「バロム・1」は、さいとう・たかをによって描かれた傑作ヒーロー漫画である。
1970年から漫画雑誌「週刊ぼくらマガジン」にて1年間連載された。
この度、我が倉庫の漫画置き場から本作の愛蔵復刻版が発見された。めっちゃデカくて分厚い。ならば重いのが上下2巻でリリースされた。1冊の新品定価が約3000円なので「高いな~!」となるしかない。
とまぁ出て来たなら読むしかないってことで読んだわけです。
お~こちらはタップリと当時の雑誌感が復刻されていて、各ページの枠外を見れば当時の連載作品の広告が出ていたり、作者のさいとう先生に応援のおたよりを書こうと案内があって住所まで記載されている。もちろんおたよりコーナーは現在だと募集を締め切っているという注意書きもある。
広告には同雑誌に掲載された他作品の紹介もあった。知らない作品ばかりで、世にはこういう作品もあるのか~となるものだった。ちょっと面白そうでいくつか気になるものもあったな。
あと枠外には、巷で噂のあれこれを調査して報告する読者投稿コーナーがあった。これがめっちゃミニマムな日常話になっていて面白い。たまにクスリと笑えるユニークなものが出てくるから良い。途中からなくなったけど、この巷調査コーナーが地味にツボって面白かった。掲載誌の味が出ているな~。
全然知らん大昔の雑誌を当時の紙面の感じで楽しめるのは良し。この形態で読めて良かった。
しかしこの濃いタッチで見る名作ってのも今だとしっかり乙なものだな。最近の作品の画風を見れば、キャラ絵の線が細いし多いと思うが、さいとう氏のタッチは濃くて力強い。このいかにも「漢」な感じの濃い顔が良いね。バロム・1も濃い顔の良い男なのよ。なにせあのゴルゴの作家だからな。あの画風でこの爽やかな少年向け漫画を描くのはレアなのかも。
こちらの作品は先に特撮テレビドラマの「超人バロム・1」を見たことで知っていた。漫画だとタイトルに「超人」が無いのね。まぁ間違いなく超人の物語ではあったけども。
これは父のおすすめ作品その1でした。ガキ二人が合体して格好良い超人ヒーローに変身するのは斬新な発想で衝撃的だった。
二人で変身なら本作以外に「ウルトラマンA」「ふたりはプリキュア」をパッと思い出す。プリキュアを見た時には、合体ではないけど二人でいないと変身出来ないから女版バロムだなと思った。
特撮だけでなく漫画もあるよと父に教えてもらい、古本屋を探していたらこちらの復刻漫画が上下セットで置いていたからゲッツして読んだんだよな~。それが何年前よ。
こちらの愛蔵版が1998年発売となっているが、これを買ったのはそれよりずっと後だからな。この発売段階から振り返ってもとっくに大昔の漫画なんだな。50年くらい前の漫画を今読むってのもなかなか趣があって良しですね。
特撮と漫画の違いでどうしても印象的なのは、主人公のバロム・1の見た目が変更されていること。特撮は覆面ヒーローが基本だからってことでしっかりと格好良いマスクをしているんだけど、原作漫画だと合体して大きなお兄さんになった顔が丸見え。まさかのマスクなしだった。先に特撮を見た勢からすれば結構驚きです。でも頭のシルエットは共通するものになっているんだな~。マスクなしのバロム・1の髪型が結構特殊なのかも。
それから来年には特撮のバロム・1のBDが発売すると決定しました。それは見たいな。綺麗な映像でまた見たいです。ウデゲルゲやクチビルゲにまた会いたい。ドルゲ魔人はライダーや戦隊の怪人とはまた違ったキショいデザインのが多かったよな。あれはあれで好きです。
この夏休みにちょいと時間を使って読んだところ面白かったな。やっぱり子供心に楽しいように考えて描かれているのね。夢と希望のワクワクがあります。読みだしたら結構一気に行っちゃうものだな。
そういや最近のガキは、その性分を「ドパガキ」だなんて揶揄されていて、活字を読む集中力に乏しいとかなんとか言われているようだが、漫画の一冊くらいは落ち着いて読めるんだろうな。最近は漫画も売れないというから子供も読んでいないのかなとか思ったり。まぁ私だって読むことが減ったものな。
そんなガキ共には、友情を意味する正義の言葉「バロム」をもっと言い聞かせて問題ないだろう。現代の子供達にもバロムの心得を叩き込め。良いものですよ、友情って。私は友人を持たない主義だが、それとは別に友情が好きです。
それでは正義と友情の物語を読んだ感想と行こう。
内容
正義の使者 コプー、悪の権化 ドルゲ、この2つの力が宇宙を股にかけて衝突していた。
その悪のドルゲが我々の地球に舞い降りることになった。コプーは地球で戦う代理人として白鳥健太郎、木戸猛の二人の少年に正義の力を授けた。
二人の少年は、両手をクロスして友情パワーを重ねることで、正義のエージェント バロム・1に変身する。
超人パワーを発揮してバロム・1は、悪のドルゲと戦うのだ。
感想
普通なら大きなお兄さんが悪と戦う宿命を背負いそうなものだが、そこが小学生の子供2人なのが当時としては斬新な設定に思えた。
掲載誌名が「週刊ぼくらマガジン」なものだから読者である「ぼくら」から共感を得て支持されるであろう少年ヒーローにしたのは気の利いた設定であると同時に大きな挑戦だったのだな。
これの特撮ドラマでも出てくるワードの正義のエージェントは耳に残る。思えばエージェントとは、本作で初めて知った言葉だった。
コプーが自身の代理人に指定した二人が元々仲良しだったわけではなく、物語開始時から因縁によって揉めていた仲だったのもまた意外なものだった。
タイプが同じ仲良しではなく、健太郎はインテリな秀才、対して猛は喧嘩上等な番長ということで真逆に設定されているのが面白い。
この属性の真逆っぷりから当初こそ二人の心は反発しあうのだが、そこから寄り添っての融和、果てには心身の融合に持って行く展開に熱い友情と教養があって良い。
「ドラえもん」で例えると出木杉とジャイアンをコンビ主役にしてのび太を排除した世界だな。その上でドラえもんにもっと神秘性を持たせた存在のコプーをお助けキャラに添えた感じかな。というドラえもん脳で振り返るバロム感想。ドラえもんもバロムも大変良き読み物です。
夢とロマン、心を熱くするバトル、胸にグッとくる友情物語、少年誌に欲しい要素が基本設定に詰まっている。これは良き材料で美味しく調理したものだと言えよう。
一番最初のエピソードでは、反りが合わないことから主役の二人が揉めた末に、荒れた海をボートで一周りする昭和熱血根性試し合戦が始まる。そこにガキが乗れるボートがあること、そしてこいつらがとりあえず運転出来るくらいの技術を持っていたことで面倒が増えたな。
波風立ちまくりの大荒れの海に、ガキだけが乗ったボートが出る。これは昨今世間を騒がせた辺野古の船転覆騒動が記憶に新しい内だったらテレビで流せないような内容だな。50年前のガキは、荒波の中でも根性試しが出来るくらい無駄に逞しい根性と元気があったようです。
ただでさえ濃いタッチの絵で荒々しい海の背景なんて見れば読書するだけでもカロリーが持っていかれますな。序盤から広がる景色が荒々しい。
ここで一悶着あったのをきかっけに、なんだかんだ二人は仲を深めて行きます。荒事の中でも本気でぶつかれば互いの心が見え、それに触れて男は分かり合い仲良くなる。そういうものらしいです。理性的で賢明な私が用いることがないコミュニケーション手段だが、かといって別に嫌いじゃないノリです。
ドルゲの巨悪に対してコプーが選んだのがまだ小学生のガキで、自分は声を届けるだけであとは全部少年達に任せるのは無責任だと思ったが、まぁ彼は彼で他にやることがあり、それを頑張っていたと後で分かります。
宇宙から攻めて来るドルゲは日本にしか降りてこない。これはコプーが地球の大部分をガードをしているためで、彼が最大限頑張っても日本侵入ゲートだけは封鎖出来なかったとのことです。他の地に舞い降りることは出来ないが、日本だけは狙い目の穴となるのでそこに敵が集中する設定になっている。
コプーがもうちょっと頑張れるパワーを持っていれば日本も完全ガード出来たのに。とりあえず日本人が不憫になる設定。とまぁコプーはコプーで頑張っているので責めないであげよう。
少年達は諸々分からない中、手探りでエージェント業務をこなすことになるから精神的に不安だったろうに。こういうのって誰かしらから色々説明がある上で能力について理解していくものだろうけど、コプーからの説明は実にざっくり。
健太郎と猛は変身方法や万能武器のボップの性能についてもあれこれと手探りで解明していくことになる。
急に超人の力を得たといっても何をどう発動するんだい?とはなりそうなもの。主人公達がそこに向き合うターンを長く描くのは割とリアル思考だった。
特に便利なアイテムのボップとは一体何がどこまで出来るのやらとなっているのは、見ているこちらも気になるものだった。それをちょっとずつ知ることになる展開には結構ワクワクしました。結果ものすごい優秀なアイテムで、もしかするとこれがないと対ドルゲ戦では詰んでいたかも。
ドルゲの作戦は社会をひっくり返すような厄介極まりない騒動を起こすこと。害悪過ぎました。
人間だけではなく動物の骨格標本、廃車置場の車全部、カラスの大群、巨像の死体などを怪物化して操っては社会に混乱を起こす。他には殺人シャボン玉を飛ばす、古代生物の巨大ミミズを現代に復活させて大地震を起こすといったサイエンスな悪巧みも展開した。
最終章では、ドルゲサイドでも人間の中から悪のエージェントを選んで超人ドルゲマンを降臨させてバロム・1を苦しめた。
とまぁやることは規模の大小様々あって、悪者としての仕事ならサボることなく仕掛けて来ます。怖い怖い。
カラスの大群を操って殺人鳥部隊にした回を見れば、鳥が怖いので同じみのヒッチコックの名作映画「鳥」を思い出した。あれは面白い映画だった。
結構シリアスな運びもあり、猛が恋していた同級生女子がカラスの大群に襲われて死んでしまうショッキングシーンもあった。当然だが悪のドルゲは見境がないのでガキでも老人でもなんでも消しに来ます。
廃車軍団を相手取る回では、健太郎と猛が揉めて喧嘩状態になり、そのため友情パワーが足りずにバロム・1に変身できなくなるアクシデントが発生する。
変身出来ない中で物語が展開するこのヤバさはプリキュアでもあったやつ。友情パワーが味噌な以上、喧嘩をしていると力を使えない弱点があるのは印象的。これを越えて再度変身出来た時が、二人の友情が真に深まった時。そこを描いたのは教養の経典としてナイスなところ。
地震を起こす作戦で来られた時の街のぶっ壊れ様は酷いもので、あの東京タワーまでが倒壊している。
つい最近でも日本でリアル地震があったから、もしこれを映像化する話が今あったなら流れていただろうな。地震大国においては、内容に地震が関わるエンタメ作りはリスクが大きい。昨今はそれを感じることが連続しますな。
このくらいになると世間で起きる怪事件を解決して周っている謎の超人の噂も広範囲に広まり、遂にはマスコミが探りを入れてくるようにもなった。警察と連携して事件解決することもあったので、バロム・1もすっかり有名な謎の人です。
敵の作戦が進行中でその場が危ないのにも拘らず、マスコミがバロム・1を取り囲んでインタビューをしてくることがあった。その際には周囲をふっ飛ばしてしまうような強力な技が使えなくて困ってしまうこともあった。こうなってはマスコミ活動が害悪となる所謂マスゴミ化の完成なのである。
まぁいつの時代もマスコミ屋ってのは、その質に関係なく多くからの注目が集まる最新のあれこれを求めがち。それが仕事であり、やることのほぼ全てだから行動原理は分かるが、にしてもバロム・1に迷惑をかけんなよ。
敵のドルゲは宇宙の悪の集合体ということで、それが密集してあのような黒い霧上の化物に見えるのだとか。あの禍々しい悪の象徴の描き方にもインパクトがある。特撮ドラマでもあの形のままにスーツ化して表現されていた。
その正体は円盤の中に脳みそだけがあるというバイオにしてサイバーな大変キショいことになっていた。ボスの正体がアレなのも結構ショッキングな絵。
あのキショいドルゲを中盤で一回やっつけるも、ああいうのが宇宙にはまだいるとなって、後半戦でも次の円盤がやって来て戦いは続く。最終回で悪のエージェント ドルゲマン共々排除したドルゲ円盤もまた宇宙の悪の一部に過ぎず、バロム・1の戦いはまだまだこれからだの感じで終わっている。いつの時代にもおれたたエンドはある。
宇宙には無限の悪があり、我々地球人は常にそれと向き合い戦って行かねばならないのかもしれない。とかいう深い考察をして終わろうと思ったら、巻末の作者インタビューを読むに、雑誌自体が無くなったからとりあえず終わるしかなかったようです。それで切りよくああなったみたい。ドルゲマンでもっと長く面白く話を引っ張ることが出来たと思うんだけどな。
特撮ドラマ版も制作サイドが予想もしないテクニカルな苦情が来たために不完全燃焼で終わってしまい、漫画も掲載先が無くなって終わりということなので、振り返れば良い作品ではあったが不運でもあったかもとさいとう氏が語っていた。まぁそれはそう。
それでもバロム・1は、いつまでも我々の心に輝く友情の化身なのだ。色々あったけど生まれて来てくれてありがとう。最高に正義のエージェントしていました。
あと実はアニメにもなっていると最近知ったのでそれも見てみたいと思う。青春にはどれだけ追いバロムしても問題ないから。
というわけで愛すべき超人ヒーロー漫画の振り返りでした。
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