こしのり漫遊記

どうも漫遊の民こしのりです。

意味分からんの連続が心地良いカオス漫画「セクシーコマンドー外伝 すごいよ!!マサルさん」

セクシーコマンドー外伝 すごいよ!!マサルさん」は、週刊少年ジャンプにて1995年から1997年にかけて連載されたスーパーカオスギャグ漫画。単行本は全7巻が発売されている。

 

 自宅整理をするしかないここ最近、どうしても古いアイテムとの再会が連続する。我が家の倉庫には、まだ20世紀だった頃のあれこれがたくさん眠っているのだ。そしてこの春、そのいくつかが目覚めるのだった。

 そこで気になって再び手に取ったのがこの作品の単行本。長期連載を今から行くのはきつい。しかし7巻で終わるかっ飛びギャグ漫画なら楽に読める。というわけで、日々色々忙しくしている合間を縫ってこの変な漫画を読んでいく。

 

 古い割には状態が良いし、まさかの全巻初版本だった。これは結構前に中古屋で全巻セットで買ったんだよな。随分安くて一冊100円を切る計算だったはず。まぁ安くなければ割りとケチの私が買って来るわけないし。

 購入当時には、これの後に同作家が出した「ピューと吹く!ジャガー」の単行本だって既にいくつかリリースされていた。後に描いたジャガーさんはもっとフザケたアホ漫画だった。めっちゃ好きだったけどね。

 先に自宅でジャガーさんを楽しんでめちゃ笑ったので、じゃあこの作家の他の作品も見てみようと思ってマサルさんを買ったんだよな。何か一つ読んで、次には作家で作品を探すようになったら結構な本好きだと思う。アニメでいうと声優で調べて作品を選ぶようになったら結構深めにオタってるみたいな感じかな。

 とにかく原作者うすた京介氏のぶっ飛んだギャグセンス、というかそもそもこれはギャグなのか?っていうとんでも発想が好きだった。思い入れの弱くない作品である。

 

 これの漫画を読んだ後にはアニメも見て、OP曲を歌っていたPENICILLINのCDも聴いたものだ。割りと深く楽しんだ懐かしコンテンツでもある。

 

 本の中身を見ていくと、当時の集英社新刊本の宣伝ビラも入っているぞ。そういやジャンプコミックスってこういうの入っていたっけ。最近は本を買わないものな。

 見てみるとこの頃は黄金期だったのかもしれないと分かる。アニメ化もされた多くの有名作品とマサルさんは同期の連載作品だったのだな。

 この時にジョジョは5部に入ったくらいだったみたい。こち亀キャプ翼は既に文庫本のリリース情報が、そして最終巻に入っていた宣伝広告を見れば、あのワンピースの第1巻が発売するぞという案内もある。それと世紀末リーダー伝たけしの1巻も。あの2作はだいたい同期くらいだったのか。作品に触れる前に当時の情報が知れる宣伝の紙だけで何か楽しい。

 

 そんな感じで作品発売の年代自体も楽しみつつ、めちゃくちゃ久しぶりにマサルさんのカオスワールドに入り込んでいく。

 

セクシーコマンドー外伝 すごいよ!!マサルさん 1 (ジャンプコミックスDIGITAL)

 

 主人公 花中島マサルは、謎の格闘技セクシーコマンドーの使い手である。一つ上の学年のマチャ彦率いる空手部を何か良い感じに乗っ取り、ヒゲ部、またはセクシーコマンドー部を立ち上げるのだ。

 マサルのハチャメチャな言動になんだかんだと巻き込まれて、ツッコミポジのフーミン、ガリガリキャシャリンガリ勉ぶった実はアホのアフロくん、覆面の老けた生徒のスーザンら名前からして変なヤツらも集まり、まるでバカみたいなセクシーな青春を送るのだ。

 あとは可愛いマネージャーのモエモエ、多分戦闘力の高いモンスターだと思う謎まみれのメソというマスコットキャラも仲間になる。メソの謎は最後まで解明されない。

 それから一応顧問のトレパン先生に、スーザンと同一人物の校長先生もめちゃ面白い。

 これら全然薄めな事はない濃い連中と最初から最後までよく分からん事をやる面白い漫画だった。

 

 

 まずはセクシーコマンドーというのがキーワードになる。これは相手の油断を誘っておいて最低限の力でぶっ倒すという変わった格闘技らしい。考え方によっては合気道ぽくもあるような気が一瞬だけしたけどやっぱり全然違う。

 具体的に何をやるかと言えば、喧嘩の最中にズボンのチャックを下ろして何かお下品な感じになったところで相手を殴るみたいなアホっぽい感じのこと。

 

 山籠り修行したマサルが良い感じに極めて会得したらしい。で、山から帰って来たらチャームポイントの肩の輪っかがくっついているということになっている。

 この輪っかもよく分からん。宇宙人からの贈り物というか盗難品ぽい。外すと実はめちゃくちゃ重いけど、マサルの肩には普通にくっつく。つけるとマサルの髪が伸びるし、あとは近場の電子機器の表示を狂わせる迷惑な機能も持っている。

 もえもえが体重計に乗ったら、輪っかの効果で「ごんぶと」と表示された回は笑った。数字じゃないのかよ。

 

 まずは謎多き変人の主人公からしておかしいし、毎度の話ももしかして思いつきて始めて落としているのかってくらい前後展開の予想が出来ない。言動に前後一貫性無きマサルの理不尽なまでのギャグセンスや、既存の予定調和の概念が通用しないハチャメチャなシナリオの流れが面白い。この訳の分からん感じを確立させた世界観の構築センスはすごい。うすた氏の頭の中どうなってんねん?常人の発想ではない変な会話劇や流れも見どころ。

 

 中盤では、アホみたいなことをやって一話完結するいつもの流れとは違い、割りと連続性を持つセクシーコマンドー大会編に入る。

 これも重要っぽいキャラを大会前に出しておいてそことは戦わずそのままフェードアウトという乱暴な展開で落としに来やがった。これはジャガーさんの何かの大会でもあったうすた氏流の激しい裏切りの笑いセンスである。絶対こいつがライバルキャラで、トーナメントのどこかで当たってそれなりに熱血な見どころが、と思わせておいて全く戦わないってやつ。この間抜けなオチは笑う。

 マサルさんでもなんかライバルっぽいヤツと戦う前に、優勝の賞金を奪ってマサルさん一行は棄権して帰る。最低なことやってんなぁ。当時の読者が読めないぶった切りの落ちだった。

 一度始めた章をこんなにネタ満載かつ乱暴にぶった斬ることが許される会社なんだって思ってしまった。ここは笑った。

 

 キャラも単体で見て面白く、キャシャリンとスーザン(または校長先生)は特におすすめ。

 ドーピングマッチョのキャシャリンが見る幻覚にマ神が出てくる。これもフザケた設定でウケる。アニメでキャシャリンを演じたチョーの声がすごく合っていたのも思い出す。

 スーザンも良いキャラで、部活に生徒を残すため普通に部員キャラ全員を2回も留年させている。この設定も乱暴だなぁ。ふざけた校長だ。何気にヒゲ部は全員2回もダブっているとか面白い。

 

 マサルの家に謎の布がかぶさっているのと、マサルの家の布団が何か変な点にも笑った。あとここのお父さんもおかしい。

 フザケたアイテムや設定を引っ張ってくる発想力がすごいと思う。シュールなようで高等技術が組み込まれた資料的価値のあるギャグ漫画なのかもしれない。この分野で作家を目指す者は一度読んだ方が良いかもしれない。こういうカオスは好き。

 

 ずっとどうでも良いフザケたことをやっていただけに、最終回がどんなのだったかまるで記憶がなかった。その状況でまた最終回を読むとなるほどなぁ、これは覚えていなくても仕方ないしょうもない話だった。しょうもないを面白く彩る技術がすごい作品なんだな。

 

 フザケた漫画だけど、やっぱり絵が上手いと思う。手指の細かい点はさすがに良くか描けている。わざと基本のキャラ絵を崩した作画技術で笑いも生むが、ちゃんと描けばしっかり上手い。それから女子キャラは微妙に品があって結構可愛い。

 

 本編や単行本の作者メッセージコーナーを見ても分かるが、うすた氏はセガっ子である。この点が嬉しい。

 部員の皆が部費でロボピッチャやセガサターンを買おうとか言ってるシーンもある。この時期はまだセガサターンが現役で戦っていた時代だったのか。愛しき時代、見つけた。

 ジリオンとかバーチャコップとかのセガワードも出てくる作者メッセージページも面白かった。ジリオンはアニメも良かったよね。

 

 まだ有名でないけど将来そうなるかもしれない今は無名の人を呼んで対談するコーナーとかの発想も面白い。

 1番びっくりなのは、椎名へきると対談しているコーナーがあったこと。変な漫画の作者と伝説の声優が何で接点を持ったのか謎。声優好きなので、こんな所に彼女が出ていたのか~という点でも楽しめた。

 作者がネタ満載なのにも笑えた。

 

 それからシナリオを進める上で特に関係ないけど、本編に何回か野村義男の名前やグッズが出てくる。私はこの漫画を読んで初めて彼の名を知った。野村義男と出会える漫画だった事も作品の価値なのかもしれない。

 

 一口にギャグといえどその作風は様々。中でも結構変わり種なギャグものとしてとても楽しめた。いや~笑ったぜ。

 そんなわけでタイトルに偽りなくマサルさんはすごかった。

 

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