こしのり漫遊記

どうも漫遊の民こしのりです。

生きる、そして歌う「満月をさがして」

満月をさがして」は、2002年4月から2003年3月まで放送された全52話のテレビアニメ。

 

 最近「アイカツ!」のBDを見て想った。アイドルアニメは良いと。

 そこで思い出す。そういえばめっちゃ前にもアイドルをやるやつがあった。そう、満月と書いてフルムーンと読む、そんなアニメだった。なんとなく知っているけど内容はほとんど覚えていない。

 それから最近だと「佐倉としたい大西」というラジオであやねるがこの作品の事をちょろっと喋っていたことも思い出した。そうか、推し声優がチビの頃から楽しんだ作品とあらば、思い出シェアということで私も見てみよう!

 という頭と心の経路を辿って本作視聴にこぎ着けた。

 

 ジャスト20年前のアニメなのだが、意外に映像がキレイだし絵が可愛い。キャラデザにはスタンダートな可愛さがあり、20年後の今日見ても安定して可愛い。ちなみに主役の満月には悪いけど断然めろこ派である。 

 

満月(フルムーン)をさがして(12) [DVD]

 

内容

 主人公の神山満月は、喉に病気を持つ12歳の少女。

 ある日、そんな彼女のもとにタクト、めろこの男女二人組の死神(コンビ名はねぎラーメン)が現れ、お前の余命はあと1年しかないと告げる。めろこはめっちゃ可愛い。

 

 残り時間がそれだけしかないと知れば、やりたいことをやってしまわなければ。そう想った満月は、歌手になる夢を叶えるため、12歳の体で16歳から受けられる歌手のオーディションに挑戦する。

 がしかし、当然ながらガキだから駄目と言われて門前払いを食らう。そこでタクトは、死神の力を使って満月を16歳の姿に変身させる。ペッタンコだった12歳の満月も16歳になれば平均的な膨らみを持ち、めっちゃ可愛くなっている。加えて金髪にしてくれオプション付き。タクト、グッジョブ。

 

 16歳になった満月のポテンシャルはとてもやばい。そんなわけで無事歌手の座をもぎ取った満月は、芸名を「フルムーン」と名乗ることで、12歳と16歳の体を行ったり来たりして歌手活動を1年間続けることになる。

 

 死神と触れ合いながら、限りある生命の中で世界に向けて愛の歌を放つ。そんな真心を持つ健気な歌姫の切ない一年間の物語を綴った名作がコレ。

 

感想

 命短し夢見る乙女に希望を。そんな希望が見えるテーマ性は良い。

 絶望の中にも希望が見える満月の大変身の要素は、ちびっこ女子に向けて掴みが良かったと思う。 

 チビが大人のお姉さんに変身してアイドル歌手になるという点では変身ヒロイン要素が楽しめる。

 

 フルムーンはやはり可愛らしく、彼女が歌う楽曲も楽しめるものだった。

 フルムーンの持ち曲「Myself」「ETERNAL SNOW」が劇中で完成するのに合わせてED曲にもなって行くタイミングの見方はエモい。

 フルムーンの持ち曲の中では一番最初のED曲「New Future」が一番好きだった。自身の名義と作品名でもある「満月をさがして」が歌詞に含まれているのはエモい。作品を象徴するエモい名曲だな。最終回ではこの曲がフルでかかり、その間に描かれる本編ファイナルの内容にはさすがに泣いた。

 

 満月のセリフも歌唱も同じ中の人が担当。演じたmycoの喋りの芝居にはか弱い乙女感があるが、歌うと意外にも野太いボーカルで格好良い声をしている。演劇と歌唱でなかなか良いギャップを見せてくれた。

 

 満月がとにかくめっちゃ良い子だから安心して見ることが出来る。病弱ヒロインという上級者向けの萌え要素もありで良し。

 満月を巡る人間関係にも注目出来る。なかなかの人間ドラマを楽しむことが出来る。

 両親を失い、旧知の仲の英知くんとは生き別れ状態にある中、厳しく小難しい祖母との生活が描かれる。この祖母との歯がゆい関係が描かれる物語も良い。

 両親と祖母との間に確執があったのを、孫の代まで持ち込んでしまい、孫が可愛いのにいまいち深い仲に踏み込んでいけない。そんな祖母の葛藤にも泣けるものがある。和解が完了する本編後半まで引っ張る満月と祖母との微妙な関係性にやきもきし、ハラハラもした。

 お手伝いさんの田中さんは、いかにも古風なマンガらしいルックスの楽しいおばさんで良いキャラをしていた。

 

 満月の行動理念のプライオリティは最後まで生きて歌うこと。小さな体のか弱い乙女が最後まで自分に出来る事をやろうとする健気な生き様に萌える。思わず応援したくもなる。

 満月の回想シーンに何度と無く登場する英知くんもキーパーソンとなる。一生懸命歌えば、外国に行ってしまった英知くんにも自分の声は届くはず。英知くんの存在が満月の持つ歌への情熱を育てるのだ。愛の力は尊い

 

 しかしどうしても思ってしまうことがある。満月より6歳年上の英知くんが外国暮らしをしているのだから、そこは逆に別の女を見つけている方が健全なのではないだろうか。英知くんの想いは自分に向いているはずだと信じる満月の純粋さもまた良き。

 英知くんを演じていたのが木村良平だったのには驚き。そんなに昔からいたのか。結構キャリアが長いんだな。

 

 ファンタジーを絡めた少女のサクセス物語ではあったが、満月が背負う運命は12歳にはきつすぎる。よってかなりシリアスな展開も見られた。

 両親が亡くなっている、自分も病気であと1年した命がない。そんな厳しい設定に追い打ちをかけるのが英知くんの人生の落ちが分かること。

 まさか英知くんがあんなことになっているとは……。結果外国に行ってしまった英知くんとは素敵な再会とはいかない。この展開は読めなかったし、ショッキングだったな。

 

 変身を繰り返して行う騙し騙しの芸能人生活としてもそうだが、一般人として生きる中でも確実に人生の荒波に揉まれる満月の人生に深みを感じる。

 

 

 日常生活の中に、満月にしか見えない死神というイレギュラーな存在がいる点は作品の肝。

河童の三平」で死神とお初だった私からすると、現代の死神はこんなにもポップなのかと意外に想った。それくらいにねぎラーメンの二人はポップで、死神というよりもキャッホーなパンピー感に溢れていた。タクトはイケメン、めろこはめちゃ可愛い。

 タクトはネコ耳、めろこはうさ耳、中盤から登場するいずみ君は犬耳と、死神達は皆キュートでファンタジックな出で立ちでやって来る。死神なのにこのファッションは意外でしかない。というか死神感がまるでないふざけた出で立ちの連中だな~と最初は想ったものだ。

 あんなにギャルギャルしいテンションだから、30話見るくらいまで気づかなったが、よくよく考えればめろこの格好ってドエロいよな。

 

 死神っていうくらいだから、さっさと対象者の魂を刈り取って帰りたいっていう粗暴にして野蛮な連中かと思いきや、今作の死神はむしろ命の最後の時までをしっかり生きられるようサポートしてくれる。そっちのチャンネルに合わせて仕事をしてくれる魂の請負人なのか。

 タクト、めろこの存在が心の支えとなって人生を充実させる満月の変化が見られる。この三人がベストな仲のずっ友でいるのが分かるのが良いのだ。

 

 見た目はポップな死神達だが、その正体は元人間である。命を粗末にして現世を去った者が罰として背負う苦行が死神業である。

 満月の事が好きになるほど、タクトとめろこは満月の魂を連れて行く事に罪悪感を覚えて苦しむことになる。

 命を捨てるも刈り取るも、その罪は重い。ファンタジーに絡めてそこらへんの厳しい事情を描いている点も印象的。

 

 タクトの声優が斎藤恭央とあるが、これには「え、誰?」てなった。この彼が後の桜塚やっくんなのだという。これは知らなかった。過去名義があったのか。やっくんがちゃんとイケメンな声なのが良い。

 一生懸命生きる満月を応援する内に、タクトの心が満月を向くばかりになっていくキュンキュンとドキドキがある展開も楽しい。

 満月は確かに可愛いけど、タクトの正体は満月の親父と近い年代の青年なのだから、そう考えるとちょっと幼女趣味っぽくもある。しかしラブに年齢のボーダーはないというのが世界の真実でもある。

 

 めろこを演じた本多知恵子の声はずっと好きだな。基本的にはギャルギャルしい元気な芝居が見えるが、たまに怒ったり真面目なテンションになる時に声が低くなる。低い声での芝居の方が好き。

 めろこを選ばないなんてタクトも罪なヤツ。ふざけた女に見えるけど、めろこはめっちゃ良い子。愛に生きる女であることがしっかりと描かれている。アニメ最終回の救いのあるオチに持っていけたのはめろこの功績がデカい。死神から大出世して天使に就職しためろこのサクセス物語も楽しめた。ていうか最終回は泣けて仕方なかった。

 満月とタクトの事を想い、女の第二の心臓である髪の毛を迷いなくざっくり断髪したシーンは格好良かった。一番好きなキャラだったな。ピンク髪のヒロインとか問答無用で良いわ。

 

 それまでヒールなサディストだったいずみ君が、最終回の最後の最後で満月のピンチを助けてくれるところもちょっと良かったよね。

 

 フルムーンの他に登場したもうひとりのアイドル若松 円もなかなか図太い良いキャラをしていた。性格は難ありだがこちらも顔は可愛い。

 フルムーンに対してだいぶ幅寄せしてくる怖い女だった。序盤はくそ女キャラだったが中盤からは良いやつになるので結果憎めない。

 可愛い子豚を飼っているが、それは動物を愛でる可愛いアイドルのポーズを取るための小道具に過ぎないという正直さが一周してクセになる。オフの時に豚がすり寄ってくると怒るのが面白い。色んなアイドルがいるんだなって思える。

 

 作中曲の「ETERNAL SNOW」をフルムーンと円が競作でリリースする展開があるが、これって面白い仕掛けだなと思えた。違うアーティストが同時期に同じ曲をリリースとか最近では無いんじゃないかな。ジャニーズあたりでやればいいのに。いや、それは揉めるか。

 

 丸っと1年放送の長めの作品ではあるが、退屈せず最後まで楽しめた。

 マンガらしいファンタジー要素もあれば、残された「命」を全うするという重く真面目なテーマも掲げている。アイドルに萌えて、命に燃える。そんな楽しい作品だった。

  

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