こしのり漫遊記

どうも漫遊の民こしのりです。

悪を遮る壁になれ!「超電子バイオマン」

超電子バイオマン」は、1984年2月から1985年1月まで放送された全51話の特撮テレビドラマ。

 

 スーパー戦隊シリーズ第8作目にあたる作品である。

 輝かしい戦隊モノの歴史のかなり浅い所を、すっかり歴史も深まった令和に見る。これもまた乙というもの。

 

 今回の戦隊は「バイオ」とあるだけに、なんともバイオ感ある見た目をしている。バイオ感って何って話だが、とりあえずデザインセンスとして前作とかなりテイストが違う。

 こっち側にも敵側にもメタルヒーローの感じが見えた。バイオマン5人の頭部にはピコピコするメカが搭載されている。これはなんともメタルな感じ。とりあえず技術が進んだ新時代のヒーローな感じがする。

 

 新帝国ギアの顔出し幹部のスマートなスーツ感にもメタルヒーローに通ずるものがある。5体の幹部怪人はそれぞれメカ感が強く、これよりも後に歴史に登場するゴッドネロスの帝国にでもいそうな出で立ちだった。

 

 私がそんな感覚になるのもそのはずで、イケてるスーツの技術力はメタルヒーローシリーズから組み込んだものだったという。

 

 今回からは全話通しで1話が約20分。シリーズの放送時間枠短縮後に初登場した作品となる。25分よりも20分の方がスマートで見やすいなと思えて来た。1話20分体制だと連続視聴する分には疲れが少なくて良いと気づけた。

 

謎の巨大ロボ出現

 

内容

 今回の敵は「新帝国ギア」。一流科学者ドクターマンをトップに置いたメカ人間帝国である。新帝国の冠に偽りは無く、当時としては古さ無しの新しき悪の潮流となった(と当時の視聴者達は思ったはずだが、今現在だと一体何人生き残っていることやら)。

 メカ人間のドクターマンは、人間を滅ぼして地球を侵略する作戦に出る。これを食い止めるべく結成されたのが5人の戦士バイオマンだった。関係ないけど、昔遊んだファミコンゲームの「バイオ戦士DAN」を思い出す。バイオ的オタク枠がココ2作である。

 

 戦いの根っこは結構深く、物語のとっかかりは500年前にまで遡る。

 かつて宇宙にはバイオ粒子を用いた高度な科学を持つ惑星バイオ星があった。がしかし、大きすぎる科学の力は身を亡ぼすトリガーとなった。バイオ星人は強大な科学の力を用いて身内でドンパチする内に滅びてしまったのだ。

 大きすぎる力はやがてルーズコントロールとなり、進んだ文明は後戻りはできない。荒れた現状をなんとかするならゼロに戻すしかないのだ。そんな創生と破壊のリズムに則ってバイオ星はきっちり死んだ。

 

 バイオ星の二の舞を避けて、バイオ粒子を平和に利用できると信じられたのが地球の人々だった。

 時は1484年、バイオ星からバイオロボに乗ったピーボが地球に送られる。そして当時の人間達にバイオ粒子を浴びせたのだ。レッドカラーが目立つバイオロボはめっちゃ格好良い。

 

 そこから500年後の1984年。バイオ粒子を用いて倒さなければならない巨悪が生まれた。それがギアってわけ。

 500年前にバイオ粒子を浴びた戦士達の子孫を探してピーボは「超電子バイオマン」を結成させる。そして51話に渡る長き戦いが開幕を迎えるのだ。

 

 というわけで、500年越しの戦いのドラマが熱い!

 

今回からの新要素

 シリーズを8作品もやったらパターン化もおてものとなってくる。だがしかし、それではユーザーは離れていく。思考する会社東映は、マンネリ化を避けるべくこれまでのシリーズを踏襲した上でもっと楽しい新要素を投入してきた。そこが見どころである。

 

 まずは「~戦隊」という定番の冠を外すことで、響き的にタイトルに新感覚を持たせた。こういうちょっとしたところからも改革を始めるのが大事。

 

 バイオマン各メンバーの名乗りはバイオレッドとかではなく、レッドワン、グリーンツーのようにカラー+ナンバーになっている。名乗りについてもちょっと工夫してきている。

 ゴレンジャーだと5番のグリーンが今回では2番になっている。緑の立ち位置もアップしたものだ。というか緑の戦士の登場がおひさである。前2作品のゴーグルファイブダイナマンでは、春田純一が開拓した道であるブラックカラー戦士が緑枠を潰していた。ちなみに高杉真吾ことグリーンツーがドスの利いた声で言う「グリ~~ンヅ~」の声質がなんか好き。

 この感じでメンバーを数えると、スリーには青の戦士が来てブルースリーとなる。これがやりたいから青を3に下げたのか。でも一番ブルース・リー感のある戦士は、前作のダイナマンに登場したダイナブラック星川竜だった。というのはいらん話。

 

 シリーズでは初の女子メンバーが二人いる戦隊である。イエロー、ピンクは女子。華があってよろしい。当時のギャルのベストな毛量が印象的。気持ち髪の毛が多いヒロイン達だった。

 女子だって守られるだけの存在ではなくなった。中には強い子だっているのだから男子に混ざってブチかましてやれば良いのだ。そんな感じで女子もぐいぐい社会進出する時代を反映した新要素だったのかもしれない。

 私は女子が多くても良いと思う。いっそのこと男女比1:4のハーレム体制か、全部女子で行く軍団があっても良いと思う。そう思うとセーラームーンプリキュアは時代のニーズを汲んだすごい作品だったんだな。

 

 で、問題はその女子メンバーイエローの殉職である。これは東映の中では割と黒くくすんだ暦になったのではなかろうか。

 51話もあるのに、序盤の第10話でイエローが敵から滅多打ちにあって殺される。メイスンが破壊力の高いレーザーをぶっ放してイエローを収集砲火し、脇からサイゴーンも追い打ち攻撃を仕掛けてくる。分かりやすく致死量のダメージが溜まる様を見せつけられた。これが結構酷いシーンでイエローがめっちゃ可愛そう。当時の子供達にトラウマとなってもおかしくはない。

 これは逝ってしまって不思議ないレベルのボッコボコリンチだったので、生きて帰れなかったことに不自然さはない。でもね、結構大きくなったら初代イエローの早期降板には、絶対リアルな大人の事情があるだろうにと勘繰ることが可能なのだ。

 

 で、調べてみたらイエローフォー小泉ミカを演じた女優が、撮影途中で急に姿を晦まして本日に至るということなのだ。合図無き晴天の霹靂状態であり、退場までの自然な道筋を用意する間もなかったという。実際退場までのシナリオ的流れも急すぎて乱暴。

 彼女は後に芸能界復帰もなく、普通に行方不明になってそのままテレビからフェードアウトしたという。これは契約的にもアウトなヤツだろうに。そうなるに至る何かしらの揉め事があったらしいが、結局は良く分かっていない。

 とにかく女優が消えたという分かりやすくピンチなことになったので、殉職回では人間の姿に戻ることなくバイオマンのまま埋葬。声を当てる女優がいないので、ここはイエローに声が似ていた田中真弓氏に声を入れてもらったという。この時代は実写でもアフレコだったという。

 

 事情が事情だからクレジットはされていないが、田中真弓も実は出演者だった。こんな形で番組登板になるとは思わなかっただろうに。バイオマンのピンチを繋いだ田中真弓の勇姿も忘れてはいけない。ありがとう。だから日本の声優は偉大なのだ。

 イエロー退場はショックだったが、その後二代目も来るので、一作品で合わせて3人もヒロインが楽しめたと思えばお得感しか残らない。

 

 戦隊のボスが渋いおっさんとかではなく、子供タイプのロボという点も新しい。デンジマンンだと喋る犬だったな。

 ピーボのデザインは絶対C-3POから来ているだろう。C-3POのもっとチビバージョンという感じのデザインだった。思えばドクターマンとその息子が対立する流れなんかも「スターウォーズ」要素を感じるものだったな。

 今回の戦隊のブレインとなるピーボだが、知識としては多くを有しているので戦術を練るには役立った。でも当人は戦闘力のないザコキャラだ。そしてメンタルも弱い。

 序盤では幼馴染の異星人が敵に捕まった思い、取り乱して基地を飛び出す。後半だとシルバにビビってもっとヤバイくらいに取り乱すといううるさくて情けない一面を見せた。ああなった時のピーボがマジでうるさいのが印象的。

 逆に良く出来たメンバーの郷史朗、桂木ひかるらに「マジでおちつけ」のテンションで諭されることもあった。結構頼りないけど憎めないヤツでもある作品の看板キャラだった。それから郷史朗はイケメン。

 

新しき悪の潮流「新帝国ギア」

 今回も敵軍に魅力的なメンバー、要素が見える。戦隊モノでは悪者共が第2の主役だからな。というわけで、作品を盛り上げたギアの面々についても多くの感想が出てくる。

 

 敵側にも新要素が投入された。

 まず、よくよく考えればドクターマンは個人勢。それまで出て来た規模の広い地底人やどこぞの宇宙人組織ではなく、元々は人間の科学者。人間名は蔭山秀夫。

 己を改造してメカ人間になり、他の団員も自分の手作りのメカ達だ。一人の地球人が1からここまで巨大な軍団にしたのはすごい。

 

 そして敵にもドラマを持たせる新しい流れがある。それがドクターマンの息子が出てくること。息子はメカ人間ではなく、ただの少年として人間社会にいる。親子で悪者なら以前にもいたが、片方は完全にパンピーなのは珍しい。

 わずかに残った父としての愛が、悪の力を最大限発揮する邪魔をすることに気づくドクターマンは、更なる改造を自身に施して人間だった過去と決別する。悪の道を極める筋の通ったボス親父だった。

 

 悪者の父を許せない息子の苦悩も最終回まで続くことになる。父に「秀一」という名を呼んで欲しい息子の願いが最後まで叶わない点は切ない。父の死について「メカ人間として死んだ」と言った秀一少年の言葉は重く悲しいものだった。

 

 顔出しの幹部通称「ビッグスリー」の3人。メカ怪人「ジューノイド5獣士」の5人。そしてボスがいる。これだけのメンバーが一話目から一気に登場する。悪にも迫力と華があった。

 毎度等身大のゲスト怪人は呼ばず、等身大の5大幹部怪人が一話退場せず順繰りでバイオマンと戦う。そしてロボ戦の相手となる巨大メカは毎度新型が出てくる。等身大の怪人が巨大化するという前作のパターンとは違っている。敵軍のロボも秀逸なデザインで格好良かった。

 一話目から出てくる5大幹部怪人のデザインがそれぞれ良かったので、すぐに退場はコスパが悪い。怪人を即退場させない売り方は良かった。

 

 途中からは多分金の都合なのか、ジューノイド5獣士がジューノイド3獣士に減る。中盤の大きな戦いで二人が退場となる。

 一番好きだったメッサージュウが逝ってしまうとはショック。一番格好良くて5人の中ならセンターに据えたい人材だった。そしてアクアイガーは、どうしようもないくらいバラバラになって逝ってしまう。

 結構雑な退場だったので、もっと一花咲かすような見せ場を用意した後に散っていく展開があれば良かった。作品のこの点のみは残念。

 

 サイゴーンはこの名前で最初に散るわけがなく、ちゃんと最後まで生き残った。阿修羅のように顔が複数あってクルクル入れ替わるサイゴーンのデザインは秀逸。ゼルダの伝説のボスにこんな感じで顔がくるくるして入れ替わるやつがいたなと思い出す。

 メッツラーはメタルダーのゲルドリングと仮面ライダーストロンガーの一つ目タイタンが合体したような感じ。これも格好良い。

 

 ジュウオウは見た目は強そうだけど中身は親分のモンスターとセットでギャグ要員だった。メッサージュウ、アクアイガーと共に一度はバラバラに大破されたが、モンスターが愛の力で部品をかき集めて再生させたというエピソードは敵ながらもちょっと尊い

 ギャグ要員は正義側でなく、敵側のモンスター、ジュウオウが担っていたのも注目ポイント。

 

 ビッグスリーのファラは胸元がかなり開いたセクシーファッションでちょっとだけドキドキする要素があった。これは目立つ要素。

 後半にパワーアップした後には、スーツのおっぱい部分も視覚的にパワーアップしていた。

 

 ギアは人間が作った組織であり、ボスも人間。構成員のメカ人間達は、真人間を殲滅対象にしている。なのに自分の上司のドクターマンが人間。このことについて、メイスンは激しく疑問を持つようになる。

 メイスンに端を発した疑問は、後に多くの部下達も巻き込むことになる。そして中盤、一行はドクターマンを失脚させるために大きな事件を起こす。メイスンの見た目は怖くて喧嘩が強そう。

 メカの反乱により主である人間が逆襲を受けるというS小説でありがちな内容も描かれた。進みすぎた文明は、やがてそれを生み出した者をも食ってしまう。その危険性を発信したエピソードでもあった。

 

 メカよりもやり手のドクターマンは、反逆者をもっと改造して記憶も飛ばすことで、絶対服従するメカ達に仕上げた。ドクターマンも悪のカリスマだからすごい。一度は部下の逆襲で殺られちまったと思わせておいて、実はもっとすごい事でやり返してきた。しぶとく賢いボスだった。

 

後半展開について

 後半も見所が密集している。

 かなりケツの方に迫って登場するキャラクターが「バイオハンター・シルバ」だった。

 これが超格好良い。輝くシルバーボディが美しい。デザイン性やガンをぶっ放す要素からハカイダーの感じがする。銀色のハカイダーと思って楽しむと良い。

 

 バイオ粒子反応ある所どこにでも急行する優秀な仕事人だった。それだけに敵に回すとたちが悪くて怖い。シルバ登場時のピーボのビビりっぷりときたらマジ過ぎて情けなかった。

「バイオ粒子反応あり」と言って犬のように嗅ぎ回って動くシーンが連発されたのが印象的。

 バイオ粒子反応を追うこと。これは散り際まで貫徹した戦士の本能だった。初登場からバイオマンとの戦いに破れて静止する間際まで、バイオ粒子反応を追うのがシルバの人生だった。

 最後まで戦闘ロボットとして生きたシルバの生き様は硬派なものであり、ロボ好きとして胸熱だった。

 

 前作「ダイナマン」のダークナイト的な後半追加の第3勢力ポジションとして、シルバは作品を盛り上げてくれた。

 シルバの愛機となる巨大ロボのバルジオンの存在は早くから明かされていたが、行方不明状態で終盤まで発見には至らない。

 バルジオンは星を壊すヤバいマシン認定を受けているから、シルバもギアも欲しがっている。どこに渡してもヤバいのでバイオマンチームでも探してバルジオン起動を阻止する作戦に出る。こうしてバルジオンを巡って起きる三つ巴合戦もワクドキもので楽しかった。

 

 バルジオン奪取のためにモンスターやジュウオウが男を上げて退場していく流れも熱い。ファラやメイスンも株を上げて死んでいくことになる。

 

 バルジオンが発見されて起動するシーンには興奮した。

「禁断の兵器が今動き出す」という展開は他作品にも見られるが、この手の流れとなるとどうにも緊張感とワクワク感がこみ上げて楽しくなる。

 シルバも良かったが、バルジオンも綺麗で格好良いロボで良かった。後半追加のシルバ、バルジオンはそれぞれデザインが秀逸。シルバこそメタルヒーロー感の強いキャラだったな。

 

 ドクターマンとその息子の親子の悲劇は後半にまで突っ込むシリアスドラマとなる。そこに加えてお次はレッドワン郷史郎の親父も実は生きていると分かる。郷親子の意外なドラマも見えて来た。

 郷の父親の顔はどこかで見たぞと思ったら「大鉄人17」の佐原博士だった。バイオマンでも博士役で出ている。博士顔俳優だったのだな。

 

 自分の父が郷の父を殺すようなことがあれば、自分は一体どうすれば良いのかと考える秀一は、更に苦悩することになる。この点もシリアスで印象的だった。

 父親が地球侵略志望のヤバいヤツだったら一体どんな思いがするのだろうか。そんな事を思いながらも蔭山秀一の青春物語を追いかけることになった。

 

 後半回には、ジャスピオン俳優の黒崎 輝を迎えたエピソードが展開した。しかも豪華な事に2週ぶち抜き展開だった。

 黒崎 輝が演じた山守正太は、ただの人間にしては戦闘力が高いことから、もしかするとバイオ粒子を浴びた人間の子孫なのでは?と期待されることになる。結果は違ったのだけど、バイオマンの存在を知った事、ジュンに惚れた事がきっかけで、自称バイオマンの6人目として志願してくる。

 この後正太は、戦闘力が高い事をギアにも見初められ、ギアが開発したスーツで変身してバイオマンと戦うことになる。

 この展開が、これよりずっと後のジュウレンジャー以降定番化する6人目の追加戦士の構想の根っこ部分にはなっていないだろうか。非公式だけど6人目宣言をしてくるし、敵側の技術で一応変身もしている。惜しいところまで追加戦士に迫った設定のキャラとなった。意外とシリーズのターニングポイントのきっかけになっていないのかな、とか緩く考察しながら見ていた。

 

主題歌が格好良い

 OP、ED共に名曲だな。この後には「仮面ライダーブラックRX」やレスキューポリスシリーズの主題歌も担当することになる宮内タカユキ氏が、声量ある格好良い声で歌い上げている。

 

 OP曲の「悪を遮る壁になれ」のフレーズは、ヒーローものの感じが濃く出たセンスの良いワードだな。

 OP曲の歌詞に登場する「宇宙の青いエメラルド」のワードは、最終回終盤シーンでピーボが口にするセリフにもなっている。バイオロボと共に地球を脱したピーボが、宇宙から見た美しい地球のことを「宇宙の青いエメラルド」と例える。この言い回しは綺麗でおしゃれ。そしてOP歌詞を本編に落とし込んだこの展開はエモい。この当時にエモいの概念やTwitterなどがあれば、当日のトレンドワードを持っていったシーンになったはずだ。

 

 ED曲には急にシティ感が出て、情熱的なOP曲とは曲調が異なるすごくポップな仕上がりになっている。

「あいつはにっこり微笑んで危険の中に駆けてゆく」というバイオマンの危険と隣り合わせの日常を歌詞に落とし込んでいる。危なさも含む歌詞でも極めて軽快なリズムに乗せて歌っている。センス弾ける楽曲だな。

 

 これら2曲を聴きながら楽しくブログを書き殴ったぜ。

 

 というわけで格好良いしとても面白かった。ありがとう超電子バイオマン

 

 

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