「仮面ライダー響鬼」は、2005年1月から2006年1月まで放送された全48話の特撮テレビドラマ。
今年のまだ寒かった時期からYouTubeで配信されていたものが、この7月後半のクソ暑い時期に終わった。だいたい半年間で見てきた響鬼がとても良かった。全話無料で見せてくれた公式さんに感謝。
しかしまぁ暑くなったなぁ。クソ暑い中、団扇で己を仰ぎながらの最終回視聴となりました~。
そんな最終回も見終えたタイミングで色々振り返って熱い想いを書き殴りたい。というわけで今日はどっぷりと響鬼に浸かる1日にします。←勝手にしてくれ
48話という微妙に短いシリーズとなり、中身を見ても他シリーズとは一線を画す異色さが目立つ内容となっていた。こんなにヌルっと前作から方針を変えていたのか。この度しっかりと腰を据えて全話見てみると、これはこれで味わい深くて好きだなと気づく。
前作の「仮面ライダー剣」の後に見るとなんか雰囲気が違っているし、シリーズ全体で振り返っても異色な感じがする。これはアマゾンライダーにぶち当たったあの衝撃とちょっと似ているやつ。平成のアマゾンライダー的なポジを狙った作品だったとか。
こうして見てみると、これは歳を重ねて大人になるだけグッと心に響くエンタメショーになっていると分かる。
最初はしょっぱい少年でしかなかった明日夢くんが、ヒビキさんの生き様を見て、その中で語る言葉を受けて徐々に成長して行く。そんな成長物語は、実際にそのくらいガキだった時期を生きてから大人になった状態で見る方がリアルなものとしてグッと心に響くはず。
ヒビキさん、カッケェ~す。心身共に鍛えているお兄さんはやっぱり一味違いますわな。
姿は鬼になれど、心はそうなってはいけない。鬼と人間、それぞれを飼い慣らしてハイブリッドに生きる。それがヒビキさんの鬼ライフなんだなぁ。鬼と人に対するヒビキさんの向き合い方は格好良い。
単純に怪物をぶっ飛ばすエンタメ性での勝負ではなく、こいつは成長して行く人間ドラマを濃く描いた質高く、意識も高くな作風になっている。
はっきり言ってこいつの真の良さを知ろうって言うならキッズの人生経験値ならまだ早い。放送からこれだけ経った今になって見ることで、私の心にも真に良さが響いたよ。それが私の響きぃ~つってね。
シナリオテイストもそうだが、ちょっと変わった演出や「鬼」をテーマにした生々しさがあるライダーデザインなど、全体を見ても変わり種かつ尖り要素が目立つものだった。
明日夢くんが学校に登校するシーンを軽快なミュージカル調で描いた初回冒頭からも衝撃をぶっこんでくれた。一瞬これは何を見ているんだ?私が見ているのは確かに東映特撮だったよな?と混乱を呼んでくれた。
和テイストな世界観が重視された点も印象的。ライダーなんてのは、変身システムに超科学が投入された未来的SF性が濃く見えるのが常なるイメージだったのに、そこに来てこちらは「和」なので、所々にリアルさ、生っぽさ、地味さが見えた。
これは従来性に慣れた人間からすれば、新しくぶっこまれた「慣れない」要素となる。特にキッズ視聴者なら「なんだこれは?」と戸惑ったはず。ぶっちゃけ私も、ホントにコレはライダーなのか?と戸惑いを感じたものだ。
変身システムからして従来のものとは異なっている。音叉のアイテムで鬼に変身して戦うことになるので、いつもの変身ベルトとは異なっている。ライダーはベルトという定番設定の外を行く新機軸な感じは良いじゃないか。
ライダーだけど専用バイクをかっ飛ばさないのも珍しい。これは楽器奏者なのに、演奏と相性が悪いバイクの騒音が聴こえるとやはりノイジーだからという事からそうなったと聞く。確かに楽器の音もメインの要素だから、うるさいバイクは邪魔かもしれない。まぁバイクをかっ飛ばすのも好きなんだけどね。
そんなのだから、たまにヒビキさんがバイクに乗るにも特撮武装していない生身のバイクだし、ライダーとして鍛えていないことから運転も下手くそに描かれていた。
これには「え?仮面ライダーなのに運転ダメなの?」とツッコんじまった。イブキさんのバイクでヒビキさんが事故っているのはダメだろ。後輩相手でもマジ謝罪案件だぞ。
都会の喧騒を離れて森の中で戦う序盤展開にはアマゾン感があったような。いつ十面鬼が来るんだ?な感じにもちょっとだけなったかも。
敵の中には、クウガに出てきた未確認生命体のように、人間態になれて知能がある者もいる。そういうのは一部で、後は妖怪みたいなテイストの化け物がわんさかだった。CGで映した巨大な化け物を音撃バトルで打倒する大立ち回りアクションは爽快だった。
これら敵のテイストを見ても異質な感じがあった。
あっちとこっちの組織についても初回から丁寧に説明することがなかったような。序盤の方だと何をどうしてこうなった人達なんだ?って感じで結構謎。最初から丁寧に説明してくれるキャラ配置とかじゃないのね。
鬼の力を有する人間サイドの組織「猛士(たけし)」ってのがいて、そこと敵対する悪い化け物が「魔化魍(まかもう)」という。この2者間の壮絶な戦いを描くものである。で、その横で明日夢くんがしっかり成長していく人間ドラマも展開するわけだ。
普段は和菓子屋として機能している猛士が、いざとなればしっかり組織として機能しているのが印象的。表向きにはその感じゼロを装って実は秘密基地なこの感じは、昭和の頃からもオタクに受ける要素。
「甘味処 たちばな」が柴又にあるという設定も印象的。我々が楽しんだ他コンテンツ「男はつらいよ」でお馴染みの地である。まさかライダーでも柴又の地と触れ合えるとは思わなかった。
全体的に従来の仮面ライダーシリーズというよりも「牙狼〈GARO〉」「衝撃ゴウライガン!!」「大魔神カノン」あたりの深夜にやっていた特撮枠のノリだったような気がする。だからやっぱり異質な枠なんすよね。
本作最大の特徴にして、私が最も気に入った点は、コレが明日夢くん視点から見る奇跡の物語だったという点。
ライダーシリーズなら、主役ライダーから見た世界がメインにして唯一。それで行くのが普通だと皆が思うはず。だがこちらでは、ヒビキさんやイブキさんら猛士の物語よりも先行して、ただの中坊の明日夢少年の物語から事が始まって行く。
明日夢くん、ヒビキさんのダブル主人公ものとして見ることも出来る。そこはユニーク設定で良い。
この明日夢くんなのだが、私とは人間性も歩んだ青春の方向性も何も被っていないものだから、共感性の薄いキャラだと感じた。
最初らへんこそ「コイツ、しょっぱいガキだなぁ。いいからヒビキさんや仲間のキレイなお姉さん方のターンを寄越しなさいよ!」とかツッコんだものだ。それも段々と「なんか見れる!」となって来て、言葉通りにしっかりと見れる少年の青春になっていくのだ。
結果的に彼が好きです。非常に好感が持てる。ていうか学校の同級生の結構仲が良かったヤツが明日夢くん似だったかもと思い出す。
それから明日夢くんが使っているガラケーに注目。今の世の中だとガラケーもすっかり少数派だから、学生がガラケーを使っているのも懐かしの風景だよな。そんな私はまだガラケー使いをやっているんだけどね。その明日夢くんが使用していたガラケーなのだが、うちのお兄ちゃんが「あっ、俺もコレ持ってた」とコメントしていました。明日夢くんのガラケーはナイスです。
この作品は、彼を中央にセットしたことで良き物語として整ったといえよう。彼を邪魔者扱いした初見時の私に、今の私から説教をぶちこみたいくらいだ。
明日夢くんも男子にしては女子寄りな顔に見える。つうことはママ似なのね!とかアホい事を思いながら見ていたものだ。
その幼くママ似な感じ(←勝手な想像)だった彼も、物語完結に向けてどんどん逞しくなって行き、見た目も男前になって来る。このくらいの少年の成長は「もやしかよ!」てなくらい待ったがかからないからな。放送中の1年間でも明日夢くんが男になったと見える。同級生の京介のバカは成長が遅かったけど。
明日夢くんと同級生のひとみちゃん、あきらちゃんも初登場時にはガキっぽかったのが、段々と綺麗に見えて来て良かった。青春の成長なら女子の方が速く、変化が顕著に見えてくるからな。←個人の経験談からの意見です。
ヒビキさんが明日夢くんを気にかけて可愛がる。←この関係性がグッド。
明日夢くんは、初めてのタイプの大人の男との出会いに憧れと感動を抱くわけである。この2人の間に生まれる師弟関係に結構萌える。似たところでいうと(あくまで個人の感覚)ドラゴンボールの悟飯くんとピッコロさんの師弟関係に得た萌えと安堵感がそれかな。ていうか男同士に見る萌えな関係性とか、我ながらになんやねんソレ!ってなる。でもそういう感覚も確かにあるからね。
こういう師弟関係をベースにした成長する少年物語は、ライダーで見る分には絶対に珍しい。良いものだ。ライダー的金八要素もありな作風だった。
超越的な鬼のヒビキさんと等身大でしかないしょっぱい少年の明日夢くんというコンビ性が良かった。ライダーは超人だが、それを見ている我々は旅立ちを待つ段階の少年少女に過ぎない。明日夢くんは、我々視聴者と目線が重なる親和性あるキャラポジションだった。彼のことは見るほどに愛せる。よく見るとちゃんと男前なのもポイントなんだよな。
ひとみちゃん、あきらちゃんのダブルヒロインに挟まれる中での青春だから、何気にラブコメ主人公の立ち位置。そこは普通に美味しい。
明日夢くんの青春物語の所々に見る生っぽさも良いんだよな。
割と序盤で万引きクソガキを偶然発見してしまい、そのせいで彼も事件に巻き込まれてしまう。コレとかなんかリアルなんだよな。
少年視線で同じく少年の万引きを見てしまい、その結果色々と複雑な心境になり、ちょっと傷ついちゃう。これは分かるっちゃ分かる。万引きは問答無用でダメなことだけど、ダメな事をした見た人間を見てどう動けば良いかには、色々考えさせられるものがある。しかし万引きはしたこともないし見たこともないので、我が青春は平和だったなと振り返ってしまう今日このごろ。
部活で活躍出来ずに悩んだり、その先では将来の進路にも悩む。いちいち明日夢くんの物語は等身大の少年のそれだった。
ここのお母さんは明るく元気で生き様が格好良いシングルママ。タクシー会社で働く明日夢ママも好印象なキャラだった。
ママンとの関係は良好で家庭に不足はない。ないが、やはり段々気になるのは、いなくなったパパさんのこと。そのパパさんが気になることで明日夢くんが次なる行動を取るドラマにも心にグッとくるものがあった。ここもかなりリアルだな。
師弟関係に萌えて燃えるシリーズだったな。それはイブキとあきら、トドロキとザンキの関係性にも見える。
人なんてのは、最初はてんでダメなもの。独り立ちするには、先人たる二人目の協力が必須なのだ。人の成長は、やはり人が世話をしてこそ成される物だと改めて見えてきた。
人から教えを受けるには設けるターンが短めだったこの私だって、その数ターンは成長に必須だったわけだ。自分の人生と照らし合わせることでも、本作に見る師弟関係による人間ドラマの良さが分かってくる。
特に後半パートのトドロキに寄り添うザンキさんの師としての愛には泣かされた。
古傷を負ったことで変身に制限がかけられたガラスの戦士というザンキさんの設定は斬新だった。そこにいつまでも甘えるトドロキには「お前マジでしゃんとしろや!」と背中を叩きたい想いでいた。
トドロキは爽やかで可愛らしい今時珍しい少年らしさも持つお兄さんなのだが、ここぞって時にヘタれるのがいかん。日菜佳さんとのデートの際に次々と悪手を打つのには「マジでしょうがねぇヤツだな~」となる。あれは笑いました。
後半でザンキさんが逝ってしまう物語はシリアスだが、大変良い内容で感動した。鬼としてデビューしてもまだまだ精神的に小僧だったトドロキが、真に独り立ちする瞬間を描いたもので良かったっす。逝ってしまったザンキさんを偲んでトドロキがギターレクイエムを捧げる師弟のお別れシーンには泣いてしまった。
トドロキさんの顔に見覚えがあると思ったら、これの後のキバにも出ている人だった。そっちは覚えていた。こっちにも出ていたのか。
敵に負けたら変身が強制解除となり、その際には真っ裸になるのも本作ならではの衝撃設定。負傷したザンキさんのヌードシーンは伝説。結構前に「アメトーーク!」でライダー好き芸人が集まった際にも敗北ヌードシーンがピックアップされていた。芸人視点的にあそこは見逃せないポイントだったか。
これの珍しい点といえば、シフト制で化け物退治に出るという割としっかりした組織構造もそうだな。
あとは顔だけ変身解除のマスクオフがあるのも珍しい。ライダーは全身セットで変身&解除のイメージだからな。しっかりと「装着変身」なんて言葉が用いられたG3では見慣れたことだが、他のライダーだとマスクオフは珍しいかも。Xライダーも変身の過程で顔だけフリーの状態が見られたな。
後半からとにかく気になって無視できないキャラが追加される。それが明日夢くんの学校に転校してくる同級生の桐矢京介くん。コイツ、だいぶ面白いっす。
どんだけヘイト稼ぎが上手いんだってくらい、後から来たくせしてすごい勢いで嫌われ者言動に出ている。すごいなぁ、ここまで振り切ってクソキャラムーブを決め込むとか、一周して愛せる。京介は上質クソキャラだった。
すぐに気づいたけど、コイツ電王のユウトくんやないか。先に響鬼さんに鍛えられていたのか。コイツの暴れん坊ぶりがヤバいから、早く保護者のデネブくん来てぇ~ってなったものだ。未来を知っているからこそのツッコミです。
しかしこのクソキャラ売り込みの後に、よくライダー役でシリーズに帰って来れたなぁ。役者のことは関係ないんだけど、京介のキャラ性を思えばそこの出世は感慨深い。
明日夢くんはじめ、あきら、イブキさん、ヒビキさんにもウザさ爆発で噛みついて来る。トラウマが絡む生い立ちから、青春コンプレックスが捗っている点には同情の余地もある。でもね、あの暴れん坊な言動だったら2、3発くらい腹に食らっても不思議ないぞ。
自分はお買い得な人材だとヒビキ、イブキに嘘の売り込みをする、戦士を引退したあきらをディスる、明日夢くんから猛士のアイテムを盗む、明日夢くんのボランティア先のバネルシアターでひと暴れするなど、殴りたくなるターンが豊富でした。笑う。
鬼の修業をすると決めた際に学校を一回辞めている。その際には、学び舎の仲間たちに向けて、無意味な日々をだらだら過ごすことについて今一度考えろみたいな偉そうな事を言ったのにひと笑い。次に、調子こいた事を言って学業を疎かにしたことをヒビキさんに説教されて早々に復学を決めたのにもうひと笑いだった。この無駄な退学からの復学騒動にクソ笑った。ホント、どうしようもないヤツだな。
京介のクソキャラぶりが段々クセになってきて、最終的には愛せる。同窓会とかで楽しい振り返りネタになるであろうおもしろ同級生キャラに仕上がっていた。そこは良し。
こんなしょうもないヤツでも、最終回では明日夢くんと熱めの友情を重ねて鬼に変身出来ていた。これは公式さんの心が寛大。最後の最後で京介に美味しい所を用意してくれたんだな。変身出来て良かったな。
しかしこの京介くんは、放送当時に視聴者から一体どういった評価を取ったのだろうか。そこは気になる。
特撮オタク的に嬉しかった注目点は「変身忍者 嵐」とコラボっている企画があったこと。
朱鬼が神社から盗んで装備した鎧が変身忍者嵐 嵐まんまのデザインだったのは嬉しかった。嵐がこんな所にも出ていたのか。嵐放送から何年ぶりのテレビ出演だったのだろうか。響鬼に嵐がでていたとは知らなかった。同時期にYouTube配信していた凱武にはキカイダーが出てきたし、石ノ森ヒーローは歴史長く、幅広く色んなのがいるのだなと実感出来る。
朱鬼も当時としては珍しい女ライダーとして印象的な鬼だった。今だったら毎シリーズくらい女子も変身するけど、当時だとまだまだ定着していないものな。
最終回の終わり方も印象深い。
この手の正義と悪の聖戦を描くものなら悪を根絶して終わりそうなものだが、ここでは明日夢くんの青春の決着が一段落着いた地点をラストエピソードに置いている。あくまで明日夢くんの物語としては切り良く終わっているが、ヒビキさん達の戦いはまだまだ続いている状態のまま。敵ももちろん生き残って闇で蠢いている。
ていうか最終回になって初めてひとみちゃんを捕らえてなんか実験でも始めそうな感じだった敵の動きが気味が悪い。向こうもこれから新しい作戦に出るかってな感じになっていた。
この落ちを見るに、やはりこれは少年の成長物語が主軸の作品なのだなと分かる。明日夢くんは最終的に鬼にならないが、それでも人を助けるべく清く美しい自分の道を開拓して歩いて行く。そんな希望が見える最後は良かった。
少年よ、旅立つなら晴れたら日に胸を張って。←布施明が歌う主題歌「少年よ」の歌詞にもそうあるように、少年の大いなる志が見える良きラストだった。素晴らしきエンドだったよ。
それからやっぱり「少年よ」は名曲過ぎる。歌っている布施明氏もゲストで登場した。ヒビキさん達よりも偉い立場のうるさい先輩役で出てくる。あの暴れん坊な上司役も面白かった。
例え正義のおまわりさんであっても、調子こいた仕事をしていると張っ倒す。あのパワフルさは時と場合がマッチすれば欲しいものだが、基本的には厄介。それとやり過ぎたら公務執行妨害で連れて行かれるかも。これを見たおまわりさんは、調子こかずに誠意と正義を持って働くように!と気が引き締まることだろう。
というわけで作品に貢献したアシストマンの布施明氏にも拍手&バンザイです。「少年よ」めっちゃ聴いています。
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