こしのり漫遊記

どうも漫遊の民こしのりです。

だんだん冴えてくる「冴えない彼女の育てかた♭」

冴えない彼女の育てかた♭」は、2017年4月から6月まで放送された全12話のテレビアニメである。

 

 アニメ一期ラストは倫也が「俺達の戦いはこれからだ!」と言ってネタっぽく締めたが、ネタに終わらずちゃんと帰って来てくれてよかった。そんな前作から確実にパワーアップして帰ってきた素晴らしき二期となっている。

 

 

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 見所は様々あったが、まず注目したいのはアニメ一期同様サービス精神旺盛にお届けした第0話についてだ。こちらも開幕から閉店投げ売りセールのごとく勢いで実に景気良いものとなっていた。一期の0話が温泉回だったのに対し、二期の0話はファイブヒロイン揃い踏みでの水着回となり、目の保養になりすぎた。視聴後には視力がちょっと上がったのではないかという愉快な錯覚を起こすほどだった。

 改めて5人のヒロインはそれぞれ華があって画面が映える。各々の関係性も愉快で良い。英梨々は本当に誰に対しても区別なく噛み付いていくのが面白い。

 

 アニメ一期BDオーディオコメンタリーの中で赤﨑千夏が、5人のヒロインの内自分の担当する羽島出海だけキャラソンがないとスタッフ連中に物言いをぶっかましたことがあった。二期製作にあたって出海のキャラソンも仕上がり、第0話のED曲には出海のキャラソンが流れて良かった。

 

 今回でもただ萌え萌えするだけで終わるのではなく、倫也のサークル内で起きる人間ドラマの魅力がたっぷり見られた。

 倫也達同人サークルが初のゲームを遂に完成させ、その後には詩羽と英梨々が紅坂朱音率いる大手サークルに引き抜きに合うという大きな展開が待っていた。なかなか先読みが難しい怒涛の流れで大変楽しめた。そして中盤ではタイトルである「冴えない彼女の育て方」が倫也の作る次なるゲームタイトルとして登場する。物語の確信を突いて行くための助走が終わり、いよいよ加速付いて来る感じに胸がキュンキュンきたものである。

 

 アニメ一期ではアニメやゲームを好きなオタク心理がタップリ描かれていた。二期では、そこをもっと深堀りしたオタク心理を知るクリエイターの矜持が描かれている。この点が大変面白い。

 倫也のサークルに所属するメンバーの内、クリエイターの矜持を持って活躍しているのが詩羽と英梨々である。倫也のことが好きでサークル活動に参加した二人だが、職業人として腕を磨くためであれば愛だ恋だばかりは優先出来ず、上を目指すために二人揃って別サークルに武者修行に出てしまう。人間関係のことを差し置いてでも、上を目指すことに待ったかけることが出来ない作家心理が反映された二人のアクションには納得出来るものがあった。ここに熱いドラマが見られる。

 

 倫也の側にいて甘えが発生することで、英梨々はスランプに陥る。大好きな倫也に応援されても書けなかったのに、紅坂朱音のかなり荒いアクションを受けるとスイッチが入ってスランプから脱することができる。より追い詰められた環境下での方が力を発揮できたという英梨々の作家ならではの心理をを捉えた点には深いドラマを見ることが出来る。同時に甘やかされるだけでは人は育たないということも分かった。英梨々の作家としての苦悩と倫也への愛が見られる濃いドラマ展開は一品なものだった。

 

 英梨々を独占したかった倫也の想いも見え、幼馴染の二人はある意味共依存の関係だったのではと思える。これも深い縁があって成り立つ関係性であり、二人の複雑な関係性は楽しめるものだった。

 ディレクターとしてやっていくなら、クリエイターが提出したもののダメな所はダメと言える理解力と勇気が必要という詩羽の言葉が深く印象に残る。おふざけの多いキャラも多いが、クリエイター心理を突く点においては極めて真面目でシリアスで面白かった。

 

 揃ってサークルを後にする英梨々と詩羽の関係性についても新たな発見があった。毎度毎度めちゃめちゃ喧嘩ばかりする二人だが、どうやら良いカップルとして推せるのではないかと確信が持てる展開が二期には用意されいてる。

 二人の出会いを描く回があり、実は互いが互いの作品のファンだったということが分かる。互いのサインを欲しがっていたことをお互いが不器用に伝え合うシーンに萌える。倫也を巡って喧嘩ばかりの二人だが、お互いクリエイターとしての腕を認め合うことで切磋琢磨していく関係性が見られて良かった。結局仲良しな二人の関係性が濃く描かれるのが良い。

 

 英梨々と恵が親友になっていく関係性にも萌える。一期後半では互いがファーストネームで呼び合うようになっていく瞬間を捉えた萌えエピソードがあったが、二期でも二人がもっと良いコンビになっていくのが見られる。

 詩羽と恵の関係性にも変化が見られる。あくまで気安くややトゲのある言葉を交わし合う愉快な仲になっていて安心である。

 

 二期で一番注目な点は加藤恵の進化である。着実なメインヒロイン化を迎えている。 

 それまで空気だった恵が、学校で男子から愛の告白を受けるようになる。恵のメインヒロイン感が醸す魅力に周りの連中が気づき出すのである。倫也はじめ詩羽や英梨々がメインヒロインとしてコーディネイトしてきた良い結果が見られるようになった。

 

 サークル内での恵の立ち回りを見れば、彼女の心境の変化が良く分かる。オタクとは、ギャルゲーとはなんぞや?なテンションで倫也達の暴走に流されるままだった恵が、自らスクリプトを学び、ゲーム作りに積極的に参加する姿が見られるようになった。時には倫也に先んじてサークル活動を引っ張るガッツも見せる。その中でそれまで見えづらかった恵の喜怒哀楽の感情とそれによって変わる表情も良く見られるようになった。特に驚きなのは、自分以上にサークルを愛してるのは恵だと倫也から指摘され恵が涙をこぼすシーン。ともすればアンドロイドのようにも感じられた女が熱き涙を流すまでになったのかと親心でもって感動出来る。感情豊かなヒロイン性が徐々に育っていく感じにワクワクとドキドキがこみ上げる。

 

 作中で一番歪なキャラ性を持つよくわからん女だった恵が一番成長していると感じる。時制の変化と共にキャラが成長しているのは物語を追っていけば分かることだが、それが視覚的にも良く分かる仕掛けとなっているのが恵の髪型の変化にある。最初はショートボブ、その後は紐で結んだ先が徐々に伸びていくポニテ、ロングヘアの解禁、そして最後にはまたショートボブに戻る。恵の髪型の推移から時間の流れとキャラの成長が見ることが出来る。この仕掛はおしゃれで良かった。

 まぁそれっぽい考察は抜きにして髪型をいじることで恵の多彩な魅力が分かるのが良かった。結局最も良かった恵ヘアーはどれだったのかというテーマで論争を起こす軍団がいくつかあったらしいが、私の趣味ではロングヘアーかな。文化祭のキャンプファイヤーポニテを脱して黒髪ロングが解禁されたシーンには興奮と感動を覚えた。

 

 二期からは完全に恵に落ちる。一期序盤だと詩羽の方が好きかなとか思っていたが、恵が見る度に綺麗になるし、あとちょっとエッチで良い。丸々一話倫也と二人っきりのシーンが続く第8話は大変萌えた。恵に正妻オーラが宿っていく過程も楽しめた。

 

 サークル活動を通して深まる人間関係、進退あっても先に進んで行く倫也の青春の戦いが楽しめるものだった。

 

 本放送を見ていた時から一番衝撃だったのは、最後の最後で詩羽が予告なしに倫也の唇を奪うシーンだった。あれはマジで衝撃だった。誰よりも先んじて唇を取りに来たことで、それまでは時にヘタレな部分も見せた詩羽の女の意地を見ることが出来た。

 

 冴えカノといえば楽曲が優秀。二期ED曲「桜色ダイヤリー」は作品音楽でもかなり好きな部類に入る。久しぶりにアニメを見たことで久しぶりにこちらの曲も鬼リピしている。本放送の時からも好きで、今になって聴いてもやはり心に響く。この曲を聞くと心が震えて泣けるんだよな。本当に良い曲だ。もっと有名になっても良いと想う。「奇跡が降った坂道」という物語のとっかかりとなるイベントから始まる歌詞も大変良く、しっかりアニメとリンクしている。メインヒロインになりたいという想いが伺えるもので、加藤恵の内なる想いを反映したと見られる構成になっている。アニメを見て内容を理解してから今一度聴くと更に良い。この曲がおすすめである。

 最終回のみのED曲だった「青春プロローグ」も同じく心揺さぶる個人的泣き要素があって良い。妄想キャリブレーションが担当した二曲がかなり良かったな。活動終了を迎え現在は存在しないグループとなってしまったが、それでも彼女たちの残した仕事は私の心に残っている。

 

 最後に恵が「おしまい」を言って終わった二期から二年後に劇場版ファイナルが公開されることになる。そちらのBDを入手したのでこれからそちらもチェックしよう。冴えカノは熱いぜ。

 

 

  

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