こしのり漫遊記

どうも漫遊の民こしのりです。

男ライフル一本復讐旅「機甲猟兵メロウリンク」

機甲猟兵メロウリンク」は、1988年から1989年にかけて発売されたOVA。全12話。

 

装甲騎兵ボトムズ」の派生作品となり、世界観を共有している。番外編的な物語。

 

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内容

 主人公メロウリンクは軍隊に所属していた。しかしある時、戦う手段であるATを取り上げられ、代わりにライフルだけを渡されて激戦地送りとなる。ライフルオンリーで戦い抜ける戦場ではなく、メロウリンク一人を残して仲間達は皆死んでしまう。

 己の利益に走った軍上層部の悪者共によって、メロウリンク達の部隊は、全滅ありきで囮にされたのだ。マジで酷い。

 悪共の企みを知ったメロウリンクは、仲間達の魂を引き連れて一人復讐旅に出るのだ。

 

 

感想とか

 機甲猟兵とは、対ATライフルを扱う歩兵のことで、主人公青年メロウリンク・アリティ一もその一人。

 対AT用武器を持っているけど歩兵だからね。ロボから見た生身の兵隊などザコ同然なのだが、メロウリンクは強者として生身でもATを圧倒するのだ。

 

 ロボットものなのに、メロウリンクはロボットに乗らない生身の兵士である。一貫して生身での戦闘スタイルを貫き、遂に最後までATには乗らない。鋼のこだわりでやり抜いた面白い試みの見える一作になっている。

 

 ロボットに乗るという冒険を敢えてしない点が、サンライズロボット作品としては大きな冒険をしているとも思える。

 スコープドッグをはじめ、そもそもボトムズに出てくるロボは小さめでロボットロボットしていない。よって他のロボアニメよりは地味というイメージが大きい。ロボットに乗ったところで地味なのに、今度のOVAでは全く乗らない主人公で行くという決断を出した。これはすごいなぁ。企画会議でこの意見をドカンと出すのも勇気がいったのではなかろうか。

 

 ロボに乗りもしない男の話を描いてどうすんねんと不安に思って見始めたら、これが結構面白い。

 ボトムズシリーズ作品となるので、もちろんATはバンバン出てくる。敵はATに乗ってメロウリンクを追い詰める。 

 ロボが無いメロウリンクが持つのは、ライフル一丁、あとは知恵と勇気と物理の力を圧倒する知力のみ。あれこれと策を弄して武力のハンデをカバーし、見事悪者共を成敗するのだ。相手の出方の先の先を読んで仕掛けるトラップ攻撃で魅せる野戦の面白さは、今作独自のものだった。

 

 キリコも挑戦したバドリングにメロウリンクも出るし、クメンにも訪れる。PSについて触れている内容も少しばかり見られる。テレビシリーズの要素も入っているので、番外編だが旧作を知っていれば更に深く楽しめる。

 

 バドリングにまで生身で挑戦するメロウリンクの神経の図太さ、それを裏付けるだけの兵隊としての強さがすごい。ちゃんと相手のATを負かすから偉い。

 

 生身でロボとやりあうってことだから、思えばあのマスターアジアと同じような事をやっているのか。しかもこちらの方が先に世に出た作品だからマスターよりも先輩じゃないか。メロウリンクはサンライズの歴史においてもすごい人物なのかもしれない。

 ロボに乗らないでどうやってスパロボに出るんだよって思って調べてみると、車とかに乗ってどれかのシリーズに登場したことがあるらしい。

 

 毎度毎度ひっきりなしに出てくる悪者共を爽快に始末してくれるメロウリンクの物語には、必殺仕事人のテンションも見られる。

 OP映像にもあるが、復讐を果たす前の本気バトルモードに入る合図として、メロウリンクは己の血で顔に血化粧を施す。沼地で戦った時には、血の代わりに沼の泥になっていたけど。このお決まりの流れも好きだし印象的。

 

 本編の主人公のキリコはレッドショルダーただ一人の生き残りで、メロウリンクも部隊でただ一人の生き残り。一人孤独に戦場を行く人物設定には共通する部分がある。

 キリコもそうだが、メロウリンクもとにかく死なない。生身でロボと戦うという不利な条件下で最後まで生き抜いたメロウリンクこそ、異能生存体なのではないかとも思える。ペールゼンあたりにちゃんとリサーチしてもらえば、実はメロウリンクもそうだったのではないだろうか。

 

 クールだったり熱かったりするメロウリンクを演じたのは松本保典。現在では、のび太くんのお父さんなど、まったり系な役もこなすようになったが、一昔前の松本保典なら「アイドル伝説えり子」「テッカマンブレード」などで熱血系のイケメンをやっていたイメージが強い。彼のイケメンボイスは格好良い。

 

 ボトムズよりもヒロインは華があった。ヒロイのルルシーは色気があって可愛い。ポニテが良いんだよな。玉川紗己子のちょっと妖艶な感じの声も好き。

 メロウリンクよりもやや年上らしい。メロウリンクのことは「坊や」呼びして来る。ちょっとのお姉さん感も良きヒロインだった。

 やっぱり旅のお供には可愛くて華のあるヒロインがいるよな。ココナならガキっぽいし、うるさい。フィアナは美人で良いのだが、設定としては静かすぎるヒロインなので、いまいち旅の盛り上げに欠けていた。ルルシーくらいで丁度良い。

 

 最初から登場し、各話ナレーションも担当したキークはとにかく気になる人物として最後まで注目出来た。

 敵か味方かなんなのか。その点の謎を更に深めてくれる大塚明夫の演技も良かったキークだが、まさか最後は敵に回りやがった。仲間だと思ったのにやってくれる。

 大塚明夫の声優デビュー年のリリース作品なので、彼のキャリアの最初期の芝居がここで見れるのも嬉しい。先日、ボトムズにも出演した小林清志に代わり「ルパン三世」の次元大介の新アクターの栄誉に預かったことで大人物になった大塚明夫氏にも、ぺーぺーな頃があったのだと分かる。でも地声がなにかしらの玄人風だから、初っ端からでも玄人感があったなぁ。

 作品も面白いが、声優好きとして見ても、現ベテランの新人時代が楽しめて良かった。父親の大塚周夫はペールゼン役だったし、親子でボトムズの世話になっているのか。ボトムズも名優を育ててくれたよな~。

 

 すったもんだの末、最終回まで生き残って復讐を果たしたメロウだが、キークも指摘した通り、復讐なんてやっても後に残るのは自己満足のみ。全てを終えても決して晴れやかな感じではなく、変わらず悲しみを背負って生きることになるのだ。

 最後の戦いを終えたメロウは、相棒のライフルを地面に刺して墓標のようにすると、一人その場を去っていく。その後どうなったのかは分からない。

 面白い作品で好きだけど、そこの事情はリアルなもので、やはり寂しいエンドに見えたな。感慨深い作品だ。

 

 ボトムズにもこのような派生作品があったとは令和に入るまでマジで知らなかった。今回は良い発見になったぜ。

 OVAリリース開始から終了までの間に、世は昭和から平成に移り変わっている。なんと時代を跨いでのリリースとなった記念的な作品にもなっているんだよな。そう思えば古いなぁ~、だからこそやっぱり感慨深い作品だぜ。

 

 

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