こしのり漫遊記

どうも漫遊の民こしのりです。

戦争の裏と表が見える奥深さ「ファイナルファンタジータクティクス 獅子戦争」

ファイナルファンタジータクティクス 獅子戦争」は、2007年に発売されたPSPソフト。

 これより更に10年前に発売されたPSソフト「ファイナルファンタジータクティクス 」の移植作品である。移植に伴い、いくつかの追加要素が加えられた。

 

 半年程前、NHKの良い仕事の一つとして数えられる「ファイナルファンタジー」の特集番組が放送され、それを見て初めて存在を知った。先にスーファミの「タクティクスオウガ」という本作と少しばかり関係性のあるゲームを遊んではまったことがあったので「ファイファンタクティクスオウガみたいなことやってる!こいつは面白そう!」と思った。いつかやろうやろうと思っていたのを今年7月後中旬からやっとスタートさせることが出来た。

 

 クソコロナの影響、そしてクソ暑い、というわけで例年の2倍外に出づらい夏休みを送っている。そんな自宅にこもりっきりの生活を少しだけ助けてくれるのが、ありがたいコロナ給付。10万円もあった分の数百円を使ってこのソフトを購入し、しっかり楽しんだ。コロナなんて来ないに越したことはなかったが、こうなったのを振り返ると、おかげ様で腰を据えてゲームを楽しめる充実の夏になったとも言える。まぁ何でも前向きに楽しくだな。

 

 というわけでコロナだろうが猛暑だろうが楽しく生きることを人生の最大最優先の目標にしている私が今回楽しんだ「ファイナルファンタジータクティクス 獅子戦争」の感想をつらつらと書いて行きたい。

 

ファイナルファンタジータクティクス 獅子戦争 - PSP

 

内容

 

 物語は獅子戦争という、中身を開いてみれば様々な人間の黒く醜い欲望が渦まく恐ろしい戦争を用いたものになっている。主人公青年ラムザは、この激闘の戦争時代を強く生き抜いていく。

 

 歴史学者アラズラムというおっさんの語りでゲームは始まる。この戦争は既に終わったものとなっており、我々プレイヤーはアラズラムと共に歴史を紐解くことで、物語の真実に迫っていくというテイストが取られている。

 

 表向きには戦争を終わらせた英雄は、主人公ラムザの親友であるディリータとなっている。逆にラムザは歴史的異端者として記録されている。我々プレイヤーは、ラムザを操って物語を進めて行き、彼がただ異端者として忌み嫌われるだけの男ではなく、真の英雄であるという真実を目の当たりにするのである。

 主人公なのに歴史に埋もれたダークヒーローのポジションなのが印象的。考え方によればラムザディリータのどちらもがヒーローにもダークヒーローにも見えてしまう。とにかく公に出来ない複雑な事情がつきまとう戦争だったのである。

 

 ファイナルファンタジーの名を冠しておきながら、この獅子戦争はファイナル感はありつつもファンタジー感が薄い。むしろリアル路線。リアルにありそうな黒々しい戦争の都合が詰まっている。強いファンタジー要素といえば、可愛いチョコボがこちらにも登場するのと聖石の力で敵の戦士がファンタジックな化け物へと変身することくらい。

 

 本作で扱う階級社会による人間の差別が横行した暗い世界観にはかなりのインパクトがあった。これを打倒するために剣を取る平民達の姿も多く描かれる。

 

 階級社会の弊害を受け、貴族階級のラムザと平民階級のディリータの友情に亀裂が生じる序盤展開から既にお話が重々しいものになっている。

 

 貴族と平民の関係性を搾取する者とされる者として描いてるのがよく分かる。恐ろしく愚かなことだが、これが人類の歴史の真実である。如実にその点の醜さが出るのが剣士アルガスの横行である。こいつは作中でもかなり上位のクズで、個人的には最も右のゲンコツを頬に食らわせたい人物だった。

 

 ディリータの妹ティータが逆賊に捕らえられて人質となった時、平民だから別に被害が出ても良いということで、ティータごと敵を討つことに待ったをかけなかったアルガスの行為は許せない。

 平民は貴族に支配されて当然であるという概念を掲げ、平民たちが人間の権利を訴えれば相手を家畜呼ばわりし「家畜に権利などない」という一言で相手の言葉を一蹴してしまう。このようにアルガス一人を見ても、汚れきった貴族の心が世に充満しているのが分かる。

 

 他にも戦争を影で操る悪い貴族連中や、教会一派の悪巧みが随所に見られる点は複雑にしてかなり重いストーリーでしかない。平和だったラムザ達4人の兄弟関係にも亀裂が生じ、多くのキャラクターが死ぬシリアス展開になっている。

 

 ファンタジーといっても従来の英雄譚とは異なり、かなり混み合った複雑な英雄誕生のお話になっている。なんといっても全クリまで進めた最後すら後味の悪い締めくくりなのが一番印象的だ。先に遊んだタクティクスオウガでもクリア時にD判定が出れば主人公が暗殺されるバッドエンドだったが、こちらもなかなか嫌なエンドを迎える。これだけ血を流して平和を目指した戦争を扱った作品で、しかも私など50時間程かけてプレイしたのだからスッキリ笑える大団円を迎えたかったぜ。

 

 というわけで重厚なストーリーには魅せられるものがある。ストーリーは暗いけど見ごたえがあって良いものだった。決して嫌いではない。

 

 血なまぐさい戦争を映すばかりで、その中に主人公のラブシーンもないのは寂しくもある。親友のディリータの方ならオヴェリア姫とちょっといい感じの流れもある。しかしこれも一時のものであった。

 

 ちなみに本作の推しヒロインはオヴェリア姫とそのお付の女騎士アグリアスだった。アグリアスが一番魅力的。中盤から最後までずっと出陣させたのがアグリアスである。アグリアスがいないと突破がかなり困難だったと想う。そのくらい強くて格好良いユニットだった。

 服装とか色合いの感じから先日見てはまったアニメ「プリコネ」のペコリーヌちゃんを思い出す。本作はキャラボイス無しだったが、凛々しいアグリアスが喋る時にはCV:茅野愛衣のつもりで妄想を楽しんでいた。イマジネーションは退屈を埋める、そして推しがいれば人生は楽しい、今作をプレイして改めて分かったことである。

 

 

ゲーム性

 

 ちゃんと全クリしたのだが、振り返って一番に言えることは「めっちゃムズかった」ということだ。タクティクスオウガも生ぬるいものではなかったが、こっちはもっと難しい。絶対に面白い一作だったのは確かだが、一筋縄では行かない。3面、4面くらいの早い段階で第一回目の足止めを食らった時には「あれ?こんなはずじゃなかった」と思い断念も考えた。ぶっちゃけ何回もギブアップの文字が脳裏に浮かぶことがあったが、それでも進めたくなる不思議な魅力を持つゲームだった。実際にプレイした連中もこれには共感してくれるだろう。

 

 ゲームをプレイしてまず想う難しい点が、こちらの出陣可能なユニット数が少ないこと。キャラはそこそこ登場するのに、基本5人しか出れない。対して敵は余裕でこっちの数を越えて出てくるので、単純に手数で圧倒される。ここは行動の高速化を可能とする「ヘイスト」「エール」などの力がないと切り抜けられない。かなり頭を使う。逆にこの少ない人数だからこそ緻密に戦略を立てることが必須となり、それゆえ真のタクティクスの面白みが分かるとも言える。でも素人にはやっぱりキツイと想う。

 

 一番手こずった箇所は、ヴィーグラフを追い詰めた後に聖石の力で変身するベリアル討伐エピソード。こいつもそうだが、聖石で変身するモンスター共は技がチートすぎてマックスのムカつきを与えてくれる。ベリアルにどうしても勝てず、ここで6時間くらい使った。簡単にクリアする者からするとバカ者扱いされる時間の使い方だ。渋々ネットで攻略方法を調べると、主人公の特技「エール」を使いまくって連続攻撃すればぬるいと分かった。この時、初めてエールの存在を知った。特に後半では主人公ラムザのみが持つスキル「エール」の恩恵に預かることとなる。エールがないとベリアルには一生勝てなかったと想う。

 

 セーブするタイミングによっては、後戻りしてレベル上げをすることが不可能となり、つまりは「積む」という残酷にして間抜けな最後も迎えかねない。重ねて言うが面白くて好きな作品だが決して優しくない。

 

 後半で仲間になるメリアドール、オルランドゥあたりがめっちゃ強くて、こいつら二人には大変助けられた。

 

 辛抱強い私ならこれくらい大丈夫の範疇だが、それでも一般的な目線から見てバトルのテンポがやや鈍い。魔法を発動したら処理落ちすることもある。もっとサクサク行けば良いのにと思う箇所もしばしばある。しかし映像は美しく、魔法などのエフェクトはお気に入りである。

 

 シリアスなエピソードやビジュアルを重視する一方、ユニットが死んだ時に響く間抜けなヤラれ声はおもしろ可愛くて良い。死んだ時の音はハマる。

 

 ジョブチェンジのシステムは面白い。気軽に楽しく転職が味わえるファイファンのジョブ要素は魅力的だ。ジョブは多数存在し、これを全て極めて行くのが楽しい。

 

 ジョブポイントを貯めるためには、普通に戦うだけでは効率が悪い。意図的に戦いを長引かせてちまちまとアクションを重ねてジョブポイントを貯める。「投石」で敵味方問わずの体力をちまちま削っていく、「ためる」「エール」を一生使い続けるなど、地味すぎて時には虚しくなる過程を経て貯めたジョブポイントは尊い。しかし、ジョブポイントが貯まるスピードとジョブスキル獲得に必要なポイント数のバランスが悪いと想う。一回のアクションでちょっとしか貯まらない割には、スキル取得にいるポイント数が高額すぎるだろうと想う。ジョブレベルがとっくにマックスに届いても、ポイントが貯まらないからジョブの技を全然覚えていないということがある。

 

 アイテム士で特訓しないとポーションなどの回復アイテムだって使えないのは厳しい。ポーションエーテルくらいは最初から誰にでも使える皆のアイテムであって欲しい。

 

 色々面倒ではあるものの、ジョブを解放する、スキルもたくさん習得するというやりこみ要素にはハマる。

 

  さっさとストーリーをクリアすればいいものを、こちらのやりこみ要素が楽しいためにかなりの時間を寄り道に使った。これはオウガバトルでも見られた現象である。主軸となる物語意外でもこうして楽しめるから本作は奥深い名作だと言えよう。

 

ファイナルファンタジータクティクス 獅子戦争 - PSP

ファイナルファンタジータクティクス 獅子戦争 - PSP

  • 発売日: 2007/05/10
  • メディア: Video Game
 

 

 難易度が高めだっただけに、クリア時に達成感を得られる名作だった。

 普通にRPGをする本来のファイファンよりもこっちの外伝作品の方が肌に合うな。 

 

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人生は輝いている「シャイン」

「シャイン」は、1996年に公開されたオーストラリア映画

 

 実在するピアノ弾きデイヴィッド・ヘルフゴットの半生を綴ったヒューマンドラマである。

 

 ピアノのことは素人なので彼のことは知らないままに視聴したが、なかなかの熱量で描かれる味わい深い作品だったので楽しめた。

 デイヴィッドを演じた役者は特訓を重ねて実際に自分で演奏しているという。すごい努力ではないかと評価出来る。

 

 様々感想が浮かぶものだったので、浮かんだままに色々書いていこう。

 

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 天才的ピアノ少年だったデイヴィッドは、大きくなると父の反対を押し切って留学し、更に腕を上げてコンクールで賞を取るようになる。成功だらけの人生かと思えば、ピアノコンクール終わりには倒れてしまい、それからは精神的におかしくなって精神病院に入ることになる。そこから少しずつピアノに触れ、ピアノ弾きとして再起するまでの物語が描かれる。

 

 なかなかにハードな人生を描いている。

 

 最初はすでに精神を病んでおかしなことを口にするようになったデイヴィッドの語りから始まる。「僕は猫だと思った」という何言ってんだが謎な語りから始まるので、一体どんな作品なんだと入り口に不穏なものを感じた。

 

 前半の見どころは父との戦いにある。父の存在感がなかなか強い作品になっている。強くなければ社会では生き残っていけないなど、様々な教訓をデイヴィッドに与えて育ててきた厳格な父である。父は確かにデイヴィッドを大事にしていたのだろうが、家族の平和な形が壊れることを危惧してデイヴィッドの留学にとにかく反対する。乗り越えて行く壁としてデイヴィッドが父とぶつかるシーンはシリアスだ。

 

 デイヴィッドがピアノで成功して新聞記事になれば、それをスクラップブックに閉じてにこやかに見返す父の姿は印象的だった。厳しい父だが息子への愛をたっぷり持った良い父に見えるのが良い。

 

 基本的には良い父だけど、ことごとく留学の話を握りつぶそうと行動する点には、やや狂気というか、DV気質をみることも出来る。強制収容所の関係で、父はかつての家族がバラバラになったことを経験してると語っている。家族がバラバラになる恐怖をよく知るからこそ、息子を他所の国にやるのが嫌で仕方なかったのだろう。この点が分かると、息子を縛り付けようと躍起になる父のことも悪くは言えない。他にも娘が男と会っていたらこれも看過しない点が怖い。

 

 結果的にデイヴィッドは家出というか、勘当の形で留学することになる。

 家を出ることは息子をやめることで、妹達は兄を失うことになる。他にも親を愛していないのかなどなど、父が息子を引き止めるために吐く言葉はどれも胸に痛く刺さるものだった。足止めの言葉としてこういうのを用いるのはちょっとずるい。デイヴィッドの留学で父と子の関係性に不和が生じる展開はキツイ。やや愛が重くはあったが憎めない父の姿が印象的だった。

 

 デイヴィッドが子供の頃から、父がとにかく弾かせたがるのがラフマニノフの「ピアノ協奏曲第3番」という曲。やはりこの手のことは素人なので知らないが、この曲名が出ただけでもよく知る者たちは思わず反応を示す。なぜかと言うと、めっちゃ難易度が高い一曲らしいからだ。

 

 留学先のロンドンで遂にデイヴィッドはこの難関に挑戦しコンクールで披露するまでに至る。レッスンはかなり厳しいものだった。ロンドンは相当寒いらしく、デイヴィッドが手袋をはめてピアノ練習するシーンが印象的だった。

 

 コンクールでラフマニノフを披露するシーンはすごい迫力だった。絶対にこれを弾くと疲れるということは伝わった。体力、精神を共に削るとんでもない曲だったようで、弾き終わったデイヴィッドが目を開けたまま倒れて気絶するシーンは怖かった。

 

 ここから回復すると精神を病んで精神病院送りになる。精神を削るくらいに厳しい難関だったラフマニノフの楽曲が恐ろしい。

 

 有名ピアニストが一転して精神病院送りになる展開は痛々しいが、病院に入ってからのデイヴィッドはおかしくなっても口数が多くてとりあえず明るいからまだ救いがあったと想う。

 

 精神を病んだ後に父がデイヴィッドに会いに来て、愛の深さを息子に伝えてくれるところにはグッとくる。色々あったけど、こんなに愛してくれる父なら良いではないか。

 

 こんな状態になっても出会いのチャンスがいくつかあり、デイヴィッドは六星占術で食っている女性と結婚する。六星占術の彼女が古臭いパソコンを使い、占いのソフトで相性診断するシーンが印象的だった。こんなのがあるんだと学びになる。

 

 最後には再びコンクールの舞台に立って優勝して涙するデイヴィッドの姿を映して物語は終わる。感激して泣いているデイヴィッドをの姿が良い。

 

 家族の問題を扱ったヒューマンドラマ展開と美しいピアノ演奏も楽しめる感動の一作だった。これを見てから私も父に更に優しくしようと思った。

 

 

 

 人生は輝いてる。

 

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パニック映画の始祖「ポセイドン・アドベンチャー」

ポセイドン・アドベンチャー」は、1972年に公開されたアメリカ映画。

 

 これよりも先輩作品があったのかどうか知らないが、とにかく私にとっては人生初のパニック作品である。まだ毛も生え揃わないくらいチビの時分にこいつをたまたまBSで見た時には、面白いし、怖いし、スリル満点だし、面白いしというわけで衝撃を受けた。

 

 数多の作品を日々視聴するのに追われる忙しいオタッキー生活の中で、同じ作品を擦って見ることはそうそうない。なにせ見たい作品の数が多く、いちいち過去を振り返っていたらすぐに未来がやって来てスケジュールが破裂してしまう。そんな感じで基本的にはどの作品も人生において一期一会のつもりで付き合っているのだが、この名作「ポセイドン・アドベンチャー」は珍しく例外となり、結局5年に一回くらいは復習したくなり、これまでに数回見ている。

 何度見ても色褪せない素敵な作品というのは、映画でもゲームでも絵画にでもいくつかあるものだ。本作がまさにそれであると言えよう。素晴らしい作品だ。

 

 先日BSで放送したのを約5年ぶりに視聴したところ、やはり面白くて感動した。こうも私の胸を熱くさせるとは「ポセイドン・アドベンチャー、侮れん」と改めて思った。

 

 船の上下がひっくり返って中にいる者たちが大変な目に合うという言葉にすれば簡単だが異常にも程がある状況には心惹かれるものがある。所詮私も日常生活の人、冷静沈着が売りな人間としてやっているため、パニックをこの身で味わうことだってない。だからこそ、そこを脱した非日常の世界に魅了されるだろう。この作品は怖いし、絶対に関わりたくない事件を扱っているのに魅力を感じて仕方がない。

 

 私はこの作品を見てから「船に乗るのは止そう」と想うようになった。それくらいに怖い。

 船がひっくり返る映画と言えばコレと「タイタニック」が有名。タイタニックの方もここがきっかけで楽しむことになった。

 

 船がひっくり返る点をはじめ、世界観が本作と似ていることから後にはスーパーファミコンソフトの「セプテントリオン」もプレイしたくらいこの映画にはまったものだ。こちらのセプテントリオンもその内レビューしたいところである。

 

 久しぶりに視聴した関係で本作のことを色々と調べたところ、実は「2」があったという。これは知らなかった。

 2006年にはCGをたっぷり使った本作のリメイク作品「ポセイドン」が登場し、こちらは楽しく拝見した。しかし、調べると最低リメイク賞という胸を張って良いのかどうか戸惑う変わった賞を取ったということが分かった。実際に見た私としては「そこまで悪いか?」って感じ。

 

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 とある大晦日、豪華客船ポセイドン号は転覆してしまう。船の上下がひっくり返る大事件の後、生き残った乗客達が必死で脱出する姿を描く大作パニック映画である。

 やはり大晦日は丘に、それも自宅にいるに限るという気づきも得られる作品である。

 

 ポセイドン号の航海の足並みは鈍く、このままでは予定が大幅にずれて会社に損害が出てしまう。そういった事情から船の責任者はスピードを上げろと命令するが、船長は老朽化が進んだポセイドン号でそんなことをするのは危険だと反論する。乗客達が船での生活をエンジョイする一方、序盤ではこんな感じでスタッフ達がピリつく空気の中ミーティングを行うシーンが描かれる。船長の意見は捻じ曲げられて船は加速することになり、案の定転覆する。改めて視聴すると、到着を焦った船の責任者のおっさんの判断が悪いと気づく。

 

 船員、乗客と混ざって宴を上げ、蛍の光を歌って新年のお祝いをしている時に船は転覆してしまう。楽しい宴が一気に地獄と化す瞬間は何度目の視聴でもやはり衝撃が走る。部屋が傾いて人が窓にダイブするシーンなんかは怖すぎる。

 

 今のようにCGに頼る、甘えるという策は取ることが出来ず、天地がひっくり返るシーンは必殺の特撮技術で見せている。流れ込む海水の恐怖もリアルに描写していて、これだけ古い映画だけど迫力はやはり衰えない。特撮好きとしてもイケる一作である。

 

 船がひっくり返っただけでも何人と死んでいる。さっきまで飯を食っていた机が天井にくっついているなんてのは異質な光景だ。途中で寄るトイレで便器が逆さまになっている光景はシュールだった。

 

 生き残った者達は、動かず広間で救助を待つ派、転覆した今となっては一番上階になる船底を目指して脱出する派で意見が分かれる。ここでどうするかが運命の分かれ目だな。

 極限状態のああいった場で、不良神父スコットのように活発に動ける者が我先に危険に突っ込んで死ぬか、安全に脱出できるかのどちらにもなれる。動かず人任せなのも不安だ。私ならどっち派になれるだろう、どっちが正しいのだろうと思わず考えてしまった。

 

 クリスマスツリーを橋にして生き残った10人だけは上を目指して動き始める。広間に残った者達は後に水責めにあって漏れなく死ぬ。

 スコット神父は神父でありながら神が何でも救ってくれることを認めず、祈っても何をしても自ら考えて行動しない者に未来はないといった教会内では新進気鋭の価値観を持っている。ここでの脱出派メンバーと救助を待つだけのメンバーの運命の分かれ目が、スコットの価値観とマッチしているのが良いではないか。信じるだけでは足らず、行動した者のみが未来を勝ち取るという宗教的な意見も見える第一の見どころがここにある。

 

 スコットがあれだけクリスマスツリーを登って上に来ることを勧めても断った連中達も、フロアが浸水すれば慌ててツリーを登ろうとする。焦らず一人ずつ登れとスコットが言っても、皆が我先に助かりたいと思っているので一気に駆け上ってくる。だからツリーは倒れて誰も上がれず死んでしまう。このシーンには芥川龍之介の「蜘蛛の糸」の教訓を思い出した。

 

 スコット以外のメンバーは中年男女、年寄り夫婦、ガキも男女いて、あらゆる年齢層が揃っている。これだから面白みがあった。ガキや老人が上下ひっくり返った状態で船の上を目指すのは明らかに困難なことである。全員がスコットみたく丈夫な男ならかなり楽にいけるところを、色んな条件のメンバーがいることで脱出の難易度が上がる。個性、境遇が異なる10人のメンバーの間で展開する人間ドラマも見どころになっている。

 

 やはり初見から今日まで印象的なものとして記憶に残るのは、老婦人が水没した通路を泳ぎってから死亡するところと、スコット神父が空中でバルブを回して火の海に落ちる後半シーンである。ガキの頃にこのシーンを見たら怖くて記憶にも残る。

 

 狭いダクトを抜けるシーンでは太っている老婦人が足手まといになる。狭い所が怖いので私ならここは無理だと想うシーンである。

 元水泳選手なので水の中ではすばしっこい老婦人が、水路で溺れかけたスコットを助けてくれるシーンが良い。水の中ならすごい彼女が、泳ぎ切った後には心臓に負担が来たようで死んでしまう。ここが悲しくて泣ける。ひねくれ者のロゴも彼女の頑張りには賛辞を送るのがすばらしく感動する。

 孫に合うために海を越える旅に出たが、会えずに死んでしまうのが可哀想すぎる。

 女子供はなんだかんだで殺さないだろうという甘えがあったが、ひっくり返った船の中の残酷な空間ではそうはいかない。厳しい展開だったのが印象的である。

 

 天地がひっくり返って天井についているバルブを回すため、スコットがバルブに飛びついてぶら下がり、筋肉をフル回転させてバルブを回すシーンはすごい。こういう時に備えて力持ちになった方が良いとガキの頃には思った。

 空中でバルブを回しながら展開するスコットと神による問答は必見、必聴だ。深いことを言っている。生贄を欲する神に怒りを示すスコットの言葉には聞き入ってしまう。最後は力尽きて火の海に落ちて死ぬ。スコットの絶命シーンは色々とすごい。これを考えついたアイデア力が素晴らしい。

 

 あれだけたくさん人が乗っていて最終的に脱出できたのはたったの6人。救助隊が思わず「これだけ?」と言ってしまうのにも納得出来る。

 

 船が沈んで脱出するまでの約2時間の物語だが、危険を一つ突破したらすぐに次が来る感じで攻める怒涛のパニック展開で中だるみなく瞬時に終わった感じがした。

 

 2020年にもなってまた見るとは思わなかったが、やはりこの作品は素晴らしい。時間も丁度良い。

 

 令和に入っても結局名作は名作のまま我々の魂に刻まれる。22世紀にも残しておきたい名作の一本として、私はこの作品を推そう。

 

 

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向日葵は正義の花「車輪の国、向日葵の少女」

車輪の国、向日葵の少女」は、2005年に発売したPCゲームソフト。

 後に他ハードにも移植した。

 今回私がプレイしたのは2013年に発売したPSP版である。

 

 一発目に販売された物の対応ハードが子供でも手に取れるテレビゲーム機ではなくPCだったのには理由がある。そう、やや大人向けだったのだ。

 

 ガキでも手に取れるPSPソフト化したということは、何から何まで安全仕様になっているということである。というわけで、リラックスしてコロナの夜長に楽しんだ。

 

 今から15年も前の2005年のゲームなので、絵柄とかを見るとそこそこに時代を感じる。美少女ゲームではあるが、今日と15年前では同じ「萌え絵」でもテイストがいくらか違っている。絵のタッチに古臭さを感じるもののそれはそれで良さもあり、結果的には時を越えてキャラ絵が可愛いと言える。ヒロインキャラのビジュアルの良さはもちろん、個々のキャラ性もなかなかに突っ込んだものがあって魅力たっぷりである。美少女ゲームを謳う以上、顔面と内面を含めてキャラに「美」を得られなければお話にならない。その点ではこのゲームは及第点を余裕で突破している。

 

 テキストをぼけぇ~と眺めていてもヒロインズの可愛さは十分に伝わり癒やされる。だがこのゲームの真にすごいところはそのぼけぇ~(序盤だけ)と読み進めていたテキストが紡ぐ物語にある。

 

 物語のテーマとして「法」だとか「国家権力」「罪」「義務」を扱っている。それら理不尽にして最強の力よって、主人公達は閉鎖的な世界に押し付けられている。

 最強の正義として君臨する「国」のやり口が、正義を掲げる一方で悪魔的にも見えて来る。シニカルに国家権力を風刺する作風はピカイチなものであり、思わず共感してしまう。表向けには気持ちの良い文言で固められた国のルールに確かな悪を見た主人公少年やその周りを取り囲む少女達が、理不尽な世界の中で悩み苦しんで成長し、最後には自らを進化させて囚われの身から脱却する。田舎の片隅にある若い命と大国との間で展開する熱き魂の戦いに感動する一作だった。

 

 閉鎖された悪の世界を批判して自由と平和を謳うという点から、小林多喜二島崎藤村あたりを読んだような感じにもなる。時代が時代なら焚書扱いだな。美少女ゲーム界の自然主義文学、またはプロレタリア文学といった位置づけのとんでもない熱量の物語だった。

 

 大変面白く、ついつい夜更しして読み進めてしまうゲームだった。これだから活字を目で追うのは止められない。

 

 2020年を迎えて初めてプレイした15年前のゲームだが、こんなにすごいゲームがまだあったのかと思った。出会えてよかった。存在を知らずに死ねば損していた。これまでも文字だらけの中に可愛い女子が出て来るという似たようなタイプのゲームはたくさんプレイしてきたが、名作はまだ埋まっていた。車輪の国、侮れんと思った。この話を書いた人がすごすぎる。

 世界の理不尽さの中で戦う主人公の物語を描く主軸はもちろん、ヒロイン達個々のエピソードも素晴らしかった。

 

 役者の芝居は全部見たい、聴きたいということで、セリフは一切飛ばさずプレイした。全てのエンディングを出すまで約47時間もかかった。かなり長い。UMDなんて小さな円盤にここまで大量のテキストやイラストデータが収まるのだと改めて感心したぜ。PSPは我が家ではまだまだ現役である。

 

 

車輪の国、向日葵の少女(通常版) - PSP

 

 物語の舞台は日本っぽいけど、この世のどこでもない世界である。

 懐かしの片田舎感漂う地には、タイトルにもある美しきヒマワリが咲き誇っている。ヒマワリは作品の象徴にもなっている。

 

 主人公少年 森田賢一は、SF小説とお姉ちゃんが大好きなクールガイ。そしてハードMである。気が合いそうだぜ。

 この手のお話ではありがちなウィットに富んだコミュ力高めの楽しい男だが、エッチなノリはダメというのがちょっと可愛い。

 

 日本は彼が愛読するSF小説の中の世界に設定されている。

 

 作品世界では犯罪者に対する処罰がとにかく細分化されていて、罪を犯した者はきつい義務を追うことになる。その義務の種類がいろいろありすぎる点が興味深い。

 

 日本では罪を犯せば「牢屋にぶち込む」「死刑」「金の力で罪を逃れる」、ざっくりといえばこの3つのルートで事が済むが、この世界ではそう簡単には行かない。交通事故を起こした者は一生車に乗れない義務、子育てで問題を起こせば一生子を産めない義務が発生したりする。

 何かやらかしても簡単に牢屋行きにはならず、義務を与えた状態で罪を犯した者は一旦野に放たれる。その後の生活の中で義務による不自由を感じることで更生に繋げるという変わった仕組みになっている。

 

 厳しいと言えばそうだが、簡単に牢屋にぶちこんで「生きているだけ」の生活を強いたり、さっくり死刑にするのと比べると、罪人相手にも時間を割いてしっかり更生プログラムを組んでくれるのはある意味では最後の優しさとも思える。

 

 7年前には政府に反逆した者達による内乱が勃発した、街に関所が設けられていて簡単には遠出できず、無理に突破すれば銃殺もあるなど物騒な世界設定になっている。割と簡単に銃殺にGOを出す過激な政府方針になっていて、相手が未成年でも銃殺の指示が出るシーンもあった。

 

 犯罪者を監督して更生させる者を特別高等人と呼び、主人公は特別高等人になるための最終試験を受けに田舎街にやって来る。そこで義務を追う可愛い女子三人を更生に導くことで物語は大きく動き出す。導入からなかなか興味を引く要素が散らばっている。

 

 この特別高等人認定試験はものすごく厳しく、政府の役人でも最上クラスのお偉いポジションになっている。試験の途中で死者もザラにでると言う。森田賢一と共に最終試験まで残った南雲えりというヒロインは、待ち合わせに遅刻したからということで、ゲームがスタートしていきなり試験官に撃ち殺される。怖すぎる。すぐ死んだけど南雲えりは可愛いお姉さんだった。

 

 南雲を撃ち殺したのが賢一の上司の法月正臣であり、こいつがラスボスとなる。国の定めた正義を重んじる表向きには正しい人間に見えるのだが、これが歪んで見えるのが興味深い。

 一貫して冷徹な法月の態度にはただただ恐怖と人間の冷たさを覚え、あとは腹が立つ。逃げ場の無い理詰めでガキを追い詰めるという嫌なお説教をするタイプの先生みたいで嫌い。めちゃくちゃ怖い。

 賢一のことも、その姉のことも杖で殴るのは許せない。人の精神を読んでは人心掌握術にかける様がすごく悪い。

 

 テロップに法月役は「さとう雅義」とあるが、どう見ても聴いても若本規夫の声である。そんな若本規夫に酷似した冷たい演技に注目できる。嫌味ったらしいけどこれはこれで魅力的なキャラクターで良かった。

 

「1日が12時間しかないない」「大人になれない」「恋をしてはいけない」という言葉だけ見れば「どういうこと?」となる不思議な義務を持つ少女達を順番に監督することになる。

 

 うら若き乙女の監督につくのが年の近い男というのは色々問題があると心配するのが普通だろう。でも、被更生人にはプライバシーの厚い保護はない。特別高等人は、被更生人を更生するためであれば少々のプライバシーを侵害することが許され、必要とあれば体罰も許される。監視をより強めないといけない義務を持つ者であれば、トイレや風呂まで監督することになる。相手が女子と限定すればこれはちょっと良いではないか。賢一も基本的には同じ家に寝泊まりして少女達を監督している。

 

 主人公が監督したのは何れも可愛いJKだから良かったが、これが清潔感の無いもっさい無職のおっさんだったとしても同じように監督するのだからたまったものではない、という萎えることも想像してしまった。賢一の上司の法月ならおっさんを監督したこともあったのだろう。そんなことを考えるとププッと笑えてくる。

 

 三人のヒロインそれぞれの物語はなかなかに長い。だからこそキャラ性を十分に掘り下げ、魅力がしっかり伝わるものになっている。これだけ長く語られるヒロインの物語をたどっていけば結局皆好きになる。

 

 三人それぞれが義務を追い、更生に迫る中で人間的に大きく成長するのが見られるのが良い。もちろん監督者の森田賢一も、各ヒロインと触れ合う中で人間の本質と強さを見て成長する。

 

 

ヒロインを振り返りたい

 

 なんだかんだ言っても一番楽しいのはヒロインとの時間にある。

 

 罪を追った被更生人なのだから、美少女といえど苦痛を与えられるのは避けて通れない。どのヒロインにも、見ていて可哀想になるかなりつらい試練が用意されている。

 

 綺麗で可愛いだけの世界ではなく、苦しめられ、追い込まれて限界に達した人間がいかに脆く、弱く、醜くいのかを見せるシリアスな点も描いているのが印象的である。

 

 ヒロインたちが更生に失敗したバッドエンドも用意されているが、こちらが結構酷い。最悪人死も出て後味が悪い。

 

 可愛いヒロイン達の心理面に突っ込んだ底の世界までを裸にする展開からは目が離せない。 

 

 というわけでヒロインを振り返ろう。 

 

 

三ツ廣さち

 

 めっちゃ可愛い。

 

 賢一が最初に監督した美少女である。

 巨乳の赤髪ポニテで元気なギャルといった感じ。明るくてノリが良い。

 

 日々の起床時には「今日もピリッと頑張るぞ」みたいな元気系ギャル特有の言葉選びによう決まり文句がある。これも可愛い。

 

 忘れもしない例のお姉ちゃんばっかり出てくるゲームヒロインの柊高嶺と声が同じなので懐かしくなる。

 

 借金をしているが、それを返すためにまともに働くことを拒否し、家ではパソコンで為替とかをやっている。若くしてネットギャンブルまで手を出しているので田舎では進んだギャルかもしれない。

 

 昔見た離れ島の監獄映画「パピヨン」の劇中で、時間を無駄にするのは大罪であるというセリフが出てきたが、さちの罪はそのまんまで、働けば良いものを自堕落に過ごして無駄にしたからペナルティで24時間の内の半分を奪われることになる。怖い。

 

 時間がくれば強制的に活動停止する薬を飲まされ、12時間止まったままになる。でも睡眠ではないので体力は回復せず、睡眠は残った12時間でまた取らないと行けない。自由時間がなさすぎてかなり恐ろしい義務になっていると想う。我々のようにあれもしたいこれもしたいのオタクであれば、「なんで一日が24時間なんだ。2倍でも3倍でも欲しいぜ」とか言ってるのが半分になるのだから怖すぎる。

 

 その昔には絵のコンクールで優勝したこともあるさちだが、謂れのない非難を受けて筆を置くことになった。

 

 褐色肌に赤き瞳がキュートな移民のロリヒロインのまなを拾って来て勝手に妹にしている。

 最初こそ「なんだこのチビは?ロリはお呼びでないんだよ!」とか思っていたが、さちの物語の割と序盤でその無礼な意見も撤回された。攻略対象ではないサブヒロインだがまなもめっちゃ可愛いので癒やされる。語尾に「~だよぅ」が来がち。このガキ臭い喋りの演技も素晴らしい。演じた女優にも拍手である。

 

 お姉ちゃんは絶対にすごい絵かきになれる、というまなの真っ直ぐな期待が逆にプレッシャーになってなかなか絵をかけないさちだが、まながどこぞの王国に買われて連れて行かれるとなった時には本気になる。更なる大金を積んでまなを買い戻す、そのためには素晴らしい絵を書いて売るしかない、という流れでさちの絵描き魂と姉妹愛に火がつく。

 人買いの闇商売ルートがあるなどの物騒な設定も印象的だった。

 

 血の繋がりを越えての姉妹愛に癒やされるし泣かされる。

 

 絶対に絵を仕上げてまなを取り戻す展開になると思いきや、ストーリーは厳しいもので、結果的にまなは連れて行かれてしまう。キツイな。

 

 さちルートのエンディングで大きくなったまなと再会を果たすシーンで再び泣かされてしまった。

 

 

大音灯花

 めっちゃ可愛い。

 

 クラスの委員長だけど委員長キャラにはしっかり者要素がやや足りないドジ。しっかり者に見れて結構抜けているところがある愛されキャラ。すぐ怒るツンデレ枠ヒロインだが、本当はとっても優しい。マンガ、菓子、プロレス、お笑いなどが趣味という点から大衆じみた感じがするのが可愛いヒロイン。とにかくいいヤツであることは確か。

 

 人前では賢一にツンツンしているが、実は一番攻略が簡単かもしれない。こちらに心を開いてからというもの、二人に切りになるとめっちゃ甘えて来る。さちも結構そうだったけど、こっちはもっとデレるので、思わず頬も緩むというもの。

 

 頬を赤らめて「けんいちぃ~」とか呼ばれるのにはヤラれる。残念なことに私の名は「けんいち」ではないが、プレイヤーの中に「けんいち」の名を持つ者がいればきっと嬉しいだろう。

 灯花とのイチャつきシーンは平和で癒やされる。

 

 PSPの画面は意外にも反射率が高く、真っ黒に見えても鏡として行けるくらいに自分の顔がよく写る。灯花がデレて、その後次の画面に移り変わるためフェードアウトした時には自分のニヤケ面が画面にはっきり写っていた。灯花ルートではそんな個人的思い出がある。自他共にクールガイと認められている私をもデレさすとんでもないヒロインが大音灯花だった。

 

 顔の丸っこい感じがキュートで、パッと見てすぐに「涼宮ハルヒ」っぽいと思って気に入った。そう言えば学校の制服もハルヒの学校ポイ。これといって派手な感じがないスタンダートに見えて、その実そこらの学校では見ないセーラー服なんだよな。

 

 追い込まれた際には、背負った義務のせいで自主性の取れた行動が出来ない人間的な脆さが分かる。

 

 親の言うことには絶対服従の通称大人になれない義務を負っている。高校生にもなって門限、勉強の時間、飯の時間、朝はさっさと起きてラジオ体操をしてこいなどなどいろいろなことを徹底して管理されている。ストレスでハゲるか家出するかしそう。実際に一度は逃亡して家出娘になる。

 

 灯花単体の問題ではなく、その親の京子も子供の向き合い方に不得手な経験値の少ない母として描かれ、家庭まるごとなおかしな家庭問題を扱っているのが興味深い。

  

 灯花ルートではぶっ飛んで荒唐無稽な家庭問題が描かれているが、いくつかは現実にもかする部分があるので、家庭問題に焦点を当てた社会派エピソードだったと想う。

 

 幼い頃に灯花がキッチンに出入りして大きな火傷を負ったために家庭のキッチンは封鎖状態にあり、親も子も一切料理をしない。食い物はコンビニ飯で、足りない栄養はサプリメントで補うという設定は目立って変。一軒家に母子が暮らしながらまともな食卓風景が拝めないという歪極まりない家庭風景が展開する。祖母、あるいは母の飯が大好きで、それをかっ喰らって今日の健康な体と心を会得した私としては、こんなおかしなことってある?って感じになった。

 

 かなり奥深い闇が見える家庭エピソードには引き込まれるものがあった。京子は灯花を預かった身で実は伯母である。途中には本当の両親から一緒に暮らそうと誘いがあり、どっちの親につくかで揺れる灯花の心をリアルに表現しているのも見どころだった。

 

 親の京子の方にも、親としての義務を全う出来るかという母親の適性検査が用意されていたりする。政府が主催で親の親たる能力を見極めるというかなりすごいことをやってのける。ただ産んだ、育てたのみでは親は名乗れないのである。

 

 それにしても京子さんもかなりイケイケヒロインなので攻略対象にしたいところだった。京子は賢一や灯花の担任教師で、最初に登場した時には母でなく姉だと思った。賢一が担当した被更生人の中では灯花が一番ちんちくりんだが、京子さんはちゃんとおっぱいがあるので未来には期待出来る。

 

 母子そろっての怒った時の口癖「ぶっこぉすぞ!」が可愛い。ぶっ殺すぞと言いたいのだが、なぜかこれを言う時は舌足らずになるのが面白い。大音親子のキャラ性を際立たせるこのポイントはバカっぽくて好き。

 

 

日向夏

 

 めっちゃ可愛い。

 

 地球最終防衛ラインの異名を持つあのお姉ちゃんと同じ名前だから嬉しい。

 

 これだけ罪を追求することに腰を入れる政府でも根っこは悪の精神に蝕まれている。完全に冤罪なのだが、夏咲は男をたぶらかす悪しき女として恋愛出来ない義務を負っている。金持ちの権力者によって罪を押し付けられた形になっていて、ここに結局は権力者が都合よく正義のルールを書き換えているという汚れた部分が現れている。

 不当な扱いを受ける夏咲を救うため、賢一達が本格的に政府と戦う展開となる夏咲ルートが本番になる。

  

 こいつが一番心を病んでいて手をつけ辛い。

 小さい頃は明るく元気な子で賢一の憧れの少女だったが、再会してみると対人恐怖症みたくなっていて暗いコミュ症になっている。

 

 序盤は不思議なことに夏咲との会話が全く噛み合わず、雑談すら成立しない。コミカルに描いてはいるが、ここまでとなると異常である。

 

 男子との接触を禁止された身となり、上目使いなど男の恋心をくすぐるアクションも一切禁止されている。これまたおかしな世界に生きるおかしなヒロイン設定となっていてインパクトがある。しかし夏咲の上目使いならきっとときめいてしまうだろう。これを封じた担当者は色々と分かっている。

 

 散歩や日向ぼっこが趣味。落ち着くからということで渦を見るのが好きなのがちょっと面白い。ラーメンに浮く美味しいナルトはもちろん、鍋の中身をかき混ぜてオリジナルの渦を作っても反応を示すのが面白い。影のある暗いヒロインと思ったら意外にもふざけた特性があるからツボる。

 

 主人公のことを「けんちゃん」呼びするのにときめく。

 辛い目にあって色々おかしいことになっていたヒロインだけど、最後には昔のように明るい笑顔を取り戻して安心する。

 

 ひまわり畑に皆で集まって写真を取るラストで、夏咲が元気に笑っているのが見れた時は本当に良かったと思えた。

 

 

樋口璃々子

 

 めっちゃ可愛い。

 

 第4のヒロインで賢一のお姉ちゃんである。ややチビに見えないこともないが、やはりお姉ちゃんだけあって他のヒロインとは一味違った色気、いやエロさがあって良かった。

 

 璃々子は賢一の回想には度々登場するが、本編ではかなり後半で登場する。で、その登場の仕方がなかなかインパクトがあった。

 賢一が3人のヒロインとよろしくやっている本筋のどこにもいないようで実はずっといたというフェイクをかますのがこの璃々子お姉さまで、この仕掛にはビックリした。これも一種のミスリードなのか。璃々子に関するトリックが分かった時にはプレイヤーの皆さんはきっと驚いただろう。

 

 極刑を負った身であるが、この世界の極刑が異質なものなのも特徴的な点だった。さっくり殺すよりもある意味もっと酷いもので、他人から認識されないという特殊な義務を負っている。璃々子の存在は誰からも認められず、他の者は見えても認識していはいけない。存在を認めた者も処罰が下るということになっている。おかしな話だが、要は国民全体まるごとが璃々子をシカトすることを強制されているということ。政府公認の世界一のいじめ行為である。暴言を吐く、暴力を食らわす対象にすらならず、この世にいない者として扱われる刑であるからある意味最も残酷で冷たい扱いだと思える。

 

 

 賢一はとにかく独り言が多く、「あんた」呼びでプレイヤーに語りかける妙な喋りを随所で見せる。この奇行のカラクリは璃々子登場によって解ける。この仕掛は巧妙ですごい。

 

 そんな色々とおいしいポジションでもある重要人物の璃々子ももちろん可愛いヒロインでお姉さんながら攻略ヒロインに入っている。賢一の父親は革命家にして女たらしなので、璃々子と賢一は腹違いの姉弟である。だからセーフなのである。

 

 賢一をハードMへと導く手順を敷いたのは外でもない璃々子お姉様で、幼い賢一をしっかりそっち方面にはめ込む手ほどきをしてくれる。ロウソクで攻めてくるシーンにはドキリとしたぜ。

 賢一だけでなく、灯花を虐めることにも興奮するかなり愉快なお姉さんでハマる。

 

 後半では牢屋に打ち込まれ、法月のおっさんに杖で殴られる。殴られる璃々子を見るのが辛くてあのおっさんマジ許せんと思った。

 

 賢一と璃々子の父が革命を起こしたことで、その子供達も罪に問われることになる。この作品における奇抜な罪のルールとして上げられるのが「連座制」である。犯罪の実行とは何も関係なくとも、犯罪を行った者の家族であれば同じように罰が下るという恐ろしいルールである。これは造語でなく、実際にもあるとか。革命家のオヤジのせいで子供達もかなり厳しく罰せられるという設定は厳しく印象的なものだった。日本の普通の犯罪でもこれが適用されたらたまったものではない。

 

 

雑賀みぃな

 

 めっちゃ可愛い。

 

 賢一の物語である本編クリア後にプレイできる番外編に登場するヒロインである。ソフトのジャケットに写っているけどクリアまで進めてもずっと出てこないから「結局誰だったんだ、この女は?」と思っていたらまさかの別の話のヒロインだった。

 

 こちらの番外編はあの怖いおっさんの法月が若かりし頃のお話で、賢一はこの時まだ赤ん坊である。法月編となると「いいわ、いいわ、若本ボイスのおっさんの青春なんて別にいいわ」とかボヤいてスタートしたのだが、ヒロインのみぃなが可愛いし、若い頃の法月は別人みたいにイケメンで目の保養になった。そして何よりもシリアスで骨太な魅せる物語に大変引き込まれた。法月編も名作である。こちらには賢一の父の樋口三郎も登場し、かなり楽しかった。  

 

 で、肝心なメインヒロインのみぃなだが、まずとっても可愛らしい。名前に小さい「い」が入ってみぃなとかすごい。冨永みーな以来の名前だわと思った。

 

 神職の家系のお嬢様ということで大変礼儀正しい。しかし義務を背負っている以上、厄介な事情も持っている。

 誰にでも好かれる名門のお嬢様の態度を常に崩してはいけない「私生活が許されない義務」を負っている。かなりきつい罰となっている。

 お嬢様育ちだとそれはそれで大変だと思える。

 

 みぃなをめっちゃ虐める特別高等人のアリィも見た目は可愛いヒロインだがかなり怖かった。

 

 アリィの攻撃を受けながらも趣味の作詞をやめないみぃなの強さが見られる後半シーンはかなり衝撃的だった。

 

  

謎の男卯月セピア

 本作はシナリオでしっかり魅せるテイストを取り、キャラをバンバン出す派手さはない。少数ながらも登場キャラは魅力たっぷりに作り込まれているのが良い点である。

 

 楽しく頼れる主人公、それを取り囲む可愛いヒロイン達、敵だけど結局は憎め切れない法月正臣など皆愛しい名キャラ達だ。その中でも一際怪しげな光を放つ謎のキャラがいた。それが絵本作家の卯月セピアである。こいつがとにかく面白くて結局一番好きなキャラだった。美少女ゲームだけど、男性キャラのコイツが一番忘れないキャラだったので振り返りたい。

 

 主人公賢一のことを邪魔することもあれば、時には助けてもくれるおいしい立ち位置にあり、なんだかんだで最初から最後まで物語に顔を出してくるキャラだった。作者も卯月セピアが好きだったのではないかと思える。15年も前のゲームキャラだけど、私としてもここ最近で出会った中でこんなユニークなキャラはそうはいないと思えるくらいに気に入った。

 

 自称童話作家で卯月セピアはペンネームである。本名は磯野一朗太というらしい。白髪のイケメンキャラなのでこの名前は意外。見た目は格好良いのだけど絶対に気持ち悪いという特性が面白い。「ハルヒ」の小泉くんや「みなみけ」の保坂先輩的な感じがすると思った。奇しくもどちらも小野大輔が演じているではないか。

 

 キャラが喋ればフレームにキャラネームが表示されるのだが、そこでは一貫して卯月セピアの名前が表示される。しかし本編では誰一人卯月セピアと呼ばず、本名の「磯野」呼びにされている。まったく定着していないのにフレームは一生卯月セピアの表記で行くこの感じがウケる。

 

 卯月セピアの面白い点は、ハチャメチャなテンションと前後一貫性がまるでない喋りにある。妖精が見えてお話も出来るというKAT-TUNの上田君の初期設定を地で行く強烈なキャラ性も持っている。

 

 灯花ルートでは特に活躍が面白い。シリアスな場面をぶち壊して出てくるし、灯花の母の京子さんを実は狙っているという点も意外性があって面白い。

 

 賢一は戦争で活躍し、飛び級で学校を出て、若社長にもなった超人的男に描かれているが、こちらの卯月セピアもなかなかの超人的キャラで、ただの賑やかしではなく、賢一の物語には欠かせない重要人物となっている。こちらはこちらで変だけど主人公キャラでいけるかもしれない。

 

 賢一目線で展開する物語を読み進める途中、いつしか「速く卯月セピア出てこい」と彼の登場を心待ちにしている自分がいることに気づいた瞬間が良き思い出である。

 

 
まとめ

 ルールで塗り固められた世界に身を任せれば楽だ。しかしそれでは与えられるだけの考えることをしない人間になってしまう。当たり前の中に違和感を抱いた時、人の思考は活性化を迎えるのである。

 

 国の決めたルールに反しても、己が真に信ずる正義と自由を求めて戦う人物達の姿に熱いドラマを見た。

 

 賢一や義務を負った少女達が、悩み、苦しみの中で逃げずに考えて自己決定を果たす物語には等身大の人生を見ることが出来る。現実正解には、生きているのに死んでいるかのような者達だって少なくない数存在する。そこへ来ると本作のキャラクター達は、ゲームなんだけど、とにかくしっかり生きていると分かる。この点には大変好感を持てる。

 

 たかが美少女ゲームと侮れないすごい熱量のゲームだっだ。

 

 すごく面白かったぜ。

 

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 向日葵は正義の象徴だ。

 

 

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魔法から学べるリアルがある「おジャ魔女どれみ」

おジャ魔女どれみ」は、1999年2月から2000年1月まで放送した全51話のテレビアニメ。

 

 世紀末に迫る中、ある種独特な雰囲気に飲まれて行った我が国を盛り上げた魔法少女ものヒット作である。シリーズも長く続いたことで、割と最近の作品と思っていたら、無印はもう20年も前の作品になってしまった。当時これを見ていた幼児たちも既におっさん化を迎えているだろう。時が過ぎゆくのは速い。

 

 今年4月から憎きコロナのせいでかなり長い期間プリキュアの放送がストップした。大小問わず多くのお友達が暇な日曜朝を過ごすことになっただろう。私もその一人だ。プリキュアがなくて寂しい、ならばプリキュア枠の先輩シリーズとなったおジャ魔女を見よう。そんなわかりやすい過程を経て、令和時代にもなって20年前のヒット作を視聴した。古の作品の4:3の画角にはやはり安心するものがある。そんな4:3作品のおジャ魔女だが、古くともしっかり面白かった。

 

 奇しくも私がおジャ魔女を見始めたタイミングで、プリキュア最新話におジャ魔女がコラボ出演したことにも感動した。最新話では、劇中におジャ魔女どれみのポスターが出てきた。これはさすがに見落とさない。おジャ魔女20周年ということで、新作映画が決まったとも聞く。これには世紀末を越えて現在も生き残っている往年のファンが感動したことだろう。そんなわけでここへ来てまたおジャ魔女が熱い。

 

 おジャ魔女達が時を越えてハッピーラッキーを私に届けてくれたことに感動したので、感動したままに色々と感想を殴り書こうと思う。ちなみに「ハッピーラッキー皆にと~どけ」と次回予告で言うのがおジャ魔女のお約束だった。お気に入りフレーズである。

 

おジャ魔女どれみ(1) [DVD]

 

内容

 魔法使いに憧れる小学三年生の主人公春風どれみは、偶然にも本物の魔女のマジョリカに出会う。マジョリカは、人間界ではマキハタヤマリカと名乗ってMAHO堂という雑貨店的な店を営んでいた。豊かな妄想力と思い込みで、どれみはマジョリカが魔女だと見抜いてしまう。マジョリカは人間に正体がバレたため魔女ガエルの姿になってしまう。マジョリカを元の姿に戻すため、どれみは魔女見習いとしての修行を始めることになり、その過程でマジョリカの店の手伝いも行うことになる。

 

感想

 変身ヒロインもの、魔法少女ものに部類するのだろうが、本作はちょっと変わっている。別に敵と戦うわけでもなく、魔法といっても何でも楽ちんに行くわけではない。

 

 そこらの魔法少女ものとは違い、変身は謎の光に覆われたら次の瞬間に「ハイッ、完了!」になるのではなく、しっかり自分でお着替えしなければならない。しかも短い音楽が鳴っている内にお着替えをしないといけない。制限時間付きの変身システムの存在が面白い。序盤で分かる変身システムは印象的なものだった。

 ドジなどれみちゃんはもちろん最初から時間内にお着替えが出来ず、次いで魔女見習いの仲間入りを果たすはづきちゃんもメガネが引っかかって時間内に服が着られなかった。あいこちゃんは卒なくこなすエリートタイプで、初回からお着替えも成功、箒も気合ですぐに乗りこなしていた。

 個人的には、お着替え時に服の中に入った長い後ろ髪を手ではらって外に出すはづきちゃんの仕草が好き。ちょっとのアクションではあるが、マニア心をくすぐる変身シーンに仕上がっている。

 

 魔法といっても無尽蔵に使えるものではなく、アイテムに詰め込まれた魔法玉の数だけという使用制限がある。数が減れば問屋魔女のデラに売ってもらうなどして補充する必要がある。いつ現れるか分からないデラも楽しいネタキャラで、オペラ風に歌いながらやってくるのがウケる。というか魔女なのに問屋っていうのも結構ツッコみどころがある設定だな。

 魔女をやるにもお金がいるので結構シビアな世界である。だから一同はMAHO堂での仕事を頑張っている。子供ながらにどれみ達がプチ社会人経験もしているのが良いではないか。

 

 客員が魔法を使う時の詠唱が謎にして変だけど一生忘れないフレーズとなった。謎に気持ち良い各キャラの決めフレーズや、変身シーンのBGM、アイテムから鳴る音もキャッチーなものだった。

 

 魔女への道のりは遠く、一人前になるには度重なる試験を突破しなければならない。学校の試験のように優劣が出やすいのも特徴。おんぷちゃんはエリートで飛び級のごとくスイスイと先に進むし、はづき、あいこも順調に試験を進める。そんな中どれみちゃんときたら、元々ドジなせいもあるけど、物欲や食欲を煽るトラップに引っかかって落第することもある。最も突破が簡単で、まず不合格者が出ないとされる9級試験にも落ちていた。9級で落ちるヤツが出るのは何百年ぶりということで、魔女の世界では一躍有名人になっていた。ダメ過ぎて逆にすごいというわけで、魔女の世界の住人からサインをねだられることもあった。

 自称「世界一不幸な美少女」とかほざくし、お団子頭でこの成績だから主役のどれみの持つネタキャラ要素はかなり強烈である。面食いで好物がステーキという点から強めの肉食タイプとも言える。まだ幼稚園児の妹ぽっぷにめっちゃバカにされているのも面白い。

 

 見習い魔女試験には様々趣向を凝らした物があるが、たまに審査が緩い時もあった。試験官が早く旅行に行きたいからということでサックリ合格させて簡略化されるパターンもあった。たまにテキトーをやるんだよな。

 

 魔法を使うにもルールがあり、人心を操る目的での使用は禁じられている。人体の治癒、蘇生など命に干渉することもタブーとされ、これらに手を出せば使用者には痛い反動が帰ってくるようになっている。

 地道に行く人生から見ればチートスキルとも言える魔法だが、その中でもズルをして良い範囲がちゃんと決まっている点はシビアである。

 ある時期には、人生にもスーファミ同様リセットボタンがあるので死に瀕する、あるいはマジで死んだとしてもやり直しが効くと本気で考えている大きな子供の存在も確認されたことがあるという。子供は勘違いしやすいものなので、そこに釘を刺すかのようなこの設定は、リアルを教えるもので感心できる。

 

 見習い魔女をやる傍ら、どれみ達は学生として学校にも通わないと行けない。学校のシーンもしっかり描かれる。むしろこちらが本番。おジャ魔女シリーズは、魔女が使う魔法というファンタジー要素を前面に出しながらも、人生にはチートはないというリアル性を伝えている点で意外と魅せる骨太な人間ドラマになっている。社会の縮図である学校を描くシーンにその辺の事情が反映されている。

 どれみ、はづき、あいこら見習い魔女キャラ以外のクラスメイト達にも「ちびまる子ちゃん」のように皆名前があり、モブ扱いの者はいない。クラスメイト達客員にもお当番回があり、各キャラの持つキャラクター性に迫りつつ、思春期における悩みなどを掘っていく展開は大人にも響くものがある。

 

 おジャ魔女の中でははづきちゃんが可愛いので推しだが、高慢なお嬢様キャラのクラスメイト玉木麗香も推しだった。麗香は基本的にはどれみ達と敵対しているが、どれみちゃん同様なかなかのネタキャラで憎めない面白いキャラである。

 お嬢様の自分は親から叱られることがない、だから愛されていないのかもしれない、そんな風に愛の在り処に疑問を抱いてもがく麗香を描いたお当番回は子供心に響くものがある。誰でも一回くらいこういうことは考えると思う。

 

 裕福な家庭だけど、それだけに親の押しつけの教育や期待が重いと悩むはづきの物語、離婚して父子家庭のあいこが大阪の母を想う物語など、時には深めに家庭問題に切り込む展開もあるのが良かった。

 はづきちゃんとあいこちゃんは絶対ええ女になると想う。どれみは知らんけど。

 

 子供目線での物語作りを重視する作り手のこだわりが分かるものだった。

 プリキュアみたいに何かと戦うバトル展開ではなく、日常の中で人間的成長を迎える子どもたちを描いているのがハートフルで良い。もちろん私は美少女の肉弾戦も好みなので、プリキュアプリキュアで需要がありまくる。

 

 中盤から登場した子役スターにして見習い魔女のおんぷちゃんは、魔女の間でタブーとされる人心を操作する魔法を迷いなく使って来る。特殊なお守りでタブーを犯した反動を受けないことになっているけど、終盤ではお守りの効果が無くなり、痛いしっぺ返しとして、100年間眠ったままの呪いを受ける。

 最終回では魔女の資格を返上してでも、おんぷを呪いから解放すべく奔走するどれみ達が描かれる。魔法を捨てて友情を取る最終回展開には熱いものがある。魔法がなくとも自分達には願いを叶える力があると子供たちが悟る展開が良い。最終的には友情こそどんな魔法にも勝る大奇跡であると言ってるっぽい。とにかく子供達の友情が素晴らしい。

 

 魔法はあくまでも人生のアシストであり、決定打となるゴールを決めるのは個人の力なのだという教えが得られる良い作風だった。

 ファンタジーの華やかさと実地の大切さ、言い換えれば虚構と現実が、反発しあうことなく融和している。そこを丁度いい具合に映し出すおジャ魔女シリーズのストーリー展開には、時を越えて我が胸をノックするものがある。

 

 めっちゃ良かった。

 

 OP曲の「おジャ魔女カーニバル」もハマりこむスルメソングだ。

 ガキばかり出てくる本作の中では貴重な色っぽい枠キャラとなった関先生とゆき先生も良かったし、見習い魔女試験では、お手伝いのバイトとして出てくるお姉さんも可愛かった。関先生がだいぶエロいし格好良い女ライダーの一面もあるからツボる。悪さをしたら廊下に立たせる、校庭を走らせるというアナログな教育罰を与える関先生のやり口も懐かしい。

 

 そんなわけで、今一度おジャ魔女は人生に大切なことをたくさん教えてくれていると気づいた。ありがとうおジャ魔女。なんで「ジャ」の部分だけカタカナなのだろう。

 

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