こしのり漫遊記

どうも漫遊の民こしのりです。

太陽電池のゼロワンボディを見よ「キカイダー01」その2

伏線シナリオ

 物語始まって早々に放り込まれる謎がアキラ少年の存在だ。本人でも自分が何者かよく分かっていないこの少年を巡って、キカイダー勢と悪者の戦いが展開する。一話目から提示される謎があることで、その後も視聴意欲が湧く。

 前作のキカイダーでも、悪と戦いながら光明寺博士の行方を追うサブクエストが発生したが、今回もそれっぽい要素があって楽しい。

 

 ハカイダー軍団やシャドウと戦う中で、アキラ少年の大いなる謎、それを守護するリエコとは何者なのかという伏せられた内容が少しずつオープンになっていく過程を楽しめた。

 

 世界征服の要となる最強最悪のロボット兵器ジャイアントデビルの存在が明らかになり、それを起動させるために必要な設計図がアキラとその兄ヒロシの背中に刻まれていると分かった。これは特殊な仕掛けで浮き出るものとなっている。これはビックリ。もひとつおまけにびっくりなのは、兄弟の親父がギルであること。あの感じで子持ちだったのか。

 

 ジャイアントデビルはデカい土偶のようなデザインをしている。これを見るとザンボット3のバンドックを思い出す。

 

 設計図をゲットするためなら悪者共は必死になる。アキラの行く先々に襲撃をかけてくるのでアキラは大変怖い思いをするのだ。

 世界のどこにも逃げ場はないと知って絶望するアキラ少年は、自暴自棄になって痛々しい行動に出るようになる。

 こんな設計図があるから自分は怖い思いをするのだ。だったら設計図が見えないよう背中がボロボロになれば良い。そう思ったアキラ少年は、砂利の上に仰向けに転がって背中の皮膚をボロボロにしようとする。洗車機の中に背中から突っ込もうとした事もあった。

 追われる恐怖によって精神的に追い詰められた幼い少年の悲哀が見えるこういった内容を見ると、マジで可哀想と思えてくる。

 

 そんなジャイアントデビルも、製造基地にダブルキカイダーが突っ込んでからは割りとあっさり爆破されてしまう。

 中盤までかかってこの件は解決する。

 

 設計図の設定、兄弟を守護するヒロイン達、ジャイアントデビルの驚異は、内容を盛り上げる良き要素だった。

 それ以降も兄弟達は登場するのだが、ぶっちゃけお役御免な感じもある。ジャイアントデビルの件が終わったら兄弟達のキャラとしての重要性が一気に薄れた。

 段々とシャドウに狙われることも減ったし、ザダムを迎えた頃にはハカイダーも設計図の事などもうどうでも良いと言っていた。

 

 兄弟それぞれを守護するリエコ、ミサオは、ダーク存続時代からも兄弟のお世話係だった。

 リエコさんは変装の達人過ぎた。リエコさんがある時を堺に段々強い。どうしたのだろうと思ったら彼女もロボットだった。ザコ戦闘員くらいはやっつけることが出来る。

 

 リエコ姉さんは可憐で美しい。ミサオ姉さんはリアル姉さん感があり、子供目線で一緒にはしゃぐ良き姉さんだった。兄弟とプロレスごっこをしているミサオ姉さんが印象的。

 

 これ一作でリエコ、ミサオ、マリと3人のヒロインが楽しめてお得だった。それから後半回では、歌手の小林幸子が成人式を迎える直前のパン屋の娘役で出演している。キカイダー01に出演していただなんてビックリ。女優として良き経歴を得たな。

 

ビジンダーとワルダー

 後半最大のテコ入れといえば新たなロボット戦士のビジンダー、ワルダーを迎えたこと。この二体のロボットが持つ心の不完全さが、ロボロボしくも人間臭いドラマ性を出していて良かった。切なくもリアルな人間心理が見えるロボドラマがここにある。

 

 前半はキカイダーがゼロワンを助けに来るシーンが多かったが、後半はそうも行かなくなる。ジロー役の伴大介は、同期を盛り上げた特撮ドラマ「イナズマン」の主演俳優でもある。となると二足の草鞋で生きるのはシンドい。シャドウを相手取りながらバンバの動きにも注目となると首が回らないのは納得。

 というわけで、ジローが加勢に来れないことからこちら側につく戦士としてビジンダーが追加され、ダークヒーロー枠にはワルダーが座する事になった。

 

 ビジンダーという名前と存在感はなかなかのもの。

 彼女のある所花が咲く、または花咲く所に彼女あり。花畑から出てくる演出は少女趣味爆発で印象的だった。マリがくるりとバク宙する変身シーンも鮮やか。

 頼もしい仲間のビジンダーが女性型ロボというのも新鮮。生身でも戦うヒロインならウルトラマンや忍者部隊月光の頃からもいたが、女子の変身ヒーローは当時だとレアではなかろうか。特撮史における最初期の変身ヒロインだったのだな。

 

 マリの時には憂いを帯びた儚げな少女で、ビジンダーに変身したら強気な姉御肌になる。変身前後の人格に違いがあるのが特徴的だった。

 ビジンダーの所持楽器はハープでワルダーは横笛を吹いている。楽器と縁のあるロボット達のセンスが良い。

 

 マリが追加してからはBGMで儚げなハープの音があちこちから聴こえるようになる。この点も印象的だった。

 後半はイチローよりもマリに焦点を当てた物語展開になっていった。前半後半で物語の見せ方も大きく変わってきたな。

 イチローと違い、マリの心はかなり危うい状態にある。ジローよりも良心回路が脆弱っぽい。ジローのように、人間の心のあり方を求めるマリの物語はシリアスだった。

 

 マリを演じた志穂美悦子は、千葉真一から激推しされてこの役を勝ち取ったという。ちなみに弟の千葉治郎はマリに恋する青年役で出てくる。

 マリは短髪が似合う格好良いお姉さんだったな。それと変わった格好をしていた。

 

 マリにも弱点があり、悪どいシャドウがコントロールすることで胸に激痛が走るようにセットされている。ジローの時のように敵がいつでも弱点を狙えるようになっている。

 胸が苦しくなるとブラウスのボタンを緩める流れに入るのは普通のこと。上から緩めて3番目のボタンを取った時に核爆発が作動するという恐ろしい設計になっている。マリはずっと核爆発を背負って戦っていた戦士だったのだ。怖い。

 周囲の誰かしらが、シャドウに苦しめられるマリのブラウスを緩めるアクションに入り、ヤバいところの手前でストップがかかるという定番パターンを見ることが出来た。 

 この物騒な設定も、人間態で見ると普通に女子の服を脱がすアクションになるわけだから、微妙な形のセクシー要素とも取れる。

 

 旅の中で人の心や正義を知るのはマリだけでなく、そこに面白い形で関わってくるのが剣豪ワルダーだった。

 依頼されて殺人を行う殺し屋ロボットという物騒でストイックなポジで登場する。ハカイダーをも黙らせる強さを持っている。しかし殺し屋のこいつまでもが人間臭くて良い味を出しているから愛せる。

 

 まず犬が怖いという点が可愛い。理由は畜生の身であっても善悪の判断が出来るから。

 犬は泥棒を見れば吠えて噛みつき、主には尻尾を振って感謝の念を伝える。強くとも善悪の判断がつかない自分と比べれば、その点で犬は大変お利口。自分以上に心を知る生物という点に恐怖を覚えているのだ。

 強い殺し屋が犬に怯えるのは笑えるけど、善悪を理解する心に絡めて説かれるワルダーの恐怖心には深いものがあって感心出来る。そういえば犬ってすごいんだな。

 

 ワルダーはめっちゃ古風で、用事があれば手紙をよこしてくる。なんだかんだあってビジンダーに恋心を抱き、まさかの文通が始まる。

 これをハカイダーのクソ野郎に引っ掻き回される展開も面白い。シャドウ組織で郵便局を抑え、人の手紙の内容を書き換えて人間同士を喧嘩させるといういたずらチェーンメールみたいな事をしでかしていた。

 この作戦でワルダーとビジンダーの仲を邪魔するハカイダーを見ると、揉めている小学生男女みたいだった。

 

 ビジンダーを好く男がいればワルダーはジェラシーを燃やす。心が分からないワルダーは、そのモヤモヤが嫉妬だと気づかない。デカいなりをして心が拙いワルダーの物語も面白い。なんか可愛くもある。

 

 善と悪の間で揺らぎながらビジンダー、ワルダーの心が形成されて行く内容は見所があって良かった。このに点はよく出来たドラマが見えた。

 人間の心のあり方として共感できるシーンだけど、映っているのはロボという点が興味深い。

 

 とにかくマリを応援しているナレーションの存在感もなかなかのものであり、見終わった今でも濃く記憶に残っている。

 

ハンペンとガンモ

 前作ではギャグ要員にハンペンこと服部半平が登場した。今回でも彼がゲストで出演する回があって良かった。

 出演した回ではギターとハープをダブルで演奏するスゴ技を見せていた。探偵としてはポンコツだけど手先は器用なんだな。ハンペンが帰ってくる回は良かった。

 

 そしてゼロワンではガンモこと百地 頑太(ももち がんた)が登場した。こちらも一応忍者の末裔らしい。ガンモは3流のフリーカメラマンをしている。この感じで一文字隼人と同じジョブなのか。

 ガンモの口癖の「やってみるもんねぇ~」がお気に入り。

 面白いおじさんだったのに登場したのは19話まで。放送期間の半分もいかない段階で急に消えた。

 どうしたのだろう。もう田舎に引っ込むことにしたのかな。それとも意外に売れてカメラマンとして上のステージに行ってしまい、ゼロワンと絡む所ではなくなったのかもしれない。

 

作品のテーマ性

 最終回では、ヒーロー達の生みの親の光明寺博士が帰ってくる。あわやギロチンで首ちょんぱになりそうなところまで追い込まれた博士が無事帰還出来て良かった。

 ロボット戦士を作った光明寺博士だからこその最後の役割が、作品の持つテーマ性を伝えることだった。

 最終回終盤で博士は深いテーマ性を口にする。

 ロボットは強いし年を取らない。それはすごいことだが、決して幸せというわけではない。ジローもイチローも完全なるロボットになるより、例え不完全であっても人間であることに憧れている。そんな複雑な心境で彼らは頑張って生きている。

 うむ、ロボット工学の権威が口にすると尚心に響くメッセージだったな。

 

 というわけで正義の人造人間バンザイ!

 

 

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