こしのり漫遊記

どうも漫遊の民こしのりです。

赤き鉄巨人「機甲界ガリアン」

機甲界ガリアン」は1984年10月~1985年3月まで放送された全25話のテレビアニメ。加えてOVAが3話ある。

 

 惑星アーストを主な舞台とし、アースト征服を企む悪の帝王マーダルの軍団を主人公達が倒すという内容のロボットアニメである。

 中世ファンタジーぽい世界観で、キャラの衣装や西洋騎士を模したデザインのロボが登場する点はダンバインぽい。

 OP曲とED曲が英詩を盛り込んだおしゃれロックだった点は好印象。

 

 

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ロボについて

 まずは主人公機のガリアンが格好良い。真っ赤なボディの鉄の巨人ということで見栄えが良い。シャアの機体やレッドバロン、マッハバロンなどを思い返してもやはり赤いボディは映える。カンタムロボとかゴーグを思い出す。

 

 ガリアンのアクションが多彩。メイン武器の剣がバラバラになってムチのようになり、つながるとガッシリした切れ味の良い剣になる。変形する武器が格好良い。

 盾で銃身を固定してぶっ放す銃がアナログ感があってよかった。変形して空も飛べ、体の上下が分離して個別に機動できる点も優れもの。

 

 敵のロボットもデザインも良い。

 マーダル軍の人馬兵というケンタウロスを模したロボットが一番印象的なデザインだった。

 真っ金金の百式に対抗するかのごとく白銀のボディを光らせるウィンガル・ジーがツボだったな。

 

 ロボットアクションにおいては爆発シーンが印象。黒い煙の中に光の粒子が見える演出は細かい仕事をしていると想う。

 

考えさせられる物語について

 主人公少年である王国の王子様ジョルジュが産まれたタイミングで、マーダルの軍団が王宮に攻め込んで来る。王は殺され、后は敵にさらわれる。忠臣アズベスは赤ん坊のジョルジュを連れて敵から逃げ伸び、それから12年もの間自分の孫ジョジョして王子を育てる。

 世に悪が蔓延る時、救世主たる鉄の巨人が現れるという伝説があり、ジョルジュ改めジョジョとアズベスは遂に鉄の巨人ガリアンを見つける。ジョジョガリアンに乗り込んでマーダル軍のメカと戦い、捕らわれの母とアーストの地を解放する。

 ただの少年ジョジョが大きくなって自分が王子様だということを知り、ガリアンに乗って人々を導くリーダーになって行く。その成長を描くのがメインの筋となる。

 

 こんな感じで、敵対する二つの戦力の争いを描くという筋はそう難しくない。ここにひとつおまけ要素となるのが、二つの勢力のぶつかり合いを監察する立場にある異星人がいること。

 宇宙規模の監察を行う彼らの存在を知ると、アーストの争いなんてちっぽけなものに思えてくる。監察権限のある異星人の方でも大きな武力を有しているので、後半では第三の勢力として恐ろしさを見せる。この点がちょっと面白い。

 ジョジョと行動を共にする魅惑の謎ヒロイン ヒムルカが実は異星人の監察官でもある。この作品のメインヒロインはジョジョに想いを寄せるチュルルなのだろうが、彼女はまだ10歳で、可愛いけどちんちくりん。そこへ来て大人の男子諸君の目の保養になるセクシー系ヒロインがヒムルカだった。ラムちゃんでおなじみの声優 平野文が妖艶な演技でヒムルカを色っぽく魅せている。本作ではこのヒムルカが良かった。ナイスバディである。

 監察権限外となる武力介入をしてはいけないけど、黙って見ているわけにもいかないことで葛藤するヒムルカを描くシーンも印象的だった。

 

 事の発端を生み出した物語の核たる人物が悪者のマーダル。このマーダルがマジで悪人面をしていて頭の形をみるとらっきょうを思い出す。演じた加藤精三の声も邪悪感たっぷり。後に「仮面ライダーブラックRX」でジャーク将軍なんていう名前に邪悪が入ってる奴の声も担当したくらいだから、業界で認められる邪悪ボイスだと分かる。

 

 マーダルが悪に徹してアーストを支配しようとした理由をジョジョにたっぷり語るシーンがあるのだが、その内容がただの三下からぽっと出た悪の理論ではない深いものだった。

 マーダルの持論は、人は争いの中でこそ充実し、素晴らしき生命力を開花させるというもの。己の暮らす地が侵略されると分かれば、人は命がけで抗うだろう。そこにこそ人の真の力が発揮される。いつまでも平和ボケしているようでは本当に生きているといえるだろうか。といった内容を語る。正義は悪があってこそ育つとも取れる深い内容のことを語る。

 物語後半では、アーストからマーダルの故郷の惑星へと舞台が移る。そこの住人達は争うことに疲れて闘争心を失い、感情の起伏もほとんどない無気力の命として描かれている。

 マーダルは、平和ボケして何も考えない人生と争いの中で苦悩し藻掻きながらも人間たる感情を持って生きる人生のどちらがより生きている実感が持てるかとも問う。後半に登場する異星人達は息をしていても生きている感の少ない者達だ。生命力を強く発揮出来る場を求めるのが人の本質なのかもしれない。マーダルは命の心理をえぐるような深い考察を行っている。あの悪人面でかなり高尚な見識を積んでいるのが意外。

 

 そんなマーダルだけど、結局は争いを好むだけの変態とも見えるので、やっぱり好きにはなれないんだけどね。

 

 勧善懲悪の概念に一石を投じる興味深い作品だった。

 

 しかし、マーダルの言動を通して、何が正義で何が悪か、何が幸福で何が不幸かという深いテーマについて考えさせられたのは事実。

 

 

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