こしのり漫遊記

どうも漫遊の民こしのりです。

そして少女は母になる「さよならの朝に約束の花をかざろう」

さよならの朝に約束の花をかざろう」は2018年2月に公開されたアニメ映画。

 

 長ったらしいタイトルは通称「さよ朝」とされているらしい。

 

 本作は言わずと知れた名作アニメ「あのはな」をはじめ、日本アニメを見ていればあちこちでその名を目にし耳にする人物岡田麿里の監督デビュー作である。

 はっきり言って素晴らしき出来だった。タイトルに引っ掛けて彼女の監督歴にも花を添え飾った記念的な作品となった。間違いない。

 

 この作品を見ては心が暖かくなり、そして泣かされた。ラストは泣きしかない。泣かせの極意だな本当に。

 

 今年はコレと「リズと青い鳥」がアニメ映画の中では強かった。どちらの作品も今をときめく業界盛り上げ役の女性が監督となった。アニメ業界で優秀な女子が成長していると分かる一年であった。

 

 岡田麿里は脚本家で頑張ってきてここで忙しい監督となり、こうして素晴らしい作品を世に放ったのだから本当に今まで頑張って良かったね。本作は企画が上がって5年、制作には3年がかかったという。長丁場となったな。

 

 岡田監督、素敵な作品をありがとう。

 

 つい先日発売した作品BDを見て大変感動した。

 というわけで、感想を色々と書いて行こうと思う。

 

さよならの朝に約束の花をかざろう(セル版)

 

内容 

  主人公少女マキアは人里離れた場所に暮らす長寿の一族「イオルフ」の一人。この一族は人里離れた場所で普通の人間との交渉を持たず、日々織物をして暮らしている。家庭科で糸と布を使って何かをするのがマジで苦手だった私的に言うと、マジでつまんねぇ暮らしをしているなと思えた。

 

 一族の長老は、もし外の世界に出て人間に出会っても愛してはないけないとマキアに言う。長寿の一族が人間と会ったところで、人間の方がさっさと死んでしまって結局一人になるからだ。

 

 そんな平和な里にある日突然人間がやって来て侵略行為を行う。目的はイオルフの娘っ子をさらって王族の男と掛け合わせることで、王族にも長寿の血を入れるというもの。政治が絡んだ黒い策略が展開する。

 

 騒ぎの中マキアは一族の里を脱し、その途中で赤子を抱いたまま死んだ母親を見る。死後硬直のために赤子を抱いた指が中々取れないが、赤子は生きているので保護する。それからマキアはその赤子を抱いて人の世界へと旅立つのである。 

 

 拾った男の子にはエリオルと名付け、マキアは何も知らない人の世界で、これまた何も知らない母として子供と共に強く生きていく。そうすることでマキアは長老の教えに反して人間の子を愛して生活することとなる。

 

感想 

 制作をあの「P.A.WORKS」が手がけているので絵は抜群に綺麗。

 ファンタジーの世界観を見事に描いている。風に吹かれる草原、青い大空、夕陽のシーンなどの自然風景は大変美しく郷愁をそそるものがあった。さすがはPA

 

 公開よりもずっと前に、当時ド新人だった石見舞菜香を主人公マキアに起用したのは先見の明冴えるものだと想った。この人の声、なんかシュワシュワしててお耳に心地よいんだよね。

 

 この作品に見た大きなテーマは「母の無償にして不朽の愛」。私もコレを大いに受けて育ったものだ。

 

 主人公少女マキアは血の繋がりのない拾った子供のエリオルのために全てを投げ売って母として生きる。それに答えるようにしてエリオルもまた母を守ることを誓う。

 親子の絆を軸にした大河ストーリーとなるので最後まで目が離せなかった。ぶっちゃけNHKの大河よりもこっちの方がずっと面白かった。

 

 マキアは本当のところを言うと親ではないし、長寿の一族の一人ということで、作中では時が流れてもずっと10代前半の見た目の少女である。それでも着実に母に、女になっていく。

 子供を産んでも尚母になれない女が決して少なくはない今の世に対して、この映画は良いメッセージを放っている。子供を産めば皆母、それは実は違うのである。

 

 頑張るマキアが可愛いので注目してしまうが、息子から母への愛にも泣かされる。チビだったエリオルはどんどん大きくなり、最後はベッドの上で天寿を全うするするまでが描かれる。実はエリオルの物語だったりもする。

 

 最初はマキアをママと呼んでいたエリオルだったが、後に母さんと呼び名を変える。それでも変わらず母のことをずっと想っている。これって男の子あるあるで、どこからお母さんに変えようかと調整しがちなんだよね。私は面倒なものだから今でもママって呼ぶことあるんだけどね。

 

 雨の降る街でマキアが幼少期のエリオルを抱きしめてずっとこのままだったらいいのにと言うシーンがあるが、その時にエリオルは大きくならないと母さんを守れないと返して早く成長することを願う。ここでマキアがほろりとして泣いてしまうのだが、あそこは良いシーンだった。

 

 人間のエリオルの方が成長が早いので、ストーリー中盤では母と子が年齢的に同じ見た目になってしまう。

 ここでエリオルはちょっとした反抗期を迎え、この段階で恐らく母のことを女と見て、性的に好きだったんだと想う。当時は遠くから越して来た姉弟ということで通していたが、周りからはアレは実は駆け落ちカップルだと思われていた。これを受けてエリオルはついにマキアのことを「母と想っていない」とか言うし。

 エリオルの心中が複雑でストレスだったと想う。ここのところのエリオルの男子の葛藤を描く点が良かった。

 

 エリオルは母の下を離れて軍に入り、やがては幼馴染のディタと結婚する。妊娠したディタが冴えたる女の勘から「本当に私でよかったの」と問う所は印象的だった。

 

 後半では戦場で親子が再会するが、エリオルのもとを去るマキアに対してエリオルが再び「母さん」と言った所は泣けた。

 

 時が流れてジジイになったエリオルにマキアが会いに行くラストシーンが綺麗で泣ける。親子の思い出の回想シーンが流れるのだが、アレは完全に泣かせにかかっていた。

 エリオルと最後の別れをする時にはそれまで頑張って来たマキアの緊張の糸が解けて大声で泣いちゃう。あそこも良かった。

 

 登場シーンはちょっとなのだが、物語の合間合間に平田広明演じるイオルフ男性が登場する。こいつがちょっとしか出ない割に美味しい位置でしっかり印象に残る役であった。マキアとエリオルを見た彼がつらいだけ以外の別れもあると感じたのは良かった。

 

 マキアの友達のイオルフの娘レイリアも人との間に子を産んで母になる。レイリア目線でも母の想いが描かれるでこっちはこっちで趣があった。

 レイリアをずっと想っていたクリムが可哀想な扱いだったのも印象的。

 

 レナトと呼ばれ翼竜のような巨大生物が登場するのだが、これが暴れるシーンを見ると、「エヴァ」の暴走を思い出した。ちょっと意識して作ってるのかなと想った。

 

 

 全て見終わってから激泣きして、マジで見て良かったと想った。歳を取るとこういうのは泣けてダメなんだよね。それに私なんかは母と仲良しだから、お母さんの愛とかをテーマで持ってこられるとまたジワッとくるんだよ。

 これは境遇的にも私の心に刺さったし、とにかく心が暖まる。というわけで、とりあえずは兄弟達に布教することにした。

 大人になって見ると更に刺さると想う。名作なので22世紀にもコレは残したい。

 

 

 海より深きは母の愛。

 

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