こしのり漫遊記

どうも漫遊の民こしのりです。

戦争の裏と表が見える奥深さ「ファイナルファンタジータクティクス 獅子戦争」

ファイナルファンタジータクティクス 獅子戦争」は、2007年に発売されたPSPソフト。

 これより更に10年前に発売されたPSソフト「ファイナルファンタジータクティクス 」の移植作品である。移植に伴い、いくつかの追加要素が加えられた。

 

 半年程前、NHKの良い仕事の一つとして数えられる「ファイナルファンタジー」の特集番組が放送され、それを見て初めて存在を知った。先にスーファミの「タクティクスオウガ」という本作と少しばかり関係性のあるゲームを遊んではまったことがあったので「ファイファンタクティクスオウガみたいなことやってる!こいつは面白そう!」と思った。いつかやろうやろうと思っていたのを今年7月後中旬からやっとスタートさせることが出来た。

 

 クソコロナの影響、そしてクソ暑い、というわけで例年の2倍外に出づらい夏休みを送っている。そんな自宅にこもりっきりの生活を少しだけ助けてくれるのが、ありがたいコロナ給付。10万円もあった分の数百円を使ってこのソフトを購入し、しっかり楽しんだ。コロナなんて来ないに越したことはなかったが、こうなったのを振り返ると、おかげ様で腰を据えてゲームを楽しめる充実の夏になったとも言える。まぁ何でも前向きに楽しくだな。

 

 というわけでコロナだろうが猛暑だろうが楽しく生きることを人生の最大最優先の目標にしている私が今回楽しんだ「ファイナルファンタジータクティクス 獅子戦争」の感想をつらつらと書いて行きたい。

 

ファイナルファンタジータクティクス 獅子戦争 - PSP

 

内容

 

 物語は獅子戦争という、中身を開いてみれば様々な人間の黒く醜い欲望が渦まく恐ろしい戦争を用いたものになっている。主人公青年ラムザは、この激闘の戦争時代を強く生き抜いていく。

 

 歴史学者アラズラムというおっさんの語りでゲームは始まる。この戦争は既に終わったものとなっており、我々プレイヤーはアラズラムと共に歴史を紐解くことで、物語の真実に迫っていくというテイストが取られている。

 

 表向きには戦争を終わらせた英雄は、主人公ラムザの親友であるディリータとなっている。逆にラムザは歴史的異端者として記録されている。我々プレイヤーは、ラムザを操って物語を進めて行き、彼がただ異端者として忌み嫌われるだけの男ではなく、真の英雄であるという真実を目の当たりにするのである。

 主人公なのに歴史に埋もれたダークヒーローのポジションなのが印象的。考え方によればラムザディリータのどちらもがヒーローにもダークヒーローにも見えてしまう。とにかく公に出来ない複雑な事情がつきまとう戦争だったのである。

 

 ファイナルファンタジーの名を冠しておきながら、この獅子戦争はファイナル感はありつつもファンタジー感が薄い。むしろリアル路線。リアルにありそうな黒々しい戦争の都合が詰まっている。強いファンタジー要素といえば、可愛いチョコボがこちらにも登場するのと聖石の力で敵の戦士がファンタジックな化け物へと変身することくらい。

 

 本作で扱う階級社会による人間の差別が横行した暗い世界観にはかなりのインパクトがあった。これを打倒するために剣を取る平民達の姿も多く描かれる。

 

 階級社会の弊害を受け、貴族階級のラムザと平民階級のディリータの友情に亀裂が生じる序盤展開から既にお話が重々しいものになっている。

 

 貴族と平民の関係性を搾取する者とされる者として描いてるのがよく分かる。恐ろしく愚かなことだが、これが人類の歴史の真実である。如実にその点の醜さが出るのが剣士アルガスの横行である。こいつは作中でもかなり上位のクズで、個人的には最も右のゲンコツを頬に食らわせたい人物だった。

 

 ディリータの妹ティータが逆賊に捕らえられて人質となった時、平民だから別に被害が出ても良いということで、ティータごと敵を討つことに待ったをかけなかったアルガスの行為は許せない。

 平民は貴族に支配されて当然であるという概念を掲げ、平民たちが人間の権利を訴えれば相手を家畜呼ばわりし「家畜に権利などない」という一言で相手の言葉を一蹴してしまう。このようにアルガス一人を見ても、汚れきった貴族の心が世に充満しているのが分かる。

 

 他にも戦争を影で操る悪い貴族連中や、教会一派の悪巧みが随所に見られる点は複雑にしてかなり重いストーリーでしかない。平和だったラムザ達4人の兄弟関係にも亀裂が生じ、多くのキャラクターが死ぬシリアス展開になっている。

 

 ファンタジーといっても従来の英雄譚とは異なり、かなり混み合った複雑な英雄誕生のお話になっている。なんといっても全クリまで進めた最後すら後味の悪い締めくくりなのが一番印象的だ。先に遊んだタクティクスオウガでもクリア時にD判定が出れば主人公が暗殺されるバッドエンドだったが、こちらもなかなか嫌なエンドを迎える。これだけ血を流して平和を目指した戦争を扱った作品で、しかも私など50時間程かけてプレイしたのだからスッキリ笑える大団円を迎えたかったぜ。

 

 というわけで重厚なストーリーには魅せられるものがある。ストーリーは暗いけど見ごたえがあって良いものだった。決して嫌いではない。

 

 血なまぐさい戦争を映すばかりで、その中に主人公のラブシーンもないのは寂しくもある。親友のディリータの方ならオヴェリア姫とちょっといい感じの流れもある。しかしこれも一時のものであった。

 

 ちなみに本作の推しヒロインはオヴェリア姫とそのお付の女騎士アグリアスだった。アグリアスが一番魅力的。中盤から最後までずっと出陣させたのがアグリアスである。アグリアスがいないと突破がかなり困難だったと想う。そのくらい強くて格好良いユニットだった。

 服装とか色合いの感じから先日見てはまったアニメ「プリコネ」のペコリーヌちゃんを思い出す。本作はキャラボイス無しだったが、凛々しいアグリアスが喋る時にはCV:茅野愛衣のつもりで妄想を楽しんでいた。イマジネーションは退屈を埋める、そして推しがいれば人生は楽しい、今作をプレイして改めて分かったことである。

 

 

ゲーム性

 

 ちゃんと全クリしたのだが、振り返って一番に言えることは「めっちゃムズかった」ということだ。タクティクスオウガも生ぬるいものではなかったが、こっちはもっと難しい。絶対に面白い一作だったのは確かだが、一筋縄では行かない。3面、4面くらいの早い段階で第一回目の足止めを食らった時には「あれ?こんなはずじゃなかった」と思い断念も考えた。ぶっちゃけ何回もギブアップの文字が脳裏に浮かぶことがあったが、それでも進めたくなる不思議な魅力を持つゲームだった。実際にプレイした連中もこれには共感してくれるだろう。

 

 ゲームをプレイしてまず想う難しい点が、こちらの出陣可能なユニット数が少ないこと。キャラはそこそこ登場するのに、基本5人しか出れない。対して敵は余裕でこっちの数を越えて出てくるので、単純に手数で圧倒される。ここは行動の高速化を可能とする「ヘイスト」「エール」などの力がないと切り抜けられない。かなり頭を使う。逆にこの少ない人数だからこそ緻密に戦略を立てることが必須となり、それゆえ真のタクティクスの面白みが分かるとも言える。でも素人にはやっぱりキツイと想う。

 

 一番手こずった箇所は、ヴィーグラフを追い詰めた後に聖石の力で変身するベリアル討伐エピソード。こいつもそうだが、聖石で変身するモンスター共は技がチートすぎてマックスのムカつきを与えてくれる。ベリアルにどうしても勝てず、ここで6時間くらい使った。簡単にクリアする者からするとバカ者扱いされる時間の使い方だ。渋々ネットで攻略方法を調べると、主人公の特技「エール」を使いまくって連続攻撃すればぬるいと分かった。この時、初めてエールの存在を知った。特に後半では主人公ラムザのみが持つスキル「エール」の恩恵に預かることとなる。エールがないとベリアルには一生勝てなかったと想う。

 

 セーブするタイミングによっては、後戻りしてレベル上げをすることが不可能となり、つまりは「積む」という残酷にして間抜けな最後も迎えかねない。重ねて言うが面白くて好きな作品だが決して優しくない。

 

 後半で仲間になるメリアドール、オルランドゥあたりがめっちゃ強くて、こいつら二人には大変助けられた。

 

 辛抱強い私ならこれくらい大丈夫の範疇だが、それでも一般的な目線から見てバトルのテンポがやや鈍い。魔法を発動したら処理落ちすることもある。もっとサクサク行けば良いのにと思う箇所もしばしばある。しかし映像は美しく、魔法などのエフェクトはお気に入りである。

 

 シリアスなエピソードやビジュアルを重視する一方、ユニットが死んだ時に響く間抜けなヤラれ声はおもしろ可愛くて良い。死んだ時の音はハマる。

 

 ジョブチェンジのシステムは面白い。気軽に楽しく転職が味わえるファイファンのジョブ要素は魅力的だ。ジョブは多数存在し、これを全て極めて行くのが楽しい。

 

 ジョブポイントを貯めるためには、普通に戦うだけでは効率が悪い。意図的に戦いを長引かせてちまちまとアクションを重ねてジョブポイントを貯める。「投石」で敵味方問わずの体力をちまちま削っていく、「ためる」「エール」を一生使い続けるなど、地味すぎて時には虚しくなる過程を経て貯めたジョブポイントは尊い。しかし、ジョブポイントが貯まるスピードとジョブスキル獲得に必要なポイント数のバランスが悪いと想う。一回のアクションでちょっとしか貯まらない割には、スキル取得にいるポイント数が高額すぎるだろうと想う。ジョブレベルがとっくにマックスに届いても、ポイントが貯まらないからジョブの技を全然覚えていないということがある。

 

 アイテム士で特訓しないとポーションなどの回復アイテムだって使えないのは厳しい。ポーションエーテルくらいは最初から誰にでも使える皆のアイテムであって欲しい。

 

 色々面倒ではあるものの、ジョブを解放する、スキルもたくさん習得するというやりこみ要素にはハマる。

 

  さっさとストーリーをクリアすればいいものを、こちらのやりこみ要素が楽しいためにかなりの時間を寄り道に使った。これはオウガバトルでも見られた現象である。主軸となる物語意外でもこうして楽しめるから本作は奥深い名作だと言えよう。

 

ファイナルファンタジータクティクス 獅子戦争 - PSP

ファイナルファンタジータクティクス 獅子戦争 - PSP

  • 発売日: 2007/05/10
  • メディア: Video Game
 

 

 難易度が高めだっただけに、クリア時に達成感を得られる名作だった。

 普通にRPGをする本来のファイファンよりもこっちの外伝作品の方が肌に合うな。 

 

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