こしのり漫遊記

どうも漫遊の民こしのりです。

愛してるを探す旅「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」

ヴァイオレット・エヴァーガーデン」は、2018年1月から4月まで放送された全13話のテレビアニメ。加えて、BDにはテレビ未放送回が1話収録されている。

 

 

 先日、本作が金曜ロードショーで放送されたという。

 

 映画を見るならBSかパッケージ化されたものに限る。いずれにせよCM無きフォーマットでしか見ないことにしている私は、金曜ロードショーなどを見ることがない。

 だがこれをテレビで見た親戚から「なんかアニメしてたけど、どうせこういうの好きで知ってるんでしょ?」的な事を聞かれた。

 

 そう、私は本作を、ヴァイオレットという少女を知っている。

 

 思い出す。この作品は実に心に響く綺麗なものだった。本放送を見て泣いたものだ。特に母から娘への愛がたっぷり描かれた第10話は、いつまでも忘れることが出来ない神回だった。TRUEが担当したOP曲も神曲で未だに聴いている。

 

 けれども他の部分はそこそこに忘れている。なにせもう3年前だからな。最近の物とは思ったが、そんなに経つのか。

 

 じゃあいま一度最初から見てみよう!という事になった。

 

 金曜ロードショーで取り上げられた事をきっかけに、愛を巡る良質ハートフルストーーを再び視聴した。その感想とかを書き殴って行こう!

 

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 中世の西洋チックな世界感のもとで、代筆業を行う主人公の物語が展開する。

 タイプライターを用いて人々の心を代弁する美しき職業婦人らの事を「自動手記人形」と呼ぶ。その名の通りまるでお人形さんのように愛らしく美しい自動手記人形が、我らが主人公ヴァイオレット・エヴァーガーデンである。

 

 このヴァイオレットだが、改めて見ると、ガチ中のガチの美少女だと気づく。めっちゃ可愛良い。

 京アニの女子なんてどうせ可愛いという安心安定のそのイメージがあるからこそ、どんな美少女が繰り出されるのかにあえてあまり構えることがなかった。

 しかし視聴二周目にして改めてヴァイオレットは美しく可憐で程よく色っぽいのだと叫びたい。

 これはもしかすると長い歴史を持つ京アニヒロイン史上一位の美少女かもしれない。

 

 ヴァイオレットは見た目も衣装もこんなに可愛らしいのに、軍人の出であるという強烈な過去を持っている。ものすごく強く、何人もの命を奪って来たやり手の軍人であり、戦士でもある。可愛いのにめっちゃ強いバトルヒロインである点にも萌える。

 

 感情の起伏が抑えめながらも、なんだかんだで喜怒哀楽がある。そんなヴァイオレットの各感情を見事に演出した作画力と中の人の石川由依の芝居は秀逸。これは石川由依のガッチリハマり役だった。

 

 親の顔も知らず、物心ついた時から心を滅して人を殺す軍人しかしてこなったヴァイオレットは、少佐が死に際に放った「愛してる」の意味がまるで分からない。当たり前の人間生活から離れた環境下にいすぎたせいで、彼女は人の感情が分からないのだ。

 本作において一貫して描かれるのは、「愛してる」の真意を求めて人生を行くヴァイオレットの姿にある。これが奥深い人間ドラマを呼び込む良き要素となっているのだ。

 

 軍人を辞めた後でも人は生きていかなければならない。そこで郵便会社に勤務し、代筆行を行うことになる。

 作中でもギルベルト少佐の兄から、人の命をいくつも奪って来た手で人の心を繋ぐ仕事をするのかと問われることがあった。厳しい事を言うが、紛れもない事実である。

 作品の見所は、軍人としてたくさんの命を奪った腕で、今度は人の愛を言葉にして届けるという真逆の商売を始めるヴァイオレット再起動の人生を描く点にある。

 

 代筆の依頼者は、性別、年齢、それぞれが抱える愛の事情等様々違いがある。多様化する愛を己の中で理解して文字に変換する。このテクニックは、単純に単語を知っていて国語の成績が良ければ容易に出来るわけではない。

 学業成績が良いヴァイオレットだが、依頼人の言葉を手紙にするとなるとスムーズにはいかない。感情ある人間生活の経験の無さから、序盤だと出来損ないの手紙を書いてしまう。

 

 自動手記人形養成学校の女性教官ローダンセの教えから、見聞きしたことを文章にするのは同じでも、手紙と報告書では本質が違うという事がよく分かった。

 軍人生活が長いヴァイオレットの書く物は報告書になっているので、手紙としては及第点に届かない。序盤のヴァイオレットはこの点に頭を悩ませるのである。 

 代筆行はとても難しい。駆け出し時のヴァイオレットを描く学校編ではそれがよく分かった。

 

 ヴァイオレットとは養成学校の同期生となるルクリアが可愛かった。赤髪でそばかす、それを京アニクオリティで美少女に仕上げたことで、赤毛のアンの究極進化型と言って問題ない逸材になっていた。

 彼女のアシストがあったからこそ、ヴァイオレットは自動手記人形として教官から免許皆伝をもらえたと言っても過言ではない。ヴァイオレット大成のためのキーパーソンにもなっていた。

 

 依頼をこなす中で人間を知り、その奥に潜む愛も知ることで、ヴァイオレットの心は着実に成長していく。このハートフルなサクセス性が作品の良い所。

 

 全体としては心温まる感動するお話だが、物語が展開するバックにいつもある危険な要素が戦争だ。

 最初は軍人、その後手紙を書くようになっても、作中後半回になるとヴァイオレットは再び戦場に身を置くことになる。命を奪う、奪われるの緊張感がある恐ろしい時代であることが分かるシリアス性も孕む展開には緊張する。

 

 後半エピソードに見られる走行中の列車でのバトル展開は、シリアスだかワクワクするものがあった。ちょっと前に見た他所のアニメの無限列車の話もそうだが、昔から走る列車の中なり上なりでドンパチやるのってワクドキ感があって興奮する。このシチュが好きなのだ。

 

 電車内での揉め事エピソードでは、それまでの静から激しい動へと作風が一気に変化する。京アニが描く美しい風景が映えるゆったりまったりの世界感も良いが、スピーディーなバトルシーンも抜かり無く作ってくるからすごい。ここは過去作の「境界の彼方」あたりで鍛えたテクだろう。

 

 鋼の腕を振るって鮮やかに敵を撃退するヴァイオレットの勇姿は、さながら女版エドワード・エルリックといった感じだった。やはり格好良い。

 

 後半の盛り上がりポイントは、ディートフリートに「お前も死んでしまえ」と言われたヴァイオレットが、ギルベルトを守れなかった無念の感情をあらわにして「守りたかったんです」と答えるシーン。

 弟が殺された事を無念に思う兄の心と、大事な少佐を守りたかったヴァイオレットの愛が見える点に泣けた。

 

 同僚、依頼人ら含め、ヴァイオレットは多くの人間の善意に囲まれて仕事を行っている。そんな世界感で、ヴァイオレットに明確な敵意を向ける珍しい立ち位置にあるのがディートフリートだった。

 人の心を持たない冷たい兄貴なのかと最初こそ警戒してしまうキャラだったが、実は弟想いの良き兄だと分かる。そして弟の忘れ形見のヴァイオレットに、荒い手法ではあれど、人生の道しるべとなる助言をいくつかくれるお助けキャラのポジションを取っていた。結果ツンデレ兄貴だった。なのでこの兄貴も結構好きなキャラになった。

 

 キャラは少ないながら、言動でいい味を出している者が多く、なにより女性キャラは美しい。

 可憐で無垢な清潔感ある女性の良さを出すヴァイオレットの横にいると真逆の要素が見えるけど、これはこれで良いのがカトレア姉さんだった。信じられないくらいエッチな褐色の巨乳キャラで良かった。遠藤綾の声もエロい。

 委員長キャラっぽい眼鏡少女のエリカ、健全な感じがするボーイッシュなアイリスも秀逸なヒロイン性を持っている。

 各種属性揃い踏みな郵便会社の自動手記人形達はクオリティが高い。

 

 序盤こそ愛を知らない女として描かれるヴァイオレットだったが、心の成長を迎えてやがては喜怒哀楽が見えやすくなってくる。

 そんなヴァイオレットが涙するシーンが割と多めにある。この際の涙の描き方がすごく綺麗で見惚れてしまう。美少女が泣いているだけで萌えるが、そういう邪念無しにアニメーション技術として泣きのシーンが美しいのも印象深い要素だった。

 

10話について

 オムニバス形式を用いて展開する物語ゆえ、話数によって舞台から登場人物までが異なる。そんなロードームービー的なお楽しみ要素も持つ作品になっている。

 

 私の大好きな第10話では、穏やかな田舎に出張して代筆業を行うヴァイオレットの旅が描かれる。この一回の旅だけでも、ヴァイオレットは愛と人情について深い学びを得ることになる。

 

 病気で余命いくばくもない母が、一人残して逝く事になる娘宛に、向こう50年分のバースデーカードを書くという壮大にして愛がすし詰め状態になった物語が展開する。

 一度の出張で50通書くので、ヴァイオレットとしてもキャリア一の長丁場になる。ヴァイオレットは軍人時代に鬼のような特訓を受けているらしく、ものすごく体力がある。同僚のエリカあたりなら途中でバタンキューだっただろう。

 

 このシナリオだけで慈愛に満ちていて良い。泣ける。

 加えてこの私は、昔から優しいお母さんが召される話に弱い。余計に泣ける。

 

 優しいお母さんのクラーラを、推し声優の川澄綾子が演じている点にも注目してしまう。

 幼いながらも、迫る母の死を受け入れて強く生きる娘のアンも良かった。情感たっぷりに演じた諸星すみれの演技にも泣かされる。こんなの芝居しながら本人も泣けるだろうって思える。

 

 もう死ぬんだから出来るだけ母と一緒にいたいと願うアンがいて、残り時間がもう少ないからこそ未来へ向けてメッセージを残す作業に全振りで娘に会えない母がいる。この苦しくも愛しい親子関係は真顔では見ていられない。泣いてまう。

 

 死してもなお50年分の母の愛が分散されてアンの元へと届く。無償にして無限の母の愛にはキュンとする癒やしがあり、感動してめっちゃ泣ける。川澄綾子の演技がまた良くて泣けるんだなぁ。

 

 こんなものを見せられると、現段階でも十分に足りているが、それでも余計に我が母に親孝行もしたくなるというもの。産んでくれた母に感謝だ。そんなことが思えるエピソードだった、

 

 作中一泣けるエピソードだったけど、同時に作中で思わずクスリと笑ってしまう要素もここにあった。

 

 アンはヴァイオレットの事をマジに動くお人形さんだと思っている。

 ヴァイオレットが飲んだ紅茶はどうなるのかとアンが問うと、真面目なヴァイオレットは「やがて体内から排出され大地に帰る」と生々しい正解を言う。面白い。

 

 パンはパンでも食べられないパンは?という例のなぞなぞをアンがヴァイオレットに仕掛けると「スープに浸せば柔らかくなってどんなパンでも食べれる」とまたまた最大限現実に即した生々しい正解が返ってくる。このスープに浸すという頭が固いのかフニャフニャなのか分からないヴァイオレットならではの回答が面白い。コレはナイスアイディアだった。

 

 

 

 というわけで、全話視聴してかなり泣けた。

 主題歌、挿入歌も極上の仕上がりになっていて楽しめる良いものだった。

 

 やはりこの手のシナリオ重視の物は一気にまとめて見るに限るな。

 本放送だと、一話見たら次週放送回を待つ間に、他にも放送中の色んなクソアニメとかを挟んでしまう。そのせいで高まった気持ちもすっかりリセットされてしまうのだ。

 今一度集中して一気見することで、改めて奥深き素晴らしい作品だと分かったぜ。

 

 こんな素晴らしい作品がもっと増えれば良いと思う。

 

 私何で泣いてるんだろう? その意味に気づいた時が、人生という旅の一つのゴールだ。

 

 

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