こしのり漫遊記

どうも漫遊の民こしのりです。

今度は劇場版アニメ作りに挑戦だ「劇場版 SHIROBAKO」

「劇場版 SHIROBAKO」は、2020年2月29日より公開されたアニメ映画。

 テレビシリーズ終了から5年後に公開された新作であり、私をはじめその他有象無象にとっても待望の一作となった。

 

 真面目なアニメを真面目に作る人間たちの物語を真面目に描くリアル性はあれど地味、それゆえ逆に新鮮だった本作だが、まさかテレビ版終了から5年も経って新作が公開されるとは……こいつは感慨深い。それにしても5年ってマジで速いなぁ。みゃーもり達と過ごした青春が昨日のことのようだぜ。5年ぶりの新作をやっと見ることが出来て良かった。

 テレビ版も今回見た劇場版も、頑張る社会人のリアルを捉えたお仕事ドラマになっていて共感と好感が持てる。想像の幅が無限なアニメにおいて、実際にいる会社員の生活を映すという逆転の発想が良かった。昨今の国内作品の風潮を見ると、ファンタジー過多になっていると思う。地味でも何でもこれでもかってくらい実地の路線を行く人間ドラマも見たくなるし、これでこそ実のある物語を見たという満足感も得られるというもの。ファンタジーも大いに好きなので否定する訳ではないが、たまにはリアル路線もたっぷり味わいたいとも思う。そんな私の欲求を満たしてくれた本作との出会いはかけがえのないものである。あとキャラデザが良いから出てくる女子がめっちゃ可愛いのも良し! 

 

 SHIROBAKOといえば、現在あのNHKで再放送されているので、そちらももちろん見ている。2014年からスタートした本放送、BD-BOXが出たタイミングで再視聴、そしてNHKでも見てコレで三周目だな。それだけ見てもまだイケるってくらいにこの作品は面白いと思う。それから宮森めっちゃ可愛い。

 

 ファンタジーゼロの地味路線だからこそ行う盛り上げの工夫も見えた。とにかく出てくるキャラが面白かったのがそれ。木下監督とかめっちゃ笑える。名セリフとなった「万策尽きた!」「変な話~」も忘れられない。「女ゴスロリ甲子園」「エマちゃんのエンゼル体操」などのキーワードもその道では流行った。唐揚げ食べたくなりがち、ドーナツ食べたくなりがち、ロッキーチャックをまた見たくなりがち、などの印象を植え付けた点でも記憶に残る作品だった。

 あと、ずかちゃんがサンジョのアフレコを行っている現場を見て感動の女泣きを見せた宮森を描いたシーンは、作品屈指の名場面だったな。マジで泣ける。これからNHKでもその回を放送するので、今から泣く準備をしておこう。

 

 そんなテレビ版での思い出をあれこれ蘇らせた後でゆっくりと劇場版をチェックした。では、見た感想をつらつらと書き殴って行こう。

 

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感想

 テレビシリーズから4年後の世界を舞台に新たな物語が展開する。

 宮森達が元気に仕事をしている風景がまた見られると思ったら、冒頭シーンをみると「むさにも落ちたもんだなぁ」と思わずにいられないくらいピンチからのスタートになっていた。4年の間に大きな仕事を派手にミスって会社がかなりピンチになっていた。かつての精鋭達もバラけてしまい、会社の盛り上がりもなくなってしまって辛い状況。唐揚げ社長も引退してカレー屋に転身してしまっている。仕事が行き詰まって社長の店を訪問した宮森が、泣きながら社長のカレーを食っているシーンにはこちらも泣けたものだ。その一方、ケーキ屋に転身した本田さんはすごく楽しそうで安心した。本田さんが面白い。

 去ってしまったメンバー達を含めた宴会を行うという幻想を見てしまう宮森の精神状態からかなりお疲れな感じが見えた。宮森といえば妄想しがちな乙女ということで、今回でも例のクマとゴスロリ娘のぬいぐるみが出てきて喋る懐かしいシーンが見られた。

 

 むさにの代表作だった第三飛行少女隊、通称サンジョの第二作目が放送されているが、これが何だかおかしい。明らかに我々の知っているサンジョではないという新鮮にして異質な出来になっていてウケる。むさにもそうだが、サンジョも落ちたものだなと思える。サンジョが駄作化して行く中、むさには復活を賭けて劇場アニメ製作にかかる。この過程でテレビシリーズに登場したかつての仲間達が勢揃いする流れが熱い。懐かしいヤツが次々出てきて、まるで同窓会気分(一生行ったことがないので多分)を味わえる展開になっていた。

 

 一番スポットがあたる宮森ももちろん良いが、みどり、エマちゃん、矢野さん、小笠原さん、井口さん、瀬川さんあたりのヒロインも推せて仕方ないのでまた会えて嬉しい。強くなくちゃ業界では生き残っていけない。というわけで作中では強かな女性像が目立つ。SHIROBAKOヒロインは強く可憐で推せるのだ。

 男連中なら久しぶりに檻に入って仕事を行う木下監督がやっぱり笑えるし、ウザさがくせになる太郎もまた出てきて面白かった。人間味ある懐かしの連中が次々登場して良かった。

 キャラが多い分各キャラの見どころも様々。

 ゴスロリファッションではなく、ジャージでトレーニングしている小笠原さんを映したシーンに萌えた。エンディングでは、井口さんと一緒にバッセンに行ってるシーンが描かれている。上から下まであんな見た目なのに野球女子という小笠原さんの設定に意外性がありすぎて面白い。それから演じた茅野愛衣の声が好き。

 まいたけ先生とキャッチボールをするみどりが、普段のサイドテールではなくポニテをしている点も可愛くて萌える。野球女子って良いなと思える一面もある作品になっていた。

 自分を師匠と呼ぶみどりに対し、「師匠ではなく商売敵」と返すまいたけ先生のセリフにも痺れるものがあった。師弟関係を脱し、みどりもちゃんと仕事が出来るライバルになり得ると認めた証拠でもあったのだろうと思う。こんな感じで端々にぐっと来るシーンが詰まっていた。

 落ちぶれた遠藤さんを叱咤激励する瀬川さんが格好良くて萌える。後輩をたくさん叱った直後には、言い過ぎたかもしれないと反省するシーンが挟まれるのが可愛い。

 木下監督や太郎らすぐサボりがちな連中を征する矢野さんの荒くも愛のあるアクションが好き過ぎる。お姉さん感というか母性もある矢野さんの復帰も嬉しかった。矢野さんを演じた山岡ゆりの演技もとても良かった。

 確かなアニメーションの腕と味のある人間性で我々視聴者を安心させてくれた老人の杉江さんも劇場版アニメ製作の話を受けて再びむさににやって来る。久しぶりに祖父に会ったような安心感がある杉江さんもジジイだけど愛せるキャラで好き。近所のガキを相手に行う杉江アニメ講座シーンも良かった。このエピソードでは、荒れるガキを上手いこと言葉で乗せるエマちゃんの意外なコミュ能力も見れた。エマちゃんもはきはき物を言う強い女になったと思う。あとめっちゃ可愛い。欲を言えば、エマちゃんにまたエンゼル体操をやって欲しかった。

 

 個人的には、ついつい巻き戻して見たくなる宮森のミュージカルシーンが推せる。劇場アニメを作る決心を固めた宮森が、多くの作中作キャラと楽しく歌って踊るシーンでとても可愛い。このミュージカルシーンでかなり枚数を使っていると思う。作り込まれた良いシーンだった。ダンスシーンでは、エンゼル体操の振り付けも入っている。

 

 新作の見どころとしてあげられるのが新キャラの存在である。新キャラの宮井 楓にも注目できる。ここへ来ての新キャラを演じたのがあやねること佐倉綾音だったのが嬉しい。宮森と意外にも意気投合して杯を交わす仲になっていた。宮森と宮井が着物姿で敵陣に突っ込むアクションシーンも見どころだった。リアル路線の人間ドラマを扱う中で時に挟まれる宮森の妄想シーンが数少ないファンタジー要素となっていて面白い。改めて宮森って頭の中が面白い子だよな。

 宮森といえば、テレビシリーズの頃からファッションセンスがイケているイメージがある。約2時間あった劇場版の中でも、宮森が色んな衣装を見せてくれる点が良かった。

 

 コロナの有無に関わらず忙しいのがアニメ作りの現場である。去年の春くらいには、コロナのせいで多くのアニメが放送をストップさせるというアニメ好きを困らせる現象が巻き起こった。コロナの中でアニメを作るならもっと大変だろう。久しぶりに集まったむさにメンバーが、仕事の中で苦悩し、その先で達成感を得る物語を見ると、コロナ化だからこそこういった縁の下の力持ちの頑張りに感謝出来る。今作の発表時期にコロナ騒ぎが大きくなり、そのせいで舞台イベントが中止になったという話も聞く。コロナの被害にあったことで不遇な作品となった一面も確かにあるが、それでもアニメを作りたい人間達の熱が伝わる大変良い作品だった。 

 混沌の時代にあってもこうした楽しい作品が見れたことに感謝だ。

 ありがとう「SHIROBAKO」。未来に向かってどんどんドーナツ、どーんと行こう!

 

 

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