こしのり漫遊記

どうも漫遊の民こしのりです。

いたずらな霧が呼ぶ群像劇「予期せぬ出来事」

「予期せぬ出来事」は、1963年公開のイギリス映画。

 

 霧に包まれたロンドン空港で、飛行機出航の足止めを食らった登場人物達個々の物語が展開する群像劇となっている。その昔に見た映画「グランドホテル」ぽくてかなり好きな作品だった。

 

 霧が発生して飛行機の遅延が無ければどの物語も起きなかった。いたずらな霧が運んだ素敵な物語が複数楽しめるお得な作品だった。

 

 メインキャラクターを紹介するOPムービーからワクワクする。おしゃれでいい感じのOPだった。

 

予期せぬ出来事 [DVD]

 

 ジゴロと駆け落ちする嫁を止めに来る夫

 飛行機に初めて乗る公爵夫人

 脱税のため一刻も速く英国を離れたい映画製作者

 友人の裏切りにより会社が潰れる瀬戸際まで追い詰められたトラクター会社社長とその秘書

 

 これらの物語が展開する。メインのシナリオに関わる人物以外のキャラも愛嬌があって良い。

 

 エリザベス・テイラー演じる貴婦人が、夫との愛に冷めて不倫に走り、その先で夫との真の愛に目覚める物語が特に印象的だった。

 妻への愛を金品で示すという愛の怠慢に走った夫が、他でもないジゴロからそれを指摘され、真の愛を説かれるという巡り合わせは興味深かった。

 ジゴロの方も、それまでは適当に女遊びをしていてが、今回だけは本気の愛に走る。手切れ金として夫から高額支払いの小切手をもらっても、自分の魂は金では買えないと言って突っぱねたジゴロには良く言ったと思えた。

 結婚生活13年なのに、いつも11年と間違えるあたりが夫のダメな点だと思った。

 昼メロのような三角関係が面白い。

 

 二人の男の間で心揺れるヒロインが、最後には心を入れ替えた夫の下に戻ってエンドを迎える。こうなるとここに振り回されたジゴロが可哀想にもなる。彼はその後どうなったのだろうと思ってしまう。

 霧の発生さえなければ、ジゴロと嫁は旅立っていたのに、発生したために焼けぼっくいに火がつく形となった。いたずらな霧が運ぶ運命的な愛の物語が素敵だった。

 

 見るからに悪そうな大柄の映画製作者の存在感はすごかった。日付変更までに国境を越えないと首が回らなくなるくらい高い税金を背負うことになる彼が、あらゆる方法でそのリスク回避を計る展開が面白い。彼の脇について闇のアイデアを提供する小悪党ぽいおじさんの存在もコミカルだった。

 

 支払い能力がないながら小切手を切り、違反小切手を生んだピンチの社長を献身的に支える美人秘書の物語にもハラハラさせられた。社長が社員想いの良いヤツだった。

 ピンチの時に最後まで自分を支えてくれた秘書に真の愛を捧げる社長、この愛の形が美しかった。

 

 一番愛嬌のある良いキャラクターだったのが公爵夫人だ。一番のコミカル要員で、シリアスなシナリオが展開する合間に一時の癒やしを運んでくれるキャラクターだった。面白くて大好きなキャラだった。

 世間知らずで飛行機に乗ったことがなく、空港やホテルの使い方も知らない。それゆえ他の人よりも言動が面白く見える。飛行機のシートベルトの仕方が分からなくて隣の人に教えてもらえるシーンが愛らしい。

 

 夫人がロンドン空港のゲートで種痘証明の提示を求められるシーンも印象的だった。ここで間違えて1943年の配給手帳が出てくるシーンを挟むのは時代柄のものだった。初めての飛行機搭乗に必要異常に構えて興奮剤を飲むシーンも記憶に残るものだった。

 

 最後に一人になったジゴロのことを思えば気の毒だが、あとの者はハッピーエンドを迎える気持ちの良い作品だった。

 

 同じ場にいる人間達それぞれの視点に物語が切り替わり、最後には皆が事件の終わりを見るこの感じが良い。「デュラララ!!」にハマって行った感じを思い出す。デュラララ!!とかが好きならハマる作品だと想う。

 

予期せぬ出来事 [DVD]

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  • 発売日: 2017/11/20
  • メディア: DVD
 

 

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