こしのり漫遊記

どうも漫遊の民こしのりです。

向日葵は正義の花「車輪の国、向日葵の少女」

車輪の国、向日葵の少女」は、2005年に発売したPCゲームソフト。

 後に他ハードにも移植した。

 今回私がプレイしたのは2013年に発売したPSP版である。

 

 一発目に販売された物の対応ハードが子供でも手に取れるテレビゲーム機ではなくPCだったのには理由がある。そう、やや大人向けだったのだ。

 

 ガキでも手に取れるPSPソフト化したということは、何から何まで安全仕様になっているということである。というわけで、リラックスしてコロナの夜長に楽しんだ。

 

 今から15年も前の2005年のゲームなので、絵柄とかを見るとそこそこに時代を感じる。美少女ゲームではあるが、今日と15年前では同じ「萌え絵」でもテイストがいくらか違っている。絵のタッチに古臭さを感じるもののそれはそれで良さもあり、結果的には時を越えてキャラ絵が可愛いと言える。ヒロインキャラのビジュアルの良さはもちろん、個々のキャラ性もなかなかに突っ込んだものがあって魅力たっぷりである。美少女ゲームを謳う以上、顔面と内面を含めてキャラに「美」を得られなければお話にならない。その点ではこのゲームは及第点を余裕で突破している。

 

 テキストをぼけぇ~と眺めていてもヒロインズの可愛さは十分に伝わり癒やされる。だがこのゲームの真にすごいところはそのぼけぇ~(序盤だけ)と読み進めていたテキストが紡ぐ物語にある。

 

 物語のテーマとして「法」だとか「国家権力」「罪」「義務」を扱っている。それら理不尽にして最強の力よって、主人公達は閉鎖的な世界に押し付けられている。

 最強の正義として君臨する「国」のやり口が、正義を掲げる一方で悪魔的にも見えて来る。シニカルに国家権力を風刺する作風はピカイチなものであり、思わず共感してしまう。表向けには気持ちの良い文言で固められた国のルールに確かな悪を見た主人公少年やその周りを取り囲む少女達が、理不尽な世界の中で悩み苦しんで成長し、最後には自らを進化させて囚われの身から脱却する。田舎の片隅にある若い命と大国との間で展開する熱き魂の戦いに感動する一作だった。

 

 閉鎖された悪の世界を批判して自由と平和を謳うという点から、小林多喜二島崎藤村あたりを読んだような感じにもなる。時代が時代なら焚書扱いだな。美少女ゲーム界の自然主義文学、またはプロレタリア文学といった位置づけのとんでもない熱量の物語だった。

 

 大変面白く、ついつい夜更しして読み進めてしまうゲームだった。これだから活字を目で追うのは止められない。

 

 2020年を迎えて初めてプレイした15年前のゲームだが、こんなにすごいゲームがまだあったのかと思った。出会えてよかった。存在を知らずに死ねば損していた。これまでも文字だらけの中に可愛い女子が出て来るという似たようなタイプのゲームはたくさんプレイしてきたが、名作はまだ埋まっていた。車輪の国、侮れんと思った。この話を書いた人がすごすぎる。

 世界の理不尽さの中で戦う主人公の物語を描く主軸はもちろん、ヒロイン達個々のエピソードも素晴らしかった。

 

 役者の芝居は全部見たい、聴きたいということで、セリフは一切飛ばさずプレイした。全てのエンディングを出すまで約47時間もかかった。かなり長い。UMDなんて小さな円盤にここまで大量のテキストやイラストデータが収まるのだと改めて感心したぜ。PSPは我が家ではまだまだ現役である。

 

 

車輪の国、向日葵の少女(通常版) - PSP

 

 物語の舞台は日本っぽいけど、この世のどこでもない世界である。

 懐かしの片田舎感漂う地には、タイトルにもある美しきヒマワリが咲き誇っている。ヒマワリは作品の象徴にもなっている。

 

 主人公少年 森田賢一は、SF小説とお姉ちゃんが大好きなクールガイ。そしてハードMである。気が合いそうだぜ。

 この手のお話ではありがちなウィットに富んだコミュ力高めの楽しい男だが、エッチなノリはダメというのがちょっと可愛い。

 

 日本は彼が愛読するSF小説の中の世界に設定されている。

 

 作品世界では犯罪者に対する処罰がとにかく細分化されていて、罪を犯した者はきつい義務を追うことになる。その義務の種類がいろいろありすぎる点が興味深い。

 

 日本では罪を犯せば「牢屋にぶち込む」「死刑」「金の力で罪を逃れる」、ざっくりといえばこの3つのルートで事が済むが、この世界ではそう簡単には行かない。交通事故を起こした者は一生車に乗れない義務、子育てで問題を起こせば一生子を産めない義務が発生したりする。

 何かやらかしても簡単に牢屋行きにはならず、義務を与えた状態で罪を犯した者は一旦野に放たれる。その後の生活の中で義務による不自由を感じることで更生に繋げるという変わった仕組みになっている。

 

 厳しいと言えばそうだが、簡単に牢屋にぶちこんで「生きているだけ」の生活を強いたり、さっくり死刑にするのと比べると、罪人相手にも時間を割いてしっかり更生プログラムを組んでくれるのはある意味では最後の優しさとも思える。

 

 7年前には政府に反逆した者達による内乱が勃発した、街に関所が設けられていて簡単には遠出できず、無理に突破すれば銃殺もあるなど物騒な世界設定になっている。割と簡単に銃殺にGOを出す過激な政府方針になっていて、相手が未成年でも銃殺の指示が出るシーンもあった。

 

 犯罪者を監督して更生させる者を特別高等人と呼び、主人公は特別高等人になるための最終試験を受けに田舎街にやって来る。そこで義務を追う可愛い女子三人を更生に導くことで物語は大きく動き出す。導入からなかなか興味を引く要素が散らばっている。

 

 この特別高等人認定試験はものすごく厳しく、政府の役人でも最上クラスのお偉いポジションになっている。試験の途中で死者もザラにでると言う。森田賢一と共に最終試験まで残った南雲えりというヒロインは、待ち合わせに遅刻したからということで、ゲームがスタートしていきなり試験官に撃ち殺される。怖すぎる。すぐ死んだけど南雲えりは可愛いお姉さんだった。

 

 南雲を撃ち殺したのが賢一の上司の法月正臣であり、こいつがラスボスとなる。国の定めた正義を重んじる表向きには正しい人間に見えるのだが、これが歪んで見えるのが興味深い。

 一貫して冷徹な法月の態度にはただただ恐怖と人間の冷たさを覚え、あとは腹が立つ。逃げ場の無い理詰めでガキを追い詰めるという嫌なお説教をするタイプの先生みたいで嫌い。めちゃくちゃ怖い。

 賢一のことも、その姉のことも杖で殴るのは許せない。人の精神を読んでは人心掌握術にかける様がすごく悪い。

 

 テロップに法月役は「さとう雅義」とあるが、どう見ても聴いても若本規夫の声である。そんな若本規夫に酷似した冷たい演技に注目できる。嫌味ったらしいけどこれはこれで魅力的なキャラクターで良かった。

 

「1日が12時間しかないない」「大人になれない」「恋をしてはいけない」という言葉だけ見れば「どういうこと?」となる不思議な義務を持つ少女達を順番に監督することになる。

 

 うら若き乙女の監督につくのが年の近い男というのは色々問題があると心配するのが普通だろう。でも、被更生人にはプライバシーの厚い保護はない。特別高等人は、被更生人を更生するためであれば少々のプライバシーを侵害することが許され、必要とあれば体罰も許される。監視をより強めないといけない義務を持つ者であれば、トイレや風呂まで監督することになる。相手が女子と限定すればこれはちょっと良いではないか。賢一も基本的には同じ家に寝泊まりして少女達を監督している。

 

 主人公が監督したのは何れも可愛いJKだから良かったが、これが清潔感の無いもっさい無職のおっさんだったとしても同じように監督するのだからたまったものではない、という萎えることも想像してしまった。賢一の上司の法月ならおっさんを監督したこともあったのだろう。そんなことを考えるとププッと笑えてくる。

 

 三人のヒロインそれぞれの物語はなかなかに長い。だからこそキャラ性を十分に掘り下げ、魅力がしっかり伝わるものになっている。これだけ長く語られるヒロインの物語をたどっていけば結局皆好きになる。

 

 三人それぞれが義務を追い、更生に迫る中で人間的に大きく成長するのが見られるのが良い。もちろん監督者の森田賢一も、各ヒロインと触れ合う中で人間の本質と強さを見て成長する。

 

 

ヒロインを振り返りたい

 

 なんだかんだ言っても一番楽しいのはヒロインとの時間にある。

 

 罪を追った被更生人なのだから、美少女といえど苦痛を与えられるのは避けて通れない。どのヒロインにも、見ていて可哀想になるかなりつらい試練が用意されている。

 

 綺麗で可愛いだけの世界ではなく、苦しめられ、追い込まれて限界に達した人間がいかに脆く、弱く、醜くいのかを見せるシリアスな点も描いているのが印象的である。

 

 ヒロインたちが更生に失敗したバッドエンドも用意されているが、こちらが結構酷い。最悪人死も出て後味が悪い。

 

 可愛いヒロイン達の心理面に突っ込んだ底の世界までを裸にする展開からは目が離せない。 

 

 というわけでヒロインを振り返ろう。 

 

 

三ツ廣さち

 

 めっちゃ可愛い。

 

 賢一が最初に監督した美少女である。

 巨乳の赤髪ポニテで元気なギャルといった感じ。明るくてノリが良い。

 

 日々の起床時には「今日もピリッと頑張るぞ」みたいな元気系ギャル特有の言葉選びによう決まり文句がある。これも可愛い。

 

 忘れもしない例のお姉ちゃんばっかり出てくるゲームヒロインの柊高嶺と声が同じなので懐かしくなる。

 

 借金をしているが、それを返すためにまともに働くことを拒否し、家ではパソコンで為替とかをやっている。若くしてネットギャンブルまで手を出しているので田舎では進んだギャルかもしれない。

 

 昔見た離れ島の監獄映画「パピヨン」の劇中で、時間を無駄にするのは大罪であるというセリフが出てきたが、さちの罪はそのまんまで、働けば良いものを自堕落に過ごして無駄にしたからペナルティで24時間の内の半分を奪われることになる。怖い。

 

 時間がくれば強制的に活動停止する薬を飲まされ、12時間止まったままになる。でも睡眠ではないので体力は回復せず、睡眠は残った12時間でまた取らないと行けない。自由時間がなさすぎてかなり恐ろしい義務になっていると想う。我々のようにあれもしたいこれもしたいのオタクであれば、「なんで一日が24時間なんだ。2倍でも3倍でも欲しいぜ」とか言ってるのが半分になるのだから怖すぎる。

 

 その昔には絵のコンクールで優勝したこともあるさちだが、謂れのない非難を受けて筆を置くことになった。

 

 褐色肌に赤き瞳がキュートな移民のロリヒロインのまなを拾って来て勝手に妹にしている。

 最初こそ「なんだこのチビは?ロリはお呼びでないんだよ!」とか思っていたが、さちの物語の割と序盤でその無礼な意見も撤回された。攻略対象ではないサブヒロインだがまなもめっちゃ可愛いので癒やされる。語尾に「~だよぅ」が来がち。このガキ臭い喋りの演技も素晴らしい。演じた女優にも拍手である。

 

 お姉ちゃんは絶対にすごい絵かきになれる、というまなの真っ直ぐな期待が逆にプレッシャーになってなかなか絵をかけないさちだが、まながどこぞの王国に買われて連れて行かれるとなった時には本気になる。更なる大金を積んでまなを買い戻す、そのためには素晴らしい絵を書いて売るしかない、という流れでさちの絵描き魂と姉妹愛に火がつく。

 人買いの闇商売ルートがあるなどの物騒な設定も印象的だった。

 

 血の繋がりを越えての姉妹愛に癒やされるし泣かされる。

 

 絶対に絵を仕上げてまなを取り戻す展開になると思いきや、ストーリーは厳しいもので、結果的にまなは連れて行かれてしまう。キツイな。

 

 さちルートのエンディングで大きくなったまなと再会を果たすシーンで再び泣かされてしまった。

 

 

大音灯花

 めっちゃ可愛い。

 

 クラスの委員長だけど委員長キャラにはしっかり者要素がやや足りないドジ。しっかり者に見れて結構抜けているところがある愛されキャラ。すぐ怒るツンデレ枠ヒロインだが、本当はとっても優しい。マンガ、菓子、プロレス、お笑いなどが趣味という点から大衆じみた感じがするのが可愛いヒロイン。とにかくいいヤツであることは確か。

 

 人前では賢一にツンツンしているが、実は一番攻略が簡単かもしれない。こちらに心を開いてからというもの、二人に切りになるとめっちゃ甘えて来る。さちも結構そうだったけど、こっちはもっとデレるので、思わず頬も緩むというもの。

 

 頬を赤らめて「けんいちぃ~」とか呼ばれるのにはヤラれる。残念なことに私の名は「けんいち」ではないが、プレイヤーの中に「けんいち」の名を持つ者がいればきっと嬉しいだろう。

 灯花とのイチャつきシーンは平和で癒やされる。

 

 PSPの画面は意外にも反射率が高く、真っ黒に見えても鏡として行けるくらいに自分の顔がよく写る。灯花がデレて、その後次の画面に移り変わるためフェードアウトした時には自分のニヤケ面が画面にはっきり写っていた。灯花ルートではそんな個人的思い出がある。自他共にクールガイと認められている私をもデレさすとんでもないヒロインが大音灯花だった。

 

 顔の丸っこい感じがキュートで、パッと見てすぐに「涼宮ハルヒ」っぽいと思って気に入った。そう言えば学校の制服もハルヒの学校ポイ。これといって派手な感じがないスタンダートに見えて、その実そこらの学校では見ないセーラー服なんだよな。

 

 追い込まれた際には、背負った義務のせいで自主性の取れた行動が出来ない人間的な脆さが分かる。

 

 親の言うことには絶対服従の通称大人になれない義務を負っている。高校生にもなって門限、勉強の時間、飯の時間、朝はさっさと起きてラジオ体操をしてこいなどなどいろいろなことを徹底して管理されている。ストレスでハゲるか家出するかしそう。実際に一度は逃亡して家出娘になる。

 

 灯花単体の問題ではなく、その親の京子も子供の向き合い方に不得手な経験値の少ない母として描かれ、家庭まるごとなおかしな家庭問題を扱っているのが興味深い。

  

 灯花ルートではぶっ飛んで荒唐無稽な家庭問題が描かれているが、いくつかは現実にもかする部分があるので、家庭問題に焦点を当てた社会派エピソードだったと想う。

 

 幼い頃に灯花がキッチンに出入りして大きな火傷を負ったために家庭のキッチンは封鎖状態にあり、親も子も一切料理をしない。食い物はコンビニ飯で、足りない栄養はサプリメントで補うという設定は目立って変。一軒家に母子が暮らしながらまともな食卓風景が拝めないという歪極まりない家庭風景が展開する。祖母、あるいは母の飯が大好きで、それをかっ喰らって今日の健康な体と心を会得した私としては、こんなおかしなことってある?って感じになった。

 

 かなり奥深い闇が見える家庭エピソードには引き込まれるものがあった。京子は灯花を預かった身で実は伯母である。途中には本当の両親から一緒に暮らそうと誘いがあり、どっちの親につくかで揺れる灯花の心をリアルに表現しているのも見どころだった。

 

 親の京子の方にも、親としての義務を全う出来るかという母親の適性検査が用意されていたりする。政府が主催で親の親たる能力を見極めるというかなりすごいことをやってのける。ただ産んだ、育てたのみでは親は名乗れないのである。

 

 それにしても京子さんもかなりイケイケヒロインなので攻略対象にしたいところだった。京子は賢一や灯花の担任教師で、最初に登場した時には母でなく姉だと思った。賢一が担当した被更生人の中では灯花が一番ちんちくりんだが、京子さんはちゃんとおっぱいがあるので未来には期待出来る。

 

 母子そろっての怒った時の口癖「ぶっこぉすぞ!」が可愛い。ぶっ殺すぞと言いたいのだが、なぜかこれを言う時は舌足らずになるのが面白い。大音親子のキャラ性を際立たせるこのポイントはバカっぽくて好き。

 

 

日向夏

 

 めっちゃ可愛い。

 

 地球最終防衛ラインの異名を持つあのお姉ちゃんと同じ名前だから嬉しい。

 

 これだけ罪を追求することに腰を入れる政府でも根っこは悪の精神に蝕まれている。完全に冤罪なのだが、夏咲は男をたぶらかす悪しき女として恋愛出来ない義務を負っている。金持ちの権力者によって罪を押し付けられた形になっていて、ここに結局は権力者が都合よく正義のルールを書き換えているという汚れた部分が現れている。

 不当な扱いを受ける夏咲を救うため、賢一達が本格的に政府と戦う展開となる夏咲ルートが本番になる。

  

 こいつが一番心を病んでいて手をつけ辛い。

 小さい頃は明るく元気な子で賢一の憧れの少女だったが、再会してみると対人恐怖症みたくなっていて暗いコミュ症になっている。

 

 序盤は不思議なことに夏咲との会話が全く噛み合わず、雑談すら成立しない。コミカルに描いてはいるが、ここまでとなると異常である。

 

 男子との接触を禁止された身となり、上目使いなど男の恋心をくすぐるアクションも一切禁止されている。これまたおかしな世界に生きるおかしなヒロイン設定となっていてインパクトがある。しかし夏咲の上目使いならきっとときめいてしまうだろう。これを封じた担当者は色々と分かっている。

 

 散歩や日向ぼっこが趣味。落ち着くからということで渦を見るのが好きなのがちょっと面白い。ラーメンに浮く美味しいナルトはもちろん、鍋の中身をかき混ぜてオリジナルの渦を作っても反応を示すのが面白い。影のある暗いヒロインと思ったら意外にもふざけた特性があるからツボる。

 

 主人公のことを「けんちゃん」呼びするのにときめく。

 辛い目にあって色々おかしいことになっていたヒロインだけど、最後には昔のように明るい笑顔を取り戻して安心する。

 

 ひまわり畑に皆で集まって写真を取るラストで、夏咲が元気に笑っているのが見れた時は本当に良かったと思えた。

 

 

樋口璃々子

 

 めっちゃ可愛い。

 

 第4のヒロインで賢一のお姉ちゃんである。ややチビに見えないこともないが、やはりお姉ちゃんだけあって他のヒロインとは一味違った色気、いやエロさがあって良かった。

 

 璃々子は賢一の回想には度々登場するが、本編ではかなり後半で登場する。で、その登場の仕方がなかなかインパクトがあった。

 賢一が3人のヒロインとよろしくやっている本筋のどこにもいないようで実はずっといたというフェイクをかますのがこの璃々子お姉さまで、この仕掛にはビックリした。これも一種のミスリードなのか。璃々子に関するトリックが分かった時にはプレイヤーの皆さんはきっと驚いただろう。

 

 極刑を負った身であるが、この世界の極刑が異質なものなのも特徴的な点だった。さっくり殺すよりもある意味もっと酷いもので、他人から認識されないという特殊な義務を負っている。璃々子の存在は誰からも認められず、他の者は見えても認識していはいけない。存在を認めた者も処罰が下るということになっている。おかしな話だが、要は国民全体まるごとが璃々子をシカトすることを強制されているということ。政府公認の世界一のいじめ行為である。暴言を吐く、暴力を食らわす対象にすらならず、この世にいない者として扱われる刑であるからある意味最も残酷で冷たい扱いだと思える。

 

 

 賢一はとにかく独り言が多く、「あんた」呼びでプレイヤーに語りかける妙な喋りを随所で見せる。この奇行のカラクリは璃々子登場によって解ける。この仕掛は巧妙ですごい。

 

 そんな色々とおいしいポジションでもある重要人物の璃々子ももちろん可愛いヒロインでお姉さんながら攻略ヒロインに入っている。賢一の父親は革命家にして女たらしなので、璃々子と賢一は腹違いの姉弟である。だからセーフなのである。

 

 賢一をハードMへと導く手順を敷いたのは外でもない璃々子お姉様で、幼い賢一をしっかりそっち方面にはめ込む手ほどきをしてくれる。ロウソクで攻めてくるシーンにはドキリとしたぜ。

 賢一だけでなく、灯花を虐めることにも興奮するかなり愉快なお姉さんでハマる。

 

 後半では牢屋に打ち込まれ、法月のおっさんに杖で殴られる。殴られる璃々子を見るのが辛くてあのおっさんマジ許せんと思った。

 

 賢一と璃々子の父が革命を起こしたことで、その子供達も罪に問われることになる。この作品における奇抜な罪のルールとして上げられるのが「連座制」である。犯罪の実行とは何も関係なくとも、犯罪を行った者の家族であれば同じように罰が下るという恐ろしいルールである。これは造語でなく、実際にもあるとか。革命家のオヤジのせいで子供達もかなり厳しく罰せられるという設定は厳しく印象的なものだった。日本の普通の犯罪でもこれが適用されたらたまったものではない。

 

 

雑賀みぃな

 

 めっちゃ可愛い。

 

 賢一の物語である本編クリア後にプレイできる番外編に登場するヒロインである。ソフトのジャケットに写っているけどクリアまで進めてもずっと出てこないから「結局誰だったんだ、この女は?」と思っていたらまさかの別の話のヒロインだった。

 

 こちらの番外編はあの怖いおっさんの法月が若かりし頃のお話で、賢一はこの時まだ赤ん坊である。法月編となると「いいわ、いいわ、若本ボイスのおっさんの青春なんて別にいいわ」とかボヤいてスタートしたのだが、ヒロインのみぃなが可愛いし、若い頃の法月は別人みたいにイケメンで目の保養になった。そして何よりもシリアスで骨太な魅せる物語に大変引き込まれた。法月編も名作である。こちらには賢一の父の樋口三郎も登場し、かなり楽しかった。  

 

 で、肝心なメインヒロインのみぃなだが、まずとっても可愛らしい。名前に小さい「い」が入ってみぃなとかすごい。冨永みーな以来の名前だわと思った。

 

 神職の家系のお嬢様ということで大変礼儀正しい。しかし義務を背負っている以上、厄介な事情も持っている。

 誰にでも好かれる名門のお嬢様の態度を常に崩してはいけない「私生活が許されない義務」を負っている。かなりきつい罰となっている。

 お嬢様育ちだとそれはそれで大変だと思える。

 

 みぃなをめっちゃ虐める特別高等人のアリィも見た目は可愛いヒロインだがかなり怖かった。

 

 アリィの攻撃を受けながらも趣味の作詞をやめないみぃなの強さが見られる後半シーンはかなり衝撃的だった。

 

  

謎の男卯月セピア

 本作はシナリオでしっかり魅せるテイストを取り、キャラをバンバン出す派手さはない。少数ながらも登場キャラは魅力たっぷりに作り込まれているのが良い点である。

 

 楽しく頼れる主人公、それを取り囲む可愛いヒロイン達、敵だけど結局は憎め切れない法月正臣など皆愛しい名キャラ達だ。その中でも一際怪しげな光を放つ謎のキャラがいた。それが絵本作家の卯月セピアである。こいつがとにかく面白くて結局一番好きなキャラだった。美少女ゲームだけど、男性キャラのコイツが一番忘れないキャラだったので振り返りたい。

 

 主人公賢一のことを邪魔することもあれば、時には助けてもくれるおいしい立ち位置にあり、なんだかんだで最初から最後まで物語に顔を出してくるキャラだった。作者も卯月セピアが好きだったのではないかと思える。15年も前のゲームキャラだけど、私としてもここ最近で出会った中でこんなユニークなキャラはそうはいないと思えるくらいに気に入った。

 

 自称童話作家で卯月セピアはペンネームである。本名は磯野一朗太というらしい。白髪のイケメンキャラなのでこの名前は意外。見た目は格好良いのだけど絶対に気持ち悪いという特性が面白い。「ハルヒ」の小泉くんや「みなみけ」の保坂先輩的な感じがすると思った。奇しくもどちらも小野大輔が演じているではないか。

 

 キャラが喋ればフレームにキャラネームが表示されるのだが、そこでは一貫して卯月セピアの名前が表示される。しかし本編では誰一人卯月セピアと呼ばず、本名の「磯野」呼びにされている。まったく定着していないのにフレームは一生卯月セピアの表記で行くこの感じがウケる。

 

 卯月セピアの面白い点は、ハチャメチャなテンションと前後一貫性がまるでない喋りにある。妖精が見えてお話も出来るというKAT-TUNの上田君の初期設定を地で行く強烈なキャラ性も持っている。

 

 灯花ルートでは特に活躍が面白い。シリアスな場面をぶち壊して出てくるし、灯花の母の京子さんを実は狙っているという点も意外性があって面白い。

 

 賢一は戦争で活躍し、飛び級で学校を出て、若社長にもなった超人的男に描かれているが、こちらの卯月セピアもなかなかの超人的キャラで、ただの賑やかしではなく、賢一の物語には欠かせない重要人物となっている。こちらはこちらで変だけど主人公キャラでいけるかもしれない。

 

 賢一目線で展開する物語を読み進める途中、いつしか「速く卯月セピア出てこい」と彼の登場を心待ちにしている自分がいることに気づいた瞬間が良き思い出である。

 

 
まとめ

 ルールで塗り固められた世界に身を任せれば楽だ。しかしそれでは与えられるだけの考えることをしない人間になってしまう。当たり前の中に違和感を抱いた時、人の思考は活性化を迎えるのである。

 

 国の決めたルールに反しても、己が真に信ずる正義と自由を求めて戦う人物達の姿に熱いドラマを見た。

 

 賢一や義務を負った少女達が、悩み、苦しみの中で逃げずに考えて自己決定を果たす物語には等身大の人生を見ることが出来る。現実正解には、生きているのに死んでいるかのような者達だって少なくない数存在する。そこへ来ると本作のキャラクター達は、ゲームなんだけど、とにかくしっかり生きていると分かる。この点には大変好感を持てる。

 

 たかが美少女ゲームと侮れないすごい熱量のゲームだっだ。

 

 すごく面白かったぜ。

 

車輪の国、向日葵の少女(通常版) - PSP

車輪の国、向日葵の少女(通常版) - PSP

  • 発売日: 2012/02/23
  • メディア: Video Game
 

 

 向日葵は正義の象徴だ。

 

 

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