こしのり漫遊記

どうも漫遊の民こしのりです。

人それぞれ夢に続くルーツがある「星空☆ぷらねっと」

星空☆ぷらねっと」は、2000年に発売された美少女PCゲーム。

 

 株式会社ディーオー創立10周年を記念して発売されたメモリアルな一作。10年の想いを込めて作っただけに、駄作には遠いなかなか良い出来の楽しい作品になっていた。

 

 世紀末に発売したものを今更起動出来るわけがなく、今回は2011年に発売されたPSP移植版をプレイ。PSPの存在には時を越えて助けられる。本体○ボタンが死にかけているのだが、本作は十字キーでもメッセージを送ることが出来るので助かる。

 

 先日「加奈 〜いもうと〜」というとんでもなく素晴らしいゲームをプレイし、シナリオを担当した山田一氏の存在が気になり始めた。もっとこの人間の作品を楽しみたい。    

 そんな想いから、加奈に次いで山田一氏がシナリオを担当したこちらも手に取った。

 

星空☆ぷらねっと one small step for…(限定版:ボーカル曲集,特製ブックレット同梱) - PSP

 

内容

 主人公の正樹少年は、その昔宇宙飛行士の夢を持っていたが、幼い頃に起きた悲しい事件をきっかけに夢の扉を閉ざすことになる。

 事件をきっかけに一度は田舎に戻り、高校生になってまた幼い頃過ごした地に帰って学園生活をスタートさせる。そこには大きくなったかつての幼馴染達がいる。

 学園の人間達と関わることで、正樹は夢へのルーツを再確認し、過去を乗り越えて強く人生を歩む。

 

感想

 加奈とは大きくテンションの異なる楽しい学園もののこちらは攻略ヒロインが6人もいる。シナリオもボリューミーで全クリまでは25時間くらいかかった。

 

 テーマに「夢」、そこへ続く「ルーツ」というものを掲げている。基本的にはコミカル要素がよく見える楽しい学園ライフ。その中で深く人間心理を掘り下げ、各員の悩み、そこから抜けての成長が描かれる爽やかな内容になっている。時にシリアス、そして教養もありな良きシナリオだった。文章は大変読みやすい。

 

 どのヒロインのシナリオも楽しい。だが個別ルートに入るまでの選択肢の判定は割とシビア。正解を選ばないと個別ルート無しの共通エンドになる。この点ではやや難易度高めかもしれない。しかしそこは先人たちの知恵袋を頼れば突破できる。ネットに攻略情報がたくさん落ちているので、名も知らぬかつてのオタク達からアシストを受けることが可能。

 

 ちょっとびっくりなのが、パケのイメージと中身のキャラの立ち絵のギャップ。起動してみると、思った絵とちょっと違う。この焦りは多くのユーザーが感じたことだろう。

 しかしコレも慣れである。慣れると味わい深い。良くも悪くも時代柄の哀愁漂うタッチの絵が印象的。

 師走の翁氏が手掛ける原画には魅力がある。このどうしようもなく一昔前感が出ている感じが愛しい。好きな絵柄である。

 

 ヒロイン達の学校の制服を見て思うのが、胸元がきつそう。圧迫感ある服だな。

 ヒロイン6人中、相馬さんと佳多奈を除いた他4人は爆乳すぎておっぱいがキツそう。笑えるくらいのセクシーさがある。

 

 ヒロインはバランス良く学校の同級生、先輩、後輩がいる。そして各員の萌え属性は様々。良い具合に年齢と属性をバラけさせたヒロイン軍団の質は高い。

 外国人のサーシャを除くと、他は皆幼馴染ヒロインとなる。幼馴染萌え要素を満たす点でも優秀。

 

 では各ヒロインルートを攻略順に振り返ろう。

 

 

山本 ゆかり(やまもと ゆかり)
声:月島理緒

 喫茶店で働く元気女子。巨乳。ブラをしていないのかな?胸をみると内部の突起物の膨らみて見て取れる。

 クラスの端っこにいる根暗オタクにもきっと優しく声をかけそうな明るいギャルの立ち位置にいる。そんな毒気のない爽やかヒロインで良かった。

 

 ゆかりルートでは喫茶店に入り浸りになるので、そこで起きる楽しい日常シーンが魅力。

 主人公と同じく、母無しのシングルファザー家庭の娘さんなので、その点では共感。

 一応年下だが、幼馴染の好で年齢差の溝を感じないライトな絡みをしてくれる点に好感が持てる。

 ゆかりも宇宙飛行士を目指すことで、二人そろってラブラブしながら進路を決めることになる。この点は楽しい。

 有効期限は無しでずっと自分の傍にいること、というキュンとする条件を賭けに持ち込むゆかりの意外と強いデレの要素にやられた。

 

真田 恭子(さなだ きょうこ)
声:一色ヒカル

 年上ヒロインで巨乳。そして剣道が強い武闘派お姉ちゃん。

 兄が3人もいる末っ子のくせにお姉ちゃん気質が強く、主人公のことを最初は弟として公園から拾って来る。弟を持たない幼子ならではが考える言動にクスリと笑えるものがある。

 あと真ん中のお兄ちゃんの弘だけは、世紀末のチンピラって感じがして笑える。他の兄はまとも。

 

 お姉ちゃんをしっかりやりたいと思う反面、どこか抜けた天然さんでもある一面がちらほら見えるのがまた可愛い。

 陸では強いが水中ではカナヅチ、ホラーが駄目な怖がりさんという点もギャップがあって萌えだった。泳げない女って何で萌えるんだろう。昔からここにキュンとするものがあるんだよな。

 

 恭子ルートでは、彼女にお近づきになるため、主人公が剣道部に入ることになる。このルートで出番が多めに周ってくる剣道部の同級生宮本くん、女子剣道部の田中さんも良きキャラだった。田中さんの水着お着替えシーンを覗けるイベントは楽しい。

 

 今も昔も姉として主人公を守りたい恭子の情熱が見える。過去に正樹を守りきれなかった恭子の贖罪の念も見えるちょっとシリアスな一面もあるが、過去の事件と今とを上手く絡めて展開する人間ドラマに魅力があった。

 

 後半では恭子の父に宣言した上で駆け落ちを計る。駆け落ちものも好きだから良かった。

 恭子の昔の男 大介くんと揉める三角関係の要素も少し見えて楽しめた。

 

 恭子を演じた一色ヒカル氏の演技が素晴らしい。

 

相馬 蘭子(そうま らんこ)
声:青山ゆかり

 陸上競技成績で特待生になったスポーツ女子。彼女はスレンダーでおっぱいもやや控え目。

 

 爽やかに汗を流すスポーツ女子らしからぬ影のあるキャラ性が特徴。根暗女とまでは言わないが、明るさにやや欠けたところが気になる。だからそこも魅力。

 ベースがこんなキャラなのに、攻略が進むと恐ろしい変貌を見せる。それがとんでもないデレ。作品きってのツンデレキャラで、デレのターンにはやられる。これはプレイした皆さんがそうだろうと思う。コイツ、こんなにデレるんだとびっくりキュンでした。

 青山ゆかり氏の声が大変綺麗で可愛い。

 一番リアル性のあるヒロインだったかもしれない。一番好きかもしれない。

 

 走ることに対して過去から今日まで葛藤を持つ少女で、そこに主人公との思い出も大いに関わっている点がこのシナリオの魅力だった。

 他の部員とは競技にかける想い、走る経緯も異なるため、部内では孤立している。そうでなくとも、特待生という嫉妬の条件としては最大級の物を持っているため皆から疎まれている。

 このシナリオで胸が痛む要素は、長距離ランナーの孤独ならぬ、短距離ランナーの相馬さんの孤独が浮き彫りになる点、そんな彼女に向けられる周囲の明確なる悪意が濃く見える点にある。本当にこんな人生を歩んでいる人がいそうって妙に納得出来るリアル性も所々に見える。

 

 過去回想での慎太郎が悪すぎる。恭子ルートの過去編でも彼の悪ガキぶりが目立つ。高校生になってからは主人公の親友になった慎太郎だが、ガキの頃はかなり荒れたお子様すぎてムカツク。相馬さんをイジメていた過去の慎太郎にはゲンコツを食らわせたい。でも、こういう成長の経緯も結構ありがちで納得できる。この私だってそう。

 

 このシナリオの落とし所は、夢を取るか愛を取るかの選択に揺れる人間心理にある。これがきつい。自分の女として相馬さんを抱き込みたい。しかし愛に溺れることは、イコールして競技者の質を落とす。これはスポ根アニメ「エースをねらえ!」でも宗方コーチの口より言及されている。

 自分の存在は競技者としての彼女には枷になる。だからあえて相馬さんと別れる。主人公は泣く泣くそちらの選択肢を取るのだ。そしてクリスマスデートの後に別れを告げる。偉いよ。

 

 名門校へ進学するため上京する相馬さんに、餞別としてランニングシューズを渡すオチには泣けた。

 先の未来があるから、そこを目指すための素敵な別れが描かれる。まるでT-BOLANの名曲「Bye For Now」のような世界感ではないか。このエンドは良い!

 

 

サーシャ・ノーブルグ
声:有森沙耶

 金髪巨乳。なんか変な髪型だがとにかくロング。留学生ならではの慣れない変な日本語の使い方がユニーク。

 ただの学生にしてはボディガードが複数いたりと明らかに何かある。実は外国のお姫様だと判明。王国の姫様ヒロインなのでこれはハードルの高い恋。

 サーシャを護衛する女ボディガード ディネイのターンも多く周ってくるルートになっている点も良し。

 

 サーシャのみは、高校から出会った主人公の人生における完全なるニューヒロインである。そんな点から新鮮な想いで楽しめる良きヒロイン。

 

 お嬢様なので経済面では不自由がない。しかし自由の世界にいる人間は、その一方で不自由の世界に住む者たち同様に生きられないという矛盾を抱えて生きることになる。身分の高いお嬢様なのに、一般人が楽しむあたり前の生活が出来ない。そのことに苦悩するサーシャならではが持つ人間心理が見えたりする。お嬢様って大変。

 

 ゆかりがサーシャのおっぱいを揉みしだくイベントがある。そこにはちょっとドキドキする。

 

 誰が王女になるか揉める内政も扱い、ちょっと小難しいことにもなる。

 文化祭の裏で暗躍する殺し屋 イワン先生との戦いを描くシーンは緊迫感があって読み応えがあった。搾取する者、される者の都合が分かるイワン先生の語りにも深いものがあった。

 

 オチでは別れた二人が、学生時代に初めて出会った蕎麦屋さんでまさかの再開を果たすシーンが描かれる。素敵なオチやん。

 

 

藤原 佳多奈(ふじわら かたな)
声:野神奈々

 後輩ヒロインのロリ枠。カナタじゃないんだ、カタナなんだって最初に思った。

 主人公のことは「まー兄」と呼んで慕ってくれる。萌える。

 

 属性としては自閉症という特殊なものを持っている。これは実在するものだが、当時から本日に至っても特殊な症状なため、まだまだ一般人には広く浸透していないものだと思う。ことによると、偏見、差別を生むテーマ性にもなる。

 そんな微妙に扱いづらいネタということで、慎重に協議を重ねた結果、皆が遊べるPSP版では自閉症サヴァン症候群といったスマートな表現に回り道を加えた「コミュニケーション能力不足」という実にやんわりした表現に置き換えられている。間違いではないのだろうけど、それだとそこらの引きこもりの人とかにも同じ事がいえるので、実に抽象的。まぁ仕方のない配慮かもしれない。

 

 数奇な運命を辿る彼女のシナリオは、特殊ケースだからこそ、力の入ったものになっていた。難しい題材を用いたこのシナリオの評価は世間的にも高いと聞く。

 

 序盤のカタナはとにかく扱いが難しい。話しかけてもオウム返しに合う、または応用を効かせて逆読みにして返すなどで一方通行の半分の会話に終わる。これはきつい。

 

 概念と行動を結びつけることが脳内で実現されないため、人並みのアクションを取ることが出来ない。そんな不自由さがあるこの症状の難しい真実が説かれる。医療福祉分野のお勉強にもなる。人間の脳内構造の不思議にも焦点が置かれている。

 

 あるべき物が欠落した一方で冴える別機能があるのもこの症状の特徴だという。物事を瞬時に覚え、それを数学、絵画に応用し、常人以上のパフォーマンスを生むことがカタナには簡単に出来る。実に珍しい症状だと言えよう。

 

 自閉症のハンデがある一方で、学問と芸術においては天才でもあるカタナの二面性のあるキャラ性は印象的。後半では、結局天才の彼女と並ぶには自分は凡人だからと主人公が僻むシーンもある。ステータスの差があれば恋は難しいとも思えた。

 

 主人公の一心な愛で、カタナが徐々に健常者へと近づく点にも注目できる。最初は目の色が死んでいるカタナだが、攻略を進める内に目に色と光が宿るようになる。前半後半で変わる立ち絵にも注目できる。

 

 かなり重いテーマを扱っているので、カタナの人生を見れば胸が痛むこともある。しかし読み応えのある秀逸なシナリオだった。

 

 このルートでは保険医の朝末先生のターンも多い。セクシーでクールな朝末先生も素敵なヒロインだった。

 主人公が朝末先生に催眠術をかけられるシーンに何故かドキドキするものがあった。

 

 カタナのクラスメイトの島崎さんというヒロインも可愛くて良かった。

 

 このルートでは、ストーリーの鍵となる主人公の幼少期に起きたロケット事故のことが詳しく語られる。例の事故で負った心の傷とカタナへの想いが交錯して進むシナリオにはぐっと惹き込まれる魅力があった。

 

 設定上カタナはどうしてもセリフの少ないヒロインとなるので、ボイスも少なめ。主人公のモノローグターンが多くなる。この手のゲームではボイスは飛ばさず全部聞くというのが私の拘り。しかしヒロインのセリフが少ないため、一番早く読み進めることが出来たルートでもあった。

 

星見 瞳(ほしみ ひとみ)
声:大波こなみ

 本作メインヒロイン。メインヒロインらしくピンク髪の可愛い子ちゃん。巨乳。

 幼馴染みヒロインにして主人公とはアパートの部屋がお隣同士。お隣さんなもので、輪をかけて幼馴染み感が出る。

 とにかく元気印な女子。非常に好感が持てる。

 ドジっ子でよくこける。そのくせテストは学年一位の秀才でもある。意外。

 

 瞳ルートでは天文部での活動が濃く描かれる。他ルートでは幽霊部員扱い。

 天文部の友人 慎太郎の良い望遠鏡を見たらハァハァ言ってしまう面白性癖が濃く見える点も魅力。

 北都南氏が演じる天文部の部長 天子の活躍も良く見られるルートになっている。このヒロインも個性的で良かった。

 

 瞳も主人公と同じく宇宙に想いを馳せるヒロイン。瞳との再会を受けて、自分の中にある宇宙への熱が再燃する過程がハイライトとなる。

 後半では元気にしか見えない瞳がまさかの心臓病持ちだったことが分かる。これは読めなかった。

 

 こちらを親しげに「まーくん」呼びしてくる点は愛らしい。怒ると「むーむー」言ってくる点も良き。

 

 笑顔でいることをファーストプライオリティに掲げる清き少女である。その境地に至るまでの人生経験に深いものがある。とても良い子だ。

 

 日焼けした瞳の手の皮が剥けるという現象が起き、その際にはこちらにも試しに剥いてみるか?と良い話を持ちかけてくるシーンがある。なんかそこには妙にドキドキした。

 

 

 

 

 各ルートのオチでは、主人公の正樹が宇宙を目指す希望溢れる未来が描かれる。その点でも胸にジーンとくるものがあった。

 恋と夢を追う若者の清い心が見える爽やかな作品になっていて良かった。とても面白い。

 

 最初は気になったキャラ絵だが、シナリオの中でしっかりヒロインの萌えを見せることで、最終的にはきっちりどの娘にもキュンキュン出来る。だから安心。

 おまけに主人公の妹の朝子も可愛かった。

 

 やはり夢、人生のルーツってのは、個人を構築する重要な要素だ。それをテーマにした説得性もアリな良作だった。

 

 音楽も良く、OP曲、ED曲共に好きだった。

 作中の音楽は元ジャニーズの野村義男が担当している。まさかのよっちゃんが登板した作品になった点も印象に残る。

 

 ヒロイン6人揃い踏みとなったPSP初回版ジャケは至高。

 

 

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