「がんばれ!キッカーズ」は、1986年10月から1987年3月まで放送された全26話のテレビアニメ。
26話作られたが、諸々の事情により、テレビでは23話が最終回になっている。少し間を置いた後、未放送だった3話も放送された。
総集編にプラスしてテレビアニメ版のオチを改変したOVAもある。
ポンコツサッカーチーム北原キッカーズが、転校生の大地翔(だいち かける)を迎えてポンコツから脱し、徐々に強くなっていく青春物語が描かれる。
1983年に放送スタートした同じくサッカーアニメ「キャプテン翼」がまだ放送していた年の作品である。この手のジャンルでは金字塔のキャプ翼人気に隠れる形となり、歴史的にはマイナー作品となってしまったキッカーズだが、今しっかり見てみると、これはこれで良い。古くて地味だけど、最近たくさんあるなろう系アニメの失敗作よりずっと面白い。
最近までマジで知らないアニメだったけど、見つけた瞬間「なんかキャプテン翼っぽい」と思い、すぐに視聴してしまった。
第一話の段階では、0対21で大敗している。笑えるくらいキッカーズは弱い。
ユニフォームに着替えてサッカー場まで来てサッカー盤で遊んでいる子供がいたりと、そもそもやる気がない。このシーンには笑った。しかも当時のサッカー盤は8000円だったとされている。高い。
翔の加入をきっかけに、皆が心を一つに真剣にプレイするようになり、少しずつだが強くなって行く。ポンコツチームだったのに、最終回の南陽SC戦では、1対2の健闘を見せるまでになった。結局最強の南陽には勝てなかったけど、あそこまでのポンコツが名門と良い勝負をするまでになったという成長は決して小さいものではない。その点に感動できるのだ。
森崎や石崎とかは別にして、ほとんどの場合は強者ばかりにスポットが当たる超人サッカーアニメのキャプテン翼とは対象的に、キッカーズは主人公の翔以外のザコ達も含め、チーム全体にスポットを当てている。超人要素は薄く、キッカーズがザコからやっと普通くらいになって行く地味なリアル路線になっている。といっても、最後の南陽戦で南陽三羽烏が放った「トライアングル大車輪シュート」は、さすがに空中サーカス過ぎて笑える超技だった。
各員のちょっとずつの成長をしっかり追う展開に愛着が湧く。
翔とチームキャプテンの本郷のみは即戦力になるが、あとはまるでザコだらけ。
最初は大敗し、少し差を詰めてもまだ負ける。次にはなんとか同点引き分けに持っていき、放送1クール程経過した頃になってやっと初の一勝を上げられるようになる。なかなか勝てない中での成長が見所。
デブで薄鈍の太一、やんやんうるさい品の無いガキの健太あたりは、リアルにそこらの小学生にいそうな人って感じがする。普通にそこらにいるような連中の間にファミリー感が生まれ、チーム全体で強くなって行く過程にほっこりする。
サッカーシーンだけに限らず、客員の家庭問題や悩みを描く日常パートも割と多めにある。親の反対で好きなサッカーが出来なくなる、母子家庭の子供が親の再婚について考えるなど、子供ならではの問題も描かれる。
キッカーズの中でも翔と本郷は別格扱いで目立って描かれる。翔には明菜ちゃん、本郷には翔の姉の歩ちゃんとそれぞれにガールフレンドがいる。ここの恋愛模様も少しのお楽しみ要素になっている。
ライバルチームのキャプテンでもある上杉の妹の明菜は、アニオリキャラらしい。なんと明菜の声は、「FAIRCHILD」のボーカルでもあるYOU(当時芸名は江原由希子)。声優経験があったとは意外。
OP、ED曲はアイドルの西村知美が担当している。ちゃっかり本人と同じ名前の女子サッカーチームの一員としてアニメ声優にも挑戦している。西村知美推しなら見た方が良い。
時期的に近かったこともあり、キャプテン翼と何かと比較されがちなアニメでもある。しかしそれもそのはずだと思う。要素としてちょいちょい被る点があるっちゃある。
まず主人公の大地翔だが、字面や語感的にキャプテン翼の主人公大空翼と似ている。名前や漢字のことは気の所為でも済むことだが、髪型が一緒というのは絶対に似ているポイントだと思う。翼同様、引っ越し先でザコチームに加入し、オーバーヘッドキックをやりたがる点もそうだ。
翔の合流前ならチームでただ一人まともな実力を持っていたキーパーの本郷キャプテンは、なんだか若林くんっぽい。小学生の割に人格者で周りのガキ共と比べ圧倒的に落ち着いている。理知的で冷静な言動を取れるカリスマ性がある点でも似たポジションだと思う。
うるさいガキの健太は、キャプテン翼で言うと石崎と浦辺を合体したような野猿感がある。
ライバルチームの南陽SCのゴールキーパー上杉は、若島津っぽい。ゴールポストを蹴った反動でジャンピングキャッチをしたこともあった。
他にはサッカーボールに寄せ書きをするなど、コミュニティツールとして使用する演出もキャプ翼を思い出すものだった。
放送時期が近く、同じ制作会社だったことからか「忍者戦士飛影」の登場ロボ「黒獅子」のおもちゃを持ったモブのガキが登場する回があった。これが小ネタ要素。
キッカーズメンバーの親父が趣味の撮影で敵チームを偵察し、その伝達終盤が8ミリテープという点は古くて笑えた。
出演声優には、伊倉一恵、TARAKO、高乃麗、頓宮恭子、大谷育江、鈴木みえ、富沢美智恵ら当時はまだ小粒、今では有名人の顔ぶれが見られる。皆こんなに前からいたんだって思う。
OVA「ぼくたちの伝説」では、たまにあるテレビ版と劇場版でオチを帰るみたいな仕掛けが見られる。テレビ版ラストでは、キッカーズは1対2で南陽SCに負けてしまうが、こちらでは未来が改変され、なんと2対2の同点になり、PKで辛くも勝利する流れになる。まさかの未来分岐があったとは、イカす仕掛けだった。
コロコロコミック連載作品ということで、ガキ向けな内容で、出てくるのもガキばかりだったけど、結構面白い。古臭いけど作画も良い。なんていうか絵自体や動きも好きだった。キャプテン翼が有名になりすぎたために、一般的にはマイナー作品の扱いになっているようだが、まともな作りの良作だった。
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