですぐに好きになる。これも今は楽しく聴いている。名曲や。

 

 というわけで、時代が待ち望んだ第8の男エイトマンよ不滅なれ。楽しかったぜ。ありがとう。

 

 

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