こしのり漫遊記

どうも漫遊の民こしのりです。

指切りの意味合いは深い「メモリーズオフ ゆびきりの記憶」

メモリーズオフ ゆびきりの記憶」は、2010年に発売されたXbox 360対応ゲームソフト。

 心弾む青春恋愛劇を描く人気シリーズの第7弾である。

 

 去年の夏になってやっとXbox 360を購入した。きっと面白いだろうと信じたソフトも30本くらい同時に仕入れた。しかし一年経ってもまだ「ぎゃる☆がん」というギャルを撃ちまくる謎に楽しいシューティングゲームしかやったことがない。

 色々と便利になったからこそ、諸々をサボりたくなる現代人特有の心理がここにある。何かっていうと、テレビゲーム機の用意ってホント面倒臭い。そう面倒なのだ。配線の事とか用意丸々が面倒。で、そんな事を思うならクリアまで出しっぱなしにしとけば良いものを、それはそれで真面目でキレイ好きな性格が許さないことから、遊ぶ毎にしまってしまうのだ。すると次に出すのが面倒で「ああ~もうやってらんね~」となる。こうして我が家にあるXbox 360対応ソフトは積みゲーになってしまった。積みゲーだけで600くらいあるんだけど。買って遊ばないこの状態は罪ゲーなのかもしれない。

 

 というわけでテレビではやっていられない。そんな私に向けて優しい業界は、後にPSP版を出してくれた。今回はそちらで遊ぶ。ギャルゲーをじっくりやり込むなら携帯ゲーム機に限る。PSP20年代に突入してもまだ戦える息の長い武神だな。それとくらべるとゲームギアは液晶がすぐ死んだよな。

 ちなみに今作は、色んなゲーム事情持ちに対応して実に様々なハードで出ている。最初はXbox 360、後にはPS3PSP、vita、最近ではスイッチで動くバージョンも出ているという。当時から本日まで、どこのどいつも手を出しやすいようにしてくれている。助かる。

 

 どのバージョンでも遊べるようXbox 360PS3PSPのそれぞれで出た初回版をゲットした。そして通常版だけで出たvita版もゲットした。というのが去年の夏くらいの話。

 中身が同じものをとりあえず4バージョン集めて積んでいたのを、このクソ暑い夏になってやっと遊んだ。

 

 いつか本体が我が家に入ることもあるかもしれないと思ってPS3、vita版も迷わず買ったが、この2つの本体は未だ買ってなくてソフトだけがある状態。お兄ちゃんからは「本体も無いのに買ってくるとかバカなの?」と言われたが、そこの事情も乗り越えた未来を見た投資だからバカではないの。

 しかし困るんだよな。色んなバージョンがあっても実用性を持つのは実際に遊ぶ一つだけだ。それでもなんかたくさんあると嬉しいという極単純なコレクター心理からとりあえず全部いっとけとなって購入してしまう。初回ジャケットの方が可愛かったりするから余計に金と場所を食う。困るけど楽しい。

 そんなこんなでメモオフシリーズはたくさん買わせる魅力があるんだよな。

 

 ゲームをやるに至るまででも思い出がたくさんだぜ。

 そんなこんなで遊んだ感想とかを書き殴っていこう。

 

メモリーズオフ ゆびきりの記憶 +スイーツパック(限定版) - PSP

 

 主人公の芹澤直樹を操り、我々は一体何度目か分からぬ青春時代を楽しむことになる。

 直樹には幼少期の記憶がないと設定されている。コレが作品の味噌になって来る。

 後には記憶の解放を迎えて更に奥深い物語が展開する楽しみがある。

 

 幼馴染で元許嫁のちなつが、現在でも自称嫁を名乗ってスキスキ言ってくっついてくる。そこに家出娘の霞が直樹のアパートに居座ることになり、内緒の同居生活がスタートする。あっちもこっちも女子で忙しい直樹の騒がしい青春を楽しめる。

 学校パート、喫茶店「風流庵」でのバイトパートを交互に描き、その中で女子ともいちゃつく。そんな感じで基本的にどこを見ても青春の楽しさ一杯な仕組みになっている。

 

  何かあればすぐに指切りげんまんの約束をしたがる指切り魔の直樹が主役だからこそ搭載された今回限りの新システムが「ゆびきりシステム」である。従来ギャルゲーの選択肢のみでなく、ここ一番でヒロインと指切りの約束をするかしないかでも命運が分かれてくる。ぶっちゃけこの機能は必要だったのかどうかを問われても、なんと答えてよいのものか。私の中に答えはない。

 選択肢に加え、ゆびきりシステム発動の有無も関わることから、ルート開拓がややこしく難しい。ルート開放の難易度はシリーズの中でも一番高いのではないのだろうか。それでいてエンディング数が驚異の19個もあるので大変。逆にバッドエンドを出す方が難しいパターンが多く、ヒロインの好感度を上げ過ぎない程よく低空飛行の男前で臨むことも覚えなければいけない。心身共にイケメンに仕上げてしまった私だと、意図的に普通の生き方を崩したダメンズな思考も働かせないといけない。これはこれで脳みその特訓になったともいえよう。

 

 クリアには36時間程かかった。内数時間はずっとスキップのターン。他のシリーズもそうだったけどスキップが遅い。ショートカットもなく、2周目からもうだるい。しかしそこはラジオとか聴きながらたのしく待機して楽しくクリアした。

 7月末からプレイを開始し、9月半ばでゴールとなった。スタートした日から終わった今でもまだ涼しくなっていないから困る。

 アニメを見たり、家の床にワックスを塗ったり、冷蔵庫の中の掃除をしたり、そんでまたアニメを見たりの忙しい合間を縫って進めたことで、意外にもクリアに時間がかかった。それしにてもこの夏は楽しかった。

 

 長くシリーズを組んで来たその歴史の強みを作中のあちこちに出している。初期からプレイしてきた者達ならクスリと笑えてしまう過去作からのネタもちょこちょこ出てくる。「ゆばむ」というずっと謎の食い物の存在が今回も出てくる。

 

 稲穂信は当然だが、前作「6」に登場した冴えない非モテキャラの佐賀亨も連投で登場する。二人共主人公のバイトの先輩として登場。悩める主人公の人生の伝道師になってくれている。

 

 主人公にも声と顔がある。岡本信彦の声は良いが、直樹の顔はもっさくてイケメンではない。信や亨の方がモテるだろうに。

 

 当初はおまけ要素くらいに思えた「レッツゴー☆ペタペタ」というペンギンのアニメとそこから生まれたグッズが実は割りと重要な要素を果たしている。各ヒロインの物語にちょこちょこと関係している点が美味しい。

 

ヒロイン

 では作品を彩る最大の要素であるヒロインズを振り返って行こう。

 攻略ヒロインは少数精鋭の5人。全てに失敗したことで開かれる第6のルートとして、亨と緩くBLで終わるそれはそれで平和なルートもある。亨のキャラもポジも結構お気に入り。

 

 封印された直樹の記憶に関わる重要なヒロインのちなつ、霞の二人のルートがメインルートになり、先に他の3人のヒロインをクリアしないとこのメインルートは解放されない。また、ちなつだけをクリアしても謎の解明は半分となり、残った霞サイドも見ないとしっかりと内容が補完されない。というわけで全部が知りたいなら全ヒロインを攻略するしかないという憎い仕様になっている。最後までやってもらう算段が整った上でこちらの満足感も満たされる良きマーケティングだ。

 

 ちょっと感動なのは、ヒロインの立ち絵に後ろ姿を描いた物があること。ギャルゲーでヒロインの後頭部までしっかりと拝めるのは珍しい。美少女を前からも後ろからも楽しめるお得仕様である。

 

 攻略対象ではないけどかなり良い女だったのがバイト先の先輩の京子さん。サボっているとお盆で頭をゴツンしてくるパワフルお母ちゃんな素養を備えている。怖いけど、どういう訳か叱られているこのターンも悪くないと想えるトータルで好きになるヒロインだった。私にマゾ気質があるとかでなく、叱りっぷりが爽快で怒っているのに好感度が下がらないという稀有な人材っているじゃない?それが京子さん。浅黒い美女でコレも推せるから出てくると嬉しくなるおまけヒロインだった。

 

 では攻略順に、ルート内容も含めて可愛いヒロインズを振り返ろう。

 

星月 織姫(ほしつき おりひめ)
声 - 野中藍

 24歳の女教師で主人公とは師弟仲。でも妹かってくらいチビでロリ。それも圧倒的なもので、最年長でも他の学生ヒロインより全てがチビである。シリーズの中で一番なくらいロリキャラなのではなかろうか。

 

 モコっとした毛並み、毛量からして「とらドラ」の大河をちょっと思い出す。

 野中藍のロリボイスは助かる。

 

 元澄空学園の生徒だということが判明する学生時代の写真が登場する。やはり澄空の制服が一番可愛い。そういえば今作の主人公達は藤林高校という初登場の学校に通っている。

 この写真は姫ちゃん先生のファンの生徒達が集まったファンクラブで所持するもので、色々あって主人公の手元にも回ってくる。こっそりとファンクラブも結成されている人気者先生なのはすごい。こういうアイドル先生がいれば学校生活がもっと楽しくなるよね。

 

 先生に突っ込んで行く。この禁断にして正義のルートが好きなので、等身大の学生から見れば一つだけイレギュラーなココこそを一番に崩したくなった。

 

 このルートが何気に一番面白かったかもしれない。

 姫ちゃん先生は直樹が属する文芸部の顧問でもあるので、まずは生徒、教師としての仲をしっかり深めて行く。

 普段だとまるで友達のような姫ちゃんだが、教師としてやることはやる大人な所も見せてくれて、主人公からの好感度を勝ち取っていく。

 

 ルート中盤で直樹の同級生がチンピラに絡まれるのだが、後日チンピラは自分達が絡まれて怪我をしたと学校に嘘をの報告を入れてくる。チンピラのやり口が意外にも狡猾でムカつく。生徒指導のおっさんの先生が生徒を信じずにチンピラの言い分を信じてこちらの敵になるのもムカつく。ここで姫ちゃんが生徒を守ってくれるのが格好良いのだが、胸糞悪くなる大人の言動もしっかり描くことで不快さもあるルートだった。

 

 このルートのツッコミ所は、気安く生徒と教師が学外で会いすぎな点。

 偶然街で出会う、行きがかり上仕方ない流れで直樹の家に上げることになるとかの最初の方はまだ分かる。でも段々と仲良しになっていく内に、普通に先生の家に遊びに行ってカニをくったりビデオを見たりしているのはおかしい。まぁこういう関係の移り変わりは、当の本人達は楽しいばかりで気づかないものなのだろうけども。

 先生側に危機感が少ないのはどうだろうか。ツッコミながらも進めて行くと、そこをスキャンダルとして狙ってくる者の姿があった。

 

 ここからはミステリーとサスペンスの展開も見えて面白い。

 餃子大好きで有名な橘田いずみ演じる同じくいずみというイカした姉ちゃんがシナリオに絡んで来るようになる。これが最初は絶対いい人だと思っていたのに、後になって怖い女と判明する。これは意外だった。仕事が出来そうな素敵なお姉さまに見えたのに、実は狂ったヤバヤバ女だった。

 

 姫ちゃんといずみは高校の同級生で、どちらも担任教師が好きという困った仲だった。姫ちゃんと教師が出来ていたことに嫉妬したいずみが二人を刃物で刺したという怖い事件がその昔あったことが判明する。

 これだけで恐怖だが、現代ではその姫ちゃんが今度は生徒と出来ている。そして直樹の事が好きなちなつがヤンデレ化してここに突っ込んでくる。ここで初めてちなつがただの甘えん坊ヒロインではなく、かなり怖い女だとも分かる。

 過去、現在共に揉める男女三角関係が見える。最高に上がるお膳立てが出来ているじゃないか。

 

 ちなつ以外のヒロインに行くなら、最初から直樹にスキスキ言ってくるちなつを引き剥がして先に進む苦労がある。ちなつは可愛いけど他の女に行くなら厄介な要素にもなる。そこも面白い。

 

 このルートの中では、姫ちゃんや詩名からちなつとの関係が宙ぶらりんな事を指摘されるシーンがある。直樹も男なら曖昧にせずに振るならちゃんと振って関係性はクリアにしなというプレイヤーのほとんどが思う事を登場キャラがしっかり言ってくれることでスッキリ。直樹はそこのところをズバッと言えない優柔不断さを持っていると紹介する内容でもあった。まぁ男って多くはそんなもの。

 

 このルートはオチの数が多く、最悪のルートに進むと直樹はいずみにキルされて葬式エンドになる。悲しい。

 

 一番愛憎と男女の厄介が見える大人なルートで楽しめた。姫ちゃんがあの感じですごく濃密でディープな大人な経験を終えているのも意外な要素で楽しかった。

 

鼓堂 詩名(こどう しいな)
声 - 早見沙織

 直樹やちなつよりも一つ下の学年の後輩ヒロイン。こういうゲームには同級生はマストで、年上と年下枠も欲しい。今回の貴重な後輩枠が彼女。

 もうめっちゃ元気である。男子のノリでこちらに接する元気元気な女子で、それは体に出ておっぱいもすごく元気。カメラっ子であり、隙あらばパシャパシャしてくる。

 

 この感じのキャラを早見沙織がやっていたのが意外。12年も前の作品だし、収録時だとまだ学生だったのではなかろうか。今でこそ押しも押されもせぬ人気者だが、当時はキャリアが浅く名前もなかったはず。そんな時期の芝居が見れるのはレア。かなり男子寄りなテンションの芝居だが、これはこれで可愛い。そういや今もメイドアニメで変な坊っちゃんの役をやっているな。

 

 このシナリオについては、事情は分かるけど本当に面倒臭いと言える。

 詩名には好きな人がいるので、その恋を応援しようと二人でなんかごちゃごちゃと相談するのだが、進める内にすぐ察しがつく。その好きな人は直樹である。けれどもなかなか言えない乙女回路の都合がある。本当にいい男ならまずはそれを察してあげる。そこからベストな行動に出られると良い。だが直樹が結構アホで、詩名の想い人は亨と勘違いして二人が付き合えるようセッティングする。これによりりりすちゃん一筋だった亨に一瞬春が来る。

 

 実際のところそうなのだが、人は失ってからでないと失っていない時の幸福に気づかない。そんな都合から、詩名が亨と一緒になってから実は俺も詩名が好きだったと直樹は気づく。でも色々ともう遅い。

 この直樹の鈍感さと見当違いなアクションに出るお馬鹿さに呆れもするが、それもダメな男のリアリティなので付き合うことにしよう。

 

 亨が一瞬悪役にもなっているので、ここでは彼の存在感がひときわ浮き立つ。このルートで偉いのは、一芝居打った亨以下風流庵のスタッフたち。皆優しいし、直樹よりも勘と頭が良い。

 直樹が事態を逆転出来るよう最後の遊園地のシーンをお膳立てた風流庵一同の活躍が美しい。

 

 真実を言えばすぐに解決することを男女が共に秘することで生まれる最高の面倒臭さを味わえるルートだった。

 

リサ・ケイシー・フォスター
声 - 酒井香奈子

 アメリカから来た刺客である。親日家で和文化ウェルカムな女子で助かる。

 微妙にすっとぼけた感がある愉快な金髪美女でおっぱいが元気過ぎる。もしかしてシリーズでここまで元気なのは初かもしれない。髪の毛も多いな。

 日本の漢字が格好良いと思っているらしく、胸に「台所」と書いているTシャツを着てお出かけするシーンがある。あのシャツはウケた。

 日本では浜咲高校に通っている。メモオフ2の学校の制服だ。リサの学校制服姿も良し。

 

 彼女の抱える悩みは国境を越えたもので、地元のパパがよその女と再婚するという10代少女が心で処理するのが簡単ではない問題が浮上する。これで葛藤が生まれるのは仕方ない。

 底抜けに明るくて元気だと思ったリサが割りとヘビーな悩みを持っているのを、直樹はなんとか助けたいと奔走する。そこにまたちなつが突っ込んでくるからちょっと怖い。詩名編では鳴りを潜めていたちなつが、リサの時にはちょっと出番多めで突っ込んでくるのは要注意。

 

 リサが生き別れた乳母を訪ねて会いにいく展開は、2の鷹乃の時と結構似ていた。

 

 異性間、家族間を問わず、国境を越えても愛は自由に貿易出来ると分かる愛のルートとなって良かった。

 

天川 ちなつ(あまかわ ちなつ)
声 - 鹿野優以

 ここからはメインの重くも楽しいルートに突っ込むことになる。ツインヒロインの内、より好みなこちらからプレイした。

 小柄のツインテ娘でとても可愛い。最近見たニジガクのアニメに出てくる高咲侑ちゃんにちょっと似ているかもしれない。

 

「なおくんなおくん」を連発して直樹にラブラブで寄ってくる子犬感が可愛い。

 

 直樹達を取り巻く環境はレトロで面倒臭い。大昔の価値観で生きる割りと規模の大きな一族の一員として直樹とちなつは存在している。後で分かるけど霞も同じ系統。子供達が預かり知らないところではお家騒動が起きていたりして、その被害を受けて直樹は暮らしづらい思いをしている。メインルートには本家だとか分家だとかの権力抗争があって怖いし面倒。

 2010年のゲームで何を古臭いことをと思ってしまうところだが、そのことについてちなつの父は「塀の中に閉じこもって暮らす古い人間達は時間が止まっている」と答えている。怖いけど案外そんなものなのかも。古くからいる人達ならなんとなく偉いのかなと思いがちだが、狭い了見で生きていることで逆に世間知らずの小物ということもあるだろう。

 

 一族の長の継承候補だった直樹は色々あってその枠を離れ、そのせいで冷遇されていたりととにかく面倒臭い。跡目の継承権が無くなったことでちなつとの許嫁関係も解消されたけど、それでもちなつは嫁を自称してくっついてくる。

 大人が決めた許嫁の都合を抜きにしてもなおくんラブなちなつは、真実のラブを持つ清い女なのかと思えば、これがそうスマートには行かず、かなり歪な愛情が見えてくるから怖い。

 

 直樹は本当は直樹ではなく、実は大輔という別人だった。戸籍から何からを取っ替えてずっと生きていたことになる。すげぇことになっている。主人公は本当は大輔という名前で、直樹というのは死んでしまったかつての友人の名前だった。

 ちなつが好きだった本当の直樹は死んでいて、その代わりとして大輔を通して直樹を見て愛するというかなり歪な愛を示していた。大輔にずっと直樹でいてもらうことは、大輔への復讐でもあるというちなつの執念は普通に怖い。

 

 直樹が自分は大輔であるという記憶を取り戻しそうになると荒い手段で妨害を加えることもあった。スコップで殴ってもう一回すっきり忘れてもらうという怖い一面も見えた。ここではちなつにスコップ攻撃を止めさせるために霞が乱入し、二人のヒロインのしばき合いが始まる。これは……痛ましいが同時に楽しい。ちなつはあら手のヤンデレ枠だったな。

 

 ちなつルートの中盤では、ちなつの精神がかなり不安定になってくる。なおくんに依存しすぎているため、当のなおくんは自分が大輔であると言えずに苦しむことになる。大輔と呼んで欲しいのに、なおくんでいる事を止めるとちなつは心の支えを失って精神崩壊を迎えてしまう。

 優しくしないとちなつが壊れるという事で、主人公は強く物を言うことが出来ず、ちなつが甘えまくって来ても受け入れるのみの感じになっている。ここらあたりは「お前しっかりしろや」と言いたくなる。

 ちなつの依存がエスカレートしてくると学校の授業中にもくっついてくるし、風呂と布団も一緒の状態になる。可愛い子と一緒なのは良いけど、相手が直樹なのか大輔なのかよく分かっていない状態のちなつには手を出せないことで主人公は悶々とするのだ。 

 やべぇ、面倒臭いけど珍しい状態で面白い。

 

 普段はあんなに可愛いのに、その裏には凶暴な一面も持っている二面性が印象的なキャラだった。ちなつの表と裏の切り替わりをしっかり演じて緊張感を演出した鹿野優以の芝居はナイスだった。

 

南雲 霞(なぐも かすみ)
声 - 小林ゆう

 まず小林ゆうがギャルゲーヒロイン役をしているのが意外。これまで楽しんで来たアニメの「銀魂」「スクールランブル」ではかなりのネタキャラ女を演じていたし、他では男子役もこなしていたイメージがある。好きな声優だけど萌える声ではない気がする。そう思いながらプレイするも、やっぱり役者ってちゃんとしているんだな。キレイな声でクールビューティーな霞にハマる芝居をしていた。

 

 この霞だが、初登場時からずっと怪しく、後半まで謎多き女だった。

 まずは主人公にとって不都合な情報を握った上で、住処を提供しろと脅しにかかり、強引に家に上がり込んでくる。荒い流れで内緒の共同生活がスタートである。

 ひとり暮らしを始めたばかりの拙い料理スキルで出来る限りの物を作った直樹に対して「残念賞」、つまりは不味いを言ってくるし。勝手に金を持ち出して下着を買ってくるし、人が寝ている横で夜な夜なテレビを見ているしと自由かつ偉そうに居座っている。

 美少女だから許せるけど、そうでなければ普通にチョップ(切り刻み)案件だな。

 

 こんな女を置いていることが他にバレる訳にはいかないので、ちなつを始め他の人間にもなんかコソコソしないといけない罪悪感を常に抱くことになる。

 ちなつとその父が一緒にアパートに遊びにくる展開があり、そこで霞の存在がバレないようやり過ごす展開がドキドキして面白かった。

 

 ちなつに霞との同居がバレて揉めるところは楽しい。ちなつが普通にキレるからやっぱり面白い。修羅場好きには堪らない。

 それなら私もとちなつも乗り込んできて、胃が痛くなる3人生活が始まる。ちなつと霞がギスギスしていることで、主人公は更に居心地が悪くなって困るだろうな。

 

 記憶が復活して大輔になると、霞の態度が変わってくる。直樹として接する時には塩だけど、大輔に戻ってからはデレてくるから面白い。このヒロイン性は可愛かったので残念賞ではなく合格。

 霞はそれまで一切直樹と呼ぶことがなく、それは何で?と問えば、自分にとって大輔は大輔であり直樹だった時間など無いというイケメンな回答をくれる。ここ、ちょっと惚れるよな。

 

 霞ルートの後半では一族の面倒に巻き込まれて霞がよその男の嫁として売り出されることになる。こういう流れは「4」の藤原雅のルートっぽい。

 霞の親父がクソ野郎で、これを気持ち良くぶっ飛ばして終わるのが良かった。

 

 人間の入れ替わりのややこしい要素があり、そこに二人のヒロインそれぞれの恋心も絡んでの複雑な物語が展開した。そこに奥深い面白みがあって楽しめた。

 

ふたりの風流庵

 PSPの初回版に封入されているおまけディスクである。

 それまでのシリーズは別途ファンディスクを発売していたが、これにはそこまでのボリュームはない。少しグレードを下げた追加のお楽しみ要素くらいに思って遊ぶと良い。

  

 内容は風流庵の宣伝となる写真を撮ること。各ヒロインとデートをして、最高の1枚を撮ってお店のイメージアップに繋げるウハウハな一作である。これはこれで楽しい。

 よく見ると風流庵の壁には「TVで紹介されました」という紙が貼られている。それなりに有名なので、更に世間に向けての宣伝も必要になってくるのだ。そんな事情が伺える。

 

 ヒロインをデートに誘っても断られるパターンがあり、その時にはちょっぴり傷つく。

 温泉デートでは肌色多めなヒロインの姿が見れて目の保養になる。

 ファミレスのルサックに遊びに行けるルートもあり、そこでは声の出演はないけど、過去作ヒロインの仙堂麻尋、嘉神川クロエが店員として働いている姿も確認出来る。声については脳内再生するしかない。

 ちなつがルサックの制服を来た姿を見ることが出来るが、これがとても可愛いかった。

 

メモリーズオフ ゆびきりの記憶 (限定版) (サントラCD2枚組&ドラマCD1枚 同梱) - PS3

 

 というわけで色々と新しい試みが見られたメモオフ7作目もとても楽しかった。

 これを遊んでからは、指切りの約束をするにもそれなりに覚悟がいるぜとか思えてくる。

 

 8作目も遊びたいが、ソフトも対応ハードも持っていないので当分お預けだな。

 メモオフは悩ましくも楽しい青春がたくさん詰まったベストなバイブルだった。ありがとう。

 

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