「みかん絵日記」は、1992年10月から1993年6月まで放送された全30話のテレビアニメ。
加えてテレビ未放送回が1話あり、こちらは販売されたビデオソフトでチェックできる。
今年30周年を迎えるアニメであり、同期作品だとクレヨンしんちゃんの名が上がる。それだけ古い作品ってこと。こう考えると、いつまでも5歳でいるというマジックを解けば、しんちゃんもすっかりおっさんになるだけ時が過ぎているのだな~。
結構前から名前だけ知っているけど何だかずっと分からない作品だった。とりあえず名前だけは聴いた事があったから結構ヒットした作品なはず。そのくらいの思い入れしかなかったが、なんかネコが出てきて可愛い感じだし、こうも荒んだ世の中だと癒やしになって良いかもと思い、暑さが残りすぎなこの残暑にひっそりと楽しんだ作品である。ホントあちぃな~。
DVDジャケを見ればオレンジ毛のネコがメインの話だと容易に予想できる。これを見て最初に「ホワッツマイケル」では無いのか?とまさにホワッツな案件が浮上した。
でもすぐに解決。全然関係ない。ちなみにホワッツマイケルは80年代からアニメ化されているので、オレンジネコ作品ではみかん絵日記が後輩だな。
本作ではネコを飼う一般家庭の日常を描き、その周囲の人々達の暮らしも描いて行く。ネコの視点から描かれる日常系癒やし枠である。
内容はほっこり和むもので、非日常の刺激は少なめ。少なめなのだが、初手では作品の基本設定となるちょっとのパンチが入る。それがメインで登場するネコが普通に喋ることである。こいつはびっくりだ。
少年と喋るネコがメインの作品であり、原作漫画は少女漫画雑誌「LaLa」掲載作品だった。
LaLa発で少年と喋るネコがメインの作品といえば、新しいものでは「夏目友人帳」をすぐに思い出す。そんな訳で、あの素晴らしき名作「夏目友人帳」にも通ずる何かがちょこっとはあるはずな作品でもある。これでネコ漫画の系譜を学べ。
放送の途中からOPアニメに「中央児童福祉審議会推薦」と表示されるようになる。長いし何言ってんだ、となるどこぞの組織お墨付きの箔ががつくことになるわけだ。
この長い漢字の羅列はどこかで見たことがあると既視感に襲われた。そう、一休さんである。あの喧嘩は三級品でもとんちは一級品の一級アニメ「一休さん」と同じ称号を持つ作品なのだ。つまりは「とにかく良い物だ」と言っているのだ。そんな訳で、お子様に安心して見せることが出来る良い作品です。
内容
草凪 吐夢(くさなぎ とむ)少年が拾って来たネコは、ただのネコではなく、人間の言葉を理解し発することが可能だった。発想が安直な吐夢少年は、オレンジ毛の目立つネコを「みかん」と名付けて飼うことにした。
喋るネコがいる家庭を主な舞台にし、吐夢とみかんの平和な日常が描かれる。
みかんがタイトルにある「絵日記」をゲットするのは第5話のことであり、それ以降は絵日記を描く楽しいネコライフの記録が残っていく事になる。
感想
喋るネコのみかんは二足歩行を体得し、後には読み書きも出来るようになる。こうして人間の言葉を理解して喋るネコは、ポケモンのニャースよりも先にいたのか。勉強になった。
可愛いネコなのに以外とおじさんな趣味持ちで、みかんは酒を好み、つまみもしっかり摘む。みかんが言うには、ホタテを調理したおつまみが大変上手いらしい。ちょっと食べてみたいかも。
そういや酒を飲まないし、ネコも飼ったことがないから、考えてみると私にとっては諸々未知の領域なアニメだったんだな~。
みかんと草凪家のお父さんが美味しく酒を飲むシーンがある。子供の吐夢にそんなシーンがあったらアウトだけど、みかんなら酒をやっても問題ないんだな。後半では子供も作るし、人間換算したネコ年齢だとしっかり大人なのだと思う。
このように、ファンタジックかつなかなか人間味のある愛嬌たっぷりなネコさんに描かれている点が良かった。
ちびまる子ちゃんでお馴染みの声優 TARAKOのネコ声が大変マッチした可愛いオレンジ毛のネコだった。
主人公少年の名前が吐夢なのは珍しい。映画監督の内田吐夢以来の吐夢だな。親達が内田吐夢映画世代の人間達だったのかな。「飢餓海峡」は面白かったなぁ~。
吐夢のママが落ち着いたしっかり者お母さんに見えて、結構パワフルギャルなところもありな良いキャラをしていた。大人しそうでいて、多分お父さんを尻に敷くくらいには強かな女なはず。島本須美の美声が良かった。
吐夢の学校での日常も描かれる。そこに登場するヒロインの杏子ちゃんが可愛かった。
吐夢は杏子ちゃんの事が好きだけど、杏子ちゃんはどうなのか。そこに注目して話を追っていくと意外にも意外、杏子ちゃんの想い人は吐夢のパパだった。5年生の女子でおじん趣味とは進んでいる。
では吐夢は振られたのかというとそうでもない模様。待っていれば吐夢もあのように素敵なおじんになる。ならば未来に可能性がある。そんな感じの事を想う杏子ちゃんの心中が伺える展開になっていた。大人しい顔をして意外な設定付けのヒロインだった。
中盤で転校してくる楠木世良と吐夢のちょっと変わった友情も楽しめた。世良のいいヤツだけど絶妙に危ないヤツな感じもするキャラ性が良かった。クラスに一人くらいは、こういうアウトロー風なだけでしっかり皆のお友達なヤツっているよな。そういう私がその口だった。
世良も杏子ちゃんの事が好きっぽいことから、友情を育みながらも恋敵として牽制することもありな吐夢の忙しい青春が展開する。
友情と愛情は良い感じに線引きして上手に向き合う。それが青春の鉄則ってもの。
あとは癒やしのお姉さんヒロイン枠とし看護師の弥生さんが光っていた。諸々良い感じのお姉さんだった。
ここの家で買っているデブネコの牡丹がちょっとムカつく。不快要素無しな作品だが、唯一ちょこっとだけイラッとしたのが牡丹の言動。
弥生さんには、由起彦さんというネコが苦手な彼氏がいる。ネコ嫌いな由起彦さんが歩み寄っているというのに、牡丹は飼い主を取られる事に嫉妬して由起彦さんを攻撃してくる。この関係性を完全なるユーモアで描けば良かったのだが、牡丹のやり口は笑って済ませる範囲をわずかにオーバーしていた(私としてはの話)。そこはムカッとした要素として記憶に残ることになった。
みかんが時々顔を出す数匹のネコと犬も一頭混じっての可愛らしいコミュニティがある。そこで皆が牡丹に対して「いい加減にしとけ」的な事を言って宥めている一幕も面白い。
牡丹が最後まで譲らず飼い主の彼氏に喧嘩を売っている点は往生際が悪い。
吐夢とみかんがコンビでたわいもない日常を楽しく過ごすまったりテンションな良きアニメだった。
基本はまったりでも、やはり動物がメインの番組なだけに、その観点から注意深いメッセージもいくつか発信している。
たまに見るおしゃれで動物に服を着せる行為だが、あれは開放感の阻害となることから、動物に余計なストレスを与える事にもなると言っていた。稲垣病院に二匹の捨て猫がやって来るエピソードでは、動物を捨てるという人間のエゴについてやや重く考えさせられもした。
みかんとかつてのご主人のおじいさんとの間には、動物と人を繋ぐ確かな友愛も見える。注意だけでなく、そんな美しい動物愛についても語っていた。丸っとまとめてハートフルなネコドラマだった。
本当に汚れ要素がゼロの清潔感ある作品だった。これだけおかしなアニメが増えた現代にこういうのを見ると、古い作品なのに逆に新鮮に思えた。普通に楽しかった。良い作品である。
打ち切りです。
放送したのは全30話。2クールには長し、3クールには短し。そんな帯と襷の悩ましい関係性のような仕様の作品だが、そうなった謎の解決は国民的ドラ声の青猫が握っていた。
オレンジネコの物語が展開する裏の時間では、ネコ界のエースたる青きネコ、つまりはドラえもんが放送していた。当時のちびっ子も大きなフレンズもドラえもんを見ていたのである。そうしてドラえもんに数字を吸収された結果、みかん絵日記は打ち切りの憂き目にあったのだという。だから30という微妙な数字が生まれた。
確かにドラえもんは良い。この私も完全版の漫画をまんまと全巻買わされたくらい作品の面白さと可愛さの虜になった。間違いなく愛らしい時代のエースだった。完全に好きである。
対してみかん絵日記の出来が悪かったのかと言えば全然そんなことはなく、みかんだって良いものだった。しかし、商業の世界では、良い物が売れて生き残るという単純な構造は成り立たない。「良い物=数字が出る」の法則はあって無いもの。いや、無いのだ。
「数字」という残酷ながらも確かな世界の理のために、みかんの放送は短くなった。
どんな作品であろうが、世に発するならクオリティの高さは必ず追求される。そこをクリアしても、やはり売り出すベストな時期、後は時の運が必要。そこらの辺りの要素がバッチリ重なって真に成功が叶うのだ。そんな業界の都合も見える作品だった。みかんは別日に放送すればもっと大成したはず。
31話分を作っていた段階で30回放送をもっての打ち切りが決まったという。そんなわけで残された1話は一旦蔵に入るしかなかった。幻になりかけた31話目はOVAとしてビデオソフトで確認できるぜ。
それからDVDには、警察の交通安全ビデオとして作られたアニメも収録されている。テレビ放送とは違うここだけの新規映像だ。
日本警察というのもそれなりに歴史があるはず。そことコラボしているということは、世の中的にいい物だと認められた作品であるということ。日本警察もお世話になったアニメ、それが「みかん絵日記」だ。讃えよう。
まとめ
ネコにだって言いたいことがある。時には耳を傾けてやってくれ。
生きているなら皆がこの丸い地球の上に住む仲間だ。ネコも人も仲間だ。だから仲良くしよっ!
おわり
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