こしのり漫遊記

どうも 漫遊の民 こしのりです。

チェーンソーの切れ味に踊り狂え「悪魔のいけにえ」

悪魔のいけにえ」は、1974年に公開されたホラー映画。

 お化けや超常現象ではなく、狂った人間が怖いと言っているタイプのホラーです。真に怖いのはファンタジーの怪物でなく我々人間なのだ。今一度そう知れる2025年新春となりました。

 

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 映画好きな我が親父殿の秘蔵本の中に、怖い映画を集めて紹介したものがあった。なのでこの古い映画の事は知っていた。でもタイトルとざっくりな中身だけね。

 私という人間は、真の恐怖は己の中にあると信じている。ゆえに己の外に見る恐怖のことは割り切ったユーモアとして見ることがしばしばある。コレ、人によっては感覚が狂っていると指摘することもあるのだが、つまりホラー映画とか猟奇的作品については一般の方のようにビビらず、それはそれで面白い見世物だと100%受け止めて楽しんでしまうのだ。私は怖い映画が大好きです。

 我が家の中でホラーが行けるのは父と私のみ。後の人はドン引きだからこういうのを笑って見ていると頭がおかしいのかとツッコまれることもある。ビビリ隠しでもサイコパスぶるでもなく、普通に生きていてそんな感じなのである。見世物をフルに楽しむのに良い気質だと自分では気に入っています。このイカれたチェーンソー映画も所々笑いながら見ていた。

 そんなのだから、小さい頃からも父の映画オタク向けの読み物を見るのが超好きだった。怖い映画、グロい映画には常人以上に耐性があります。こういう事を言ったら危ないヤツみたいだけど、過去に罪無しだし自動車免許もゴールデンだし、チェーンソーよりも手動ノコで木を切るタイプです。つまり安全な人間です。

 

 そんな昔から本で知るのみの伝説の怖い映画「悪魔のいけにえ」がこの度YouTubeで無料公開された。これには私「超見てぇ~」の反応になるわけである。

 で、見て来たざっくりな感想を先に言ってしまうとすげぇ面白かった。

 当時は内容に見る残虐性から公開禁止になる映画館もあったというが、そうして蓋をされたら開きたくなるのが人の性だよな。開いて見ることが出来て良かった。

 これは恐怖をテーマに娯楽性ある見世物として上手く作ったものだ。後の世に残る傑作へと昇華して行った理由は分かります。

 

 以前「SAW」シリーズにハマった時に、家族から危ないヤツ扱いを受けたので、その手の簡単に人死にが出るものを見ているのが回りにバレるのは避けた方が良い。といわうけでこっそり視聴だ。あとついでに、そういうのとは全く逆の安全なアニメ「ごちうさ」にハマった時にもなぜか同じような反応があった。

 SAWとごちうさ、あとザクのどこが悪いんだよ。私の中のバーニィがそう言っています。

 

 ではそんなご機嫌にイカれたチェーンソー映画の感想語りと行きますか。

 あと本作に登場する恐怖のアイテムには「チェーンソー」と「チェンソー」の二通りの表記があるが、どっちを使っても正しいらしい。業界的にはどちらもアリだそうです。アニメには「チェンソーマン」というのもあるしね。私は音としてしっくり来るチェーンソーの方で表記して行こうかな。

 

内容

 時は1973年8月。テキサス州では墓荒らし、死体でアートを作るといった怪奇事件が横行していた。非常に怖いことである。

 サリーとその兄フランクは、自分達の一族の墓が無事か確認するため、仲間3人と共に車で帰郷の旅に出た。

 その先で巻き起こるのは、超絶恐ろしい殺人事件だった。5人の若者は頭のイカれた大男 レザーフェイスの恐怖の前にその平和な青春に強制グッバイすることになるのである。

 ヤツのある所、チェーンソーの歪な機械音が響き渡るのである。それが聞こえなくなった時に待っているのは死か、それとも生還への道か。ハラハラするイカれチェーンソー映画の開幕だ!

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 という内容をちょっと張り切った感じで紹介してみた。

 

感想

 今回見たのは日本語吹き替え版。青山穣が不穏な内容のナレーションを読む所からスタートする。

 彼はこの手の雰囲気出しが上手い良き役者です。あと彼はイカれたヒッチハイカーの役でもしっかりイカれっぷりを表現していて、とても良い仕事ぶりを見せてくれた。吹き替え仕事においては彼がMVP。

 

 まず最初に超暑そう。実際にクソ暑い夏場に撮影したとかで役者さんも大変な思いをしたとのこと。

 序盤シーンで映るひっくり返ったアルマジロの死体は印象的。アルマジロって本当に見ない生物だから珍しい。

 車椅子に乗った兄のフランクリンくんが最初からすごく暑そうにしている。季節は茹だる夏だった。こんな時期にあんな酷く頭のイカれた一族の餌食になる一行。可哀想過ぎる。

 車旅の休憩で外に出たら車椅子が横転していきなりダメージを食らうフランクリンくんは出だしアンラッキーで可哀想。

 

 冒頭シーンでは、墓荒らし被害と死体で気味の悪いアートを作る怪奇事件が横行していると告げている。

 この死体でアートを作るというネタはアニメ「PSYCHO-PASS」でお初だったと思い出す。そこよりずっと前のこんな時代からもそのネタが映画界に存在したのか。サイコな発想で怖いっす。

 

 その昔には、ヒッチハイクをバラエティのダシにして盛り上がった番組もあったくらいだが、今の時代なら乗る方も乗せる方も色々怖くて出来ないよな。この古い時代にはヒッチハイカーを乗せてやる優しさを持つ人も多かったのだろう。

 そういうわけで一行が拾ったヒッチハイカーが青山穣ボイスのイカれた兄貴だった。こいつを拾ったのは完全に間違い。

 やべぇよコイツ。家畜の屠殺の話で盛り上がって興奮しているし、急に笑いながらナイフで自傷行為に走るし、アルミホイルの上で火を炊いて車内で暴れている。清々しく頭がイッちゃっている。

 この映画がお利口にまとまった普通の映画ではないと告げるファーストジャブがこのイカれヒッチハイカーの登場だった。

 こいつがご馳走してやるから自宅に来いと誘ってくるのだが、これを受けていればもっと早くに一行はチェーンソーの餌食だったわけだな。断ることでちょっとの延命となったわけだ。

 この映画を見た一つの学びが、ヒッチハイカーを拾うなら人間をしっかり見ろってことだな。基本として利がないことなので関わらないのが凶避けの吉を呼ぶ選択になるだろう。でもすごくイケメンとか可愛い子ちゃんとかだったらそこの警戒も緩むかもだけどね。とにかくヒッチハイクは危険も伴うと分かっておいた方が良い。

 

 一行が途中に寄ったガソリンスタンドに置いてあるコカ・コーラの自販機?なのか。コーラが買える装置で女子達が買い物をするシーンがあるのだが、あんなのは見たことがない。珍しいものとして印象に残った。なんかすごい古いのが見れた。

 

 田舎の家に帰ってからもなんとなく不穏。気味の悪い廃墟状態になっている。

 ここでフランクリンを残して男女2ペアは田舎遊びに出てしまう。1人残ったフランクリンくんがまたもや可哀想。

 彼のキャラ性にもちょっと注目で、どうやら彼もちょっと普通ではないようだ。精神的に不安定な模様。急に騒いだりとヒスな感じが見られた。

 

 田舎の家のご近所さんに関わったのが終わりへの始まりだった。気味の悪い隣家だったな。

 異常者達の巣窟である謎の家にやっぱり入ってしまう若者達。入るからダメなんだよ。ホラー映画の登場人物はちょっと警戒心が弱かったりおバカだったり、あとはヤバい場所、物に対して興味から突っ込んでいく点で無駄にアクティブだったりってのが昔からのお約束。

 

 ここでレザーフェイスくんが颯爽登場。意外と溜めなく急に変なマスクの変態が出てくるからビックリもするが、シュールな笑いの技術としてもアレは使えるかも。

 闖入者を吸い込むかのごとく簡単にハンマー一発で仕留めて解体部屋へご招待。ハンマーで男を殴って部屋に連れ込んだらすぐにバンと扉を閉める所は、怖いはずなのにちょっと笑える。ドアを開けっ放しではなくきっちり閉めるのは良きこと。

 ドア閉めるアレも結構な怖さ表現だけど、その前のハンマーで殴られた男が即死でなく、痙攣してビクビク跳ねている所も異常性が際立ってホラー演出としてナイス。すぐに気絶でバタンでなく、リアルにああいうことにもなるらしい。殴られた後のああいう反応を映すシーンは昨今だと珍しいよな。 

 

 ヤツがデカい、強い、怖いことでどういうわけか笑えて来る。絶対に怖いんだけど、所々笑えるんだよな。チェーンソーを持って追いかけて来るところも恐怖シーンではあるが微妙に間抜けに見えてそれはそれで笑える。あの体格で結構身軽で体力もあり、なかなかの距離を走って追いかけてくるのもヤバい。

 

 この恐怖の家の家具がやべぇ。イカれたオリジナル家具デザインには尖った良いセンスを感じもする。間違いなくキショくはあるけどな。

 色んな生き物の骨でオリジナル家具を作っている。これはニトリには並べられないキショさ。このような形でも生活に動物要素を取り込むのなら、歪ながらもアニマルセラピーと呼ぶのだろうか。いや~異常な感性と美的センス。実家に持ち込んだら絶対に怒られるやつだわ。

 これら骨だらけのシーンでは、マジの動物の骨を使っていたという。それも鑑賞用に綺麗に処理したものでなく、割とホクホクの骨だったものだから臭いが酷かったらしい。

 私も山で犬や鳥が死んでいるのが白骨化する過程を見て知っているのだけど、本当に酷い臭いがするんだよな。腐臭ってやつね。なりたての白骨は臭いんすよ。恐らく臓物が腐った臭いが骨にもしっかり残っているんだな。

 というわけで撮影の段階からも結構ヤバいんだなコレが。

 

 これだけ骨がある中で、檻の中にまだ生きている鶏が1羽いるのを見るとなぜか腹が減って来た。そんな私ってば、もしかして奴ら恐怖家族サイドの人間なのか。

 捕まえた女は動けないようにデカいフックに刺して固定なのはエグい。レザーフェイスが思った以上に物理の面で強い。でも頭は弱いみたい。

 

 まずは二人が魔の家に吸われ、迎えに行ったナイスガイもあっさりやられる。 

 いなくなった3人を探すためサリーとフランクリンの兄弟も動く。動く前にフランクリンがなんか喧しいことを言ってサリーと揉めているのがやっぱり見ていて喧しい。フランクリンも結構クセがある印象的なキャラだったな。

 そのフランクリン兄さんは仲間達の捜索を開始してすぐにチェーンソーの餌食となる。溜めのターンなくレザーフェイスくんがいきなり出てきて毎度仕事が早い。フランクリン兄さんもあっさり殺られてしまった。悲しい。

 

 あとは残ったサリーちゃんが恐怖の叫びをあげながら逃げる逃げる。この子もかなり走れるな。ずっと叫びっぱなしで長い距離をよく走っている。ていうか叫びすぎてうるさい。オリジナルでも吹き替えでもそこは一緒らしい。

 捕まったら死は確定なので、マジでめっちゃ逃げる。全く躊躇なく2階窓ガラスをぶち破って庭にダイブもしていた。最後もまた家の窓を割って逃げるし。ここまでの恐怖を前に命のみを優先すれば、体が少々壊れることなんてお構いなしで人は逃げる。それが分かりました。

 

 ガソリンスタンドに逃げ込んだ後も安心は出来ない。ここの亭主はなんか怪しいと最初から分かっていたぞ。ここの亭主のおやじもレザーフェイスとグルだった。

 これまで出てきたキャラが全部イカれた敵だったと分かる恐怖の伏線回収がヤバい。

 

 で、捕まったサリーちゃんはレザーフェイスを含めた一族と対面。

 二階からじいさまを呼んでくるシーンはどういうこと?と思ったら、じいさまは生きていたのか。とっくに死んだミイラかと思った。じいさまはちゃんと動いている。

 じいさまが一番の化け物やんけ。じいさまにハンマーを持たせてサリーの頭をかち割らせようとするシーンが地味に面白い。だがあのシーンを作るに至った発想はヤバいと思う。じいさまの握力が死んでいたお陰でサリーはなんとか生き延びたわけだ。

 あんなに弱ったじいさまにご登場願う周りの男達もイってるな。しかも嬉々としてめちゃ盛り上がっていた。

 サリーの血を吸ってご機嫌に小躍りを始めるじいさまもキショいって。ホントやることがイカれている。

 恐怖の一家を前にとにかくビビり散らかすサリーちゃんの芝居もすごい。異常な風景を前に目ん玉をかっ開いて叫ぶところは印象的。開きすぎた目のアップが彼女の恐怖の心をしっかりと表現していた。

 これも視線を変えて恐怖心を煽るテクニックだという。普通は眼の前で起きているヤバいシーンを視聴者に全て見せるものだが、こちらではそれを見ている者が恐怖している表情の方をアップで見せることを優先している。

 チェーンソーで死体解体をしているシーンでも肝心な死体を映さず、それを見てビビり散らかす人間の顔、特に目のアップを映している。こうしてめちゃ怖い思いをしている人間の目を見ることでも、間接的に場面のヤバさが濃く伝わるものなんだな。

 ただイカれた映画ではなく、凝った映像的手法にも光るものがあった。そこもお忘れなく。

 

 最後は通行人の車に乗って助かったサリーちゃん。それは良かった。

 取り逃がして悔しがるレザーフェイスがチェーンソーを手にブレイドダンスならぬチェーンソーダンスを踊ってサッと終わる。

 急に出て荒い殺し仕事をしてくれたこいつの去り際も急だった。急に終わって何だったんだあのイカれた一家とこの事件は?となること必至。

 人をたくさん殺した理由とかレザーフェイスがどうなったとかは特に無し。引きなしの潔い落ちだった。その説明しきらない部分がもっと不気味さと恐怖さを出す要素になっていたな。なんか聞いたところによると続編もあるとのこと。そっちも見たいな。

 

 いや~面白かったっす。やっぱりレザーフェイスだね。これはマスコットキャラだから。

 ハンマーを持って、またはチェーンソーを持って仕事をするシーンはインパクトがあった。あとちょいちょい笑えた。ハンマー、チェーンソーの間違った使い方の第1人者だね。

 ザラついた古臭い映像も恐怖演出として良かった。でもこれは狙ったものでなく、お金がない中での制作だったことから、単純に画質の悪い機材しか用意できなかったらしい。貧乏が功を奏した結果ね。

 思えば場所も割と固定型だし、人数も少ない中で話が進むから低予算で作ったものなのだな。低予算で高収入を生むのが儲け方の成功例だよな。

 今は低予算で作った分だけしっかり低クオリティなアニメを連日見ている感じだからな。この作品の功績を皆に見習って欲しい。

 

 こうして人里離れた場所でイカれたヤツに襲撃されて面倒を被る要素から、昔読んだ怖い本の「ミザリー」の感じもした。人の狂気性が濃く見える点では共通しているよな。ただの人間がそれを越えた狂気を宿した状態こそ一番怖いと知れるものだった。

 

 古典的なクレイジームービーとなっていて視聴するには歴史的価値があった。それとは別に、どうしようもなく香ばしいB級な味わいがとてもクセになる面白さがあって良かった。普通に楽しかったわ。

 というわけでたまにはチェーンソーと共に行く青春も悪くない。次はチェンソーマンの新作でその要素を満たしたいですね。

 

 

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