「UFO戦士ダイアポロン」は、1976年4月から9月にかけて放送された全26話のテレビアニメ。
好評につき、新カットを加えつつの再放送版「UFO戦士ダイアポロンⅡ アクションシリーズ」も全21話放送された。
内容
本作では、侵略型異星人ダザーン星人と戦士ダイアポロンが、地球の命運をかけて戦う物語が描かれている。
世界をどうとでも出来る程巨大なエネルギーを生み出す「エナルジーハート」がキーアイテムとなり、これを奪取するため、ダザーン星人はまずアポロン星に襲撃をかける。
その騒ぎの中、幼きアポロン星の王子は、エナルジーハートを起動させる鍵となる「キーエナルジー」を胸に埋め込まれた状態で地球に流された。
王子は地球に降り立ってからの16年を孤児院「あおぞら園」で過ごす。タケシと名付けられた王子は、16を迎えた時に戦士ダイアポロンとして覚醒する。
「エナルジーハート」を手中に収めたダザーン星人が次に狙うのは、タケシの胸にある「キーエナルジー」である。ダイアポロンの命と地球を奪うために攻め込むダザーン星人に対し、タケシは孤児院の仲間たちと「UFO少年団」を結成して戦う。
感想
先日「ウマ娘」のアニメ一期をBDでおさらいした直後にこの古さ、タッチの荒さのものを見ると、色々と違い過ぎて戸惑う。萌えがまるでない。日本のアニメ史も長く続くものだと納得出来るもの。
そんなかなり古い本作なのだが、ジャンルに分ければロボットアニメになるのだろう。なぜジャンル分けにやや迷うのかというと、正確に言うとダイアポロンとは、ロボットではなく変身した巨大な戦士であるからだ。タケシがロボットに乗り込むのとはややニュアンスが違っている。
まずタケシが呼び出した三体のロボが合体する。シャイニングガンダムみたく呼べば飛んでくるというこの技術の発達はすごい。呼び出す時の掛け声が毎度ちょっとうるさいとも思える。
この時、合体した三体の中は空洞に近い状態になっているのだと考えられる。そこにタケシが入り、中で巨大化することで、合体ロボを鎧のようにまとって戦うのだ。そんなシーンはなかったが、ロボットのどこかしらを剥がせば、中から巨人になったタケシが出てくるということになる。巨人化ヒーローとロボットものの間を行くこの設定は意外。他ではなかなか見ないものであり、この二点を同時に齧る必要性もないので、思いついても導入するに至らないものだと思う。合体したロボットとタケシが一体化するこの一連の流れは「合身」と呼ばれている。
合身時にウルトラセブンが変身した時と同じような音が聴こえるのが気になる。
すぐに合体させるなら三体のロボが出る意味なくない?
最初から合体させて基地に閉まっておけよ。
といったツッコミが数話見たあたりで口をついて出たこともあったが、後半回では三体のロボが単機で出動して割としっかり戦う展開もあった。
このアニメが歴史的にすごいものだと注目される点は、いまこそあちこちで普通に見られる複数の人型ロボが合体してもっとすごいロボになるという設定を国内ロボットアニメで初めて用いたことにある。これはすごいことだ。やはりロボの合体には心震えるものがある。
主人公タケシをはじめ、同じ孤児院に住む仲間達は、アメフトチームに所属している。客員がUFOに乗り込む時のパイロットスーツがアメフト選手の服っぽく、ダイアポロンのデザインにもアメフトのプロテクターをつけているような感じが見られ、とにかくアメフトを意識した作りになっている。一生やったことのない競技なのだが、当時はアメフトが流行っていたのか?
かなり奇抜なデザインも見られるものだが、ダイアポロンのデザインはユニークなもので気に入っている。
巨大化して戦うのがダイアポロンなので、その特性を活かした恐ろしい技としてアポロンデストロイが印象に残る。
まずダイアポロンが小さくなり、敵のどこかしらの隙間から体内に潜り込む。その後巨大化することで、敵の体を内側から突き破って殺すというものだ。これは防ぎ用がない荒い技だ。ヒーローにしてはちょっと怖い技を使ってくる。
戦いの途中にもタケシのダイアポロンの能力が次々覚醒して技が足される展開も楽しめた。
タケシが巨大化してダイアポロンになるのには、激しい苦痛を伴うと設定されている。確かに毎度巨大化する過程で苦しそうな顔をしているように思える。
一晩寝ればまた元気に戦えるガンダムのような展開とは違い、ダイアポロンの戦いは、合身したタケシの人体にもろにダメージが来る。連続する戦いの中で回復が間に合わず、タケシが日常生活の中で倒れてしまうこともあった。16の少年が体を張って戦うというなかなか過酷な青春物語が描かれている。
他にダイアポロンが苦戦する展開として、太陽エネルギーを力に変えて戦うダイアポロンが、日蝕の中で敵に押し負けるものがあった。太陽が再び顔を出すまでなんとかやり過ごすというスリルある戦闘も描かれた。同じく太陽エネルギーで戦う「キカイダー01」でも同じような苦戦の物語が描かれていたのを思い出す。
そもそも合身させないことに重点をおいたダザーンの作戦も印象に残る。三体のロボットが合体するその前にぶっ壊すのを狙った作戦があったりと、敵も様々な戦法で仕掛けてくる。
敵が送り込んでくるロボ兵器もそうだし、幹部らダザーン星人を見てもとにかく顔が悪い。まずは悪そうな連中だなと思える。
ダザーン星人の母星は、緑を失った壊滅状態に追い込まれているため、向こうとしても地球を侵略しない限り自分たちの未来はないという状態になっている。なので必死に攻撃して来る。
後半は地球を飛び出してダザーン星を舞台に大詰め展開を迎える。
こうなったら逆に敵の母星をぶっ壊す作戦に出るダイアポロン勢だが、そこで待ったをかけたのが、タケシの実の母クイーンアポロンだった。奪い合うこの戦争は虚しいだけなので、エナルジーハートの力用い、ダザーン星を復興させることで争いの種を摘もうと息子を説得しにかかる。これはやや考えさせられる展開になった。
絶対に悪者だと思っていたダザーン星の幹部ギラニクが、クイーンアポロンの意見を支持してこちらに着いてくれる展開も意外だった。
ぶつかり合う二つの勢力の戦いを描くその落とし所を、片方を滅ぼすこととは別の平和的な所に見出す流れには深いものがある気がする。滅ぼし合い以外にも終戦に至る道があると気づかせるものだった。良いではないか、ダイアポロン。
そんなわけで、大きなアメフトマンのダイアポロンが推せる。
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