「銀河漂流バイファム」は、1983年10月2から1984年9月まで放送された全46話のテレビアニメ。それに加えてOVAが4作発売された。
「十五少年漂流記」をサンライズでやるヤツという噂だけ聞いて長らく見ることが無かったバイファムをここへ来てやっと見ることが出来た。しかしなんて古い時代の作品なんだ。新時代に見る80年代作品もオツなものですなぁ。
これを見始めた途中からも別にやることが色々出来たりして、全話見るまで2ヶ月くらいかかっちゃった。もっと詰めて一気に見た方が内容が入ってきて楽しめると思うのだが、今回は私にしては一作を見るのに時間をかけたな。でも1年ものを2ヶ月で見たのなら十分にタイムワープ出来ているので良しだろう。
可愛らしくユニークな13人の子供達と楽しむロボものということで、サンライズ作品としては変わり種作品だった。でもしっかり面白かった。
その思い出とかを書いていこう。
内容
時は西暦2058年。人類は地球を脱して移民惑星を開拓し、それを成功させていた。
人類が辿り着いた移民惑星 クレアドが異星人から攻撃を受けた。住人達は避難船に乗って惑星を脱するが、激しい敵の追撃の中で人々は次々と命を落としてしまう。
残った者は宇宙船ジェイナスに乗り込むが、その時には大人が1人、子供13人にまで人数を減らしてしまう。
子供達の親は異星人に捕らえられてしまい、その奪還のためジェイナスは発進する。その旅の中でついに最後の大人も姿を消すこととなり、少年少女13人のみの旅が続くことになる。
若き彼らが目指す明日は一体どっちだ!
そんなワクドキな少年少女の宇宙旅が楽しめる作品です。
感想
平和な日常が何の前触れもなく崩れ去り、惑星を離れて避難民になる。戦いが呼び込むその異常事態の展開スピードは実に早い。ぼやぼやしている内にもすぐに危険な戦場の中という緊張感ある1話目の入りを見て「何事や?」となった。
まず怖いのが、敵がいて襲撃をかけてきてヤバいというのは分かっても相手が何者なのかという全貌が長らく見えてこないこと。よく分からん者に追われて逃げるしかないというリアルに考えればかなり怖いことになっている。
戦争をやっている他のサンライズものと比べればかなりマイルドで明るい作風だが、得体の知れない敵がいるという設定には不気味さがあった。敵勢力のことが分かるまで割と時間がかかったのが印象的。簡単に戦況を説明しないアニメだった。
避難している内にどんどん大人がいなくなるのは本当にヤバい。戦いに出たまま帰ってこないおじさん達もいるから、残ったのは子供13人と引率者のケイトさんだけ。
ガキだらけの中で光るケイトさんは、クールな大人のお姉さんで目の保養となった。そのケイトさんも中盤で退場となるから後はマジで子供だけの宇宙旅になっていた。
まぁやっぱり皆思うことだろうけど、子供だけで戦艦を動かすわ、人型ロボのラウンドバーニアンも操作して敵とやり合うわの基本設定からしてありえん。下は幼稚園児くらいで、上も中学生までの年齢の若い面々でこの戦況を乗り切ったのは奇跡過ぎる。
野暮ったいとは思うが、野暮という概念を知るくらいに大きくなってから視聴すれば、やっぱりこういうことを思ってしまう。
子供達生還の立役者となったジェイナス号が優秀で、音声AIによって子供でもなんとかなるよう操縦サポートがあった。この時代にAIでめっちゃ喋ってくるマシンも珍しいような。レイズナーとかもロボAIが喋っていたけど。
もちろん子供達もさっさと救出して欲しいから助けは出している。一度軍の機体と交信することがあったが、相手はドライな職業軍人ということで、戦う命令は受けど難民救助はそれに含まれていないみたいな事を言われ、その場での救援は受けられなかった。そんな厳しい事もあった。
助ける方もタダじゃないし、まぁ命令系統で色々あるから簡単には助けてやれないみたい。世知辛いです。
中盤でロディが異星人に捕まったあたりで、大きな戦艦に乗り込む多くの大人達と合流出来たのだが、そこでもなんだかんだあって大人がいなくなって子供だけになってしまう。
ここの下りでは、救援を受けたら受けたでジェイナスの権限が向こう持ちになって親を助けに行く足を失うという問題が浮上した。助けてもらったらもらったで不都合があるからどうしようかと考える内容はちょっと面白かった。ここは考えどころです。
軍に属していないから危険であり、属したら自由がなくなる。これを受けて会社員で行くか、フリーランスで行くかの二択みたいに思えた私の頭もビジネス思考に染まっちまっているのかもしれない。
終盤になると敵母星に降りて物語が進行し、異星人のククトニアンサイド内部でも何やら揉めていたりと物語性に幅が出てきた。
だんだんと敵の事、この戦いの根っこが見えてくる。そうして見えた結果、地球人類側が悪いじゃないの?となってきた。
序盤展開を見れば、地球人類に対して異星人が攻め込んで来たようにしか見えないが、実は地球人の植民惑星は、元々ククトニアンが管理していたものだった。彼らのテクノロジーで生物が住みやすい環境を整えていた所だったのだ。それを地球から来た者が横取りして勝手に住み着いたのだった。
これについてククトニアン側は穏便に返還手続きを進めるつもりだったが、地球サイドが好戦的に出たので全面戦争となったのだった。つまり地球側が向こうさんにとっての侵略者だったわけである。なかなかダークな真実だった。よそ様の領分に住み着こうとなればそりゃ攻撃を受けるわけだ。
終盤では終戦の流れになり和平交渉で進められるが、地球サイドでちょっと勝手じゃない?とも思える。こんな感じでいつだって争いの戦闘にいるのは大人達であり、直接的関わりの無い子供達が宇宙をブラブラするような迷惑を被ることにもなるのである。悲しいね。
大人達が始めた血みどろの戦争の犠牲者とも言えよう子供達13人のスリルある宇宙冒険はそうして始まったわけである。まぁ色々難しい政治的背景があるのだが、とにもかくにも子供だけの宇宙冒険のターンは結構面白い。
1年かけて満遍なく皆にスポットを当て、それぞれを主役として活躍させていた。皆愛すべき子供達として推せる。
一番好感が持てたのは、最年長リーダーのスコットくんかな。頼りないところもあってちょっとヒスな感じも見えるが、こいつが愛着の湧くリアルさを持つキャラで良かった。子供達の代表というストレスある立場だから、こいつハゲそうだなと思うこともしばしば。スコットは苦労人だった。航海日誌をつけている彼のモノローグが聞けることも多くあった。
ロディ、フレッドは兄弟キャラとして印象的。一応主役機のバイファムに乗り込むことでロディの活躍の出番は多い。バイファムよりも皆の命綱になったジェイナスの方がある意味主役だったような気もするけど。
このバイファムが良いデザインなんだけど、主役機にしては華がなくしょぼいというか、ガンダムよりも完全にジム寄りな感じというか。つまりは量産型機だったわけである。
他のロボもデザインは好きだけど、ちょっと二番煎じな感じでめっちゃ強そうなことはない。全体的にレイズナーに出てきそうなロボの感じだったかも。
ロボの総称「ラウンドバーニアン」の響きが格好良い。なんだかんだコレを子供達で扱って最後まで13人全員生き残ったのはすごい。
第1話で敵から攻撃を受けて避難する際、フレッドが恐怖のあまり小便をちびってしまうのいきなり印象的。初回からおもらしキャラが定着しちまった。
この時に立ち上がって逃げれば漏らした事がバレるという羞恥心が働いて動きがのろくなるのはちょっとリアルにありそうかも。弟のお漏らしの始末もあって兄弟の避難が遅れる序盤回は印象的だった。
ロディとバースはラウンドバーニアン乗りとしてコンビを組んでの活躍が多かった。この二人に見るの仲良しな男友達の関係性が結構好きだった。
バースが見た目的にもっとヤンチャな感じなのかと思ったら、そういう時期はすっかり終えたと回想で分かる。意外にも話せる兄貴のポジとして集団の中で良い役割を果たしていたのが印象的。なんだかんだ彼みたいな奴は集団で使えるし、モテそうだとも思う。バースも結構推せる。
13人もいれば統率を乱すというか、言ってしまえば空気読みに乏しいちょっと残念なやつもそりゃいますわ。
男子ならケンツ、女子ならシャロンあたりがそう。余計な言動で空気を乱すことがあった。こういう子供社会においては不思議無いノイズの役割を持つキャラが機能するのも面白みとなった。
ケンツみたいな面倒でうるさいチビやシャロンのように浮いた言動を取るヤツも確かにいるからリアル性がある。ケンツがロボのコクピットの中でノリノリ音楽をかけて発進したのにはウケた。プロ軍人なら怒られるやつ。
ウザさで言うとこの二人が強いものを持っているが、かといって不快なこともなく、そこも含めて愛嬌。なんだかんだ愛せるキャラだった。
子供達を演じる役者には、声変わり期にある若手キャストも登壇したというが、その中でケンツ役の野沢雅子はこの当時でも結構なベテランだったはず。目立つ元気な声だった。先日放送スタートした「ドラゴンボール」の新作でもまだ同じような声が出ているから喉が丈夫だなぁと思った。
色んな子がいるから個性も様々。それでも皆良い子だから過度に揉めたり憎しみあったりはしない。
13人がずっと仲良しで協力関係にあったことは美しい。これと状況が似た子供だけで展開するSFアニメ「無限のリヴァイアス」だとこうは行かず、戦艦の中で子供同士の派閥抗争が起きてめっちゃ揉めていた。あちらはサンライズでやる「蠅の王」と言われいてるとか。比較してみると面白い発見もあり。
長く航海していると女子メンバーはパンツの換えがないとか、もっとヤバいのは飯のストックとかの問題も出てくる。しっかり生活している場だから、ジェイナス内は生活感がすごい。こういうジェイナス内部での日常シーンも楽しい。
印象的なのは、クレアの子育てストレス回。小さい子の面倒を大きいお姉さんのクレアがなんとかしなければならない。それでも彼女はまだ14歳のガキに過ぎない。戦いの中で子供の世話までしていれば、ストレスで大声をあげたくなることもある。旧友のスコットが鈍感なパパさんみたく子供のことで悩むクレアの苦悩を分かってやらないのも彼らしく抜けている所として楽しめた。
確かにガキの子守りはしんどくて面倒なので、クレアママのことは応援したくなった。まだまた歴が浅かった時分の冨永みーながクレアを演じたのも印象的。
地球人の子供に混ざっているカチュアが実はククトニアンの子供だと分かって皆が動揺する途中の展開も印象的。
カチュアが敵の異星人の子供と分かれば、残った子供達の中でも差別や敵意の意識が働く。ケンツが最初にそれを言うのが彼らしい正直な所だな。まぁ分かるけども、酷いとも思う。
狭いコミュニティに一人種族違いを置くことで、こういう反応が出るという子供心理が分かるものだった。こういう心無い言葉が簡単に出てくるのも子供特有のものだよな。
カチュアを笠原弘子が演じていたことにちょっとびっくり。もっと最近の人かと思ったらこんなに昔からデビューしていたのか。綺麗な良い声です。
長らく子供を引率する立場にあったケイトさんの苦悩が見える所も印象的。普通に危険な立場にある中、途中からも色んな苦労が追加され、遂には部屋に籠もって酒をやっての現実逃避に出てしまう。まぁ分からんでもない。
ケイトさんを心配に思う優しさと大人のお姉さんへの憧れから、そこはロディが寄り添ってあげることに。そこでアクシデントから二人のキッスシーンに入ったのは、このお気楽な子供社会をメインに描く作品の中においては最もアダルトなシーンだったかも。まだガキのロディが大人のお姉さんとキッスしたなんてことは、一生ものの思い出になるだろう。
精神的に弱って酒に溺れるケイトさんもそれはそれで色気があるお姉さんに見えてちょっと良かった。
ケイトさんがいなくなった時には、もうこいつら終わりだろと思ったが、その後も子供にしては十分賢く立ち回って全員生還しました。良かった。
死んだと思っていたケイトさんが、実は生きていて再会するエピソードがOVAに用意されていた。マジかよ。記憶喪失状態だが、彼女が生きていたのはまぁ良かったと思う。当時のファンはこういうのをどう思ったのか謎だけど。
健全な子供番組にしてはちょっとアダルティなエピソードがもうひとつ。
かつてジェイナスに乗り込んでいた大人達の遺産の中には、命の助けになる重要アイテムがいくつがあった。そんな遺産にも色々あり、中には生きるのに必須ではない嗜好品も紛れてちゃっている。で、出てきたのがエロ本の山だった。結構な量がロッカーから出てくる。
まぁ軍人でも軍務を解かれたならただの大人だから。だったらエロコンテンツの1つや2つ楽しんでいて当然なわけだ。軍人の生々しい裏都合が見えて来た。
こういうが見つかればそりゃ男子メンバーは興味津々なわけで。スコットくんの真面目ぶってもスケベ心を隠しきれないムッツリなところがちょっと可愛かった。スコットの冴えない人間性には本当にリアルさがあるから親近感が湧く。こういう奴がクラスに一人はいるものなんだよな。
このエロ本のアイテムは、ジェイナスを降りたずっと後の旅でも出てくることがあったから、意外にもそれ1つでエピソードを盛り上げてくれる良きネタになっていた。確かに学校のクラスなんかでそれが発見されれば、色んな方面からネタに出来てひと盛り上がりするよな。全員が無関心だったらそれはそれで不健全な若者集団になるし。
世にも珍しい宇宙に舞う紙飛行機の群れを描いた最終回終盤シーンは、バイファムにおける有名シーンとされている。
あそこは直前まで焦った。カチュア達が乗っている艦を狙っている砲台からビームが出て爆破させたらなマジで最低のエンドだったけど、ビームでなく紙飛行機が出てきた時には本当に安心した。
サプライズ企画だったから、乗っている方はマジでビームが来るのか?みたいになっていたじゃないか。あのサプライズは心臓に悪いってばよ。
そうしてめっちゃハラハラさせられたことで、あそこのシーンが一番記憶に残った。感動できるシーンでもあったけど、その前の心臓に来た流れが一番の思い出になっちまった。
宇宙旅をする中に見える子供同士の関係性、小さいながらも確立された子供社会が作品の面白みとなっていた。
13人が絡んで生まれる子供らしい物語性が好きでした。戦争をしているという怖い背景があるが、メインの子供達が関係して生まれる世界を見て行く分には、世界名作劇場みたいに教養や愛嬌を見出すことが出来る作風だった。いずれにせよサンライズのロボットものだとこういうのは異色な一作に区別出来るだろう。思い出です。
バイファムはとても楽しめる教育番組でした。好きです。
この手のアニメには珍しい全編英詩のOP曲「HELLO, VIFAM」も名曲なのでオススメ。アニメを見たきっかけで最近良く聴いている。アニメ視聴後には、この曲を楽しんでバイファムを振り返るのがベスト。
それではバイバイバイファム。
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