こしのり漫遊記

どうも漫遊の民こしのりです。

青き星を取り戻せ「ブルージェンダー」

ブルージェンダー」は、1999年10月から2000年3月まで放送された全26話のテレビアニメ。

 

 4,5年前、日本テレビアニメ誕生100周年を記念してNHKで特番が組まれていた。その際には、著名人に思い出のアニメを尋ねるコーナーがあった。そこでNHKの知り合いの小説家先生がこのアニメの名前を上げていたのだ。このアニメを始めて知ったのがそんなタイミングだった。

 結構アニメを見てきた私が知らないのだからきっと世界的にマイナーな作品なのだと思う。あの先生も随分とマイナーどころを持ってきたものだ。見たことがないのでこれをきっかけに見てみよう。そう思ったまま数年後の2022年2月を迎えた。そして色々と都合がついて、やっとここ3日程で視聴出来たのだ。良かった良かった。

 

 世界の終末が予言された世紀末の放送だっただけに、ご時世にマッチした終末系SFメカバトルものになっている。

 

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内容

 西暦2031年の地球から物語はスタートする。

 

 主人公の海堂祐司は、現代医学では治療出来ない謎の病気の進行を止めるため、コールドスリープすることで未来の医療に希望を託す。そして目覚めた2031年、地球はほとんど終わった星になっていた。

 

 ブルーと呼ばれる巨大な虫のような怪物によって地球は侵略され、人口はめっちゃ減っている。

 残った者の幾人かはセカンドアースと呼ばれる宇宙ステーションに逃げ込み、ブルーに反撃する時を待っていた。

 

 謎のウイルスに感染した状態から目覚めた祐司のような人間をスリーパーと呼ぶ。このスリーパーには未知なる可能性があるとかなんとかいうことでとくかく貴重な人材として扱われている。

 地上から宇宙にあるセカンドアースまで連れてくるよう命令を受けたのがヒロインのマリーンである。マリーンは祐司を連れて宇宙を目指す。

 

 ブルーに反撃することで地球を取り戻せるのかどうか。過酷の境地に立たされた人類最後の踏ん張りどころの物語が描かれる。

 

感想

 主人公がコールドスリープに至るまでの経路を見るに、現在放送中のアレなアニメ「終末のハーレム」と一緒だなと思えた。長い間寝て起きたら世界が終わっていた。このビックリ展開はいつの世においてもやっぱりビックリなのだ。

 

 主人公の裕司だが、爽やかイケメンではなく、見た目はちょっと暑苦しいもっさり系。どうしても思い出すのが、「燃えるぜバ~ニ~」のセリフで有名なテニプリのタカさん。タカさん似なので見た目は野性味がある。

 目覚めて最初にブルーを見た時には、ビビって漏らしてしまうという主人公にあるまじきリアクションを取ってしまう。だがリアルに考えると、あのようなビッグサイズの人殺しの化け物が出てくれば漏らしても不思議ではない。

 

 敵の化け物のブルーだが、かなりグロいデザインをしていてめっちゃ強い。昆虫をベースにした妙ちくりんな化け物ということで、マクロスとかオーガンの敵みたいな感じがする。いずれにせよ虫っぽくてキモいが、色んな見た目のものがいるため、その豊富なバリエーションを拝むのは一つのエンタメとして楽しめる。グロくてキモいが、結構イカすデザインで私は好き。

 

 人間はもちろん、鉱物をはじめとしたその他無機物、中には電気を食うものまでいて、ブルーはあちこちから栄養源を引っ張って来れる。そんな逞しい連中だから繁殖も早い。裕司が目覚めると、街のあちこちに虫共の巣が出来ている。怖い。

 

 普通に殺すには足らず、ブルー共は食い散らかした人間を肉団子にしてそこらに放置して行く。この表現は特殊でありグロい。肉団子って表現がしっくりくるであろう丸くコンパクトな死体にしてくれる。これは見れば分かること。

 ブルージェンダーといえば肉団子ってくらいに、肉団子死体が象徴的な風景だった。

 

 ブルーに対抗するロボット兵器が登場する。この点はロボアクション好きとしては楽しめるポイントになる。

 デカいスーパーロボットではなく、ボトムズのATやフロントミッションのマシン的な割と小型のリアル系ロボットが登場する。この人型ロボットも結構良くて好きだった。

 ロボに乗った所でまだ敵の方が強いから、大破されて死ぬ者も多く出てくる。ブルーな丈夫で強く、マジに厄介だった。

 

 人間の死に方が妙にグロくて生々しかったり、赤き血の飛ぶ量も相当なもの。今の放送コードだとアウトなくらいそこらの表現はオープンなものになっている。たまにはこのくらいの刺激も良し。

 最初にマリーンと組んでいた小隊メンバーが次々と死ぬ展開はびっくり。序盤からオチにかけてめっちゃ人が死ぬので、これから見るってのならそこそこの数の死体を拝む覚悟は済ませておくことをおすすめする。

 

 そんでもう一つオープンさが目立つ要素がエロ。こんな死の淵の世界で生きているのに、人類の皆さんは性に関してなかなか開放的。

 ヒロインのマリーンはクールで身持ちが硬そうに見えて割と初っ端から男とよろしくしたりする。しかしその理由も聞けばちょっと納得。油断すれば直ちに死ねるのが現在の人類の都合。死と隣り合わせの日々を送るのが常になっているからこそ、大いに生を実感したくなるというもの。そんな生の実感が大いに伴う行為が性にまつわるあれこれ。そんな訳で、マリーンはじめその他の戦士たちは、化け物に侵略されてすぐにでも死ねるこんな時だからこそ逆にソレに励むのだ。

 

 マリーン一筋で行くと思った裕司も、大人しそうに見えて結構お盛ん。地上では遊牧民の女性と一晩を共にしたり、宇宙に行けば同じくスリーパーのアリシアに手を出しそうにもなる。アリシアはちょいウザ系の結構可愛いヒロインだった。

 宇宙に行ってからのエロの開放感もすごい。無重力の世界がそうさせるのだろうか、基地内の死角的場所を見つければ男女がこっそりよろしくやっている描写が連続する。中には女性同士でよろしくやっている組もある。性も愛も自由、となれば愛する二人の組合わせの決定も個人の自由なのだ。自由でよろしい。

 明日世界が終わるとしても、真に心が求めるものはやはり求めてしまう。人類存亡がかかったこのような極限状態であってもそのような都合が見えてくるのだ。生、あるいは性の正直にしてリアルなあり方の極地を描いている点も一つの見どころ、として見てしまうのは私だけかもしれない。

 

 出てくるキャラの多くは死ぬ。ずっとメインで描かれるのは、裕司とマリーンの二人。二人が共に心の成長を迎える過程を描くのに重きを置いた作品でもある。

 最初は裕司の方が人間らしく、マリーンは上の命令は絶対な心無き兵士として描かれる。中盤からはウイルスの作用で戦闘狂になった裕司を説得すべく実に人間的な行動に出るマリーンの意外な姿が描かれる。

 最初は冷酷で怖く見えたマリーンがどんどん優しい女になって行く点には好感が持てた。

 そんな二人がなんだかんだの末に互いに互いが必要と気づいて濃密に愛しあう後半シーンは色っぽさがすごい。本当に濃密なラブの絡みを見せるこのシーンの要素には下卑たエロは感じず、とても美しいと思えた。真の愛を知った二人の物語の結着は清い。

 

 スリーパーが持つウイルスとブルーの意外な関係性が分かったり、化け物退治とは別に人類同士でも政治的対立がバチバチ行われたりするのも見どころになっていた。

 序盤は宇宙を目指すために地上を車で旅するロードムービー調な楽しみが見え、その中でブルー退治を行う。宇宙に行った中盤からは、むしろ人間の方が怪しい。宇宙ステーション同士をぶつけて一気に殺すという人類の内輪揉めも見えてくる。

 所詮人間は愚か。だからブルー襲来による地球の終わりは、地球自らが招いたあるべくしてある時の終末だった的な壮大な説も出てくるようになる。意外と壮大な世界観になっていく。

 

 セカンドアースに上げる人間は当然地上にいる全部とは行かず、いずれ行うブルーへの反撃に貢献出来る者、要は戦争に使える有能な人材に限られる。選考に漏れて地上に残った人間は、政府や軍としては既に死んだもの同然の扱いになっている。酷い。

 こんな時だからこそ手を取り合って仲良く反撃となればそれで良いのだが、逆にこんな時だからこそ優先して未来に残す命の選別を行うのも分からなくはない。酷いけどね。終わりかけの地球に見る優勢思想の傷が見えたりもする。

 

 全体的に暗いテンションのもので、グロくてエロい。最後まで見ても救いが少ない。人を選ぶ作品かもしれないが、2クールで良い感じにまとまって見やすいもので個人的には好きだった。

 マリーンは魅力的なヒロインで良い。そして桑島法子の透明感あるボイスも良い。ガンダムSEEDのバジルール中尉をやる前からも硬派な女軍人を演じていたんだな。そんなわけで彼女の硬派な女の芝居が好き。

 

 放送時期から比べると、随分リアルな数字に感じられるくらい作中時間の2031年に迫った。我々の世界での地球は、2031年になっても無事であって欲しいものだ。

 終末にはまだ早い。頑張れ地球。

 

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