こしのり漫遊記

どうも漫遊の民こしのりです。

シェーン、カムバック「シェーン」

 「シェーン」は1953年にアメリカで公開された映画。西部劇の中では有名すぎるので見たことない奴でも名前くらいは知ってそうなもの。

 著作権が50年持つというが、この作品なんてとっくに50年以上前のものとなっている。キャストの方々も大方亡くなっているだろう。本作に登場する可愛い少年ジョーイだって生きていてもとっくにジジイだな。

 ノストラダムスがどうこう言ってた世紀末が既に懐かしいのに、そこからまだ50年も前の、私が生まれもしない遠い世界に想いを馳せてこれを見たのである。

 もともと古いけど私が始めて見たのは確か15年くらい前。そして今になってもう一度見てみた。

 

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 舞台は南北戦争が終わって、土地を開墾していこうという時期にあたる、とっても古き時代のアメリカの地ワイオミング州ということである。地理については知識も興味もないので、アメリカってだけで広くてよく分からないのに、その中で何とか州って言われても全然しっくりこない。

 古き時代と言っても、この段階で十分おしゃれなアメリカのカウボーイ達に対して、同時期の日本はおちょんまげをするのを止めかけていた時代だと考えると、日本って遅れている。

 

 話の内容に触れるよりも前にまずすばらしいのは、本作の舞台であるどこまであるんだってくらいに雄大広原である。世界広しと言えど、古今東西にこれほど素晴らしい景色があったのかと思わずにはいられない。

 

 この話は広原の地を耕して暮らす農民の方々と、そこの悪徳なる地主とのいがみ合いを描いたものである。

 悪徳地主のライカーは、広原に住まう人々を色んな嫌がらせで脅して追い出そうとする。家の柵を壊す、豚を殺す、家に火をつけることまでやるのでマジで意地悪な連中だと思った。私なぞは町内会でこのような悪事を働く者がいれば迷わずクロスチョップを食らわすであろう。

 そんな脅しに屈さずに闘うナイスガイのジョーの家に、これまたナイスガイな流れのガンマンシェーンがやって来て、皆で力を合わせてライカー一味をやっつけるというお話。

 その中でシェーンとジョーの息子ジョーイとの男の友情も描いている。

 どうなんだろうって思うのは、ジョーの嫁とシェーンはやっぱり両想いで惹かれていたのであろうかという点。そういう設定ぽいけど、全くそうなのかと捕らえるには濁している感もあった。危うく不倫ものになりかけそうだったのでヒヤッとしたぜ。

 あとはジョーの家の食卓に並ぶパイがとっても美味そう。

 

 ジョーの家の庭にすごいでかい切り株がある。序盤のシーンでジョーはそれを斧で打っているのだが、シェーンが合流してからやっと切り株の始末を終える。 

 ジョーは深く根付いた切り株と2年も格闘したと言う。嫁が馬に引かせて引っこ抜けばと提案するが、ここまで来たら人力でやり通すと答える。このジョーのアナログ魂が私的にぐっと来た。格好良いではないか。私はあの切り株と比べたら、まだまた弱い庭のドクダミの始末でひいひい言っているので見習わなければと思った。

 

 カウボーイとかガンマンとかいう連中って荒くれ者ですぐに銃を抜くイメージがあるが、この時には明確な法律で縛られていて、敵のライカー達も殺しには出ずに脅している。ラストの銃撃戦以外では、酒場で殴り合いの決闘をしていた。

 

 悪者共の行いを静める保安官を呼ぼうという話になっても、保安官は遠くの街にいてこんな田舎にはすぐに呼べないという状態であった。こうなると悲しいことだが、あらゆる地域で犯罪は起こると仮定し、間隔を詰めて各所に交番を置くその必要性が理解できた。今の日本は、割りと間を置かずに交番が色んなところに設置されているので安心だなと思えた。警察組織の発展も未熟な時代だったのだと思って見ていた。

 

 ライカーは確かに悪者だが、自分達だって頑張って土地を開墾し、その過程で大半の仲間は死んだと苦労話を打ち明けるから、悪者でもそういうこと言ったら憎めないじゃないかと思った。後から来た入植者が甘い汁を啜っているようで許せないというライカーの言い分も全く理解できないわけではなかった。

 

 やっぱりシェーンは格好良い。酒場での殴り合いでも強さを発揮したが、ジョーイに銃の撃ち方をレクチャーする時に始めてお披露目したあの早撃ちは度肝を抜かれる格好良さであった。

 ライカーの所に一人で乗り込もうとしたジョーを想い、殴り倒しでも止めて、一人で敵地に乗り組んだという友情に厚い所も良い。

 

 最後のシェーンとジョーイの問答は心に染みた。

 人に銃を向けることを一度は止めたシェーンが結果的には、銃を抜いて悪人共を殺してしまう。それをジョーイに英雄的に見るなんてことをさせず「一人でも殺せば、一生人殺しの汚名がついてまわる」と自分の行いが褒めたものではないことを子供にちゃんと教えている点は道徳的で良い。シェーンの「頑張ったけど、生き方は変えられなかった」のセリフが切なかった。やさしい男なのに、戦地に身を置かずにはいられない運命を呪っての悲痛な一言であった。

 

 で、ラストは言わずと知れた名場面、名セリフを楽しめた。

 殺しを行ってこの地に留まれなくなったシェーンはまた旅立って行く。それを見送りながらジョーイが「シェーン、カムバック!」と叫ぶ。この終わりは印象的だった。

 流れ者のシェーンが、辿り付いた地で落ちついたと思ったら結局また流れていく。これを見て「るろうに剣心」で主人公剣心が言った「拙者は流浪人 また…流れるでござる」のセリフを思い出した。

 あと「シェーン」のラストシーンと言えば、映画「クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ!夕陽のカスカベボーイズ」の予告CMで、みさえが「しんのすけ~かむば~く」と叫ぶあのパロディが世代的に馴染みがある。

 

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 やっぱり男の子はチャンバラと銃でドンパチが好き。

 

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