こしのり漫遊記

どうも漫遊の民こしのりです。

むさいロボットアニメ「装甲騎兵ボトムズ」

装甲騎兵ボトムズ」は、1983年4月から1984年3月にかけて放送された全52話のテレビアニメ。

 

 放送終了後にもテレビシリーズの総集編OVA、完全新作のOVA、劇場版作品がたくさん作られている。

 

 最初のテレビシリーズは80年代前半スタートで、今では気の遠くなる程古い作品だが、その後も息長く続き、なんだかんだで平成に突入してもシリーズ展開があった。

 しぶとく熱が途絶えないことから、多くの人間に愛された作品なのだと察することが出来る。

 

 そんな長く続くロボットアニメシリーズだが、名前をあちこちで聞くのみで、令和に入っても未だ視聴出来ていなかった。いつか見ようと思うようになってかなり経ったこの秋にやっと視聴出来た。この道のりにちょっと感動。

 VHS、LD、DVD、そしてつい最近にはBD-BOXまでもが発売された。これだけの記録メディアが生まれては死んで行く間で何度も販売されているのなら、視聴するのは容易だったはず。だが、そこは運命の下ですれ違いが連続したと納得する。それにしても先日発売されたBD-BOXの値段の高いこと……。販売してくれるのはありがたいが、待ったなしでビビるしむせる価格設定だった。

 

出会い

 

 長丁場の一年ものの割には、なんというか作風が地味。他のロボットアニメのように、画として、シナリオとしてのドカンと大きな見せ場もなかったと思う。割と淡々と話は進んでいく。

 サンライズ作品の中でもかなり地味で硬派な作風かもしれない。面白みは派手なロボバトルよりも、重厚でシリアスな物語運びにある。

 激しく子供ウケする内容ではなかったと思うが、むさいミリタリー感と地味ながらもリアル性ある作中ロボは、オタクにウケが良かった模様。その証拠にプラモの売れ行きは好調だったらしい。長き歴史の中でたまにある、おもちゃの売れ行き不振でスポンサーが降りる打ち切り騒動は無く、しっかり一年間を乗り切った盤石な作品となった。

 

 主人公青年 キリコの語りによると、長らくドンパチを続けすぎて今ではその目的も定かではない100年戦争というのがあったとされる。それがやっと終戦を迎えるのが第一話でのこと。一つの大きな戦いが終わったそのすぐ後にやって来る次なる争いの渦中にキリコは偶然にもぶっ込まれることになる。戦ってばかりの、キリコの波乱に満ちた人生が描かれる。

 

 物語スタート段階から既に世界はすっかりくたびれた荒廃状態を迎えている。序盤の舞台となるウドの街を見るに世紀末感がすごい。「北斗の拳」的空気感もうっすら見えるロボアニメになっている。

 

 戦争に続く戦争で疲れた戦士キリコの心をハードボイルドに描く点が印象的。

 キリコは無口で感情の起伏が激しくないクールガイである。昨今ではこの手の無口無感情キャラは敬遠されがちなイメージもあるが、キリコのキャラ性は悪くなかった。

 なんだかんだで人間らしさも残すキリコの人間性に惹かれて仲間が自然と集まる点は微笑ましい。序盤から最後までお供したゴウト、ココナ、バニラの騒がしい三人衆とのパーティー感もそれはそれで楽しいものだった。 

 口は開かずとも、彼の内情はモノローグとして吐露される。達観からの冷めた考えを持つ戦士の悲哀がここに見られる。

 戦争は虚しく不毛と分かっていても、戦争の中で生きて来た自分は、やはり戦場に職と生の価値観を求めるのみ。というわけでキリコは、終戦後にもなんだかんだでまた戦場に帰って来てしまう。

 過去に色々な傷を背負う悲しき男の厳しきさだめが見える点にグッと引き込まれるものがある。

 

 そんなキリコが一度は世界に絶望した中で見つけた光となるのが、ヒロインのファンタム・レディ改めフィアナだ。

 キリコとフィアナ、偶然出逢って別れてを繰り返した末に結ばれる二人の戦場の愛も大きな見所。

 

 第一話からぶっ込まれる大きな謎がとにかく気になる内容だった。それが視聴継続意欲に繋がる。

 キリコは作戦内容が伏せられた状態で部隊に同行し、訳の分からないままに仕事をさせられる。危ないことをされているのに、やる前にしっかりと説明がない。その不安がこちらにも伝わって来るんだよな。お仕事場の「ほうれんそう」をしっかりしないなら、例え先輩でも叱り飛ばす私としては考えられないワンシーンだ。

 そこで見つけた棺の中を覗くと、スキンヘッドの裸の美女がいる。しかも生きてこちらを見ている。キリコにも視聴者にもこの謎設定はしばらく解禁されない。

 そんな気になるハゲの美女こそが、後に綺麗に髪を生え揃わせたフィアナその人である。

 人工的に作られし最強の戦士、通称パーフェクトソルジャーのヒロインと主人公による神秘的愛の物語にはどうしても注目してしまう。

 

 最初はハゲのフィアナが、後に登場した時には可愛くなっていて良かった。終始憂いを帯びた美女のキャラ性で通したフィアナは色っぽくて美しいヒロインだった。EDではフィアナ表記はなく、ずっとファンタム・レディだったのも記憶に残る。

 

 ラストは、キリコとフィアナが二人揃って同じカプセルに入ってコールドスリープ状態になる。あの状態で宇宙をさまようことになる二人のオチは、簡単にはハッピーエンドと言い切れないかもしれない。バッドではないにしろ、色々と考えさせられる男女関係のラストだった。あれも一つの愛だと考察出来る。

 

 

 圧倒的な強さと華を持つ主人公専用機体が無く、主人公キリコが乗るマシンは量産型のもの。なんなら敵も同じマシンに乗っているくらい。

 タイトルのボトムズは、主人公機の名前ではなく、この作品における戦闘ロボのAT乗り、または広くAT自体を指すワードで位置づけられている。

 キリコが乗っているマシンはガンダムで言うとザクだし、同じくタイトルはガンダムでなく広くモビルスーツと言っていることになる。ざっくり目のタイトルだな。

 

 だいたい1クールごとに主な作品舞台が変わるのも特徴的。その中でキリコの乗るマシンも色々と変わっていく。どれも華がないロボなんだよな。

 軍人達もロボを重視しない世界観なのか、他のロボットアニメみたいに字幕でも、キャラの口からも各ロボットの名前が出てこない。放送当時から決めてなかったのかなと思うくらいに機体名が全然出てこない。さすがにプラモを出すなら決めないとだけど。

 こんなにロボをプッシュしてこないロボットアニメも珍しい。

 OPアニメに出てくる作中で一番メジャー所のロボットがスコープドッグという。ザクっぽい。ザクは1つ目が特徴だったが、こちらは三つ目。学校の顕微鏡のレンズをクルクルまわすように、目が回るのはおしゃれでちょっと可愛い仕掛け。

 

 ファンネルとかメガ粒子砲みたいなド派手技もなく、銃を使う、後は殴るとかで地味に野戦を行うロボットアクションが展開する。

 密林の中でドンパチやるクメン編のロボットバトルには、ガンダム08的なミリタリー感を見た。軍とは別に動くレジスタンスがいたりする点でもクメン編には08小隊的要素が見えて楽しめた。08が好きなんだよな。この地味さが逆に良い。

 

 後半では宇宙に出るし、実はキリコは宇宙の歴史を動かすかもしれない大人物なのではないか、という壮大な展開が見える。地味な始まりから一転して話の規模がデカイ。テンションの振り幅のある作品だった。

 

 シナリオについてぶっちゃけたことを言えば、思った以上に話が長くて中だるみ感もちょっとあった。ワイズマンとかその後継者とか、ちょっとすぐには理解しづらいSF的要素が急に割り込んでくるしな。

 後に総集編OVAが発売しているが、テレビシリーズの中でも総集編回が3回もあった。総集編やりたがりがちなアニメ。その点でもややだれたな。

 

 

 そんなこんなでなかなかにむさいアニメだった。

 

 TETSUが歌唱したOP、EDそれぞれのむさい系楽曲も良かった。今はアニメとセットでこちらもフル音源を楽しく聴いている。TETSUの正体はあの織田哲郎

 

 むさ渋いアニメだけに、出演陣も渋いキャストが集まっていたな。男キャラばかりだが、有名な渋い男性声優の名前が多く見られる。

 無口なキリコの側で喧しいバニラを喧しく演じた千葉繁の活躍がとても印象的。

 

 銀河万丈が情感たっぷりに読み上げる毎度の次回予告も何気に見所。これから放送が終わるって時に差し込むにしてはやけに熱量豊富な次回予告だった。

 

 想像以上にむさいアニメだったので、視聴後には窓を開けて空気の入れ替えを行う事をおすすめする。

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