こしのり漫遊記

どうも漫遊の民こしのりです。

コロナ時代の今だからこそ刺さる「アウトブレイク」

アウトブレイク」は、1995年に公開されたアメリカ映画。

 

 がっつり実写映画を見るのがマジで久しぶり。昨今はアニメのBDやゲームを楽しんでいたので、映画鑑賞はしばらくお休みだったな。だがそこはシネマの申し子ということで、どうしても定期的に何か見たくなる。この事情が分かる人間も地球に700人くらいはいることだろう。

 

 本日は祝日だし、ゆっくり映画でも見るかと思ってBSをつけると、この秀作を放送していた。良き出会い。

 

 2時間と10分程の作品だが、最初から最後までドキドキの展開で、中だるみなくすぐに見終えた感覚になるものだった。面白い。この中途半端に古い時代の作品感もなんだか愛しい。

 

 タイトルのアウトブレイクとは、爆発的に感染が広まることを意味する。

 本作は危険度マックスなウイルスが、驚異的スピードでアメリカを覆うという恐怖を描き、その中で深い人間ドラマも展開する内容になっている。

 

 当時見ていたとしたら、ちょっとばかし怖い架空の話くらいの軽い気持ちで見れただろう。しかし、コロナ時代の今だからこそ、本作に登場する架空のウイルス「モターバ・ウイルス」がやけにリアルに感じられて怖くもなる。

 

 面白い作品ではあったが、敬老の日に楽しむには全く向かない一作だった。

 

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 まず物語のとっかかりとして、遡ること30年前に起きたアフリカのザイール村での感染症問題が描かれる。とんでもない場所にある村だなとビックリ。すごい田舎。

 調査員が調査に向かった結果、コレはヤバいから村ごと消滅させて全部隠蔽しようという流れになる。

 作中では「村に物資を送らないと」という表向きには全部伏せた会話のやりとりがなされたことが印象的。この物資ってのは何なのだろうと思って見ていたら、すぐに正体が判明する。それは爆弾のことで、じきに村に爆弾が落とされ、感染者ごとウイルスはふっとばされて事件は解決。怖い。

 

 それから30年後、また恐怖の事件の掘り起こしが起きる。同じ場所で謎の感染症が流行るのだ。

 主人公の軍医サムは、現地調査に出て問題解決に尽力する。

 ここからはウイルスとの戦いの中で、サムと元嫁ロビーの愛の揉め事、ウイルスの大元となる猿の確保、保身からウイルス関連の情報を隠蔽し、また感染者を皆殺しにしようとする悪い権力者を黙らせるなどなどの熱いヒューマンドラマも展開する。見どころは割とたっぷり。

 

 サルの輸入を皮切りに、まずはウイルスがプチ流行。ほとんど間を置かず近場からどんどん感染し、大事になる。最初は可愛く見えたサルだが、中盤からは見ると怖くなってくる。作中事件の始まりから終わりまでを含めて鍵となる要素だったサルの存在も目立つものとなっていた。合間合間にサルのカットが登場するのが印象的。

 

 とある街丸ごとが感染者となり、軍隊を出して完全に街を封鎖して皆を押し込めるシーンは怖い。

 住民たちは当然パニックを起こし、ストレスから街の脱出を計る。がしかし、勝手に脱走したら軍隊に攻撃される。外出禁止命令が出ていて、これを無視すれば逮捕される。ここまで厳しく隔離するのか、怖いと思える。

 コロナで湧く日本でもさすがにここまでの事はしないと思うが、これを見て不要不急過ぎる油断多き外出者は諸々弁えて欲しいものだとも思ってしまう。

 未曾有の事態だからこそ、慎重に冷静にしっかり気を引き締める事が大事的なことも伝えている。住民のパニックの様子にも怖いものがあった。

 

 名も無き家庭のお母さんが、感染したために娘、夫と涙ながらに別れるシーンは可愛そう。感染者は難民キャンプ的なテントだらけの施設に強制的に押し込められる。

 増えすぎた死体を一箇所に集めて一気に燃やすシーンにも生々しい恐怖を感じる。こういった場合には、死体処理の仕事にも効率性を強く求めるものだってことを昔読んだ「ペスト」という本で学んだ。

 

 作中の謎のウイルスは、途中で進化してしつこく生き延びるからこれもコロナ的要素があって怖い。

 

 早くに謎の解明に近づいていたサムの意見を聞き入れ、国が柔軟な対応を取らないから後手後手で最悪の事態になる。この点にはストレス。

 やっぱり未知なるウイルスに対しては大人達もまごまごするわな。日本だってそうだし。

 

 ウイルスに関する不祥事をなんとか隠したい国の権力者達の汚いまでの保身が浮き彫りになる点には、政治的アンチなメッセージ性がある。

 大人が嘘をつくからこんな事態になったと言える。30年前のウイルスのこともそうだし、サルの密輸もそう。

 

 モーガン・フリーマン演じるビリーの正義の心が復活するまでの過程にも熱いドラマがあって良い。

 序盤は自己保身に走り、上に迎合して隠蔽工作に加担するが、後半では友人サムの熱に当てられ正義の人として行動する。自己保身か、人道を重んじて人命救助か、多くの人物がこの二つを天秤にかけて動くわけなのである。

 

 権力者側の黒い言動が結構目立つ。

 感染速度が速すぎるから、他に移る前に感染者が死んでしまうのが幸い。2600人が住む街を爆弾でふっ飛ばさないと、いずれは2億6000万人に感染する。など、怖い発言もしばしば見られた。割とスムーズに爆弾使用までの手順が進むのね、とも思えた。

 

 権力者が裏で暗躍するアレは怖い。我が国の大人も何か大きな嘘をついてはいないだろうなとかもちょっと思ったりする。

 

 街への爆弾投下をやめさせるため、爆撃機パイロットを必至に説得するサムの言葉の力には聞き惚れるものがあった。情熱的説得シーンは良かった。サム役のダスティン・ホフマンの顔の演技が良いな。

 説得されたパイロットが、「乱気流で狙いが外れた」と優しき嘘をこいて街ではなく海に爆弾を落とすシーンにグッと来るものがあった。おしゃれに優しき方便である。

 

 ヘリでやり合う、爆弾の爆発シーンなど、アクションにも力が入っていたと思う。パソコンに頼りまくりの今どきの作品とは異なる、地味ながらもしっかり作り込んだ感が良い。

 

 心に滲みたシーンは、初めてウイルス感染者を見てパニックになったソルトに向けてサムが言葉を贈るシーン。

 怖くてパニックになったソルトの反応に対し、恐怖することは感情として当然のこと、平気なやつとならそれこそ恐ろしいからチームを組みたくない、と言うサムの言葉が良い。内容としては当たり前のことだが、異常時にこそ自然な考えと感情を崩さす持つことが大切とも思えた。

 

 

 スリルとヒューマンドラマで魅せるパニックもので面白かった。

 こんなコロナ時代だからこそ響くものがあった。多くの一般人、国の責任者達にも今一度見て欲しい作品だ。

 

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