こしのり漫遊記

どうも漫遊の民こしのりです。

ロボットに見る人間心理のあり方「人造キカイダー」その2

光明寺博士の数奇な人生

 おじさん博士の彼も超重要人物であり、その人生で辿った物語は山と谷があり過ぎた。彼が主役で動くもうひとつのドラマとして見ても面白い。

 

 キカイダーとダークロボットの戦闘シーンが一番の盛り上がりだが、後半までは行方不明の博士を探す旅物語としても楽しめた。

 

 この博士探しは思った以上に長引く。

 広い日本でたった一人のおじさんを探す。いざ開始してみれば、これがなかなか見つからないのだ。人探しって難しいと分かる。

 

 記憶を失っても金を得て飯を食って暮らしを作っていかなければならない。そんなわけで、毎度博士は色んな仕事をしてあちこちを旅している。

 ミッキーやポパイのごとく、週毎に違う仕事をやっている博士の物語も面白い。今回は何の仕事なのだろう?と期待して見るのも作品の楽しみ方。

 

 やはり優秀な人間だということで、記憶が無くとも色んな仕事をさっとやってのける。警備員、カニの漁師、タクシー運転手、百姓、ホットドッグ屋、バーテンダーなど、色んな事を器用にやってのける。機械いじりのプロだったこともあり、お世話になった先ではテレビ修理も行っている。

 記憶がばっちり揃っていても仕事にありつけない人間がわんさかいる中、優秀な博士は記憶が無くとも色んな現場で即戦力になる。住居不定の良く分からないおっさんであるにも関わらず、現場で使えるからってことで旅先でもすぐに仕事を始められるのはすごい。

 

 良い父として家庭生活をやっていたからなのか、行く先々で厄介になる人々からの受けが良い。特に若い娘からは父のように安心感が持てると評されモテている。益々すげぇおっさんだな。

 

 コナンや毛利探偵のように、彼の行った先々でとんでもない事件が起きる。ダークもそこを狙ってくるからだ。

 ストーリーを展開する上でどうしてもそうなるのだが、そこについて自分でも気づいておかしいなぁと疑問に思っているのもなんか面白い。

 

 三ツ子、マサルが父を探して近くまで迫っても、後一歩のところですれ違って会えない。そんな歯痒くも面白い展開が連続するのもこの作品の味噌だった。

 

 博士が飛べが一行も追いかけるため、キカイダーではあちこちにロケ撮影に出ている。大昔のあちこちの観光地が見れる点は旅行気分が味わえて良かった。

 

 そしてこの後に待っている光明寺博士の次なる「脳の旅」がヤバい。

 

ハカイダーという神ダークヒーロー

 キカイダーもそりゃすごいよ。でも作品のもう一枚の看板のハカイダーもマジでスゴイ。名物キャラ過ぎる。

 

 ここでヒットした後には、キカイダーを差し置いて単独で銀幕デビューを果たすことになり、その映画をゲームにしたものがセガサターンソフトとして発売されることにもなる。この出世街道はすごい。ちなみにゲームも買ったけど、なんとも微妙なクオリティだった。

 

 漆黒のスナイパーのハカイダーのクールさは異常。

 とにかく格好良い。そして強い。

 変身前のサブローは口笛を吹いてビルの壁を歩く。これらの要素は癖と印象が強く、ずっと覚えていた。

 

 これだけの名物キャラなのに、実はマジでちょっとしか本編に登場していない。

 43話しかないのに、本編で登場したのは37話から。まさかのワンクールに満たない出番だった。その短さで、後に何年と特撮オタクの記憶に居座るインパクトを放った。すごい。

 我が家ではキカイダーとセットでフィギュアを購入して部屋に置いている。毎日見ても格好良いぜ。

 

 今こうして見ると、ハカイダーってジョジョのゴールド・エクスペリエンスにちょっと似ているな。ジョジョの荒木先生もキカイダーリスナーだったのかもしれない。ジョジョも超面白いよね。

 

 キカイダーハカイダーの頂上決戦は、日本特撮史の中でも指折りのベストバウトとなっている。とにかくこの二人が並ぶと画が映える。いい年したおっさんでもこの二人の対決となればワクワクするはず。

 

 50年も前から仕事をしていた飯塚昭三の悪魔ボイスが映える。この段階で既に声が出来上がっているため、50年前とはいっても別段声に若さを感じない。どんだけ昔から仕事してたのよとビックリする。

 この人の特撮ドラマ登場率もヤバいな。ハカイダー役は、間違いなく自身のキャリアの中で光る代表作になったはず。名演技だったぜ。

 

 子供はなんとなしに見るのだろうけど、ハカイダー誕生のネタバラしって冷静に考えるとエグい。

 

 ジローや光明寺姉弟があれほど苦労して探した博士の脳が移植された戦士がハカイダーである。このSF設定はジロー的にかなりきつい。

 ジローが博士を発見しても気絶していて頭が空っぽ。では脳はどこに行ったとギルに尋ねれば、まさか敵のエースの頭の中と発覚する。

 すごい設定だよな。残酷すぎて初見でこうなるとは読めない。

 

 ジローにとってハカイダーは兄弟であり同時に父でもある。なので手を出せないという非常に歯がゆい状態に陥る。

 このとにかく戦い辛い設定はきつい。この作戦を考えついたギルの頭の中もエグい。

 妻にして母、我が子にして我が兄弟という歪な家族関係を形成したオイディプス王の物語を思い出すような設定だった。ちょっと近い要素があるよね。

 

 ハカイダーの行動理念はとにかくキカイダーの抹殺にある。それでも他のクソ野郎と違うのは、フェアな条件で始末したいこと。これがダークヒーローの鉄則だな。

 この後にも特撮界にはマッドギャラントップガンナー、ブラックビートら黒くて熱い奴らが歴史に名を連ねることになる。その走りの黒き戦士としてハカイダーの歴史的ポジションは重要。その手の系譜の走りを見た。

 

 終盤では、アカ地雷ガマというふざけた見た目の怪ロボットにぶっ飛ばされてキカイダーがバラバラになってしまう。

 生きる目的だったキカイダーが先に他の連中に倒された。これを受けてハカイダーは、「では、自分は何のために存在して何をすれば良い」と自問自答し、近くにいたハンペンにも当たり散らす。

 キカイダーとも他のダークロボットも違った思考回路で動くハカイダーならではの葛藤が見えたのが印象的。

 

 キカイダーの死を受けて混乱状態となったハカイダーが、光明寺博士を殺しにかかる流れも見えた。脳が体を殺しに行くという奇妙な構図が見えたのも印象的。

 体を殺せば脳もやがては死んでしまうため、極めてイレギュラーな自殺にも見える。他の作品では見ない展開だった。

 

 ダーク最終ロボットの白骨ムササビに不意打ちを喰らってハカイダーは停止してしまう。

 この後に始まる脳を博士に返す移植手術のシーンにもハラハラするものがあった。ジロー、光明寺姉弟、ハンペンの手術経験なしの4人のみで大手術に挑むことになる。

 倒壊が近いダーク基地内部という極限状態が極まり過ぎたギリギリの中で手術は進む。そして博士は無事復活を迎える。ここはチビの頃に見た時にはハラハラした。

 

 体も脳も旅する光明寺博士の人生はハラハラが過ぎるものだった。この人生で自叙伝を出せばきっと面白いだろう。

 

ハンペンを忘れるな

 ジローはイケメンヒーロー、三ツ子姉さんは美しい。美男美女はここでコンプされているが、まだいる良い男がハンペンこと服部半平。彼を忘れてはいけない。名物おもしろ人間なので、視聴者にはきっと愛される。

 

 伊賀忍者服部半蔵の子孫で16代目らしい。だが忍者要素は大してなく強くもない。私立探偵をしているけど多分ポンコツ。回を追うごとに忍者、探偵、両方の要素を忘れてしまうくらいコメディ要員として完成していく。

 3枚目キャラではあるけど、顔は普通に男前だと思う。ハンペンのキャラ性はとにかく笑えるので、彼もまた看板キャラとして推せる。

 

 たまにジローの真似をしてギターを弾きながら登場することもあった。しかも複数回。

 ジローのように高い所でギターを弾いて飛び降りるのは、ロボットだから出来る事で人間がやると確実に危ない。ハンペンもジローのいつものヤツを実践するが失敗して痛い目にあう。自ら痛い目にあうことで、真似するかもしれないお子様の視聴者に向けて注意を促したハンペンの勇姿を忘れてはいけない。

 

 序盤のハンペンは金にがめつく、敵に金を積まれれば味方を裏切ることだってあった。若干のクソキャラ成分も見せたが、後半に向かうにつれて心強い味方となり、最終戦あたりでは高得点のアシストもしている。ちゃんとジローや光明寺姉弟の助けになっていて良かった。ギターの腕も上がっていたっぽい。

 

 ハンペンの愛車は緑のスバル360。可愛いデザインのアンティークカーのコレも良し。

 私は車好きでもないし、マジで詳しくない素人なのだが、それでもコレは知っていた。その昔、タイムスリップグリコのおまけになっていたのをゲットしたことで、この車のお勉強は済んでいた。何かのおまけくらいのものでも記憶しておくものだな。

 愛車がポンコツで故障ばかりし、その都度ハンペンがキレて愛車と喧嘩をする。このお決まりのおバカな場面も好き。

 

 それにしても、半世紀前のこんな車はもう表には走っていない。ゆえに貴重な資料映像だな。

 この車は扉の設置が特殊で、蝶番が従来とは逆についている。扉が開く方向も左右が逆だから何か違和感がすごい。

 

 車だけでなく、やっぱり時代が古いから出てくるアイテムもとにかく古い。テレビとかもめっちゃ古い。大昔の電気屋が映る回があるが、店の中がホント古くて地味。陳列される物も当然古いのな。 

 出てくる紙幣のデザインもやっぱり違う。お札に聖徳太子が描かれている。これは現行で使用されていた時代を生きていないので新鮮。

 

 おまけに、現代だと恐らくテレビで言ったらアウトな古い言葉を聞くことも出来た。「気違い」「カタワ者」「唖(おし))などがそうだった。表紙がついていない大昔の時代の岩波文庫作品くらいでなら見たことがある言葉だな。確かにこれらはテレビをリアタイしていたら聞くことがない。

 

魅力的なダークロボット

 キカイダーと対峙する敵側のロボット達ももう一人の主役といえよう。次々送り込まれるコイツらなのだが、何というか全体的にデザインが印象深い。

 

 第一号ロボのグレイサイキング、最終の白骨ムササビあたりはさすがに格好良いが、その間には結構奇抜というか、微妙に間抜けで微妙にダサいのもいた。全体として見てデザイン性はかなりユニークだった。

 怖さもあるけど、どこか愛嬌がある微妙な割合で構成されたロボットデザインのセンスが良かった。 

 

 グリーンマンティス、ブラックホース、オレンジアントなど、色と属性を組み合わた簡単な名前が多かった。

 

 格好良いのもいれば変なのもいた。普通にブッサイクなのもいたし。全部を並べるとかなりユニークな軍団として楽しめるだろう。決して嫌いではない、むしろ好きなデザインで統一されていた。

 中でも極めつけの「何だコレ?」の要素を持っていたのが、カイメングリーン。コレはマジで何なのだろうと思える謎の球体だった。数あるダーク部隊の精鋭の中で、こいつだけがキカイダーのガチャポンフィギュアシリーズで商品化されていたのは笑った。

 

 モモイロアルマジロ登場回も印象的だった。この回はモモイロアルマジロの人間態が妙にセクシーだったことで他の回とは雰囲気が異なっていた。セクシートラップでハンペンを捕虜にした展開も印象的。

 他にも網タイツのセクシーなアンドロイドマンが出てきたりと、時にセクシー要素もぶっこむユニーク性がある作品だった。

 

 一話目の段階でワンクール分に匹敵する10数体のシルエットと名前をギルが明かす。この後これだけの数がキカイダーに攻め入るのかと分かる点で何かワクワクした。

 

 ワンクールの振り返りポイントで登場したギンガメの回では、それまでに倒されたロボット達が復活して再登場した。

 

 復活した全員でキカイダーにアタックをかければ良いものを、復活して早々腕試しで戦いたいとかぬかしてロボット同士で殺り合うことになる。その中で数体が大破し、復活してもキカイダーと戦うのは数体だけだった。ここでは、せっかく復活したのにアホなのかと思った。

 

 仮面ライダーでも怪人を大量に復活させた再生怪人軍団回があったが、あの感じでとにかくたくさん出てくるとそれだけでワクワクする。

 この時代からもあった3Dの仕掛けを売りにした本作の劇場版作品でもぞろぞろとロボットが復活する。あちらでも大軍団が見れて興奮した。

 

 敵の中にもちょっとドラマ性を出す味わいある者がいた。ゴールドウルフがそうだった。

 ゴールドウルフには、ジローについている物より更に不完全な良心回路がついている。良心回路が作動したことで、敵である光明寺姉弟をピンチから逃がす手助けを行った良いやつだった。

 だがジローよりもギルに抗う力が弱いため、やはり戦って倒すしかない悲しいオチが待っていた。この回はとても物悲しかった。

 光明寺博士の事が好きだったと語るゴールドウルフを破壊するしかなかった運命がとにかく悲しい。

 

 敵だったカブトガニエンジが、三ツ子と関係する内に仏心を抱くようになり、三ツ子をピンチからかばってくれる流れもちょっと良かった。

 最初敵だったヤツが良いヤツになるパターンって良いよな。

 

 可愛かったのは、ブラックハリモグラの親子。ここで初めて親子セットロボが出て来る。子供の方はとても可愛らしい。

 しかし敵だからやはり助ける事は出来ない。せめて子供だけでもと思うが、助けるのが間に合わず、キカイダーの眼の前で死んでしまう。

 良いやつがいても助けることが出来ない厳しい展開も記憶に残るものだった。

 

 

 キカイダーはこの後次のシリーズのキカイダー01(ゼロワン)に入って行く。そちらは何故かBDが出ていない。なんでや、こっちのハカイダーは中身がマジな悪者だからか。

 キカイダーと同じく、01の方もレンタルビデオだと中途半端にしか揃わないんだよな。こっとも生きている内にはDVDでもBDでも何でも良いから全話通して見たいものだ。

 というわけで、人造人間から色々学べる深い人間心理もある。キカイダーは最高の特撮作品だ。

 

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