こしのり漫遊記

どうも漫遊の民こしのりです。

SF青春群像劇「無限のリヴァイアス」

 「無限のリヴァイアス」は1999年10月~2000年3月までの間に放送した全26話のアニメである。

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 1999年と言えばノストラなんとかの大予言とかいうどっかのお蔵入り映画のタイトルと同じ名の事件で世は賑わい、そんな中でラルクが世の終わりの前の大サービスのごとくにアルバムを2枚同時リリースしたりして、とにかく色々と話題づくめな騒がしい時期であった。

 世界が終末を迎えると予想されていた7の月が特に何事も無く過ぎて迎えた同年10月に放送開始した本作のキャッチコピーは、そんな世相を反映したかのような強気なもので「俺達には救いなんていらない」であった。このキャッチコピーは印象的であった。

 

 この作品は個人的には抜群におもしろくてツボだったのだが、後半部分はかなり陰鬱で暴力的要素を含んだストーリーが展開する。正直子供にはショッキングな回もあるのでこれをよく夕方の6時に放送できたなと思う。今の世なら夕方の内容には相応しくないとされるだろうね。

 

 本作は宇宙船リヴァイアス号に乗った子供達だけで宇宙漂流をするお話である。乗り込んだ人数は約500人いる。別艦に救助を求めても何故か攻撃を受けテロリストの汚名を着せられることになる。何が何だかわからない内にも生き残るために子供だけで船を操縦士し戦い抜いていく。

 設定では「十五少年漂流記」、極限状態に陥った時の人物の心理的変化を描く点では「蠅の王」の要素を強く含んでいるように思われる。楳図かずお作の「漂流教室」を読んだ時と同様のショックを受けた作品でもある。とにかく漂流すると人間は碌なことにならない。

 

 登場人物は非常に多く、相葉昴治を主役に置いているが、様々な人物に焦点があてられそれら人物同士の交錯と心理描写を描く群像劇となっている。SF要素よりも人物の心理描写が密度の濃いものとなっている。

 相葉昴治役の白鳥哲の声って実際には絶対いなかったけどクラスにこんな声の奴いそう感があって親近感が湧く。好きな声だけど変わった声しているなと思う。

 

 キャラが多いので声優の兼ね役も多い。だいたいの人が2人以上を演じている。声優の演技が楽しめる作品でもあった。

 氷上恭子の演じた清楚系のヒロインのユイリィとカレンはどっちもお気に入りだった。ユイリィの存在はこの暗い作風に華を添える役に立ったと思う。

 

 幼い頃のとある事件で亀裂が生じた相葉兄弟の不仲問題に、これまた幼い頃の事件によって死に対して異常に感情的になるイクミのトラウマなどの人物の心理についての深くて重い設定が作品をより濃厚なストーリー性を帯びるものにしている。

 

 相葉兄弟のいざこざは本編通して発生し、弟の祐希に兄の昴治がボコられたり、罵声を浴びせられるのが忘れられない。祐希の荒れっぷりは怖かったよ。

 あと、全編通してとにかく昴治が色んな奴に殴られすぎ。可哀想。

 

 リヴァイアス号の中は大人抜きの子供だけの異質な社会が存在し、子供だけであっても一般社会を離れた独特のコミュニティが形成されていく。

 艦内で行った仕事の出来高がポイントされ反映され、そのポイントで食料品などを購入することができるまさに働かざる者食うべからずの制度が敷かれたりした。子供だけなのにこの実力主義の社会を構築するのは怖い。

 人が数人集まればかならず社会性が発生するのだと納得させられた作品でもある。

 

 最初は艦長として偉そうにしていたルクスンが皆の意見で艦長を降ろされ、次には腕っぷしに物を言わせてブルーが艦を支配し、また次にはとち狂って行き過ぎた圧制を敷いたイクミが主権を握るなど子供だけの社会でも政権交代のような画が見られるのが特徴的であった。

 

 異常時の閉鎖的空間内で極限状態に陥った登場人物達は常時では決して見せることの無かったはずであろう人の裏の顔を見せることになる。

 迫り来る不安とストレスやどうせ助からないという自暴自棄の念に駆られて艦内では暴力行為が横行するようもなる。ちょっとウザいけど明るくて可愛いヒロインであったこずえが暴力行為を受けて精神を病むエピソードにはショックを受けた。

 最初は仲良しだった人物同士が後半では仲違いしたり、相葉兄弟に関しては益々仲がこじれたりでとにかく艦内で揉めすぎ。

 

 本作で一番怖かったというか意外な点は最初は正統派ヒロインみたいに登場したファイナがだんだん怖くなってくる点であった。思えば初期の昴治との会話中に何だか宗教的な格言をちょいちょい言ったりするあたりで狂人の片鱗は覗いていたのだが、後半では昴治の想いがあおいの方に行ったことでヤンデレ化して更に怖い。「私を過去にする気?」のセリフは忘れられない。イクミと昴治とのいざこざに乗っかって最終的には昴治を殺そうとまでする。

 面倒くさい女を相手にすると当然面倒臭い問題が身に付きまとうので気をつけようと思った。

 そしてビックリなのがファイナの声が愛河里花子だという点。この人はうるさいガキかそうでなくてもうるさい何かを演じる役のイメージが染み付いている。で、このファイナという基本大人しくて見た目の可愛い女子の役をしているので意外すぎる。最初は声が誰だかわからなかった。兼ね役ではちゃんとうるさいガキの役もしているのでそっちの芝居を見て安心しました。

 あとファンディスクのキャスト座談会で愛河里花子がイクミを演じた関智一の芝居について「関君ってバカでエロと思ったらちゃんと芝居できるんだね」的なちょっぴりの揶揄を混ぜたお褒めの感想を言っていたのが面白かった。

 

  

  色々あった本編だが最終回の一話で救われたなと思う。

 皆助かって一度は艦を降りるが最終回ではほとんどの人物がなんだかんだでリヴァイアス号に再搭乗することになる。

 救助された後に多少のフィクションを加えた宇宙漂流記を出版して有名になったルクスンが最終回で再び艦長の座に戻るのが何か良かった。このルクスンは大好きな人物で漂流時の最後はブルーと共に勇敢に大人達に立ち向かって男前を上げている。多分一番おしいいキャラである。

 ニューハーフの彼女と添い遂げた真実の愛に生きる男チャーリーを描いた点も良かった。

 ルクスンとチャーリーが本編でずっと可哀想な扱いを受けていたがなんだかんだでおいしい。

 最終回ではっきりとは写らなかった祐希とブルーの決着のシーンも良かった。

 

 BD-BOXではDVDリリース当時にはまだ無かったオーディオコメンタリー新録されている。18年ぶりに本編を振り返る声優たちのコメントは貴重であった。これは聞く価値がある。

 

 

 明日が来ること、この作品を見た後にそのすばらしさを再認識したぜ。