「仮面ライダー鎧武」は、2013年10月から2014年9月まで放送された全47話の特撮テレビドラマ。
今年YouTubeで配信がスタートしたのがあっという間に終わっちまった。ホント東映特撮YouTubeで1年もの特撮の配信が終わる度に、配信期間の半年がマジで短いと実感する。ちょっと前に1話の目配信が始まったと思ったらもう終わっちまったぜ。
お盆の最中に禁断の果実の物語の大いなる落ちがついてしまい、なんだかシュンとした気分になった。それくらい大いなる物語の幕引きはちょっと切ない感じだったのだ。
ていうか鎧武も10年前の作品になるのか。これは当時リアタイしていて断片的には記憶がある。今回改めて見て見ると新たな魅力に気づけた。これは名作ですわ。
出てくるライダーが従来のライダーぽくないがこれはこれで好き。鎧武者をモチーフにしたデザインに際立つセンスを感じた。ライダーよりメタルヒーローの感じがしたかも。ビーファイターとかと並んでもそんなに違和感がないかも。
ライダーの冠無く別企画でやっても良かったのではと当時も思いながら見ていたぜ。
鎧武者の要素にプラスして変身アイテムが錠前なのは硬派。しかもそれぞれに果実モチーフのデザインがあるのは可愛らしく華やかさもある設定で良い。なかなかユニーク発想で面白いライダーやアイテムが出てきた。
変身時にデカいパイナップルやバナナを被る仕掛けは大胆かつユニークで良い。何にせよインパクトだからな。その点であの変身システムは良かった。
最初は笑ったけど今となればあれしかなかったという演出だな。デカいスイカを被るヤツとかめちゃ笑ったわ。
あと改めて見ると本編では「仮面ライダー」の名称は使用無、変身ヒーローは「アーマードライダー」呼びになっていた。アーマードライダーというのもゴツくて格好良い響きがあって良い。
久しぶりに見てびっくりなのは、入り組んだ深いシナリオの存在。こんなにシリアスだったっけ?
最初はただのバイト戦士だったコウタが、ライダーの力を使って仕事をするなんていうコミカルな展開もあった。そこからだんだんと深い闇に突っ込んでいくようになる。
それにしても鎧武に変身して工事現場の仕事で楽する展開は結構印象深いものだった。あれは10年経過しても覚えていた。
コウタが斬月にコテンパンにのされて、心から戦いが怖いと感じる要素は印象深い。こっちはお気楽な見世物として見ているが、ライダー達は命を奪える武力を持ってドンパチやっているのだと再確認出来た。変身イップスになって、しばらくはヒッキー体質にもなったコウタの心理は割とリアル。変身ヒーローの持つ戦いが怖いというリアルな心情が見えるのって結構珍しいかも。
コウタら沢芽市のガキ同士によるストリートバトル展開から始まって、その奥ではユグドラシルの怖い大人達の暗躍があり、さらにそれよりも外には人知の及ばぬ別世界の化け物の思惑もあってと、話の規模がどんどんすごいことになる。最終的には地球ごと巻き込んでの大事になっていた。
最初のガキグループ同士の縄張り争いなんて可愛いものに思えてくるくらい、後半にかけて怒涛のヤバさが世界を覆うことになる。この緊張感とスリルは面白かった。
ダンスチーム同士の抗争を、DJ相楽がMCの番組として放送している初期のノリとか結構好きだった。ホント、最終回を見た今となってはあの小規模ドンパチが懐かしい。
ダンスチームが複数あって縄張り争いをしているアレには、かつて都会で栄えたというチーマーとかカラーギャング的要素を感じた。「池袋ウエストゲートパーク」とかでも出てきたヤツだな。
その複数ダンスチームが一つになって楽しく踊る合同イベントの会は、青春の味が濃すぎてちょっとウルッと来たぞ。
マジで人類同士で喧嘩している場合じゃねぇぞ!ってくらい世界丸ごとヤバいことになってくるからな。このようにシリアス度のステップを上げてくるとは意外だった。
10年前には話の内容がまだしっかり分かりきっていなかった。改めて見て鎧武、面白いっす。毎週超楽しかった。
途中で唐突な番外編が始まるのも進行上における印象的舵取りだった。
結構強引にキカイダーのリメイク作品を絡ませた話も記憶に残る。なんたってキカイダーリスナーですからなぁ。そういやキカイダーが出てきた回もあったわ~と思い出した。
最終的にはコウタもマイも人間辞めてる?なすごいことになり、すごい力が働いて世界がまた平穏を取り戻すラストになっていた。
最初はバイトを探して忙しくしていた少年が、こんなすごい戦いに巻き込まれてあんな姿になって旅立って行くのかよ。物語の振り幅が広い。
一度は世界から弾き出されたミッチーが苦しみながらもまた世界に戻り、一番世界と馴染んでいたコウタは異次元への出立を決め込む。リアルとファンタジーが交互に見えるラスト展開も心に響く。ミッチーにとっては苦行と希望が織りなすリアルな落ちだった。ミッチーは推せるからマジで応援したくなる。
シナリオのシリアスさも良かったが、キャラを見ても名物キャラが複数いて楽しめる。
カイト、ミッチー、凰蓮・ピエール・アルフォンゾのキャラは特に良い。
終始強さを求めて尖っていたカイトは、主人公のライバルキャラポジとして良し。
カイトの生い立ちを象徴する街の開発で失われた思い出の樹の話が良い。最終回でもあの樹のところにカイトがいたのはグッと来る。
カイトのエピソードで印象的だったのは、高い木に登って降りられなくなった子供をどう助けるか、コウタと二人で解決に当たったこと。ここで面白いのが、二人の案が分かれ、そこにそれぞれの生い立ちや教育方針が見えたこと。
コウタはすぐに木に登って助けようとする。でもカイトは助けを待たず自分でなんとかすること、つまりは飛び降りることを勧める。
子供が困った目にあったらどうするのか。大人の目線から考えれば、すぐに助けてやる、限界まで自分でなんとかさせるの2タイプがあると思う。
優しく面倒見の良いコウタはすぐにも助け舟を出すが、厳しい環境でストイックに生きたカイトは、まずは実践をやらせる。会社の上司が新人を教育する時にもこれら2パターンの教育方針が見られる。この二人の教育論のぶつかりは、意外にも番組屈指の教育要素だったかもしれない。
結果子供は飛び降りを選び、それをカイトがキャッチする形で解決する。助けてもらう方法にもこうして2つの道があったと気づくことが出来る。
この言動を見て当初は敵キャラムーブがすごかったカイトのことがちょっと気になり、最終的には好きになった。
10年経っても強烈に覚えていたのは、ミッチーの闇の物語とブラーボ伝説だわな。
コウタ、カイトの物語とはまた異なるテンションで魅せるミッチーの闇落ち物語は面白い。自分の大切なものを守るため嘘と闇に塗れてもう後戻り出来なくなる少年の濃い物語には、割と人間の本質が見えて来るから深い。
世間知らずのただの坊っちゃんがどんどん闇の男になっていく過程をしっかり演じた高杉真宙の芝居も高く評価出来る。
ミッチーもかなり主人公をしていて、最初から最後まで藻掻いて青春の出口を見つけていた。一番青春していたヤツかも。
貴虎兄さんとの兄弟の確執を越えて行く物語にもシリアスさがあって良かった。貴虎も良いキャラをしていた。最初はもっと悪者かと思ったらそうではなかったからな。
ブラーボのおっさんこと凰蓮・ピエール・アルフォンゾは容姿、中身のキャラ設定の両サイドからも超強烈なキャラだった。
当初はこんなゴツいおっさんもライダーになるのかよと思った。しかもガキ同士の抗争に、圧倒的に強い武力で介入してくるわけ?とビックリだった。ウチの親もスキンヘッドの巨漢が介入してくるのにはビックリしていた。
キャラ要素がスクランブル状態でインパクトがヤバすぎる。まずは見た目がすごい。スキンヘッド、マッチョ、そしてオネエな見た目は視覚的に絶対に記憶に残る。経歴を見ても異色且つハイスペックで恐ろしい。やり手の退役軍人で今も尚変身無くして普通に強い。そして現在は世界的に高い評価を取る一級パティシエ。あの一癖ある城乃内を飼いならして不良の道から更生までさせているなど、とにかくすごい。
ブラーボ初変身時には、すごい目力のカメラ目線で変身を決め込んでくれた。初変身のインパクトもすごい。イガイガの棍棒を持って敵をぶっ飛ばす戦闘スタイルも良かった。ブラーボはライダーも変身者も含めて推せる。変身しなくともめちゃ強いってのが味噌だよな。
同じ時代にこれだけのクセ強猛者共を引き寄せた沢芽市の持つ土地パワーがすごい。
当初クソキャラ扱いだった初瀬ちゃん、城乃内も最終的には愛せる。
最終回では城乃内がめちゃ主人公していた。ポジ的に三下クソキャラのはずが、スタッフに愛されたのだろう。最終的にめちゃ評価の高いキャラになったぞ。序盤から考えると最終回の城乃内の良いヤツムーブはマジで予想できんやつだったわ。ブラーボのおっさんの更生プログラムが良い方向に機能してやがる。
最終回の城乃内の変身時に、今は亡き初瀬ちゃんの姿を映したのもなんか泣けたわ~。初瀬ちゃんの最後は悲しく残酷な鬱展開だったけど、最後は良い思い出として振り返ることが出来た。
途中で初瀬ちゃんが生きている世界線に行ってサッカーをやる回があったのは平和だった。
ザックも最初はムカついたけど後半からの良いやつ評価の追い上げがすごい。熱くて良いヤツだったじゃん。ザックの変身はめちゃ格好良かった。
ここら辺の最初は脇の方にいて嫌味っぽかったキャラも最終的には良いヤツとして活躍させているのが良い。キャラの使い方が上手かった。
大人が怖いというのも印象的。
貴虎兄さんは割と早い段階で結構良いヤツだと分かったが、その周囲の湊さん、戦極凌馬、シドあたりは普通に怖い。
戦極凌馬のマッドサイエンティストな一面が見えるターンは怖いしムカつく。シドも闇の売人で怖いんだよな。シドの中の人はジャスティライザーでヒーローサイドだった人なのだが、今回は悪い大人だから怖い。
湊さんは出てくる女性キャラの中では一番アダルトで良い刺激になった。怖いけどエロ格好良いお姉さんなので、こういうのもアリだなって思った。湊さんとカイトが意外な仲になって行ったのも印象的。
ゴツいオネエ軍人パティシエが出てくればこういう格好良いお姉さんまで出てくるから、キャラ性の振り幅がすごい作品だったな。
ヘルヘイムの森とこっち側を繋ぐゲートが開く際には、服やカバンのチャッが開くような演出が入る。この異次元ゲートチャックも印象的。次元を繋げるチャックの異能力といえばジョジョのブチャラティの能力なので、もしかしてそこから思いついた設定なのかな?
ヘルヘイムにいる怪物共の中でもボスランクの者は人間に勝るとも劣らない知性を持っている。知性を持って進撃してくる化け物がいるというのもリアルに考えると怖い。
途中の展開では、現地民の人名よりも化け物討伐を急ぐことを優先して、人がまだいるのにデカいミサイルが沢芽市にぶち込まれたことがあった。国に見捨てられた一部都市として悲しい道を辿った沢芽市が哀れ。そのピンチだって敵側の異能力でミサイルが消滅して終わったのがなんとも言えない感じ。敵の化け物にミサイルをどうにかする能力がなかったらライダーもモブも含め皆終わっていた。
このシーンにはライダー的バスターコールを見たわ。展開が恐ろしい。
湘南乃風改め鎧武乃風が歌うOP曲「JUST LIVE MORE」も良く聞いたな。あれも10年前かよ。もっと最近の鼻歌リストにあったように感じるのに。
サビ前の「き~んだ~んの~きゃじつ!(禁断の果実)」の所が最高にアガる。禁断の果実が関係する禁断の物語だったことから、しっかり作品内容を落とし込んだ作りの曲になっていた。そこも良し。
今回きっかけでコレもまたよく聞くようになった。何気に今年たくさん聞いた曲上位に来るかも。
湘南乃風の皆のボーカル熱に感じる暑苦しさが丁度よくてクセになるんだよね。コレ以下でも以上でもないベストラインの暑苦しさに用がある。つうわけで歌手も好きになる作品でした。
しかしまさか仮面ライダーでこの暑苦しさを感じることになろうとはな。意外すぎる人選だった。彼らはここからまた10年経ったギーツの時にも関わってくるからな。湘南乃風も推せますなぁ。
というわけで、10年経ってから見るとまた一味変わって見える大人向けな作風だった。鎧武は大人向けだから、ガキを脱して再度見るともっと染みる。
己の世界を守るためなら、禁断の果実を齧ってでも突き進め。just live moreの精神で生きていくしかない。そんな希望と勇気をもらえる作品でしたね。とにかく伝えたいメッセージ性に安っぽさはない。鎧武は熱い物語だった。マジありがとう。
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