こしのり漫遊記

どうも漫遊の民こしのりです。

ボーイ・ミーツ・ガールものの傑作「未来少年コナン」

未来少年コナン」は、1978年4月から10月まで放送した全26話のテレビアニメ。

 

 宮崎駿初監督作品として有名な作品である。

 OPとEDのテーマ曲も耳に残る好きな曲だった。

 

 令和に入った今だからこそボーイ・ミーツ・ガールものと言えば「コレだろ!」という本作を見ようと思った。コナンと言えば名探偵よりもこっちなんだよなぁ~。

 

 その昔、再放送していたものを見ていたことがあるが、内容はほとんど忘れていて、とにかくコナンが元気で丈夫ということくらいしか覚えていなかった。

 

 この度だいたい一週間で見たところ、少年心くすぐるなかなかの冒険活劇で大変楽しめた。

 

  この時代特有のセル画が元気だと思えた。とにかく古き良き時代に触れたという満足感があった。

 

 

未来少年コナン Blu-rayメモリアルボックス

 

 設定なんてすっかり忘れていたけど、物語のとっかかりは放送時期から30年後の未来の2008年に起きた事件である。2008年7の月、核をも越える超エネルギーの暴走によって地軸が曲がり、五大陸は海に沈む。地球はほぼ終わった状態に追い込まれる。

 主人公コナン達の冒険が描かれるのはそれから20年後の世界。だいたいが海に沈んでしまったことで進んだ文明も後戻りし、コナンとおじいは何もない未開の地で生活している。

 

 帝国軍から逃げてコナンの島にやってきたのがヒロインのラナ。 

 帝国のボスのレプカは、世界支配のために太陽エネルギーシステムを利用しようとしている。ラナの祖父ラウ博士はその分野の権威のため、まずは孫を拉致して祖父も探して捕まえるという悪い算段を企てている。

 

 世界復興のための重要なキーパーソンであるラナは帝国の悪い奴らに追われていて、コナンはとにかくラナを守る。全編通してコナンはとにかくラナのみをただ一人のヒロインとしてずっと尽くしては守る。

 まるで未開人の少年と可憐なヒロインという一見ミスマッチな二人が出会って絆を結ぶザ・ボーイ・ミーツ・ガールな展開が良かった。

 

 それまでおじいとふたり暮らしをしていたコナンが人生で初めて見た人間の女がラナ。傷ついたラナの着替えをさせる時、部屋を出ていこうとしないコナンに向かっておじいが部屋を出ていけと言う。女をまるで知らないコナンは、そこら辺のマナーもまったく知らないと見える。割と大きくなるまで女を見たことがないという設定がドラゴンボール孫悟空みたいだと思った。

 

 21世紀を迎えても未開の地みたいな所で大きくなったコナンはほぼ野生児で、それだけに身体能力が人並み以上に鍛えられている。ファンタジーの世界であっても登場人物は等身大の人間が登場する。しかし、このコナンだけはいわゆるチート保持者ですごく強い。まるで超人的なコナンの能力も面白い点だった。

 まずコナンは力が強く、足が速い。そして丈夫。ビルから飛び降りても平気。野生で得た余計なまでの足の筋肉も披露している。手と同じくらい足も使え、足の指でアイテムを挟んだり、足の指のみで建物の壁に掴まったりも出来る。水中ではありえない程長く息が持つ。どうやら肺も強いらしい。これらが彼の未来少年たる由来。現世の少年の基礎体力を余裕で上回っている。

 

 帝国兵は銃、ロボノイドなどで武装し、飛行機だって飛ばしてくる。しかしコナンは手作りの槍一本だけが武器で、あとは素手で対抗する。廃れた世界に残った文明兵器で敵が攻め込んで来るのに対し、コナンは裸状態で突っ込んで渡り合う。このとんでも展開は爽快だった。

 

 明るく快活でとにかく良いやつなコナンを演じたのが、イジイジしてばかりのいじめられっ子ののび太君役でお馴染みの小原乃梨子なのは意外だった。やはり役者はすごい。どんな性格でもすっぱり演じ分けている。

 

 ラナを守って悪の親玉のレプカを退治し、最後にコナンはラナを連れて自分の島に戻る。一旦終わったと思った世界も良き方向に向い、海に沈んだ島の陸地が再び浮上し、希望を残して物語はエンドとなった。最終回が平和過ぎて好きだった。

 

 コナンとラナの絆を描くのがメインだが、周りのキャラ達も楽しかった。

 別の島ではあるがコナンと同じように野生生活をしていた少年ジムシーを冒険の一行に加える。ジムシーがかなり好きな人物だった。パッとみた時に「トム・ソーヤの冒険」のハックルベリー・フィンではないかと思った。声も同じく青木和代が担当している。この太いかすれ声は記憶すればなかなか忘れられない。

 

 ジムシーの好物が焼いたカエルで、やたらとカエルを食いたがる。

 ジムシーが軍から多分未来のタバコ?と思われるものをもらって吸うシーンがある。未成年なのに、そしてNHK作品なのにダメじゃないかと思った。

 

 ジムシーはハイハーバーに行ってから養豚技術を覚える。コナンはハイハーバーのじいさんに付いて漁を行う。ハイハーバーの生活が始まると、それまで「仕事」という概念を持たなかった少年たちが役割を持って行動することを覚える。この展開は教育番組ぽくて良かった。

 

 コナンやジムシーと敵対することもあれば、仲良くすることもあったおじさんのダイスも面白かった。

 まだ軍についていた時分のダイスが行っている仕事が、石油を生み出すためにゴミの山からプラスチックを探し出すというものだった。資源確保が難しい設定なのかと想い、この切羽詰まった点は印象的だった。かなり怖い未来でもある。

 

 最初の方こそクソキャラとして描かれたダイス船長だが、後半では頼もしい仲間になる。そしてコナン達一行の中ではギャグ担当になるので愛すべきキャラとなった。最終回でモンスリーと結婚するとは思わなかった。

 

  コナン達子供目線で見るとラナが麗しきヒロインだが、少しお兄さんな目線で見ると大人のお姉さんのモンスリーもなかなか美しいヒロインだった。

 最初はけっこうなワルの一面を見せたモンスリーお姉さんだが、後半になると戦争孤児だった生い立ちが明らかになり、本当は犬が好きな優しい心を持っていることも分かる。ラナを捕まえにきた軍人だったけど後半では仲間になる。こういう色気のある悪の幹部ヒロインが、後に正義に触れてこっち側と仲良くする展開が好き。

 モンスリーを演じた吉田理保子の「生命力が強そうで元気な美女感」が良かった。

 

 インダストリアから来た敵のスーツが全身タイツみたいな感じでダサい。頭も覆っていて最初はモンスリーの髪型もよく分からなかった。しかし、あのスーツの上からでもモンスリーは巨乳だと分かる。

 

 本作を見て思ったことが、2年ほど前にDVDを視聴したアニメ「今、そこにいる僕」と似ている点があるということ。こちらは1999年に放送したもの。

 その世界の文明や風習を何も知らないまるで野生児のような主人公が荒廃した異世界にトリップする。そこで世界を変えるくらいのキーパーソンとなる少女が出てくる。敵の基地が巨大施設で、そこには悪の独裁者が君臨している。こちらの味方につきそうな感じもする色っぽい女幹部が出てくる。などなどの点がリンクしていた。

今、そこにいる僕」は決して駄作ではない。しかし、コナンのように楽しくハッピーな内容ではなく、かなり暗い鬱展開アニメだった。

 コナンを見てよその名作アニメも思い出した。

 

 2008年から20年後の未来を描いた内容だが、コナン達が住んでいた「のこされ島」は文明がまるで発展していない未開の地で、悪者の基地があるインダストリアは廃れていても近未来の文明が残っている。同じ作品世界で文明の発展が随分違う箇所が映し出される。

 我々が住む現実世界で待っている未来はコナンの島かインダストリアか、どちらになるか分からない。人類の歩み方によって、地球文明は滅びて原始時代みたくなるか、ますます発展したサイバー都市になるか2つの道に分かれるであろう。であらば、視聴者諸君はどちらの道を取るか、それは君たち次第だ!というメッセージ性が感じられたから、作り手はそういうことも伝えたかったのか?という個人の全く勝手な考察を行って本作の感想を書き綴るのを終えよう。

 

 

  私も地球が好き。

 

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美に魅せられ美に死す「ヴェニスに死す」

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ヴェニスに死す」はトーマス・マンによる中編小説。

 

 タイトルのヴェニスは、ヒーリングアニメ「ARIA」の舞台モデルになったところだな。ARIAのようにこちらの小説にもゴンドラが出てくる。

 

 読みやすい良い感じの長さである。しかし、それは長さだけの話で、この分量にしては話が動かない。元ネタが分からないと何のことやらといった神話の内容が含まれ、他にも小難しい表現がある。そして一文がだらだらと長ったらしいので集中できない箇所もある。私が手にした岩波書店版は、理解しやすい、読みやすい、とは言えないものだった。

 

 これがどういう話だったのか詳しく話せと言われたらちょっと困る。それというのが、具体的な楽しい事件が次々起こる物語展開ではなく、主人公の作家アッシェンバッハの美渦巻く精神世界的な内容がほとんどだったから。

 

 ヴェニス旅行でアッシェンバッハは美しき少年タッジオに出会い、その美しさに魅了される。滞在中、アッシェンバッハは毎日タッジオを眺め、後をつけるストーカー的行為まで行うようになる。旅行の目的の全てがタッジオになってしまったその時、ヴェニスコレラが流行っていることが明らかになる。早くヴェニスを脱すればよいものを、アッシェンバッハはタッジオを目にしたいばかりに街を離れることをしない。そうしているうちにコレラはアッシェンバッハの体も蝕み、最後に彼は死んでしまう。

 簡単にお話を辿るとこういった感じ。

 

 読んだ一番の感想はかなり不思議な本だということ。

 ぶっちゃけ、タッジオが登場するまでの序盤の文は何を言ってるのかよく分からくて頭に入ってこなかった。 

 

 アッシェンバッハがタッジオに魅入られてからは心の中で長々と評論を始め、そうして最後には彼の中でタッジオは神格化されてしまう。

 

 おっさんがたかだか10代の少年にどうしてそこまで夢中になるのか。そこら辺が不思議。

 芸術家であるアッシェンバッハは美の追求としてタッジオ少年を追い求めたが、芸術と変態は紙一重ということで、アッシェンバッハが行ったそれは世間的にはストーカー行為であった。

 

 世間的に名前があり、自らを律することが出来た厳格なアッシェンバッハだが、美に魅入られてからはそうも行かない。

 

 冷静に自分を制御できていればストーカーまがいの行動はしないだろうし、この場合ではイコールして死を意味するコレラが迫っていることが分かればヴェニスの地を脱したはず。

 

 結果的にアッシェンバッハは美に飲まれて死ぬ。

 以前「知られざる傑作」という本を読んだことがある。こちらでも美に執着した画家が、美に取り憑かれたまま美と共に身を破滅させる。アッシェンバッハが辿った道にも通ずつものがある。これが芸術家特有の破滅の辿り方なのかと思えた。

 

 とにかく一般人にはない感覚の下での言動だと想う。それでも、アッシェンバッハは、タッジオの魅力に取り憑かれて最後を迎えられて本望だったのではないかと思えた。

 彼のこの人生は、美に生き美に死んだと言えるのではなかろうか。

 

ヴェニスに死す (岩波文庫)

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独立した三つの物語に魅せられた「PSYCHO-PASS サイコパス Sinners of the System」

PSYCHO-PASS サイコパス Sinners of the System」は、2019年1月から3月にかけて3ヶ月連続で上映された三部作の劇場版アニメ。

 

 テレビシリーズの番外編的独立した三つの物語で構成されている。各話約1時間。

 

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 今年10月からスタートした「PSYCHO-PASS 3」を視聴しながら、無事パッケージ化が済んだこちらも視聴した。まだ数話しか放送していない「3」もなかなかの出来だが、こちらの「SS」もかなりの破壊力がある傑作だった。

 

 ここへ来て想うが、2012年に開始して今日まで続く息の長いシリーズになったものだ。

 

 畳み掛けるように3ヶ月連続で放ったこの劇場版三部作は大変完成度の高いもので、今作を見れたことはファンとして嬉しかった。別にファンでなくとも、これらを単体で見れば感動する出来だったと想う。シナリオ、映像、芝居、各話のゲスト声優、どれもこれもが良かった。

 

 三部作は、主要人物、時と場所も変えて展開する独立した物語になっている。テレビシリーズの「いつもの街」を離れた地が舞台になっているのが新鮮だった。各地はしっかりロケをしているらしく、背景画が素晴らしい。

 

 素人目に見ても各話の格闘シーンの完成度が高いことが分かる出来になっている。オーディオコメンタリーによれば、これらはアクション俳優に実際に演じてもらって撮影しているという。職人のこだわりが見られるのがすばらしい。

 

 各話共にスタートしていきなり印象づけてくる要素がOP映像の発色の良さ。大昔の淡い色合いのアニメや特撮を見返すことに慣れてしまっている私にとって、2019年に作られたアニメの発色の良さは目に入れてびっくりするものだった。

 

 では、全三話をそれぞれ振り返ろうと想う。

 

 

第1作「Case.1『罪と罰』」

 非凡人は凡人の信ずる道徳を超越しても良いという概念をテーマに含んだあの名作「罪と罰」をタイトルに持ってきている。

 悪さをする老婆を若者が殺すという本の内容にキャラクターが触れる箇所もある。ドストエフスキーの描く大長編傑作から引っ張ったテーマ性が奥深い。真の道徳を求めて迷走した末、人の道を踏み謝る人間の真実性と同時に愚かさも描かれる重厚なストーリーが展開した。シナリオはグッと引き込まれるものがあって良かった。

 

 霜月美佳と宜野座伸元の二人をメインに物語が展開する。

 

 脱走した潜在犯を捕まえて雪山の施設に送り返したところ、その施設の館長が黒い事件に手を染めていたと分かる。霜月、宜野座、六合塚の3人で悪者を黙らせる作戦が展開する。

 

 当初は収容されている潜在犯達からカリスマ的支持を集めていた館長が、実は潜在犯達を利用して危険できつくて汚い仕事をさせていたことが発覚する。

 利用した潜在犯達に対して施設長が吐いた「ゴミは磨いてもゴミ」という毒コメントが忘れられない。

 

 テレビシリーズでは、悪いけどけっこう無能な感じが出ていた霜月が、今回は大活躍して頼もしい。ただ銃をぶっ放すだけに終わらず、探偵のように悪者の悪の証拠をボイスレコーダーに録って提示するなど、頭の切れるところも見せた。

 人を動かすのは理屈ではなく心だと言い切った霜月は格好良かった。

 

 二、三失敗しても前に前に出ていく霜月のメンタルはなかなかのものだし、その観点からのびしろのある女だったのかもしれないと気づく。

 

 序盤は先輩の常守にくってかかるのがうざいし、宜野座にギャンギャンうるさいことを言うじゃじゃ馬ギャル感も出していたが、このエピソードの最後には一人前の監視官に成長したのではないかと思える。

 現在放送中のテレビシリーズ三期ではすっかり出世してリーダーにもなっている彼女の成長の記録が見れたのは良かった。あとは霜月のこととか抜きに、彼女を演じたあやねる(佐倉綾音)が好きなので声を聴けただけでごちそうさまでした。映像特典の舞台挨拶でのあやねるが美しかった。

 

 ペーペーだった霜月を宜野座がしっかり認めることで二人のバディ感も強まっていく。この感じがよかった。

 宜野座が最後に言った「君たちふたりの猟犬でよかった」のセリフが忘れられない。常守だけでなく、霜月のことも認めたということが分かるこの流れが良かった。

 

 狡噛がペーペーだった頃の常守の面倒を見ていたように、こっちでは宜野座が良い面倒役になっている。宜野座もすっかり大人になったなと思え、彼の成長にも感動した。

 

 敵から助けた少年に宜野座が、かつて悩んでいる親友を助けることが出来なかったと明かす。ここは狡噛のことを言ってるのかと想うとジーンときた。

 

 一番熱かった展開は宜野座の戦闘シーン。

 名優小山力也演じるロン毛のおっさん傭兵とガチでやりあうところは凄かった。というか宜野座ってこんなに強かったんだと驚いた。

 義手を敵に打ち込んでまでギリギリの格闘を行う。向こうは殺戮マシンに乗ってくるけど宜野座は武力と知力をもってこれを駆逐する。

 

 谷に落ちそうになった宜野座を助けにきた六合塚のことが、宜野座には一瞬狡噛に見えたあのシーンもまた良かった。

 

 現在放送中のテレビシリーズ三期とこのエピソードを見て、それまではちょっとムカつくところもあった霜月が良い女に見えて好きになった。

 

 

第2作「Case.2『First Guardian』」

 物語の時間軸はテレビ一期よりも更に前。常守が合流する前のあの頃の懐かしいチームメンバーが登場する。

 

 意外にも今回の主役は須郷徹平。須藤はテレビ二期から出て来た執行官だが、無口で何を考えているか分からない不気味なところもあった。そんな彼の過去を描いたこのエピソードを見ると彼の本来の人となりが分かった。

 

 暗いイメージがあった須郷が国防軍に所属していた頃の話が展開し、最初の方だけは同僚達と楽しくバーベキューするなどして平和。しかしその後には軍のお偉いさんの悪巧みに巻き込まれたりして色相の悪化に繋がる運命を辿る。

 

 兵士を騙して毒ガスを撒き散らす作戦を展開した軍のおっさん共がマジで悪い。オチで悪さをしたおっさんは始末するが、須郷のかつての仲間は殺されて最後には自分一人になるという半分はバッドエンドとなる。

 

 須郷と共に活躍するのが現在お亡くなりになっている征陸智己と青柳璃彩の二人。

 

 今回は征陸のとっつぁんが格好良すぎた。実はこんなところで須郷と接点を持っていたとは意外だった。須郷が公安に合流するまでの道を開いたのは彼だった。

 

 普段はクールな征陸だが、妻子に手を出すという脅しにあえばお偉いさん相手でもキレるのが男らしい。「これは俺のヤマだ!」のセリフは勇ましくて惚れる。

 

 夕陽の中で征陸と須郷が会話を行う後半シーンは必見。

 正義に目覚めると病みつきになるという刑事の矜持を須郷に語って聞かせるところが格好良すぎた。

 

 懐かしのキャラの青柳も活躍する。すごく仕事が出来そうな色っぽくて美しいヒロインである。

 親父に向かってギャンギャン吠えるあの日のギノに注意する彼女の同級生感がなんか良かった。ギノは親父を大事にしろって想う。

 ちなみに私は、テレビ二期の青柳の退場の仕方について未だに納得のいかないものがある。青柳には生き残って欲しかった。

 

 青柳が征陸のことを大変高く買っていることを須郷に明かすところが良かった。年下からも尊敬される良き刑事、良き人間だったことが分かる。

 

 今回も格闘シーンの迫力があって凄かったし、ドローンを飛ばすシーンもリアルだった。

 

 須郷、征陸、青柳達の物語が展開する一方で、狡噛、宜野座、縢のチームの動きも描かれる。テレビ一期の懐かしのメンバーで仕事をしているのが見られて良かった。「SS」一話であれだけクールな大人になっているギノが、こちらではまだギャンギャンうるさい若造で出てくる。このギャップから、宜野座という男の歴史が辿れて良い。

 

 最初と最後に少しだけ出てくる気になるヒロインが花城フレデリカである。大変美しくてセクシーなヒロインなので気になっていたが詳しく触れずに終わった。しかし彼女はSS三作目で登場するので安心した。

 

 征陸を演じた有本欽隆の芝居が見れる最後の作品がこれだった。

 オーディオコメンタリーやBD特典映像の舞台イベントでもスタッフ、キャストが亡くなった有本欽隆のことに触れている。改めて良い役者だったと想う。出演作の内、世に出したラストがこの芝居なら有終の美を飾ったと言えよう。

 

 

第3作「Case.3『恩讐の彼方に__』」

 殺人者と復讐者がクリアな人間として復活するまでを描いた菊池寛の短編小説「恩讐の彼方に」の内容をテーマに引っ張り、広大なチベットの地で狡噛慎也の物語が展開する。

 政治を絡めた悪巧みをする連中を狡噛達が討伐する正義の物語だった。

 遂に真打狡噛登場ということで大変興奮して物語を辿った。

 

 今回はまず美麗に描かれるチベットの景色が素晴らしいと言えよう。チベットの地に張り巡らされた旗の揺れ具合の描き方が凄かった。余談だが、あれを見ると運動会の万国旗を思い出し、同時に運動会が嫌いなのにアレの準備係だったことも思い出してちょっと萎えた。

 

 傭兵稼業をしている狡噛の鬱屈とした人生に光を与えた美しきヒロインのテンジンのことが好きになる。そしてヒロインといえばもうひとり、テンジンよりもずっとアダルトな魅力を出して画面に華を添えた花城フレデリカの活躍も良かった。

 

 テンジン、花城フレデリカの両ヒロインがお風呂に入るシーンは美しかった。ここを描く時には男の職人にやらせると余計にエロ要素が働くからということで、女性の職人で仕事にかかったという。オーディオコメンタリーではこのようなためになるお話が聞けた。

 この入浴シーンについては確かに「エロ < 美」の関係性が成り立っていて大変目の保養になったといえる。

「Case.1『罪と罰』」では負傷したギノが服を脱いで包帯を巻くシーンで乳首が解禁となっているが、こちらでは入浴シーンで花城フレデリカのそれが解禁となっている。うん、良かった。

 

 フレデリカがとにかくエロくて美しい。しかも強くて、ロングライフルで敵を狙撃することもやってのける。銃を構える美女、これには萌える。そして演じた本田貴子の声が美声でエロい。テンジンも含めた二人のヒロインの評価は大変高い(個人的に)。

 

 心理学の心得があるフレデリカが、ヘビースモーカーの狡噛を見て、ヘビースモーカーになる人間の心理を説く会話シーンは印象的だった。「美しくて強い上に頭も良いのか!」とフレデリカのヒロイン性の強さに驚いた。ちなみに私はタバコをまったくやらないのでヘビースモーカーの心理など全く分からない。

 

 テンジンに武術指南する狡噛の良き監督者ぶりと良きお父さん感が印象的だった。女性陣に料理を振る舞い、テンジンに「歯を磨いて寝ろ」と指摘する狡噛の家庭的な一面が見れたのはギャップ萌えだった。序盤でばあさんを助けてお礼に宝石をもらっても「助けたいから助けただけ」と言ってそれを受け取らない狡噛の男前ぶりにも惚れるものがあった。

 

 高木渉演じるおっさんが狡噛に話して聞かせた「雨の中で踊る男の話」がププッと笑える間抜けな内容で忘れられない。「雨に唄えば」のワンシーンを思い出した。

 

  本作のキーワードにもなったテンジンが読んでいる本の「恩讐の彼方に」は二年半程前に読んでいたので勉強済だった。テンジンが読んでいたのは古いもので、まだ表紙がない古の時代の岩波文庫版だったのかな?とか思った。

 

 走行中の列車上での激戦を描いた後半シーンは圧巻の出来だった。やはり昔から興奮するシチュの一つが、走る列車の上でガチバトルするというコレ。

 

 格闘シーン、銃撃戦シーンは迫力があった。加えてバトルマシンも投入してメカ戦も展開された。

 

 最後には狡噛が日本に帰ろうと決心して終わる。

 テレビ三期では、日本に帰った狡噛が本編にがっつり絡んで欲しい。

 

 

 

 私の色相はクリアです。

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