こしのり漫遊記

どうも漫遊の民こしのりです。

人生は輝いている「シャイン」

「シャイン」は、1996年に公開されたオーストラリア映画

 

 実在するピアノ弾きデイヴィッド・ヘルフゴットの半生を綴ったヒューマンドラマである。

 

 ピアノのことは素人なので彼のことは知らないままに視聴したが、なかなかの熱量で描かれる味わい深い作品だったので楽しめた。

 デイヴィッドを演じた役者は特訓を重ねて実際に自分で演奏しているという。すごい努力ではないかと評価出来る。

 

 様々感想が浮かぶものだったので、浮かんだままに色々書いていこう。

 

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 天才的ピアノ少年だったデイヴィッドは、大きくなると父の反対を押し切って留学し、更に腕を上げてコンクールで賞を取るようになる。成功だらけの人生かと思えば、ピアノコンクール終わりには倒れてしまい、それからは精神的におかしくなって精神病院に入ることになる。そこから少しずつピアノに触れ、ピアノ弾きとして再起するまでの物語が描かれる。

 

 なかなかにハードな人生を描いている。

 

 最初はすでに精神を病んでおかしなことを口にするようになったデイヴィッドの語りから始まる。「僕は猫だと思った」という何言ってんだが謎な語りから始まるので、一体どんな作品なんだと入り口に不穏なものを感じた。

 

 前半の見どころは父との戦いにある。父の存在感がなかなか強い作品になっている。強くなければ社会では生き残っていけないなど、様々な教訓をデイヴィッドに与えて育ててきた厳格な父である。父は確かにデイヴィッドを大事にしていたのだろうが、家族の平和な形が壊れることを危惧してデイヴィッドの留学にとにかく反対する。乗り越えて行く壁としてデイヴィッドが父とぶつかるシーンはシリアスだ。

 

 デイヴィッドがピアノで成功して新聞記事になれば、それをスクラップブックに閉じてにこやかに見返す父の姿は印象的だった。厳しい父だが息子への愛をたっぷり持った良い父に見えるのが良い。

 

 基本的には良い父だけど、ことごとく留学の話を握りつぶそうと行動する点には、やや狂気というか、DV気質をみることも出来る。強制収容所の関係で、父はかつての家族がバラバラになったことを経験してると語っている。家族がバラバラになる恐怖をよく知るからこそ、息子を他所の国にやるのが嫌で仕方なかったのだろう。この点が分かると、息子を縛り付けようと躍起になる父のことも悪くは言えない。他にも娘が男と会っていたらこれも看過しない点が怖い。

 

 結果的にデイヴィッドは家出というか、勘当の形で留学することになる。

 家を出ることは息子をやめることで、妹達は兄を失うことになる。他にも親を愛していないのかなどなど、父が息子を引き止めるために吐く言葉はどれも胸に痛く刺さるものだった。足止めの言葉としてこういうのを用いるのはちょっとずるい。デイヴィッドの留学で父と子の関係性に不和が生じる展開はキツイ。やや愛が重くはあったが憎めない父の姿が印象的だった。

 

 デイヴィッドが子供の頃から、父がとにかく弾かせたがるのがラフマニノフの「ピアノ協奏曲第3番」という曲。やはりこの手のことは素人なので知らないが、この曲名が出ただけでもよく知る者たちは思わず反応を示す。なぜかと言うと、めっちゃ難易度が高い一曲らしいからだ。

 

 留学先のロンドンで遂にデイヴィッドはこの難関に挑戦しコンクールで披露するまでに至る。レッスンはかなり厳しいものだった。ロンドンは相当寒いらしく、デイヴィッドが手袋をはめてピアノ練習するシーンが印象的だった。

 

 コンクールでラフマニノフを披露するシーンはすごい迫力だった。絶対にこれを弾くと疲れるということは伝わった。体力、精神を共に削るとんでもない曲だったようで、弾き終わったデイヴィッドが目を開けたまま倒れて気絶するシーンは怖かった。

 

 ここから回復すると精神を病んで精神病院送りになる。精神を削るくらいに厳しい難関だったラフマニノフの楽曲が恐ろしい。

 

 有名ピアニストが一転して精神病院送りになる展開は痛々しいが、病院に入ってからのデイヴィッドはおかしくなっても口数が多くてとりあえず明るいからまだ救いがあったと想う。

 

 精神を病んだ後に父がデイヴィッドに会いに来て、愛の深さを息子に伝えてくれるところにはグッとくる。色々あったけど、こんなに愛してくれる父なら良いではないか。

 

 こんな状態になっても出会いのチャンスがいくつかあり、デイヴィッドは六星占術で食っている女性と結婚する。六星占術の彼女が古臭いパソコンを使い、占いのソフトで相性診断するシーンが印象的だった。こんなのがあるんだと学びになる。

 

 最後には再びコンクールの舞台に立って優勝して涙するデイヴィッドの姿を映して物語は終わる。感激して泣いているデイヴィッドをの姿が良い。

 

 家族の問題を扱ったヒューマンドラマ展開と美しいピアノ演奏も楽しめる感動の一作だった。これを見てから私も父に更に優しくしようと思った。

 

 

 

 人生は輝いてる。

 

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