「ウルトラマン VS 仮面ライダー」は、1993年に発売されたオリジナルビデオ作品である。
あの有名な二大ヒーローそれぞれの歴史を紹介したもので、両作品好きには夢が詰まりすぎなありがたいアイテムとなっている。そして両シリーズをまるで知らない素人に向けては、シリーズ全体に沼るための良きナビゲートにもなる秀逸な作品だ。
私は仮面ライダー派で、特に昭和のシリーズが好きなのだが、ウルトラマンも教養ととしてもちろん抑えている。結局どちらも楽しみながら大きくなってきた。どちらも格好良くて最高だ。それらシリーズヒーローの魅力を90分に集約している。
本作のことは、実に意欲的な奇跡のコラボ作品としていつまでも我が記憶に残っている。
この作品は当時話題となったはず。だって2つの作品は原作も違えば制作会社だって違う。その点で共通要素の無いニ作のコラボなどよっぽどの好条件がなければ成立しないだろう。それが成立しているからすごい。
その昔、地元のレンタルビデオ店で本作を借りて見ていた。かなりの人間が借りて見たらしく、テープに結構ダメージが入っていた。これも当初話題になった証拠だろう。大人も子供もこの2作品の並びだと見たくなって当然だよな。
本当はいけない事だったみたいだが、我が家ではコレをVHSにダビングしていたんだよな。で、ダビングしたのを親が何度も見せるわけで、そうすればチビだった私はしっかり黙って見入るわけだ。
このビデオは特集するポイントが良く、随所にウルトラマン、仮面ライダーの名場面が散りばめられている。どこから見ても楽しく、面白く、そして格好良い。
色んな物を見たいから同じ物を2度以上見ることはほとんど無いのだが、そんな中本作は人生で一番繰り返して見た作品にあたる。
当時はヘタったテープが産む映像乱れにモヤっとしながら見たものだが、今ではしっかり綺麗に収録されたDVDが出ている。
急に見たくなったので、このクソ暑い夏場にDVDを見る。元々暑いのに、格好良いヒーローの手に汗握るバトルを見れば体温がもっと上がる。
久しぶりに見てもやはり良かった。どのヒーローもデザインが秀逸だ。新しいのをディスるのは良くないが、最近のだとデザインネタも枯渇を迎えたのか、ぶっちゃけ変なヤツ、ダサいのもあるんだよな。黎明的から益々の進化が進む昭和のシリーズヒーローはやっぱり良い。
93年という古い世界のことだが、当時作られていたシリーズ作品は全部コレで勉強出来た。30年くらい前だから、今となってはどちらのヒーローも後輩が増えたものだ。もう今後は新作を盛り込んだ第2弾は出来ないと想う。それだけに奇跡の一本となった。
ウルトラマンは「G」まで、仮面ライダーは「ZO」までの映像が収録されている。G、ZOが最新作だった世界とかやっぱり古い事だな。もう少し遅らせれば「仮面ライダーJ」も行けたのにな。
当時は両作共にテレビシリーズのプロジェクトがストップしていたというので、そこの寂しさを埋めて熱を盛り上げるにも良い一作になったことだろう。良いタイミングでの発表だった。
内容は実に充実している。
どちらも変身ヒーローということで、二大ヒーロー各員の変身シーンを集めた映像がある。これが良い。
仮面ライダーは真似したくなる変身ポーズが多いため、コレで真似して覚えたものだ。子供の頃だと鏡の左右逆転の都合を知らないので、テレビを見たままの手足の動きを体が覚えてしまっている。仮面ライダーの変身ポーズは全部覚えたが、どれも鏡写しでの動きになっているんだよな。そんなあの日のおちゃめでちょっとドジな自分を思い出しつつも楽しく見ることが出来た。
それにしても真仮面ライダーの無駄なまでに工程の省略がない生々しい変身シーンは、当時でも今でも一体どこのオタッキー層に向けての作りなのかと思ってしまう。この変身シーンの作りが凄すぎる。これで仮面ライダーかよと思ってしまう。小さい頃にコレを見た時はかなり怖かった。途中で杉田玄白みたくなっている時がある。
ウルトラマン、仮面ライダーそれぞれの必殺技を連続で見せるコーナーは特に盛り上がる。毎度のハイライトで子供にとっては最も楽しみなバトルシーンのシメをまとめて見れるのが良い。
技だとアマゾンライダーの大切断とか直球すぎる名前だな。
ライバルとの名一番、名場面も収録されている。
仮面ライダーではブラックとシャドームーンの二人の王子対決、初代ライダーのダブルライダー対6人の偽ライダー対決が印象的。
シャドームーンがサタンサーベルでバトルホッパーのボディを切り裂く衝撃トラウマシーンもしっかり入っていた。バトルホッパーはめっちゃ格好良くて好きだったから、あのようにリアルになボディ割れして沈黙してしまう最後は悲しかった。アクロバッターとして帰ってくる次のシリーズは救いになったな。
ウルトラマンの名場面シーンでは、ブラックキング、ナックル星人のタッグにジャックが負けてしまうトラウマシーンが入っていた。
夕日をバックに「太陽エネルギーをくれ。私は倒れる訳にはいかないのだ!」と叫びながらも倒れてしまうジャック。これを見た時には「地球オワタ」と幼いながらにも思ったものだ。
ナックル星人のデザインは好きだけど、コイツまじで狡猾で悪いヤツだから許せん。坂田兄弟の上二人がえぐい殺され方をしたアレはトラウマだった。
セブン最終回のダンとアンヌの別れのシーンはドラマティックで良い。ここもしっかり収録されている。当時のセブンの中の人のインタビュー映像もあり、このシーンの撮影にあたっての思い出話も聴けた。インタビュー映像は貴重だな。仮面ライダーサイドではV3の宮内洋氏が語る撮影秘話も聴けて大変勉強になる。
「明けの明星が輝く時~」から始まるダンのお別れのセリフは詩的かつ悲しくて素敵。これに対してアンヌ隊員は「待って!行かないで!」と強めに待ったをかけるが、ダンは「アマギ隊員がピンチ何だよ!デュワ!」と言ってアンヌを振りほどいて変身して旅立ってしまう。可愛いアンヌ隊員に「行かないで」を言われたらとりあえず躊躇するよな~と思いながら見ていたものだ。
セブンのラストはマジで名場面だな
エース最終回映像も収録されていた。夕日をバックにエースが子供達に残した最後の願いは、世界平和を実現する心得そのものだった。
優しさを失わないでくれ。エースが願ったそれが人間の中にあれば平和が叶う。エースの願いは、コレだけあれば人類はやって行けるという基本にして最大の要望だった。ココもチビながら泣けたと当初の思い出が蘇る。
次郎少年が海岸でウルトラ5つの誓いを叫ぶ「帰ってきたウルトラマン」最終回名場面も爽やかで良い。あの誓いには、義務教育時代を健康に過ごす心得が集約されている。
懐かしいな。当時は学校で支給されたが使いもしない国語のノートに5つの項目を書き取っていたな。ビデオを巻き戻しては文字起こしをしていた。そんなことをしていた私の青春は、荒波無きマジで平和な凪状態だったんだなと思えてくる。ホント、あんな事を楽しくノートに書いていた時代なんて平和過ぎたぜ。
仮面ライダーの方で熱いのは、客員が跨るバイクの紹介。客員のマシンはマジで格好良い。初手のサイクロン号から既に傑作なんだよな。ちょっと派手で歪なジャングラー、海も行けるクルーザーも良い。
スーパーワンがブルーバージョンで歩道橋の階段を掛け上がるシーンが凄い。階段を降りるなら出来るだろうけど、バイクなら勢いで登れるんだ。そんな事が可能なのだと知ったこのシーンはインパクトがあった。
Zブリンガーが燃え上がる倉庫から脱出するために爆走するシーンは爽快。この中の走りとなると、後部座席に乗るヒロシ少年はさぞ怖かっただろう。
最近の作品だと色々都合があってライダーだけどバイクシーンが無いということもある。これを見れば、やはりライダーのバイクは凄く格好良いと改めて気づく。
シリーズ屈指のギャグ、またはカオスシーンを集めたコーナーもあり。遊び心もたっぷりな編集の仕事が良い。
タロウの餅つきはシュール。キノコモルグのちんどん屋パフォーマンスに、偽スカイライダーが子供達の口にアイスをねじ込んで無理やり食わせるシーンも面白い。それにしてもあのアイスねじ込みはやりすぎ。声優さんの芝居のテンションも弾けていた。一緒に見ていたウチの兄弟も偽スカイライダーには笑っていたなと記憶している。
名曲「ロンリーライダー」をバックに仮面ライダーの名場面を流すコーナーが格好良い。まずこの歌が格好良い。ロンリーをテーマにしたことで哀愁たっぷりだが、しっかりとヒーローの根っこの強さを歌った名曲にもなっている。タックルが逝ってしまうシーンもありでそこは泣ける。
映像ではライダーの変身前後それぞれの姿が確認出来る。これもありがたい。もうお亡くなりになられた方もいるので今となっては貴重。
改めて皆キレイな顔をしていると思えた。結城丈二、神敬介、南光太郎、筑波洋、風見志郎あたりは特に顔面が整っている。
あんなに格好良い本郷猛がこれのずっと後にせがた三四郎になるなんて誰が予想出来ただろうか。そんな事を思いながらも視聴した。
ロンリーライダーの所は特に巻き戻して見た記憶がある。
過去映像を見るだけでも十分元が取れる作りだと言えよう。そこに追加してここだけのマジで貴重でありがたい要素が、ウルトラマンと仮面ライダーがコラボした新規のショートドラマだ。
これが凄い。ウルトラマン、仮面ライダーが同時に出勤して悪者を成敗するのだ。
こんな特別な作品のやられ役に選ばれた栄誉ある猛者が怪獣ガドラスと怪人毒サソリ男だ。
等身大と巨大な強敵が街に同時発生するというガチの恐怖が我々を襲う。これを受けて、合成だけどハヤタと本郷猛がツーショットで同時変身して討伐に向かうのだ。マジで格好良い。
やは飛行能力があることでウルトラマンの現場到着が速い。仮面ライダーはちょっと遅れてサイクロンで登場。
それにしても二人共どこからの出勤やねん。ヨッシーバレーみたいな走るには危ない道をサイクロン号でぶっ飛ばす仮面ライダーの姿が確認出来た。
2つの戦場でガドラス、毒サソリ男を追い込むと、強敵二体が合体して巨大なサソリガドラスになる。
ウルトラマンはこれに苦戦するわけで、じゃあ小さい仮面ライダーは何をするのかと言うと、まさかのこちらも巨大化で応戦となる。
すげぇ。ウルトラマンの変身シーンぽく仮面ライダーポーズを取っても巨大化した。そんなことが出来たのか。
同じサイズになったウルトラマンと仮面ライダーが共闘し、強敵のサソリガドラスをノックアウトする。最後はライダーキックとスペシウム光線の合せ技で駆逐となった。これの威力がすごい。大きくなった仮面ライダーのキックとか脊髄を粉砕するくらいやばいだろう。
敵もすごいから街がかなりボコボコにされて火の手も上がっているが無事勝利。勇敢な二人が並び立つ戦いの最後に感動。
その後、この企画用に書き下ろした影山ヒロノブ氏の魂の一曲が流れてエンド。この歌も熱くて良かった。主題歌も新規で作る熱の入りようはさすが。
歌の途中では、ウルトラマンがサイクロンに跨り、仮面ライダーがスペシウム光線を放つポーズを取っている貴重なショットも拝める。サービスが良い。シリーズ本編やイベントでもまず拝めない構図でのショットと言えるだろう。
そんなわけで、久しぶりに見ても無敵のヒーローファイト!ファイト!と言いたくなる名作ビデオだった。
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