こしのり漫遊記

どうも漫遊の民こしのりです。

日本アニメ絶望ポイントを打ち抜け!伝説アニメ「MUSASHI -GUN道-」

MUSASHI -GUN道-」は、2006年4月から10月まで放送された全26話のアニメ。加えて総集編も3話ある。

 

 作品の誕生から放送しきるまでのストーリー丸ごとが、平成時代の生んだ伝説の一つとして数えられている(らしい)。そういう位置づけにあるすんごい作品である。

 

 いや~凄まじい作品だった。これを歴史に残した21世紀とは、何ともシャレの分かる時代だったのだな~と後に22世紀の人間が振り返っても不思議無い。そんな出来である。

 

 常軌を逸した高レベルな作画崩壊(←日本語として成立してる?)が長い間オタク界を賑わすネタとなったなんとも困った作品である。別に噂好きでもないこの私の耳にもその話題は入り込んでいる。そうしてちょこっと知ったからには、もっと深く知ろう。 そうなるのが好奇心旺盛な人の業であり定めってもの。

 

 噂に聴く作画の面白崩壊ぶりを堪能するため、動画投稿サイトなんかを徘徊した事はある。だがしっかりとフルで見たことはなかった。

 ここへ来てなぜか思いっきり壊れた世界が見たいと思うようになり、そうなるとこの作品に白羽の矢が立つのは自然なこと。建設的な思考による言動を好むこの私にもちょっぴり潜む破滅願望が導いたチョイスにより、この5月にこのような作品を楽しむ事となった。これもまた運命。

 

 凄まじいネタ要素もあり、作品熱として素晴らしいとなんとか言えるところもありで、とにかく見ていてハラハラする。その点で退屈させるには遠いコンテンツだったと思う。笑える。 

 

 昨今よく見られる流行らせる意思の有無はよそに、結果流行ってしまっている虚無アニメにはない強く意識を持って行かれる作品性があったことには間違いない。どういう形であれ、人の心や記憶に何かを深く残す作品を生むのは難しい。星の数ほどアニメを見てきた私が本気でそう思うのだからそれが正解だ。その点でいえば、このアニメは及第点を突破しまくりだった。これはずっと残る。

 

 そんな感じで、見れば心がざわつく味わい深い作品となった本作を振り返って何か色々書き殴っていこう。

 

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内容

 世は戦国。でも皆の知る歴史とはちょっぴり内容が異なる豊臣幕府が天下を治める時代に突入した。

 

 そんな世界で主人公 宮本武蔵は、城に潜入して泥棒行為を行う城盗りを生業としていた。

 盗っ人だった武蔵は、成り行きから謎の化け物「アヤカシ」を退治しながら世界を救うための冒険に出るのだった。

 

 だいたいそんな感じの爽快さにかなり欠ける冒険活劇。

 

感想

 絵が下手くそ過ぎる。コレが最上位に来る感想。

 チーズか!ってくらい絵が蕩けている。

 

 テーマの一つとして作画崩壊を取り扱った秀逸アニメに「SHIROBAKO」というのがある。SHIROBAKOでみゃーもり(←すごく可愛いい良い子だから調べてみて)達が学生時代に自主制作した七福神のアニメが如何に完成度が高いかが分かるってもの。ドンドンドーナツが食いたくなる今日このごろ。

 コレがプロの仕事とは思えん、まるで学生の自主制作アニメかってくらいフニャッとしたアニメが「MUSASHI -GUN道-」だった。

 

 部分的に下手になるとかでなく、基本から全部下手で静止画、動画ともに死んでいる。異常時でなく通常運転としてコレなのが信じられない。ずっとケンシロウの決めセリフ「おまえはもう死んでいる」が聞こえるくらい、動きの上でキャラが生きていない。

 こういうのはだいたいその回だけ人間の都合で現場がきつくなって部分的に絵が死んでいることがあるが、これは通算でおかしい。そうなっている現場環境がもうおかしい。でも24話だけは結構マシだったかも。なんで?

 綺麗に格好良く作ることに1番気合を入れるであろうOP、EDですらキャラの顔、動きが安定していない。これもおかしい。OPの絵がおかしいってことは、もう全部おかしいが確約ってことだ。

 

 作画の死にっぷりが話題になった最近の作品なら「いもいも」とか「メルヘンメドヘン」なんかがパッと思い浮かぶラインだが、あのラインを余裕で下回る究極の低クオリティな作画レベルを叩き出している。ある意味よそでは見れないから貴重といえばそう。

 

 私は1話たりともリアタイ視聴出来なかったのだが、出来ていたらめっちゃ笑ってその後落ち込んだと思う。

 これをリアタイで見た当時のオタク達は、自分達が信じて愛した日本アニメはもう死んだのだと絶望に染まったことだろう。絶望的にイッちゃってる。

 クオリティを比較すれば信じられない話だが、同年には「涼宮ハルヒの憂鬱」「コードギアス」など10年後にだって色褪せず輝くスター作品が放送されていたそうな。こうも差が出るものかね。

 私も学校に通っていて同級生数人が並んでいるのを見れば激しく優劣がつくなぁと実感したことがある。このアニメの場合でも、他のアニメと比べて激しい優劣が見えすぎてもはや笑える。そんな事を思い出してしまう私ってば微妙に性格が悪いのかもしれない。

 

 これは時代が古いからで済む話ではない。06年なら綺麗なアニメだってたくさんあった。

 昭和よりも格段に技術が進んだ時代に、拙い昭和の技術で作った作品を余裕で下回る気の抜けた作画が仕上がるのはヤバい。

 いつの時代にもプロを名乗る者がプロの名に恥じる横着をすることが許された試しはない。表向きには決して許されてはいないのだが、半年間ずっとそんな感じの横着な仕事ぶりを許してやって来たという現場環境がやばすぎる。

 

 作品の肝は、武蔵が扱う戦闘スタイルの「GUN道」にある。これは侍に必須の剣術に加えてガンアクションも盛り込んだ華と格好良さのある戦闘スタイルでしかないはず。

 それも質の低い作画のせいで間抜けなアクションに見える。最初の山場となったたくあん和尚も参戦して展開する化け物との戦闘シーンの出来からして既にヤバい。戦いを見ている者達の大袈裟な反応が輪をかけて間抜けに思える。

 

 この「GUN道」を用いたアクションシーンは、クリアな現場環境で現代技術をフルに使える今リブートさせれば当初の何倍も輝きを放てるはず。バトルものとしては目立つ設定だっただけに、あの残念アクション作画なのが重ねてめちゃ残念。

 

 個人的にかなり印象的だったのが、第21話「相討ち」の回でのアクション。この回ではサブタイ通り、武蔵達旅の一行が意図せず相討ちを行う展開になるのだが、その際の戦闘シーンの出来がマジでヤバい。カクカクノロノロで読み込み性能の甘い映像ソフトみたいな感じ。セガサターンの処理落ちかよって感じだった。落書きにしても精度の低い戦闘シーンだった。

 

 最終回での盛り上がりとなる武蔵と佐々木小次郎とのバトルだって間抜けだった。ていうか美女キャラのはずの佐々木小次郎の顔がカイジ風のブスだったのもショック。最後だけ出てくるライバルキャラの小次郎役が櫻井孝宏だったのも意外な配役。こんな変なアニメのオチに出てくる変なキャラやるなんてどうなの?とか思ったのかもしれない。

 

 アニメーションの出来は及第点だったり、普通に良かったりするのに、シナリオが腐っていることでフルに袋叩きにあうクソアニメも最近は完全に量産化が済んだ。

 そこへ来ると、本作はあのモンキー・パンチ先生が原作を手掛けただけあってまるでアホみたいなシナリオにはなっていない。むしろ壮大かつロマンティックさもあり、これはこれで味わい深い。その構想に用いた時間はなんと12年だという。すげぇ。あの日生まれた赤ちゃんの毛もしっかり生え揃ってちょっと大人の扉をノックしちゃうくらいの期間。つまり全く短くない長い時間をかけている。

 なので決してフザケ散らかした作品内容ではないのだ。あくまでも絵が駄目ってこと。悪名は絵の方にある。昨今のアニメは、ペラペラのシナリオやこれまたペラペラのキャラ性で悪名を上げるものが多い。ペラペラで許されるのはペーパーマリオくらいだ。ここの差は理解しおこう。

 しかし先にルパン3世をヒットさせていなかったら、モンキー・パンチはフザケたアニメを作ったフザケた作家としてオタクに記憶されていた事だろう。何がどうなって作家への正当な評価が阻害されるか分かったものではない。これが原作サイドから見る所謂製作ガチャの都合か。怖い怖い。もしも私が今後何かしらのコンテンツの原作者になる事があれば、その時には慎重に腹をくくろう。

 

 武蔵の旅のお供にも割りと癖の強い名物キャラがズラリと揃っている。

 キャラ単体の個性も結構好きなのだけど、いかんせんあの絵のせいで本来イケメン、美少女だった者達も漏れなくブスにされている。特にヒロインズとかは回数ごとのカウントでなく、同話数の中でもカット事に顔や髪型が違っている場合もある。デスペラードとか巨乳美女のはずがブスなおばさんに見えて可愛そう。

 

 変なアニメだったけど、主役の武蔵を演じた浪川大輔以下まともな役者達の真面目な芝居のおかげで、キャラの魂は活き活きとしたものに見えた。見た目は死んでるけどね。

 

 後半に行くほど、間抜けかつ微妙に寒いけど個人的には結構クセになって好きな会話劇が目立ってくる。セリフを考えているやつのセンスに笑える。

 アニメ的流行語大賞を狙ったらしい「だな!」の連発とかアホくさい。阿蘇山を前にしたロウニンが「あっそ」ばかり言うのもバカ。段々皆揃ってキャラ崩壊している。

 でも劇団「MUSASHI -GUN道-」って感じで、武蔵達一行がひとつになってなにかしらのムーブメントを生もうとしているファミリー感は嫌いじゃない。このパーティーはなんだかんだで仲良し。その空気感は好きだった。ちょっと仲間に入りたいぞってなる。

 

 最初は倒すはずだったボスキャラのリョウゲンがどんどん威厳を落として、ただのおマヌケギャグ要員になった流れも印象的。初手で後にこうなるとは読めない。

 

 まずは絵が、その他ちょこっとずつネタな要素が頭に入り込むばかりで、途中からはシナリオに意識が向かなくなっていった。だから感想としてシナリオの事にたくさん触れるのが難しい、ていうか面倒。最後はなんか急にストンと落ちて終わったなぁ。 

 あちこちを旅して封印魂(ふういんこん)を集める展開は、ドラゴンボール集めみたいな冒険活劇ならではのワクワクがあって結構良かったかも。

 

 こんなギリギリの運転で半年間も放送したというのが信じられない。

 絵は終わっているが、話自体は目立ってバカみたいな点もなかったと思う。絵を頑張ればもっと楽しめたはず。

 浪川大輔氏はこの仕事をどう思っているのかな。いつかはBDにするとして、その際にはオーディオコメンタリーとかでいっぱい語ってほしい。

 こういった稚拙な出来の作品でも、後の世の戒めのためとして残していくならアリだと思う。あとは普通にネタとしてもね。

 ちなみにこの作品、放送はなんとかやりきったがDVD化については打ち切りになっている。日本では1クール分もリリースがなく途中で販売が終わったとか。しかし海外産のものなら全話セットがある。実は視聴が簡単ではない。

 

 色々「無い」作品だが、資料的な価値や単純にネタとしては「アリ」という良き存在感を放つことには成功したものだと思う。大事なのは、どうあれ後の世にも人の記憶に残ること。これが衝撃的でない訳がない。話に聞く以上に絵の出来が酷いものだったのでばっちり存在を記憶してしまった。

 よくも悪くも、新時代に旧時代からの刺激をドカンともらえたのは確かなこと。この刺激は悪くない。

 

 というわけで、ダラダラ長く生きる中で一等ダラダラとアニメを見る素敵無駄時間が欲しい人にはこの「MUSASHI -GUN道-」をお勧めするぜ。

 

 

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