こしのり漫遊記

どうも漫遊の民こしのりです。

人の心の闇に住み着く悪鬼を討て「陰陽師」

陰陽師」は、Netflixにて2023年11月28日に配信された全13話のアニメ。

 

 今期はネトフリの切るカードも多い。視聴に忙しいのは地上波だけではない。今期は配信勢も元気だ。そうなったら私の目も疲れる疲れる。

 前クールには「大奥」、そして今期は「鬼武者」もあったことから、最近のネトフリは和風系で攻めたい時期なのかな。陰陽師も和風妖術アクションもので楽しかったっす。

 

 陰陽師といえば00年代に流行った実写映画作品で知った。学校の授業で先生に見せられたのが結構楽しかったんだよなぁ。

 陰陽師を題材にした作品も結構あるものなぁ。ここも三国志とか戦国時代の大名達みたいに人気が集まっている。

 これまでにも陰陽師をテーマにしたアニメが意外と多く作られている。今年の始めには、陰陽師異世界転生する微妙なクオリティのアニメもあったくらいだし。今年のことなのに、ネトフリの陰陽師を見るまであの異世界陰陽師の存在を忘れていた。

 

 ネトフリの陰陽師はとても面白かったっす。やっぱり全話配信で一気見出来る分、楽しみと愛着も湧くのかな。

 そもそも中身がないものだから、一週間経ったら先週の内容が記憶に無いという困った作品も多くある。そういうやつこそちょっとでも記憶に留めておけるようこのような一気見可能方式にした方が良いんじゃないかな。

 最近は全話配信してくれるこの方式がありがたいし好みです。ネトフリはいいぞ!

 

 物語の内容は、巷を騒がせる悪鬼がいる→それの退治を陰陽界のエース 安倍晴明に依頼する→陰陽師と鬼のバトル開始。これが続く感じ。

 

 都からちょっと離れて暮らす変人の安倍晴明への連絡役は源博雅が担う。天才陰陽師安倍晴明と愛嬌ある凡人の源博雅の凸凹コンビ感が見える点もお楽しみ要素。

 

 鬼が人を惑わせて負のパワーが増加され、やがて最悪の未来へと繋がる。これが怖い要素。

 鬼が人を唆す時に使う餌というのが、人の持つ妬み、嫉み、欲望などの強い感情を刺激すること。こういう負の感情を抱くことは自然なことだが、それを隠して明るみに出すことに待ったをかけるのが人の最後の理性。そこを崩壊させて人の汚い部分を強大な悪の力へと換えて利用する鬼が怖い。悪知恵持ちがいます。

 

 鬼ってのはあくまでも騒ぎのトリガー役であり、大元となる一番怖い闇は人の心にある。なんだかんだあってもファンタジーを凌駕する人の心こそがマジに怖い。それを伝えた内容でもあった。結構深いテーマ性。単純に化け物退治のアニメではない。

 

 心の闇は本人の気づかない所でも育つ。また無意識に他者にそれを植え付けてしまう言動を取る者もある。そんな見えにくく分かりづらい人間関係における人間心理が描かれていた。

 

 趣味を共有する友人関係だった源博雅と敦美親王の間にいつしか出来てしまう嫉妬心の壁が後半の見所だった。

 博雅は笛を上手く吹けるがそれを鼻にかけることをしない。才能に優れて人間的にも出来ているからツッコミどころがない。これを横目にする出来ない者には、出来る者には分からない苦悩と葛藤がある。

 これといって悪いところが何もない。それこそが出来の悪い人間から見れば嫉妬の対象となるマイナスポイントとなる。悪い所が何も無いのが悪いという道理を押し込めたような理論だが、それで押し切るのもまた人間的には正直なところなのである。

 そんなわけで敦美親王は博雅の事が好きなのに、同時に嫉妬の炎を燃やす。これは仲良くなった関係だからこそ生まれる心の拗れだなぁ。

 敦美親王の苦しい胸中には、割りとリアル感と説得性があった。こういう人もいるんすよね。

 

 誰に対しても悪意を向けない博雅の善意による無意識の攻撃ってのが、闇を持つ人間の心にはキツく効いてくる。ここの都合を濃く書いた点は、人間的かつ文学的なものとして高く評価出来る。

 

 巷の面倒事を陰陽師の力とちょっとの推理で解決していく安倍晴明がいて、その相棒ポジに博雅がいる。どこか超然とした変人、そこに対しても付き合いの良い博雅のこのコンビ感に癒やしを得る。

 まるでホームズとワトソンくんのコンビみたい。同期アニメなら「鴨乃橋ロンの禁断推理」のロンとトトもそんな関係性。

 こういうパワーバランスのコンビが好きなんだよな。

 

 人はいつだって孤独だからその通りいつでも一人でいる。それが清明の基本スタイルだったけど、博雅と関係する中で人に親しみを覚え、当初の冷たい人間性も段々と暖かいものに変わっていく。この清明の心の変化を描く点も良かった。

 博雅が死にかけた時には友情を重んじて助けに出るようになった清明の人としての変わりようは尊い

 

 先に博雅の方から清明を好きになっていたのも印象的。コンビで仕事にあたることが増えても自分のことを「博雅」と名前で呼んでくれない。そのことにモヤっている博雅の正直な願望がちょっと可愛い。 

 一緒にいるからいいっしょ!ではいけない。関係性を深くするには、名前を呼んであげることが大事なのだ。

 例えば私も先生、課長、専務ってな具合に、役職や階級で人を呼んでいたら、いざ本名を呼ぼうって時に名前が出てこなくて相手から寂しがられた経験がある。彼らは名前で呼ばれたがっていたのだ。だから名前を覚えて呼んであげることって、親しく安心感ある関係の構築に大事なんです。博雅の要望は人として当たり前のこと。よく言った。

 

 博雅がピンチになって命を落とすのかって場面になってやっと清明が「博雅」と口にする瞬間が印象的。そんな状況に追い込まれる前に呼んでやれって。

 

 清明を敵視する者はたくさんいるけど、逆に好いてくれる者だっているのだと告げる博雅が優しくて素敵。

 露姫、敦美親王となんだかんだ人が集まってくるので、清明の人望もなかなかのもの。

 虫好きの露姫のあだ名が虫姫だったので、かなり前に出たシューティングゲームの「虫姫さま」を思い出した。あれはなかなかの弾幕ゲーだった。

 

 清明の兄弟子の賀茂保憲も結構味のあるキャラだった。ヒールな兄弟子だったな。

 最初は清明の命を狙う悪者かと思ったけど、使命に従順な良いお兄さんだった。結構好きなポジ。

 

 敵か味方かのスリルあるポジといえば蘆屋道満もそうだ。まさかの和風ギャルなキャラデザだった。

 貴重なギャル要素。本作だと露姫と蘆屋道満くらいしかヒロインキャラがいない。でも都合で姿を変えられて以前は男の姿で活動していたとか。性別が謎な怖いお姉さんだった。

 

 出演声優が豪華なのも良かった。有名な声がたくさんで楽しい。

 陰陽アクションのみならず人のディープな心理を掘った人間ドラマや友情物語も楽しめる良き娯楽コンテンツとなりました。

 今期作品の中ではかなり楽しめる部類でした。にしてもよそを見れば作りがまともでない作品も結構あったなぁ~。そんなクールの振り返りも出来る。 

 

 これを見て、時には己の心と向き合ってクリアな調整を行うのが良かろうと思えた。といっても私はストレスを溜めない割とやりたい放題の人生なので、鬼が居着く隙間については大丈夫だと思う。

 家のことはもちろん、心からも鬼は外した方がいいぞ。

 

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