こしのり漫遊記

どうも漫遊の民こしのりです。

熱いドラマ性と人生教訓が魅力「超人機メタルダー」その2

 今作でどうしても注目せずに入られないのは敵側の連中についてである。主人公メタルダーはもちろんかっこいい。メタリックボディに「キカイダー」みたいなカラーリングもグッドである。しかし、今作はとにかく敵が熱い。

 

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 上記の画像は単巻発売したDVD全4巻のものである。BOXではメタルダーがジャケットだが、単巻ジャケットにはまさかの主人公が不在で全部ネロス帝国の面々が描かれている。これがどういうことかと言うと、それだけマジに敵側に熱を入れて作られた作品だということである。にしてもジャケットがカッコイイな。

 

 まず、すごいのが圧倒的な組織力である。メタルダーと対峙する悪のネロス帝国はボスであるゴッドネロスとその傘下にある4つの軍団で構成されている。

 悪の帝王ゴッドネロスは人間界では桐原剛造と名乗り、桐原コンツェルンの総帥を勤めている。表の世界と裏の世界のどっちでもお偉いさんなのである。

 秘書からメタルダーの動きを報告されて、ちょっとでも心配事があったら私が大好きなお決まりのセリフ「私を夜の闇に包め」の一言で部屋を真っ暗にさせてゴッドネロスへ変身する。先天的なヒッキー性質なのか闇が大好きなおっさんである。人間の桐原から徐々にグロい変身を遂げる過程は「真・仮面ライダー」の変身シーンを彷彿とさせる。ゴッド・ネロスの顔は私の祖母と仁王像を合わせたような顔をしている。この見た目でバイオリンが弾けるという驚きの才をもっている。

 

 桐原の下には美人秘書が二人いてそれぞれ美人秘書S、美人秘書Kと名乗っている。イニシャルのみでしかも姓と名のどちらからとられているかもわからない謎の秘書である。メタルダーよりも前に放送されていた「宇宙刑事シャイダー」では敵組織に「ギャル」がいて、ギャル1とか2とナンバリングされて何人か出て来た。一緒に見ていたギャル好きの私の父には目の保養となったようである。

 やはり悪者側でもゴリゴリのごついおっさんや怪人だけではアレなのでこのように敵側にも華を添える形で女性人物を出してくるのがメタルヒーローシリーズの良い点である。そういえば「宇宙刑事ギャバン」の敵にはすごいババアが出来てたな。

 

 4軍団はヨロイ軍団、戦闘ロボット軍団、機甲軍団、モンスター軍団に分かれている。 

 各軍に軍団長を配置し、他の軍団員にもそれぞれ階級が与えられている。軍隊のような組織構成がおもしろい。敵側組織に会社員のように細かい上下関係があり、階級の下の者は手柄を立てて階級をあげる機会を虎視眈々と狙っているわけである。

 それまでの特撮番組といえば、一週間に一体の怪人を登場させるスタイルが主流であったが、今作に限ってはそんなケチ臭い出し惜しみは無しに第一話の段階でネロス軍団の構成員がほぼ全員出てくる。例外としてその回にゲストで出てくる敵もいるが、だいたい全部を初っ端から出している。

 軽く見て20体は一気に出てくるのでその光景は圧巻そのものであった。OP映像でもすごい数の敵が映っているのでコレには子供らは興奮する。敵が多すぎてメタルダーは大丈夫なのかよ、と心配して第一話を見たら軍団に取り囲まれ、ヨロイ軍団長クールギンに痛手を負わされてて敵との第一戦は負けてしまった。一話からハラハラさせてくれた。

 

 4軍団はそれぞれ対抗意識があり、それによってお互いに力を高めているようにも見える。たまに誰がメタルダー討伐にいくかを言い争った結果、力比べで勝ったほうがいくみたいな流れになり、皆でぐるりと取り囲んだ真ん中で一対一で闘わせるというまるで中学生の昼休みのプロレスごっこみたいなことをしている。なんやかんやで皆で楽しそう。

 ゴッドネロスの誕生日には軍団皆入り混じって食って踊っての豪華なパーティーを開くというすごいファミリー感を漂わせる。この時、確か踊り子がパンチラしてた。

 ゴッドネロスの企画した4軍団対抗運動会を行う回はおもしろかった。メタルダーそっちのけで敵側内で争っていた。世界を股にかける悪者が何やってんだよとツッコミを入れてしまった。

 敵に絶対に愛着が湧く番組だと思う。敵をわんさかと出して「キン肉マン」の悪魔超人みたくし盛り上げるねらいがあったらしい。

 

 敵は無駄に数だけ増やしているのでなく、秀逸なデザインの者が多い。ヨロイ軍団長クールギン、戦闘ロボット軍団長バルスキー、モンスター軍団長ゲルドリングなどは私もお気に入りのデザインをしている。他にヨロイ武者を模したデザインのチューボー、そして一番良いのは後にネロス帝国を抜けてメタルダーの仲間になるトップガンダーである。

 何年かに一度出てくる東映の愛すべきダークヒーローの優秀なお手本の一人がこのトップガンダーだ。トップガンダーは漆黒のボディに赤い目をしたヒットマンで「人造人間キカイダー」に登場するハカイダーを髣髴とさせる。ゴルゴ13に似たヒットマンの情報をインプットされている。

 卑怯な手を使わず一対一のフェアプレイで勝利することこそが正義であるという殺しの美学を持つ孤高のヒットマンである。見た目も言ってることも文句なしにカッコイイ。

 メタルダーとの勝負に水を差されたためにネロス軍団の仲間を打ったことが、裏切り行為だとされてネロスから処刑を言い渡される。戦闘ロボット軍団の中で信頼され一目置かれていたトップガンダーに対するバルスキーの部下思いの一面に泣かされた。バルスキーがいい上司をしてるんだよな。ネロス帝国から脱走した後も仲間達は「彼には彼なりの志があって組織を去った」と脱走者の彼に対しても尊敬の念を払っている。

RAHM035 トップガンダー 超人機メタルダー ゴーストバンクシリーズ 4.凱聖クールギン

 

 

 

 敵側キャラがなかなか魅せるドラマを生んでくれるのがこの作品の特徴と言える。本編では敵のホームであるゴーストバンクでのシーンが多く、メタルダーをそっちのけにして敵側ばっかり映しているという印象もある。回によってはメタルダーが脇役で怪人側が主役みたいな回もある。それだけ敵のキャラクター性にも重きを置いた異色な作品であった。

 中には元々人間の敵もいる。ヨロイ軍団のバーロックは元10種競技の選手で卑怯な手を使ってライバルを陥れた過去を持ち、卑怯な自分に罪悪感を抱き自暴自棄のままにネロスに加入したという重い過去を持っている。メタルダーと闘う中で正義の心に目覚めたが、裏切り者とされ「おれは生まれ変わった。もう負け犬じゃない」と最後に叫んで処刑された。目頭が熱くなった回であった。

 中身は人間のハンマー男ベンKも印象的なキャラクターである。メタルダーに敗北しし命の大切さを知って帝国を去る。その後は過去の罪をすこしでも流すために諸国巡礼をし、メタルダーと再開後は共にネロスと戦う。盾となって戦いに巻き込まれた一般人を庇って弓矢攻撃などを受け、立ったまま絶命してしまった。あの時の助けられた一般人とメタルダーが両手を合わせるシーンが忘れられない。最初は「うまそうだ」と言ってウサギを殺して食おうとしていた危険な奴だったが、最後は良い奴であった。

 後は、モンスター軍団のヘドグロスのエピソードが複雑なドラマ性を含んでいて見ごたえがあった。ヘドグロスは階級が下の戦士で仲間達にバカにされていた。しかし、ネロスが捕らえた奴隷女のウィズダムを愛し、いつか出世して幸せにしてやると誓う醜悪な外見をしていても心は二枚目な奴であった。1人勇敢にメタルダーに挑み戦場に散っていった。

 そこで話は終わらず次はウィズダムメタルダーに復讐の一手を打つ。しかし、ウィズダムの腹の中には実はヘドグロスの子がいて、メタルダーは子供を大事にして帝国を去れとウィズダムを説得する。夫を殺した相手に自分と子供の命を助けられ複雑な心境の中でもメタルダーに感謝してウィズダムはネロスから脱走する。

 次にはウィズダムの子供ジュニアが父の仇とメタルダーを追ってくる。メタルダーはジュニアを攻撃することができず、防戦一方になる。メタルダーに対して復讐心と感謝の気持ちを示す敵側怪人の複雑な心境によるドラマ展開に魅せられた。

 物語後半でバルスキーに恋する女性型ロボットのローテールの話も印象的であった。敵でも心を持ち、恋する気持ちを持ち合わせているという点は評価できた。

 元豪将ビックウェインとゴチャックの師弟愛を描いた「走れメロス」のようなエピソードも良かった。この回では完全にビッグウェインが主役だった。敵側に感情移入をしてメタルダーを敵扱いしてしまうような回もあった。

 

 敵なのに人間臭い一面を持つネロスの軍団員達に注目せずにはいられない。こんなに敵側を愛してしまう作品もそう無いだろう。

 

 最後にこの作品は「青春」について語っており、そのワードはOP曲タイトル「君の青春は輝いているか」にも含まれている。よくある、ストーリーの内容や主人公の特徴を歌うタイプの詩とは違い、メタルダーの名が歌詞に出てこない。

 この曲はなかなか深い歌詞で、子供向け番組の歌詞にしては難解である。現在青春中か、それを遥かに過ぎた年寄りには突き刺さるような歌詞である。本当の自分を見出せず、周りに左右されて、なんとなしに生きているのに死んでいるかのような醜悪その物の暮らしをするそんな病んだ若者達に青春とはありのままの自分の姿を太陽の下に晒すことだと説いている。とにかくいい事言ってる。

 最終回でヒロイン仰木舞の父親も同じ内容を語っている。「宇宙刑事ギャバン」では若さとは何か、愛とは何かを説き、本作では青春が何かを説いている。作品を通して人生の教訓になる特撮番組であった。

 

 こいつはすごいぜ!

 

koshinori.hatenablog.com

 

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