こしのり漫遊記

どうも漫遊の民こしのりです。

実話に基づく天才詐欺師の物語「キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン」

キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン」は2002年に公開したアメリカ映画。

 

 私の好きな作品「キャッチー・イン・ザ・ライ(ライ麦畑でつかまえて)」と名前が似ているからという理由のみで気になって視聴した。前情報は何も知らなかったが、見ると夢中になって二時間半程ある内容を一気に見てしまった。目が弱いので映画は休み休み見るのだが、これは一気に行けた。

 

 1960年代に実在した天才詐欺師フランク・W・アバグネイル・Jrが起こした偽造手形事件に基づいた物語となっている。本人が自伝小説も書いている。

 小切手偽造というレベルの高い詐欺行為に手を染めすぎて、本人はそちらに精通してしまっている。そのため捕まって出てきた後にはその知識を活かした商売で一儲けしているとか。偽造のノウハウが分かっていれば、それを防止する知識ももちろんある。人はどこで何をして才能を開化させるか分からない。悪に手を染めはしたものの、そこら辺の凡人よりずっと能力があるまさに天才だったわけだ。

 

 主人公の詐欺師フランクをレオナルド・ディカプリオが演じ、それを追い詰めるFBI捜査官をトム・ハンクスが演じた。日本まで名前が届く二大スターが主演ということで画面が映えた。

 

キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン [Blu-ray]

 

内容

 主人公の高校生少年フランクは両親の離婚がショックで家出する。その後、生計を立てるために偽造手形詐欺に手を染めて金持ちになって行く。

 フランクを捕まえるためにFBIが動き出すが、鮮やかな犯行はFBIの手をもすり抜ける。FBI捜査官のカールは執拗にフランクを追う。

 フランクはパイロット、医師、弁護士に成りすまして社会をも騙して行く。

 

感想

 詐欺行為を行うにはやはり頭がいると感じた。フランクは単純に知能が高いのだろうが、咄嗟の判断で場を切り抜ける才気煥発で冷静沈着な男であり、そして相手を騙す演技力がある。この点がまさに天才だと思う。

 学生の段階でも天才的詐欺師の片鱗を魅せている。臨時講師のフリをして、生徒でありながらフランス語の授業を一週間行った過去がある。この段階で色々すごすぎる。

 

 パイロット、医師、弁護士にもなりすます。なりすましの前には教材ビデオを見るなどしてしっかり予習をしているあたり学習能力が高いと分かる。詐欺師だって誰にでも出来る金儲けではない、予習もしっかり必要だ。

 弁護士に関しては2週間勉強して本当に司法試験をパスしたという。どんだけスゴイんだよと思ってしまう。

 

 追われる恐怖の中でも鮮やかな手口で操作の手を逃れ、フランクはなかなか捕まらない。一度はカールと対面しながら、その時にはフランクが捜査官になりすまして逃げる。ここでの判断と演技と行動力がすごかった。FBIに銃を向けられてもまだ反撃に出る手数の多さがすごい。

 捕まった後に飛行機のトイレから脱走したのも凄かった。カールが「なんでやつだ」と驚くよりも呆れた表情で言ったのも分かるもの。

 

 詐欺師パイロットだったので後に新聞で「空のジェームズ・ボンド」という通り名がついたのが面白かった。フランク本人もその気でジェームズ・ボンドのスーツと車を揃えるのも笑えた。

 飛行機のおもちゃを風呂に浮かべて航空会社のシールを剥ぐシーンも面白かった。

 

 根っからの悪人ではなく、両親の離婚に傷つき、二人の仲を元に戻すためにお金を稼ぐことも目的としている。定期的に親に手紙を出す親思いの良い息子だった。

 

 フランクの父親がよく口にするネズミで例える人生論が心に響いた。二匹のネズミがクリームの入ったバケツに落ちた時、一匹目は諦めてさっさと溺れ死んだけど、二匹目は最後までもがいた。するとクリームはバターになって脱出できた。自分は二匹目のネズミ側の人間だ。という内容のもの。単純にめげずに頑張ること、成功者は皆これを行っているということか。というかこの父が所属するロータリークラブって何だって思った。

 父がフランクに授けた他の教えが落とし物ネックレス作戦。その人の落とし物ではない仕込みのネックレスを「あなたのでしょ?」とか言って女性にあげちゃうことで心のガードを解くというもの。これはキザな詐欺術で好きだった。フランクの見せるこのよような高度なコミュニケーション能力は、詐欺に限らず処世術として役立つ。

 

 世紀の大犯罪を扱っているが犯行手口の描き方はコミカルで、時にはハートフルなシーンもあって良かった。

 

 フランクと捜査官カールの関係性の描き方が良かった。ルパンと銭形みたいで敵同士だけど何だか信頼関係がある感じが良い。フランクが、自分を捕まえようとする相手のカールに電話をするシーンが印象的だった。逃亡者ならではの寂しさから来る行動なのだと思う。

 フランクが捕まって出所した後は、偽造手形を見抜く能力を活かしてカールと共にFBIで仕事をするようになるのは意外な展開だった。犯罪だけど、そこから得られる知識も確かにあると分かる。

 追う者、追われる者の間で出来る奇妙な信頼関係も魅力の一つだった。

 

 悪さもたっぷりしたけど、一人の天才の激動の人生を追ったコミカルなドキュメントは上質な物であった。

 

 私の中で詐欺師映画の名作と言えば「スティング」や「ペーパームーン」が思い浮かぶのだが、本作もその仲間入りを果たした。

 

 

 一番良いのは、ずっと善人のままで己の才能を開化させること。

 

 

 スポンサードリンク