こしのり漫遊記

どうも漫遊の民こしのりです。

美しき少女達が織り成す青春群像劇「おにいさまへ・・・」

 めちゃめちゃおもしろいアニメを見つけた。それがこの「おにいさまへ・・・」。

先日、BD-BOXが出たので私は一週間で全話見終えた。続けて回しても飽きがこないおもしろさであった。

 今朝、ヤフーニュースを見たらまたまたNHKの受信料の件でうんたらかんたらという記事が挙がっていた。ここ最近NHKの良い話を聞かず、記事の下の皆さんのコメントを見てみると、こいつはなかなかキツい悪口を叩かれている。まぁ理由あってのことなので何とも言えないが・・

 そんなわけでここ最近は方々で悪口を叩かれていると感じられるNHKでやっていたアニメがこの作品。1991年放送でもうすっかり昔の作品だ。

 これはリアルタイムで見たことがあるのだが当時は少女マンガの絵に抵抗があったこともあってガッツリのめり込めなかった。皆大好き女子の登竜門マンガ「ベルサイユのばら」と同じ人が書いた作品である。私の妹が幼いながらに「コレおもろい」と言ってTVを見てたな。

 なんやかんやあってもNHK作品はだいたい見ているし今はどうか知らんがいい仕事してたって過去は確かにあるんだよな~。

 

 

お嬢様意識が高いために起こる学園問題

 タイトルは「おにいさまへ・・・」だが登場するのは圧倒的にお姉さまが多い。お兄様は主人公奈々子が通っていた予備校の講師だった逸見武彦のことで「お兄様になって下さい」と奈々子に迫られて以降文通をすることになる。作中の奈々子の叙情的なモノローグはお兄様宛に書く手紙内容のようにして語られている。「幽遊白書」では弟を演じた事で有名な声優玄田哲章がこちらではお兄様を演じている。

 主人公奈々子が超お嬢様学校(高等部)に進学することから物語は始まる。とんでもないことにこの学校にはソロリティと呼ばれる、学園内で選びぬかれた品行方正な女子が在籍することが許されるエリートお嬢様集団が学園の伝統として存在していた。コレが世に言うスクールカーストなのか・・・

 特権を持ったこのような集団が存在することから少女達の願い、怒り、恨み、妬みなどを合わせて黒々しくドロドロした感情が巻き起こす愛憎劇が始まるのだ。

 奈々子は決してすごい家柄の出でもないし、かといって問題がある家庭で育ったわけでもない普通の子で、特別に選び抜かれたソロリティメンバーに選ばれるとは全く思っていなかった。それがどうゆうわけか上級生の推薦で選ばれてしまった。それからというものは選ばれなかったがソロリティに憧れる同級生から激しい虐めにあう。

 特に嫉妬の塊となったのはクラスメイトの三咲さん。コイツのネチネチとした悪口の叩きっぷりが聞いていて本当に腹が立つ。(後に彼女とは和解します。)何かの作品で嫌がらせで人の下駄箱に押しピンを入れるなんてのがあったが本作ではワンランク上の凶器であるカッターの交換用の刃が入れられている。よく工作をしていた私としては買い物の手間が省けてありがたい。他には定番の体操着切り刻み事件もある。序盤は本当に嫉妬に狂う女子の陰険で陰鬱極まる策士ぶりをお目にかかることになる。たくさんの女子だけの世界だったらこういうことがあるんだな~。嫉妬という感情が人をこんなにまで変えるのかと恐ろしくなる。

 

 特権階級集団ソロリティの存在に対して、争いを生むだけの不毛な伝統だと判断した「薫の君」という超イケメンの女子がソロリティ解散運動を起こす。

 悠然として学園生活を送っていたソロリティメンバーのお姉さま方は今の特権が何もかも無くなるということに不安と恐怖を感じて焦り始めるのである。解散運動を止めるための汚い工作をしたりするなどして今度は特権階級を持つお姉さま方の人の汚さ、愚かさが暴かれる。それまで依存してきた物が無くなれば人はこんなにも不安定になるのかと衝撃であった。

 自らの愚かさに気づいたメンバー達自身も解散運動に署名をして悪習であったこのソロリティは消滅したのである。

 家柄だとか金持ちだとか育ちがよろしいなどのステータスを気にするばかりにこのようにして人間の汚れた感情が姿を表すことになる。淑女として品のある振る舞いをするのを心がけるような者の中に巣食う人間の愚かさ、汚さを暴いた作品であると言える。

 伝統に捕らわれてその本質もわからず踊らされる。こうゆう悪習から生まれる愚かな人間性の発覚は我が国のあちこちで存在するはずである。私もそれにはいくつか心あたりがある。生徒の身でそこに気づいて行動を起こした薫の君、奈々子らは相当に優秀である。

 自らで自らの生活課題を発見し駆逐し学びを得る。これこそいつの間にか義務教育に放り込まれた総合的な学習とかいうやつを成し遂げた結果ではないかと私は深く感心した。

 ここの所は教訓を得られたのでNHKでやってよかったと思う。

 

作品を盛り上げる魅力タップリな女子達

 作品の大きな柱の一つは悪習を断つというソロリティ討伐の件だと感じられたがこの作品は、魅せる人間ドラマがすばらしいのだ。

 可憐で清楚な主人公奈々子の周りにはそれはもう個性豊かなステキな女子達がうんさかわんさか溢れておる。それらの女子達が休みなく織り成すロマンティックかつ衝撃展開に主人公奈々子は毎週毎週涙が止まらないのである。(「お兄様涙が止まりません」のセリフは毎週の次回予告で言う奈々子のお決まりのセリフである。奈々子を演じる声優笠原弘子の美声で読まれるそのセリフは夢の中でも聞こえるようであった。)

 入学早々に奈々子を気に入って友人として独占しようとする少々ヤンデレ要素のあるマリ子。正直怖いっす。こうゆう奴小学校にも中学校にもいたなと胸に痛い心あたりがいくつか浮かぶ。このマリ子の行動力もなかなかで押しが強く強引。中学からの奈々子のお友達の智子が邪魔なので二人が仲違いするように工作を行う。色々揉めたが後で三人仲良しになる。マリ子の親父がポルノ作家で他に女を作って家を出たことをクラスメイトの三咲にからかわれるシーンがある。ここでショッキングなことにマリ子が三咲さんをカッターナイフで切りつけるという警察が来ちゃうレベルの事件を学園でおこしてしまう。マリ子は停学3ヶ月を食らう。停学期間長いな~。

 お嬢様学校だとこういう奴が育ってしまうのか、それとも家庭のためかマリ子はありえないくらい男嫌いである。病気の域に達している。のちにちょっと軽減します。

 薫の君が男の私から見ても言動の全てがイケメンなので(女子です)マリ子は薫の君の魅力にくらっときてフォーリンラブなのである。

 学園の美のトップ3と呼べるのが薫の君(本名:折原薫)、花のサン・ジュスト様(本名:朝霞れい)、そして宮様(本名:一の宮蕗子)。この三人の存在感が半端無い。皆キーパーソンとなる人物である。

 薫の君のバスケットボールをする姿は鮮やかすぎる。かなり鋭いシュートを放ちます。冗談なくらい私生活の全てが格好がいいのだ。男勝りで家庭科の授業の課題が全然出来ないのにイケメンオーラで出来ないという欠点すらも格好いいものとして我々を納得させるのである。何をやっても成立する万能人間である。

 しかし、そんな薫の君の体は病で蝕まれている。物語後半では病による死が近づくのに怯え、あんなに強かった薫の君が人間の弱さを晒す。最終回では逸見のお兄様と幸せに結婚するので良かった。薫の君を演じる戸田恵子の声がステキすぎる。

 薫の君の親友のサン・ジュスト様は不思議な雰囲気を纏う人物として描かれる。奈々子は後に彼女に恋をします。「おにいさまへ・・・」のタイトルなのにユリ要素も少々含んでいてびっくりだった。サン・ジュストについては学生の身で薬物乱用、そして喫煙シーンも描かれる。可憐なサン・ジュストの背負う生い立ちもなかなかハードなもので生活はかなり殺伐としている。よく書き込まれたキャラクターだと思う。彼女と宮様とは実の姉妹と後にわかる。ここの姉妹の愛憎溢れる妙な絆も魅せるなぁと評価できる。宮様を見て思うのは常に「不穏」を匂わせるということかな。宮様はかなり美しいのだが貫禄がすごくて怖い。幼い頃に一夏一週間で一生分の恋を味わってしまった愛に生きる女である。皆大好きなキャラである。

 通り名で呼ぶのが好きな淑女界では他にもソロリティメンバーのモナリザの君(レオナルドの描くモナリザに顔が似ている。そして本名は駒林)、ボルジアの君、メズーサの君、バンパネラの君、カトレアの君など笑ってしまうような名前がある。

  後、本作の学園生はかなりレベルの高い教育を受けていると思われる。学生時代に学問においてはまあまあの成績を修めた私だが、奈々子の達の受ける英語とか理科の授業にまるでついて行かれん。学校の宿題がヘミンウェイの原書を読んだ感想文を英語で書くという退く程にハイレベルなものである。翻訳モノなら読んだけれども原書は無理だわ~。

攻めたアニメであることへの賞賛

 NHKのアニメなのに激しい虐め、ナナ子のカッター切りつけ事件、ポルノなんて言葉がでてくる、ユリ、若者の薬物依存に喫煙などかなり攻めた要素を盛り込んだ作品となっている。後、奈々子が酒を飲むシーンもあった。そしてどう考えても子供向けでは無い。

 フランスで本作を放送したら向こうの国の者も私と同意見の「子供向きでない」を理由に打ち切ったとのことである。

 「普通のはもういいんだよ!紋切り型を外れた斬新なモノがほしい!」と願う奴にはオススメ作品である。

 私がどハマりした超おもしろいアニメであった。

 

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