こしのり漫遊記

どうも漫遊の民こしのりです。

美しきファミリー劇「若草物語」

若草物語」は、1949年に公開された映画。

 

 アニメにもなって楽しまれている大昔の文学作品が実写映画化したものを楽しんだ。時を越えて人々に楽しまれる作品で、アニメも実写も複数作品があり、ここ最近でも映画や舞台劇として楽しまれている。

 

 複数ある映像化作品の中でも今回視聴したのは1949年に公開した実写映画。実に古い。4姉妹の隣の家に赤ちゃんが生まれるシーンが描かれるが、この赤ちゃんも今では年寄りなっているのかと想うと時の流れを感じずにはいられない。

 そんな古い映画だが、内容は爽やかな家族愛とヒロイン達の成長を描いたもので、大変素晴らしいものだった。

 

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 どうやら没落して貧乏になったらしい家族が描かれる。仕事のため家を留守にした父に代わり、堅実な母が可愛い4姉妹と共に暮らす様がイキイキと描かれている。

 

 メインで描かれるのは4姉妹の次女ジョー。おてんばが過ぎるジョーの青春の物語が面白い。淑女でありながら明朗快活な男勝りのヒロインに描かれ、女版のトム・ソーヤみたいだった。家の門をくぐらず、ショートカットのため横の柵を乗り越えて来るところは印象的。学校でも授業を真面目に受けないので先生からこっ酷く叱られたりもする。他の3人と違い、ダンチで女子らしさがない。淑女の教育を受けながらも「おったまげた!」なんて今日日なかなか聞かないワードを吐くのも愉快。

 

 ジョーの意外な点が読書家なところで、自分でも小説を書いて会社に持ち込んだりしている。なかなかアクティブである。今日の日本ではほぼ絶滅状態となった文学少女というやつだ。この落ち着きの無さでも本は黙って読んで書くというのが良いギャップ。

 ジョーが小説を読んで感動のあまり泣いているシーンがあるが、その本は自分が書いたものだった。自画自賛の末に感動して泣いているという良い性格なところも面白い。

 

 ジョーのギャップ萌えなところと言えばもう一つ。実は裁縫が得意でボタン付けなどお茶の子さいさいでこなす。ベア教授の服にボタン付けしてあげるシーンは萌える。この感じでボタン付けのスキルを見せられるとやられるかもしれない。

 

 母が父に会いに行くための旅費を稼ぐため、ジョーは自慢のロングヘアーを切って売るという大胆な行動にも出る。「賢者の贈り物」を読んだ時にも思ったが、髪が売り物になるってどういう会社で、売り物になるからにはどんなに良い髪質をしているのだろうか。

 

 ローリー、次いでベア教授から言い寄られ、意外とモテるジョーの恋愛物語にも重点が置かれている。私個人としてもこの感じの活発なヒロインはアリだと想う。

 

 4姉妹が実に仲睦まじく描かれるのも良い。美しき姉妹愛が見れる。気心の知れた仲の姉妹トークはテンポが良い。猩紅熱にかかり、最後には死んでしまう姉妹のベスとジョーの深い絆を見るとちょっと泣ける。

 

 4姉妹が絶対的な信頼を寄せる母との関係も良い。やはり母はどっしり構えて心強いものであると分かる。

 両親がいない隣の家のローリーが、母子の暖かい関係を美しい画のようだと言って羨んで見ているというのも良い。ローリーの素直にして詩的な表現は胸に刺さった。

 

 ジョー達家族の親戚のマーチおばさんは、口が悪いけど愛着が湧く良いキャラだった。時に物言いが横暴、皮肉も吐くが、本当は優しいツンデレババアなのが愛くるしいハマるキャラだ。

 

 後半でジョーが住み込みの家庭教師を始め、仕事先の奥さんが使用人のソフィーを呼び出すシーンがある。この時の奥さんのソフィーの呼び方が「ソ・フィ~~」といった感じに語尾が上がって面白い。狩野英孝の「スタッ・フ~~」みたいな感じの呼び方にウケた。

 

 シナリオとは関係のない美術面で印象的だったものが二つある。

 一つはジョーの家の門部分が簡易版の回転ドアみたく設計されていること。十文字の木が真ん中でくるくる回るだけのものだが、こんなものは人生で初めて見た。いつかマイホームを建てる時には設置したい。

 二つ目はジョーが小説を会社に持ち込むシーンで映る歯医者のオブジェ。口がパクパクしているおしゃれで高そうで何よりユニークなデザインセンスは印象的だった。日本の歯医者にもこんな楽しいのを置いておけば皆が怖がる気持ちも和らぐだろう。

 

 途中で姉妹のベスが死んでしまう箇所は寂しいが、全体的には明るい家族を描くものでほっこりした。約2時間の映画だが、サクッと見れて楽しかった。家族、姉妹で仲良しなのって尊い。私も母や兄弟を大事にしようと思えた。

 

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床屋と独裁者「チャップリンの独裁者」

チャップリンの独裁者」は、1940年に公開されたアメリカ映画。

 

 ポーランド侵攻ユダヤ人排斥などを行ったヒトラーの独裁政治を底に敷き、チャップリンならではのユーモアな手法でそれらを非難した風刺作品になっている。

 

 テーマに第一次世界大戦を扱いながらも、基本はかなり笑えるコメディ作品としてお届けしている。しかし最後には自由と平和を謳う伝説の演説シーンで締めることで反戦メッセージの強い真面目で素敵な映画になっていた。

 

 チャップリンヒトラーの繋がりと言えば、学校の社会科のテキストのヒトラー関連のページにこの映画のワンシーンが載っていたことが思い出される。当時はテキストのチャップリンの写真を見て、多くの者がこちらを本物のヒトラーだと勘違いしていたなんてことがあった。

 

 そんな本作を人生で視聴するのは2回目。コロナ自粛を有意義にするため、久しぶりに見たら大変面白かった。

 

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「殺人狂時代」同様、視聴後には色々と考えさせられるものがある。こんなに恐ろしい世界と時代があったのだと想うとゾクリともする。まぁかなり笑わせてもらったけど。

 

 主人公の床屋の男は、砲撃部隊の兵隊として第一次世界大戦に参加していて、最初は戦場のシーンから始まる。ここで登場する長距離砲台の作りが結構手の込んたものになっていて格好良かった。

 栓を抜いた手投げ弾が服の中に入って焦ったり、煙の中で間違って敵軍に合流したりする床屋の様がコミカルで面白い。掴みはばっちりだ。

 

 シュルツ隊長と床屋が飛行機で逆さま飛行をするシーンは有名なので覚えていた。逆さま飛行で水筒の水を飲もうとしたら全部下に落ちて全然飲めないシーンなんて思わず笑ってしまう。ここはちょっとした特撮要素もありで好き。アイデアが詰まっている。

 燃料が切れて飛行機が墜落するというのに、国に残した嫁のことをべらべらと語って聞かせるシュルツのテンションが面白い。墜落した後にもまだ喋っていたのが面白い。

 

 ヒンケルが民主主義をディスった内容の演説を力強く行うシーンは、内容こそ独裁者の怖いものだが、シーンまるごとで見るとコミカルで面白い。

 ヒンケルがスゴイ剣幕で捲し立てるものだから、その勢いに圧倒されてマイクが後ろにしなる演出が見られる。ここなどは一昔前のルーニー・テューンズアニメのようだ。

 ヒンケルの指示で演説を聴く者達が一斉に拍手を始めたり止めたりする謎の一体感も笑える。

 

 太った側近をすごく叱るヒンケルの様も面白い。太った男が勲章をゲットしすぎているのも面白い。

 ヒンケルの愉快な切れっぷりには毎度笑かされる。他国のトップと協定を結ぶ会談で揉めてしまい、食べ物を使ってコミカルな喧嘩をするのが面白い。

 

 ユダヤ人を迫害する軍人たちが、ユダヤ人の家にペンキで「JEW」と描くシーンが印象的だった。JEWというワードは、ユダヤ人の蔑称として用いられている。これが関係して「恐竜戦隊ジュウレンジャー」の外国版を作る時には「ジュウ」の発音がまずいのでそのままは使えず「パワーレンジャー」になったとか。

 

 コメディ映画ではあるが、ユダヤ人の迫害、ユダヤ人街の生活などはリアルに描いている。

 ヒロインの言う「迫害を受けてもこの場所が好き」というセリフは胸に響く。窓からフライパンで軍人の頭を殴って応戦するヒロインが勇ましい。

 

 政府の横暴に打って出る代表を決めるケーキのロシアンルーレットシーンは面白かった。5つの内一つにはコインが入っているという設定だが、皆選ばれたくないからこっそり他人にコインを押し付けたりするセコいやりとりが面白い。

 

 チャップリンが主人公の床屋の男と独裁者ヒンケル一人二役で演じ、二人がそっくりなために後半で二人が入れ替わるというのが特徴的な仕掛だった。

 顔がそっくりの一般人と国の指導者が入れ替わって世界を回すという展開を見て、「∀ガンダム」のキエルとディアナの物語を思い出した。

 

 人種も国境も越えて世界の融和を願う床屋の魂の演説には聴き入ってしまった。ここは映画史に残る伝説のシーンだ。それまでのふざけたシーンがひっくり返る圧巻のパフォーマンスだった。世の政治屋諸君もこれを聞いて見習えば良いと想う。

 

 ヒトラーが死んで何年も経ってこれをやるなら問題ないが、ヒトラーが元気に戦争をしていた時に、このような強めの非難を盛り込んだ映画を作ったチャップリンは、最悪ターミネイトされる覚悟もあったのだろうか。政府から睨まれること必至な突っ込んだ社会派作品をこの時代に作ったクリエイター魂はスゴイ。

 

 風刺作品としても見れるが、なによりもコメディ映画として楽しい。床屋の演説をラジオで聴くヒロインが最後には希望の光を見て終わるシーンも爽やかで良かった。

 

 悲惨な史実に基づいた今作を見ると、日本はいつまでも平和であれと思わずにはいられない。

 

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こしのり漫遊記 その45「盛り上がるネットショッピングと衰退するフリーマーケット」

 

      

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 近頃想う。ネットで商売する業者がたくさん増えたと。色んな業界がだいたいは通信販売をしている。こうなると実店舗の存在価値が危うい。

 

 その煽りを受けてか、私が買い物を行う領分にあるゲームショップが目に見えて減った。今では大手チェーン店が残るくらい。こじんまりと街の端っこに構えるオタクの拠り所となった個人店は軒並み消えている。チェーンのゲームショップだって生き残っていても最盛期より店舗数が減っているなんてことがある。これでは個人店の生き残りは難しいか。

 

 2010年台に入った頃からゲームショップの減少がゆっくりと進み、気づけば昔なじみだった個人店が皆なくなってしまった。寂しい。

 個人店は大手の相場よりも安かったり高かったりして、品によっての当たり外れが大きい。それが愛嬌だったりもする。こういう店の良さは、チェーン店と違って、店主とオタッキーな軽口が叩けることにあった。例えばブックオフなんかの若造ならゲームやアニメの知識なんてまるでない者だってきっといるだろう。個人店の店主なら、そいつこそがゲーム好きなオタクということもある。そんなオタクな店主との絡みも楽しいものだった。今ではそういう暖かいオタクの拠り所がなくなってしまった。

 

 金を持っていけばどこのショップでも同じものが買える。だが、金とは関係のない良いサービスというのは、どこででも味わえるものではない。まぁ時代が変わったんだろうな。新時代と前時代、新しいものが古いものを置いていくというのがどの業界でも当然のことだから仕方なくはあるが、昔を思えば少し寂しくもなる。

 

 大手ゲームショップだって減る背景には、恐らくフリマアプリやオークションサイトの存在も関係しているのだろう。ここでは店よりも安く物が売られている。確かにお得な物は随分お得になって良い。

 出品者としても、例えばブックオフに持っていくよりまず良い値で物が売れるはずだ。

 売買において業者が損する仕組みを敷くわけがなく、安く買って高く売るのは当たり前のことだろう。店よりも一円だって安く買えるなら、店に入るのをやめてこうして個人から買い取るのがお財布に優しい。

 今では当たり前だけど、考えてみれば業者でなくとも、そこらのおっさんだって勝手に、そして簡単に物が売れるなんてネットサービスの発展はスゴイ。店が無くともお店が開けるみたいなものだ。

 

 こういった個人が自由に物を売れるサービスを作ったのはナイスアイデアとも思える。ゲームショップでは、例えば100円で買い取って1000円、またはそれ以上で売ったりするらしい。こういうのを見ると、100円なんて安い値で買い叩かれるくらいなら、私が500円でも600円でも出して買ってやると想うことがあった。オークションやフリマアプリではそういう願望が叶う。

 

 これが流行ったら各ジャンルを専門にする業者はどう想うのだろうか。ネットで買い物するばかりで自分たちの店で買い物してくれないという焦りもちょっとはあるのかと考える。

 

 お店を攻撃するわけではないが、とりあえずブックオフで欲しい物を見つけた時には、あとでヤフオクで見たらそっちの方が安くてお得に買物できることが多い。私個人としては、ブックオフで買い物することがかなり減った。

 

 フリマアプリなどが幅を利かせて本当の店が減る中、本当のフリーマーケットも減っている。ちょっと前までだいたい週末になれば、地域のあちこちでフリーマーケットが開催されていたのに、これもいつの間にか数が減り、私の住んでいる地域のもなくなった。

 

 フリーマーケットでは会社で決められた定価に左右されることなく、本当に出品者の意志で値段の高低を自由に設定できる。つまり交渉の余地がある。こんなことはコンビニやスーパーでは絶対に出来ない。だから楽しい場であった。

 ここに物を出す連中は家にあったら困るからということで、本来の価値なんて度外視でとにかく物を減そうとする。向こうとしても帰りの荷物が増えるのは困るので、交渉すれば割とたやすく値を下げてくれる。だからフリマは、破格の値でレアアイテムだってゲットできる貴重な場だったのだ。

 

 フリーマーケットに行って初めて覚えた言葉が「値切り」である。これを行うのがここでの醍醐味だ。上手いこと取り入ってお得に話を進める交渉の場は楽しい。それで負けてもらえたら非常に嬉しい。これが好きでフリーマーケット巡りを趣味にしていた時期もあったのに、今ではこの文化も廃れたな。

 

 聞けばフリーマーケットにも出品代というのがあり、売上が良くなければお財布の中がマイナスになってしまう。ある程度は売らないと儲けにならないようだ。だったら家でフリマアプリで売るのが楽だよな。ここ最近では配送サービスも発展してお手軽に品を送ることも出来るらしい。

 

 長いことオタクライフを楽しんでいて無くなったもの、廃れたものを振り返ると、個人でやっているゲームショップとフリーマケットの2つが上がった。最近この2つを振り返るとその時が楽しく、それゆえ今が少し寂しいと思えてきた。

 買い物が便利なのは良いが、ネットを介して無人でことを済ますばかりでは味気ない。もっと商人と顧客が、というか人と人との温もりが感じられる取引が行われた方が良いとも思った。と言っても、先週だって通販でゲームを取り寄せてすっかりこっちのサービスを楽しんでいるのではあるが……。ネットショッピングというのもこれはこれで楽しくてハマる。

 

 なんにせよ楽しくオタッキーなマイライフを続けるだけだ。

 

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五感では見えない世界「シックス・センス」

シックス・センス」は、1999年に公開されたアメリカ映画。

 

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 幽霊が見える少年コール、そんなコールを孤独から救うために寄り添う小児精神科医マルコムの二人を中心にして、人の五感では到達出来ない第六感で見る世界が展開する。

 

 序盤では、視聴者にもはっきりと見えないコールの見ている世界の謎を追うミステリー要素があり、中盤ではガッツリとは言わないものの、油断すればかなりヒヤリとくるホラー展開となる。そして最後には、コールが自分の特異体質を母に告げることで親子の溝が埋まり、心温まる家族愛要素を感じることが出来る。

 

 序盤にマルコムの元患者のヴィンセントがマルコム家を襲撃しに来る。ここでヴィンセントはマルコムが過去に救えなかった患者であると分かるが、ヴィンセントのことをもっと掘り下げて欲しかった。パンイチで銃を打ち込んでくるヴィンセントも人間なのに不気味で怖かった。

 

 コールの見る死者の霊には一瞬ビックリする。

 少女の霊の魂を救うため、コールが少女の残したビデオを発見して彼女の父に渡すが、その内容がある意味一番ホラーだった。人体には毒となる洗剤を子供のメシに混ぜて、死を速めようとさせる母親の悪い一面が映っていたビデオの内容にはビックリ。貞子よりもこっちのが恐怖かもしれない。というかVHSテープを久しぶりに見た。99年だと円盤よりもまだこっちが主流だったかと懐かしくなる。それにしても少女の幽霊は気味が悪くて怖かった。

 

 コールを迎えに来る子役スターのガキが悪いガキだなって思った。コールの母親の前ではコールの親友の芝居をしているだけで、本当は友達ではないという設定は印象的だった。

 

 コールの祖母の霊の言葉を母親に告げると母が泣き出す後半シーンは良かった。母が墓前で言った自分を愛してくれたかという問いに祖母はもちろんと返していたという真実を知ればえぇ話やんけとしか思えない。私の母はまだ存命なので、この調子で母から愛される息子で居続けようと思った。

 

 この映画のスゴイのは、最後の最後で見せる逆転にある。長らく視聴者をミスリードさせておいて分かる真実が、実はマルコムが既に死んだ幽霊であったこと。

 幽霊が見えるというコールの言葉を外でもない幽霊のマルコムが最初は信じていなかった。そんなマルコムが実は幽霊だったとは予想出来なかった。思い返せば、先にコールが幽霊の中には自分が死んだことに気づいていない者がいるという情報を明かしていた。ヒントは出ていた。

 どうして嫁がマルコムのことを無視するのかという謎が後半で解ける。後半に気持ちよく伏線を回収に行くスタイルが良かった。真実が分かった時には「やられたぁ」と思った。

 嫁との愛の絆を確かなものにしてマルコムがあの世に行くのを見ると「ゴースト ニューヨークの幻」のオチを思い出した。

 

 謎で怖くて、最後には愛を感じるという複数ジャンルの合わさった良い作品だった。

 

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貧しき人々の悲哀のミステリー「飢餓海峡」

飢餓海峡」は、1965年に公開された日本映画。

 

 有名な映画なので以前から名前は知っていたが、見たこともなければ内容も知らなかった。そんな今作を2020年にもなってやっと視聴わけだが、これが大変面白かった。

 

 以前楽しんだ「宮本武蔵」シリーズの内田吐夢監督作品ということで、作りは素晴らしいものになっていた。

 

飢餓海峡

 

 まずはシナリオだけでも面白そうと思えるものだった。

 

内容

 物語は昭和22年の北海道の地からスタートする。

 台風によって連絡船が転覆し、多くの人間が命を落とす事件が起きる。それと同時期に、丘では質屋一家が殺害され、証拠隠滅のため質屋に放たれた火が街中を巻き込む大火事が起きる。

 

 連絡船の乗客の死体を引き上げると、乗客者リストにはいない者の死体まで上がり、死体の数が合わなくなる。引き取り人が来ない謎の死体が2つ残り、これが質屋を襲った三人組強盗の内の二人だと判明する。となると、残った一人が金欲しさに二人を殺して逃げ伸びたと推測され、北海道警察は残った一人の行方を追う。

 

 逃げ延びた男 犬飼は、北海道を脱して青森で娼婦の八重と一夜を共にし、彼女に大金を置いて姿を消す。警察が八重を訪ねてくるが、八重は犬飼を庇って真実を与えなかった。

 

 犬飼にもらった大金を手にした八重が東京に進出してから10年後、八重は犬飼そっくりの実業家 樽見京一郎の存在を知り彼の元を訪ねる。

 樽見は、自分と犬飼は似ているだけの別人だと言うが、八重はその嘘を見抜く。自分の過去を知る存在である八重をこのままにしておけない樽見は八重を殺してしまう。

 

 その後警察の執拗な捜査が入り、樽見の罪、人となりが明らかになる。

 逮捕するまでの過程で、貧しい生い立ちを持つ樽見人間性や心理が浮き彫りになってくる。

 

 八重を弔うため北海道の海に花を投げる時、樽見は警察の監視の目を盗み、海に身を投げて死す。

 

感想

 海と陸、同時期に起きた2つの事件の裏に暗躍する影の存在が浮き彫りになるとっかかりから心を掴むものがある。これは大ミステリーに膨らむであろう要素だと予想できる。

 

 犬飼改め樽見を演じた主演男優 三國連太郎の怪演が光っていた。最初はまるで浮浪者のような格好と髭面で来るのに、樽見京一郎として会社経営に成功してからは小綺麗にスーツで決めてくる。作中の前後で雰囲気が大きく異るのは印象的だった。

 供述が本当であれば、犬飼は巻き添えを食っただけで強盗事件の主犯ではないが、それでも大金を得たことにビビって最初の方はどこかおどおどしていた。しかし樽見として刑事から尋問を受けた時には、実にのらりくらりと上手いこと追撃を交わす不気味なまでの余裕を見せる。前後で芝居が大きく違うあたり、名優の腕がしっかり出ている。

 警察が樽見を尋問するシーンはリアルで迫力があり、緊張の一幕となっていた。

 

 中盤から登場する若手刑事の味村を演じた若き日の高倉健は男前だった。若い段階でも既に貫禄がある。  

 

 事件から10年経っても執念で犬飼を追った弓坂刑事も良い味を出していた。

 仕事に一生懸命で家庭を省みなかった弓坂刑事の子供は反抗期ぽくなっていたが、弓坂刑事が東京に行く時には長男が餞別として金をくれるシーンにはうるりと来た。

 

 監督、役者含め、作品に関わった人間の大半が既にこの世を後にしている。それだけ古い作品だから、北海道、青森、東京など各舞台のどこを見ても本当に日本なのかというくらい見覚えがない。作中の景色、世間の状態を見ても、これが戦後の日本なのかという学びが得られる。

 

 東京のシーンでは、バレたら警察にしょっぴかれるような闇の商売もやっていたり、ヤクザが徘徊したりでとにかく治安が悪い。怖い。

 この時代特有のものか、「赤線」「青戦」というワードが出てくる。色々アウトなお水商売を行っている地域を指すワードらしい。見ればみる程「時代だなぁ」と思える作品だ。以前「空手バカ一代」で、戦後間もない日本の街の治安の悪さを見たことがあるが、こんな感じなんだと思った。

 他にも「配給通帳」「闇米」などのワードもこの時代特有のものだった。

 

 八重と会社の付き人男性を殺した犬飼が、二人の死体を海に捨てに行く時に運転する古のマシン「オート三輪」が走る映像を初めて見た。タイムスリップグリコのおまけでしか見たことがないオート三輪の駆動している映像を見れたのにちょっと感動した。

 あとは北海道のシーンでSLが走っているのも今では見れないもので印象的だった。どちらも乗ったことも見たこともない乗り物だ。

 

 途中で話は5年後に飛び、次には10年後に飛ぶ。その感、娼婦の身でありながらも信心深い八重は、自分の人生を変えてくれた犬飼との出会いと彼から得たお金を大事にしていた。人生を変えるきっかけをくれた犬飼の爪をいつまでも取っておく点は実に甲斐甲斐しい。時には犬飼の爪で自分の頬を引っ掻いて悦に入るという特殊な一人プレイを見せたりもしたが、心は清い良い娘だった。

 

 10年間もの間、たった一人だけ自分の味方をしてくれた八重を勘違いから殺してしまう犬飼の運命が悲しいものだった。

 

 警察が犬飼の生い立ちを追う中で、貧しい暮らしをする人間の悲しみというものが見えてくる。善意ある貧しき人間の悲しき心理が見え隠れする点が物語に深みを与えている。

 10年もの間逃げた逃亡犯を追うミステリーもの要素に加え、貧しい人生を送ってきた者のヒューマンストーリーも見せる点には社会派な要素を見ることが出来る。

 

 証拠がないので、警察に出頭しようがしまいが自分の意見は誰にも信じてもらえないという犬飼の意見には考えさせられる。人が罪を犯かすか犯さないかの証明など、所詮人ごときには判断できないというトルストイの小説でも言われるようなことを思った。

 

 樽見が海に身を投げるラストシーンでは、警察の監視が甘いだろうと思った。

 

 最初と最後の海の波を映すシーンは印象的で、なにか心寂しくなるものだった。カメラワークが良い。

 回想シーンと現在を区別するために特殊効果を使用する演出も古い作品にしては凝った感じがして良かった。

 

 飢餓海峡とはそこら辺に見られるものという序盤のナレーションは印象的。

 貧しさが悲哀の物語を導いた原因の一つである。悲しい物語を見ると、我々なんて平和で良い時代に生まれたものだとも思えた。

 

 3時間少々ある長い作品だが、大変おもしろく勉強にもなった。日本映画を見てこんなに関心したのも久しぶりだ。昨今の日本映画に冷めていたものだから、すごく古いけどすごく良い作品を見て良い刺激をもらった。

 

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