こしのり漫遊記

どうも漫遊の民こしのりです。

月夜の森のラブコメディ「夏の夜の夢」

 

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 シェイクスピアと言えば「四大悲劇」なんて呼ばれる作品群を手掛けたこともあって悲劇の作家のイメージが強いが、実はこの人は万能な作家で喜劇の方も腕もピカイチである。

 

 

 

 本作は月夜の森を舞台に恋仲がうまいこといかない人間の男女二組、そして同じく夫婦仲がうまくいかない森の妖精王にその妃を中心としたどたばたラブコメディに仕上がっている。

 

 妖精界は何でもありな世界なので抜群に効く惚れ薬なんてものもあったりする。妖精王オーベロンの命によって妖精パックが惚れ薬を人間に塗ることによって恋のどたばた騒ぎを沈めようとするが、塗る相手を間違ってライサンダーとディミートリアスの2人の男がヘレナ1人にゾッコンラブになって危うく命を賭けての決闘をしかけるまでの騒ぎになる。その間もう1人の女性ハーミアは完全にはぶられて可哀想。 

 友人の仲であったヘレナとハーミアが恋愛絡みでガチ喧嘩をするのが楽しい。

 

 セリフは軽快コミカルな冗談調に仕上がり、韻を踏んだセリフ回しがおもしろい。シェイクスピアのキャラクターはセリフにおしゃれな比喩を用いるなど表現が幅広く、そして叙情的である。言葉の美しさを知り、言葉回しのおもしろさも知れる。ユーモアたっぷりなお話だった。

 

 街の職人達によるコミカルで間抜けな芝居もおもしろかった。

 

 最後はライサンダーとハーミア、ディミートリアスとヘレナがくっ付き、アテナの王テーセウスとヒュポリテが結婚し、妖精王オーベロンと妃ティターニアも仲直りする。登場するカップル全てが大人しく収まる非常に平和なハッピーエンドを迎えた。悲劇で有名なシェイクスピアだが、やはりバッドエンドよりもハッピーエンドの方が後味が良い。

 短いエピソードでさくっと読めて楽しいお話であった。