こしのり漫遊記

どうも漫遊の民こしのりです。

現実と仮想がクロスするのがとにかくすごい!「ソードアート・オンライン オーディナル・スケール」

 先週、劇場版視聴の前のおさらいにテレビ第二期を一気に見て、ラストでユウキが人生の旅を終えるシーンで号泣した。そして本番の劇場版を遂に視聴したのである。今年2月に上映して9月にパッケージ化とは思ったよりも早くに見ることが出来てよかった。

 劇場で見ていないのでパッケージ化を首を長くして待っていた。劇場で映画を見たのは「ガメラ2  レギオン襲来」(マジ名作)が最後で、あの時はレギオンの脅威を前にして地球は終わったなとか思っていたことを懐かしく思い出した。

 ガメラ2と同じくこのSAO劇場版も間違いなく傑作だった。簡単に感想を言うならとにかくすげぇの一言である。これは映像も音も作るのが大変な作

品だな。めっちゃ面白かった。テレビよりも劇場で見た方が絶対感動できただろうな。

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 まず、すごいのが今回の舞台が前作のように仮想空間では無く現実ということである。舞台を色んなゲームに移して物語を展開していたがとうとう現実を持ってくるとは逆転の発想だな。現実世界でオーグナーというデバイスを用いる事で現実を拡張しゲームを楽しむという近未来的なゲームシステムになっている。発想がすごい。VRでもまだ馴染まない内に今度はARという新用語が出てきて混乱するよね。

 

 私がヴァーチャルと交渉を持ったのは任天堂バーチャルボーイが最後である。10年前に放送したアニメ「電脳コイル」で特殊眼鏡をかけて電脳世界を見るのに「すげぇ」と驚き、去年は「ポケモンGO」という凄いゲームに驚き、そして今作ではもっとすごいことになっているのでやっぱり驚く。ポケGOの技術どころではない。

 

 ARは完全に己の身を動かしてのゲームなのでトロイ奴はすぐやられてしまうゲームだな。我らが主人公のキリト君も最初の内は運動不測のためにまともにプレイできていなかった。プレイヤーの頭上にランクが記されるがキリトも最初は10万位くらいだった。キリトが家でパスタばっかり食っているのには心配でした。そりゃ力が入るはずがない。

 昨今のアニメは強さを得る過程をすっ飛ばして最初から主人公が強者であるパターンが多いので地味な修行シーン中々見なくなった。このSAOもまた主人公が最初から最強の代表例になる作品だが、この劇場版では仮想空間で最強のキリトが現実では他に遅れをとったために修行をしている。その修行シーンが3秒くらいしかないんだけど珍しい展開だった。しかも妹に剣道部の合宿先から通信教育で鍛えられていた。変化球すぎる。そしてキリト妹、おっぱいでかいな。妹が赤いブレイザーの制服を着ているのが良かった。

  

 

 面白い仕掛けたくさんのアニメだったが、新キャラのエイジの読んでいるSAO事件記録の本の存在が印象的だった。第一期の時のあのデスゲームがもはや有名な歴史の一部となり、名が記載されたクラインやキリト達は時の人となっていた。

 エイジが実はアスナと同じ騎士団の団員であったという過去がわかるが、こんな奴いたんだと思った。怖くて戦えなかったエイジの名は本のどこにも記されていないというのが切なかった。エイジも可哀想な奴だが、クラインの腕の骨を折ったのとシリカちゃんを突き飛ばしたのは許さん。うなじにあんなズルイ装置をつけていなかったら「風林火山」の皆にボコボコにされてるからな。

 

 バトルが熱いこの作品にユナという新キャラにして時代の新アイドルを登場させたのは良かった。ユナめっちゃ可愛い。神田のさーやが声を担当していた。この方は15年くらい前に「ディズニータイム」という番組に出演していて、それを見て初めて知った。可愛い姉さんと思って見ていたがまさかSAOでまた会うとは思わなかったよ。

 アイドルの歌と熱いバトルの組み合わせの成功例はとっくの昔に打ち立てられているので、今作でユナの歌をバックにバトルを展開するのは手に汗握ったぜ。

 

 しかし、AR事件の目的がSAOサバイバーの記憶を奪うというのは怖い。単一ニューロンがどうとかこうとか、生物学や科学の用語を交えてカラクリを説明していたけれど、とにかく脳に刺激を与えて記憶を選んでそこを引っこ抜くわけだから、そんなことを行う媒体となるオーグナーの行過ぎた技術はど恐ろしく思った。アニメだからと気を抜いて見ていたが、現実でもこういう機械が普及したらこの手の恐ろしい問題が浮き上がるのかと思うとゾッとした。

 

 

 現実世界が舞台になったので、キャラクターの私服がたくさん見られたのが良かった。アスナがおしゃれさんだった、キリトが黒服以外を来ているのも新鮮だった。

 キリト君が自販機にパンチを喰らわす場面があったがアレは公共の物であるし、そこの会社の持ち物であるので打撃を加えるのはよろしくありません。

 

 劇場版ならではのスペシャルな展開が過去シリーズで登場した懐かしいキャラクター達が集結したことだ。お祭り騒ぎ状態になっていた。それにしてもエギルが相変わらず黒いしデカい。エギルが戦闘に参加するのを久しぶりに見た。ラスボス戦が開始してエギルが一番最初に狙われたな。

 テレビアニメ二期の最終話で私を泣かしたユウキの姿も確認できた。とにかく今作ではココが一番語りたいという大好きなシーンがアスナがユウキから受け継いだオリジナルソードスキル「マザーズ・ロザリオ」を発動させる所だ。アスナの側にユウキの姿が映ったのがマジ泣けた。ここは巻き戻して何回も見た。ユウキファンなんだよね。オーディコメンタリーで戸松ちゃんもこのシーンには涙腺緩むと言っていた。「ドラゴンボール」のセル編で悟飯が片手でかめはめ波を打ったら、後ろに悟空の姿が見えるあれを思い出した。離れても心は側にいるんだよって言いたい演出が好き。名シーンを生んだよね。

  

 二番目に良かったのはアスナの入浴シーン。「ええ、尻しとる。」

 

 キリトとアスナのラブを描くのに力が入っていた。キリトは初めてアスナのお家にお邪魔して、ベッドでアレなところもあったし、アスナのママが帰ってきたらどうするんだろうと焦った。

 キリトが男らしくアスナに指輪をプレゼントし、結婚も見据えた関係にまで進んでいたのは良かった。最後に星空の下でデートのシーン良かったな。手を貝殻繋ぎしてからのちチューで終わったな。

 

 ファンに嬉しいつくりだったし、コレだけ見てもお腹一杯な良い出来であった。

 

 

 主題歌

 Catch the Momen / LiSA

Catch the Moment(期間生産限定アニメ盤)

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 気持ちが高まって物語が終わったところで最後のLiSAの歌ね。これがすごく良かった。あのイントロが良い。これは劇場で見て、聴いたらグッと来るものがあるだろう。

「心臓がカウントしている」っていう歌詞を耳にして理屈にならない胸が熱くなるものを感じた。この曲は熱い。これをMステで歌ったのを録画して繰り返して見ていたものだ。

 

 

 見終わって、こんなに熱くなって誰かと語らいたいと思った作品も久しぶりだ。

 新シリーズやると聞いたのでそっちが楽しみだ。

 

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悪魔教が放つ動画経典「聖飢魔Ⅱ HUMANE SOCIETY 人類愛に満ちた社会」

 1992年に発売されたOVAで、へヴィメタルバンド「聖飢魔II」が登場するアニメである。

 「何が人類愛に満ちた社会じゃ」とか言いながらとりあえず視聴してみた。

 

 彼らの目的は悪魔教の布教にあるので、「アニメ」という広く一般に馴染んだ媒体を利用して信者を増やそうとした。バンドに興味の無いアニメオタク共をもこちら側に引き込もうとするこれまでと視点を変えた見事な戦略に出たと評価できよう。字がだめな奴でも動画の経典にすればイケるのである。

 彼らの音楽にさほど詳しくもない私もアニメ好き故、うっかり手にとって悪魔教信者の1人となってしまったのだ。

 

HUMANE SOCIETY ~人類愛に満ちた社会~ [DVD]

 

 本作に登場する聖飢魔Ⅱのメンバーのデーモン、ルーク、ゼノン、ライデン、エースは皆本人が声を当てている。

 デーモンは、あのままの見た目で画に描いて違和感が無いし、悪魔声もしっくり来る。

 

 ストーリーは、悪魔である「聖飢魔II」と神とによる人類存亡をかけた聖戦を繰り広げるといったものである。

 デーモンは侵略の最終手段として大地を割りバベルの塔を出現させたり、神の方でもカインの塔を造ったり、最終的には地球を抜けて月や太陽の方にもお邪魔してバトルをするという壮大極まりない話となっている。しかも、最後は神を倒して「聖飢魔II」が勝利し、「芸術による支配を行う」とか息巻いて終わる。神ローザと悪魔デーモンの口論において神が人類に行き過ぎた愛を注ぐのはエゴであって本当に人類のためなのかという流れになり、昔何かのアニメであったような善悪が逆転するような要素もあった。考えさせられるぜ。

 

 普段デーモンは人気ラジオDJとして人の世に紛れている。聖飢魔IIの面々はエネルギー弾、口から火を吹く、巨大化、透視などの超人的パワーを持ち、めっちゃ強いので一般人では歯が立たない。対悪魔組織があるが、戦車やヘリで悪魔に応戦するも、デーモンらに車体を割られるなどして全く歯がたたない。ただただ国庫の金を塵と変えていくのみである。

 

 ネタものアニメと思いきや結構よく出来ている。普通に楽しく見ることが出来た。

 メインは聖飢魔IIの皆だけど、神ローザ役は土井美加、他に松本保典神谷明など有名な声優も出ている。アフレコを一緒にやったのなら声優本業陣はどんな気分で収録に臨んだのだろうか。何て言ったって悪魔共と仕事をしたわけだからな。

 

 世界は神に救われるか、それとも悪魔の手に落ちるかといったように世界の行方は暗雲の中にして見えなかったまさに世紀末への不安をそっくりそのまま画にしたようなアニメにバンド「聖飢魔II」をかけたコミカルな組み合わせで送る作品であった。

 今は無事新世紀が来てよかったね。

 

 信じなさい聖飢魔IIを、入りなさい悪魔教に・・

 

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擦れ違う男と女「雁」

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 「雁(ガン)」とはカモ目カモ科ガン亜科の水鳥である。カモに似ているがカモより大きい鳥である。国語の教科書に載る「大蔵じいさんとガン」や、名作絵本を原作にした日本名作アニメ「ニルスのふしぎな旅」などで御馴染みの例の鳥である。可愛い、そして美味そうなので私は大好きな鳥である。

 

 オ~カモナニルス♪ と名曲を歌いたくなる。

 

雁 (新潮文庫)

雁 (新潮文庫)

 

 

 雁も出てくるけどあくまでオマケエッセンス的な位置におかれ、メインはとある男と女の関係が擦れ違いに終わるという話を第三者の回想として語る物語である。

 

 主人公にして物語の語り手である医学生の「僕」は、古本屋で入手した四大奇書が一つの「金瓶梅」を同学生寮の生徒岡田に貸すことで岡田と心安い間柄となる。そんな岡田は散歩の途中でとある家に済む美しい女であるお玉と顔なじみになり、挨拶をするくらいの仲になる。お玉は高利貸しの末造の妾である。お玉は岡田が道行く姿を窓から見て、岡田と親しい関係になりたいと考えてやきもきする。

 最終的には岡田は学校の卒業を待たずして洋行することになり、岡田とお玉の関係は特に何もおこらずに終わってしまった。

 主人公「僕」は岡田から聞いた話、後にお玉から聞いた話の二つの情報をあわせて二人の擦れ違いの恋の物語を語る。

 

 まず、岡田と僕を繋ぐ橋渡しとなったアイテムが「金瓶梅」という所がかなり印象的であった。金瓶梅を読んでいる大学生って何か想像しづらい。怪しからん本だからな。

 「金瓶梅」では豪商西門慶と妖婦潘金蓮が共謀して金蓮の夫を毒殺するという内容の男女三角関係が成立して、それは「雁」では岡田とお玉、お玉を妾とする末造と人物を置き換えると共通する人物関係になる。こちらでは具体的な行動は何もおこさないけれどね。金瓶梅の意味はここらへんにあるのかも。

 

 医学生である「僕」と岡田の生活よりもメインはお玉の生活や心情を描いている。お玉は父と二人貧乏暮らしをしていたので父の生活を楽にするため高利貸しの妾になることを受け入れる。世間知らずなおぼこ娘だったお玉が妾の生活を始めていくらか心の余裕が生まれ、自分や他人を深く分析することをし、いつの間にか人間としての自我がそれまで以上に目覚める。お玉の内なる変化と成長が読み取れる書き手のテクニックが冴えている。

 

 岡田が散歩途中にお玉の家で飼っている鳥を食おうとしている青大将に遭遇し、青大将を退治するというミッションをこなすシーンがある。これは蛇が怖い私には無理だと思った。包丁で青大将を切る描写が生々しくて気持ちわるかった。しかしリアルに現場の状況が伝わってすばらしいと思った。

 

 私の好きな本「金色夜叉」以来の高利貸しが登場する話だった。金色夜叉でもそうだったが高利貸しが世間的にすごい嫌われているのがわかる。本作ではお玉が女中に魚を買い行かせた先で魚屋のおばちゃんに「高利貸しの妾に売る魚はねぇ」と追い返しを食らうシーンがある。高利貸しの存在で金の用意に助かる人もいれば、借りたことで破滅する人もいるがどこしらにニーズがある商売をあそこまで酷く言うかねと思った。

 

 お玉の家は無縁坂という所にあり、その付近の地名がたくさん出てくる。政治とスポーツと地理の知識がかなり薄い私にはあちこちの地名が全然ピンとこなかった。

 

 最後の方のシーンで雁が登場する。主人公と岡田の学友石原の企みで雁を獲って食う流れになる。雁って料理にするんだと初めて知った。美味そう。雁を服に隠して交番の前を通るシーンがなにやらハラハラした。野生の雁を獲ってきて食うというのは鳥獣保護法とかでアウトではないのかと思った。

 

 お玉は岡田に惚れてどうにか岡田と関わりと持ちたいとあたふたし、岡田の方でも少し気があったと思われるがそこまでで二人が交わることはなかった。燃え上がる展開は無かったもののこういう関係って世の中のあちこちできっとあると思って楽しく読ませてもらった。

 

 最後に、その相手を知らないだけでもしかしたら私だって私に熱をあげるどこぞの誰かと人生の擦れ違いをしてきたのかもしれない。とか考えて本を閉じました。