「きみの声をとどけたい」は2017年7月公開のアニメ映画。
先日BDが発売されたのを視聴した。
こんな作品が劇場公開されていたとは全く知らなかったので、内容も知らずにとりあえず見てみた。なんかジャケットからジブリっぽい爽やかさを感じた。
先にキャストを見ると、知らない人ばかりだった。それもそのはずでメインの登場人物は新人声優が演じている。メインで登場するのは7人の女子高生で、6人は新人声優が演じ、残りの1人はみもりんこと三森すずこが演じている。修学旅行で問題児盛りだくさんの班に学級委員を一人放り込んでおけばなんとかなるというアレを思い出した。
新人さん達のフレッシュかつ一生懸命な演技が印象的、そしてもはやベテランのみもりんのお声はやっぱり良い。高校生の娘とその母をさっくり演じ分けるみもりんの腕前はさすがである。
物語の舞台は夏の湘南。女子高生が勉強や友人関係で悩み、成長していく青春そのもののストーリーに、「コトダマ」というあるといえばあるし、ファンタジーといえばファンタジーな要素を盛り込んだオリジナルアニメーションだった。個人的にアニメでオリジナルを放り込んでくるという心意気はかうことにしている。よくやった。
悪しきことを念じれば不幸が自分に帰ってくるという「コトダマ」の作用については、こういうことあるっちゃあるよねと頷いてしまった。
主人公が偶然潜り込んだのはかつて喫茶店だった現廃墟。そこにはミニFMの設備が生きていて、ノリで放送してしまい、またノリで夏休みの期間を利用してラジオ放送を継続させることになる。ラジオを通じて届けたい人に、届けたい声を送るという大切なことを言っている作品だと思う。友達とわいわいしてラジオのお喋りを楽しみ、そしてジングルも作ってしまうという凝り様だった。
会って話すと書いての「会話」すらも電脳空間で済ませがちなこの現代に向けて、生の「声」を発することの大切さにポイントを絞った点は評価できよう。アナログ推しアニメで、カセットにレコードまで登場する。もはやレコードのかけ方も分からない世代を描写していた。
それにしても、「湘南」「海」「夏」「ミニFM」のキーワードからどうしても名作映画「波の数だけ抱きしめて」を思い出す。あの映画も良かった。
本作の「波の数だけ抱きしめて」感は嫌いではない。
作品のざっくりな感想は本当に普通に良かったという感じ。
飛びぬけての感動はなく、悪いところもない。
女子高生という何かを期待してしまいそうな若き娘達が主役だが、エロ要素は皆無の健全そのものな作品であった。たまにはこういう純度100パーセントの物語も良いではないかと思った。
背景画がとても綺麗で、爽やかな夏が演出されていた。
BDでオーディオコメンタリーも聞いたのだが、劇場での生コメンタリーという収録方法で、スタジオでやっているわけではないためちょっと声が聞き取りずらかった。
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こんな時代だからこそ、生の「声」を発すること、また耳を傾けることを意識しましょう。