こしのり漫遊記

どうも漫遊の民こしのりです。

フェチと愛の間で展開するラブコメ「あいこら」

あいこら」は、週刊少年サンデーにて2005年から2008年にかけて連載された井上和郎作のラブコメ漫画。単行本は全12巻が発売された。

 

 盆も過ぎて一時よりも日が昇るのが遅くなった。これを見てちょっとは秋に向かっていると視覚的には感じるも、暑さは変わらず。というか盆前よりも暑くないかというレベルでまだまだ暑い。いい加減にしてくれ。

 心地良き夜長に読書と洒落込みたいところだが、秋まではそうは行かず、24時間どこのタイミングでも必ず暑い。8月に入ってからずっとそうだ。

 そんな中でも読書がしたい。ちょっと萌え~で楽しい漫画が読みたい。そうなった私が倉庫をあさっていると出て来た一作がコレ!

 00年代真ん中くらいの作品なのでそこそこ古いが、かなり状態が良い。綺麗な本なので不快感なく読めたぜ。

 12巻というコンパクトな作品なので、夏休みの内2、3日くらいかければ普通に読める。

 11巻までは本体価格390円、最終巻の12巻からは本も値上げして400円になっている。ここら辺りが価格変更の痛い時期だったのか。懐かしい作品との対面によって、世知辛いかつての値上げタイミングも見えてくるとは、なんとも虚しい。ここ10年はコミックスの新品購入を行っていないので、今は一冊何円くらいに上がっているのだろう。そんな事も考えちゃう。

 

 というわけで、クソ暑いこの夏のお供となった漫画の感想とかを殴り書いて行こう!

 

あいこら(1) (少年サンデーコミックス)

 

内容

 少年 前田ハチベエは、未だ恋を知らない。しかしはっきりとした女性の趣味として、パーツ愛のフェチズムを覚醒させている。←つまりは変態紳士。

 

 高校入学をきっかけにハチベエは東京に上京する。新天地で自分好みの最高パーツを探してゲッツすることで、ハチベエは自らの青春をエンジョイさせるのだった。

 

 愛とフェチとの間で藻掻くも、結局楽しい燃える男の青春を楽しめる物語が展開する。

 

感想

 これの連載と同時期には、同じ雑誌で野球漫画の「MAJOR」が盛り上がっていた。そのMAJORに出てくるヒロインの清水の弟の大河くんとハチベエが何か似ているなぁ~と思ったのがきっかけで、こちらの漫画にも興味を持ったという出会いだったような記憶がある。 

 

 作品の特徴としてユニークなのは、ハチベエがパーツフェチであるということ。

 展開としてはよくあるハーレムラブコメのように、女子寮の中に男子1人だけが潜り込んで楽しく過ごす設定が敷かれている。昔からこういうありえない羨ましい展開ってよく出てくるよな。そこに加えて、女子達自体を好きになるよりも、各員が持つ体のパーツにときめくというフェチズム全開なハチベエのキャラ性が混ざって従来のラブコメとは一味違う感じに仕上がってくる。

 

 このフェチだが、芸術的思考と取れる一方でしっかり変態臭いということから、当初はヒロインズ達にドン引かれて受け入れられない。

 しかしハチベエのフェチもしっかりはっきりとしていて、美へのこだわりは一級品。

 

 序盤はハチベエが春から所属するはずの男子寮に来たら火事で清々しく全部燃えて住処が無くなるという展開が敷かれる。希望を持って上京してコレとか酷すぎる。ていうか当時所属していた上級生とかどこに行ったのだろうか。まぁそこらへんの都合はノータッチである。

 女子に囲まれるハーレム展開に持って行くにはこれくらい強引でないといけない。男子の寮が無いなら女子の所に混ぜてくれの流れでヒロインズの住まいに上がることになる。

 そこにいる4人の女達が固定ヒロインズとなる。いきなり4人ともハチベエのフェチズムに反応するパーツを持っているから都会には希望がたっぷりだと分かる。

 

 まずは天幕桜子。パッチリネコ型ブルーアイズを持つツンデレ枠である。髪型、荒々しい気象、男嫌いなど、諸々の観点からエヴァのアスカ・ラングレーのように見える。ていうか完全にそのイメージだな。

 

 新幹線200系型の胸(ド巨乳)を持つのが月野 弓雁。鉄オタではないので新幹線の事はよく知らないが、新幹線の一番前の車両のヘッド部分のごとくピンとした力強いハリがある胸が実現され、それがハチベエのおメガネに叶っているとか。確かに新幹線の先端みたいなおっぱいならご立派なわけだ。

 メガネヒロインで個人的には一番推しだったかもしれない。弓道女子で隠れアニオタという要素も美味しい。

 当時の世間の反応は知らんが、多分オタクには天幕よりもゆかりちゃんの方が人気があったのではないかと思われる。

 

 次はまさかの声帯に迫るパーツフェチズムで、低音ハスキーヴォイスを持つ鳳 桐乃(おおとり きりの)が登場。

 凄い綺麗な声を持ち歌も上手い。後半では歌手としてメジャーデビューもしている。でも漫画だからどんな声か全然伝わらない。クールなヒロイン性で歌が達者ということから茅原実里あたりの声を想像して読んでいた。こういう想像する力って人生を豊かにするんです。

 この子はチビ属性で目つきも悪く萌えキャラではない。ていうかあんまり可愛くないが、くノ一でめちゃ強い設定なので、なんだかんだオタク受けしそう。

 彼女の良い声でエッチな事をなんとか言わせて、それを録音して1人でこっそり楽しみたいというハチベエの願望が特殊過ぎて笑える。毎度色んな小細工を使ってそれを実行しようとするも、バレた後に必殺忍法でぶっ飛ばされるオチを迎える茶番が楽しかった。

 

 寮の最後の1人はまさかの学校の先生。ここは寮長枠。雨柳 つばめ(あめやぎ つばめ)は格好良い女教師で好きだった。ギャルゲーをやると妹、先生の属性があればとりあえず最初にそこを攻めたい人なので、先生ヒロインには注目だった。

 この先生に備わるハチベエのフェチポイントは足。大人の女性の足ならそりゃ男子学生にはごちそうってなもんだろうと思ったら事はそうシンプルではない。 

 先生の足はいわゆるサリーちゃん足で、上から下までくびれがない漫画足なのだ。これは確かに男子なら夢見るだろうが、現実に見るのは無理かもしれない。ゆえに憧れドリーミング、つまりはフェチに持って来られだがち。ありえないものを夢想するのもまたフェチの境地です。

 先生のくびれない漫画足はマニアックネタ過ぎた。この足に踏まれたいという自殺願望持ちのおっさんが出てくる回がバカ過ぎて笑った。

 

 初期からの固定ヒロインのフェチ設定が瞳、おっぱい、声、足となっている。なかなか良きラインナップ。

 年頃の男子ならおっぱいと足が気になるところだろうけど、一生付き合うとなれば事情も変わるかも。

 年齢と共に体型変化はありえる。おっぱいはいつまでも新幹線のヘッド部分のように突っ張ってはいないだろう。いつかのタイミングで下に垂れる。足も太る、痩せるをすればサリーちゃんの域を出る。声は体型よりは維持できるかもしれないが、酒をやればしわがれるかもしれない。じゃあ瞳かな。瞳ならばあさんになっても同じ状態で行けると想う。

 そのためか、最終的にハチベエがフェチズムを越えて真に愛すのはブルーアイズを持つ天幕となる。まぁ私の分析に従って作者がそう決めた訳じゃないとは思うけど。

 

 ここに途中から金持ちお嬢様ヒロインの八ツ橋 あやめが突入してきて勝手に住み込むようになる。この強気に押しかけなお嬢様ヒロインのキャラ性も強烈で好きだった。

 あやめのパーツ属性は備前有田焼飾り壷ラインくびれ腹。有田焼の詳しいことは分からないが、とにかく美しくくびれた腰のラインが際立っている。ハチベエも色んな事に詳しいよな。

 この子特有の面白いハチベエの誘惑の仕方がある。それが腰を出してベリーダンスをすること。ベリーダンスによるくびれた腰の揺れでハチベエは目をハートにして寄ってくる。

 ベリーダンス発動時には、あやめの絵柄がちょっとラフなデフォルメ調になる。目も糸目になってまったりとした絵柄になる。これが可愛い。本編で何度も挟まれるこのベリーダンスシーンは和むので好きだった。

 私が推しているゆかりちゃんもこれに対抗して「月野レシーブ」というおっぱいを腕で挟んで強調するレシーブのポーズを取った技を開発するようになる。ハチベエの気を引くため、あやめのベリーダンスとゆかりちゃんの月野レシーブがぶつかり合う女の戦場が楽しめるシーンも想い出に残る。

 

 寮に住む5人のヒロインなら、ゆかり>あやめ>つばめ>天幕>桐乃の順で好きかな。

 

 他のゲストキャラの中にもハチベエの好みのパーツを持っている人がいたり、ハチベエ以外にもいるフェチストキャラのフェチ内容を掘り下げる展開もあった。

 世にはいろんなフェチがあると分かる。アホくさいけど、その手の人間のリアルでもあるので、この内容は見ていて面白い。

 

 ハチベエのフェチなら他にも好みの唇、耳たぶ、お尻を持つキャラなどが出てくる。ハチベエ好みの水蜜桃のような尻を持つ人物は、なんと女子ではなくクラスの男子の菊乃 盃二(きくの はいじ)くんだった。男でもフェチパーツがあるならそこに反応してしまうハチベエは何とも素直なヤツ。このはいじ君だが、行き過ぎた博愛主義者ゆえ愛に対する語りが宗教家臭くて面白い。後半であやめとデキる展開は意外だった。

 

 ハチベエ以外のフェチズム持ちキャラには、メガネフェチやらパンストフェチ、今時珍しいブルマフェチなどもいた。ここらは変態ギャグネタとして楽しめる。そういやブルマって最近だとアニメですら見なくなったな。もう作っている会社が無くなったのかな。このブルマ信者が出てくる回では、世間の目や教育委員会が余計に性的な勘ぐりを働かせたことで、素晴らしき発明であるブルマが廃れた的なマニア目線のクレームが入っていた。そういう意見もあるのかと面白く見ることができた。それからブルマ誕生の歴史なんかも語っていてちょっと教養があったぞ。

 

 初期のハチベエは「女はパーツ」と割り切っているので、その人間全体を見ていない。故にフェチは知れど、女性への恋がどういう事なのかまるで分かっていない。女子に興味津々だけど、恋愛以外に目的があってのことだから、恋愛レベルではズブの童貞というちょっと面白い状況になっている。

 体のとある部分にのみときめいて欲情する。これは現代だとちょっと道徳的にどうなの?なテーマ性になるかもしれない。ハチベエは情熱的で良いヤツだけど、この点だけで判断すれば人の一部しか見ない不誠実な人物にも取れる。ぶっちゃけ女子の中にそういうのを許す人が多くいるとは思えない。

 お前は女を見るならパーツだけしか見ていないのか、それって最低じゃね?的やり取りもキャラの間で見られる。

 

 ゆかりちゃんはハチベエの事が好きになって告白するが、相手は自分のおっぱいしか 見ていないと知ると「失礼過ぎるしマジ屈辱!」となって拒絶反応を示す。それはまぁ分かる。

 こういう形で恋愛に入って揉めるとかってのは他作品にはない要素で面白い。

 

 ハチベエは女子の体のみが目当ての変態であり、ガチで女子の敵みたいに描かれるターンもある。しかし趣味趣向、加えて人間性も含めてド正直な人間である。その点は清々しいまでに良いと思う。

 ゆかりちゃんのおっぱいの型をとっておっぱいプリンを作るとか、先生の足の型を取って楽しもうとか、やることの方向性に変態性があるけど、青春をかけてそれらをマジでやる気合は高く買いたい。

 普段は軽薄なスケベ男子をしているが、愛したパーツを持つ女子を傷つける者がいればキレて何人たりともぶっ飛ばす。そんな熱血漢なところはギャグめいた主人公像として爽快だった。結果良い男です。

 

 途中からは天幕に対してパーツ愛以外のドキドキを感じるようになり、それが恋だと知る。それまでのターンがめちゃ変態ムーブだったのに、ここへ来てなんともピュア。

 でもフェチを脱した想いってパーツ愛好家としてどうなんだ。アイドル好きが行儀良くアイドルを楽しむのは良いが、性的にアイドルに手を出したら愛好家のマナーとしていかんだろう。みたいな感じで、ハチベエも己の想いに困惑するのである。

 ここにフェチズムと愛の間に生ずる葛藤が見えて面白くなる。変態が覚える真心からの純愛、そこに激しく躊躇するのは、人の感情の在り方として実に自然でリアリティがある。行きずぎたフェチ持ちの恋愛という特異なジャンルだからこその楽しみがあって好きだった。 

 私はお利口にやっていくこと人生全部の時間の優等生だが、その立場の割には最大限変態の心の中を理解しようと努めてきた。なので、フェチと愛の間で揺れるハチベエの想いには納得出来る。男心の良いところを描いた良い作品だと想います。

 

 というわけで、フェチはフェチ、ラブはラブで別腹。一緒の事だと考えて悩む事はない。本編でもそんな感じの事を言っている。

 

 癖のあるテーマ性、展開、キャラで魅せるちょっと変わったラブコメとして楽しめました。微妙に変態臭いので、世間に向けて強くお勧めはしないけど、私はこういうのが好きです。

 アニメ化まで行かなかったみたいだけど、テーマ性としては凝っていて優秀な内容だったと想います。

 変態性もまた人の心理として一つの真実だと言えよう。それがラブに絡んで発展する男女関係もきっとあるわけさ。そんなラブな学びがありました。

 

 全てのフェチスト達に幸あれ。

 

 

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