「装甲騎兵ボトムズ ペールゼン・ファイルズ」は、2007年10月26日から2008年8月22日にかけて発売された全12話のOVA。
2009年には、12話分を見やすくまとめた総集編映画が公開された。
前作「赫奕たる異端」がリリースされたのは1994年。そこからなんと10年以上も間が空いての新作である。この段階で既に嫌という程ボトムズの根強い人気が伺えるが、この先にもまだ新作が続々上がってくることになるから凄すぎる。
そんな久しぶりのボトムズは、久しぶり過ぎるから画面が全然違って見える。90年代前半から一気に飛んで00年代後半にもなれば、分かりやすくアニメーション技術が上がっている。サイズは4:3から16:9に、あとは色がめっちゃ多い。
そして何をどう見ても一目瞭然な大きな違いは、ロボットアクションがCG描写になっていること。ATをCGで描くと、どうしてか一気に「サクラ大戦」の光武とかの霊子甲冑に見えてくる。
旧シリーズのスコープドッグは、油や泥が滲みたくすんだ緑色だったのに、今回のCGでは鮮やかな緑になっている。動きはスムーズだし、綺麗で格好良いのだが、何か物足りない感じがする。
色々考えて気づいたのだが、爆炎、煙などの表現も鮮やかなになったため、オリジナルにあった「むささ」がないのだ。むささがあってこそのボトムズだが、その点がかなりが取り除かれている。
というのが、今作の見た目や雰囲気に関しての勝手な感想。
むさくないボトムズもアリではないかと思える新しい試みの一作になっていた。
時間軸としては、OVA「装甲騎兵ボトムズ レッドショルダードキュメント 野望のルーツ」とテレビシリーズ第1話の間に位置する内容になっている。
物語の内容は、ペールゼンのおやじが妄執的なまでに追い続ける異能生存体の謎に迫るものになっている。様々な角度から研究実験をすることで、戦場におけるキリコの驚異的生存率の謎をとにかく解明したいペールゼンの鋼の魂が随所に見えるものになっている。
ペールゼンは軍人としてもエリートだが、その手の研究が出来るだけの高等学問も納めた一流の研究者でもあったことが分かる。過去には色々やっているおっさんだった。
キリコの他にも4人の兵士が異能生存体の可能性を秘めていると分かる。彼ら5人の戦いも共に描かれる。
今回の注目所は、キリコと小隊を組むことになる追加戦士4人の活躍。彼ら4人もまた、激戦をくぐり抜けて来た生存率高き命であることが分かる。もしかすると、キリコのみでなく、他にも同種族がいたのかと期待が高まる。
それぞれ面識がなく、よく分からない都合で集められた5人がチームを結成して戦うので、最初の方はチームとしてスムーズに機能しない。互いに互いを怪しむ良くない雰囲気が続く。
一発で死んでもおかしくない危険な作戦に放り出される中で、5人がちょっとずつ歩み寄って良いチームなっていく過程に良さがあった。
客員の経歴、年齢、個性にばらつきがあることで楽しめた。
キリコ同様、客員得体の知れないメンツとなっているが、ストーリーが進むほどに他の4人のキャラ性も濃く見えて来るのが良かった。
ゴチャックの小悪党感はイラッとする反面、最後まで憎めなかった。
異能生存体という異端の証をきっかけに、やっと5人が真に結束して臨んだ最後の戦いの結果は凄惨なものだった。皆揃って異能生存体だから、危険な作戦でも死なずに突破出来ると信じて士気を上げたのに、あんなことになるとは可哀想。
まぁ、やはりキリコだけなんだろうなとは読めていたが、最終回で仲間の4人が順番に散っていくのは悲しい。皆結構良いキャラをしていたのにな。
キリコ達が激戦地に赴く裏で進行するウォッカムの動向にも注目出来る。やり手のペールゼンを追い込み、ペールゼンに先んじて異能生存体の全てを掴もうと策略を練る怖いヤツだった。石塚運昇の声が懐かしいキャラだったな。
今回はあのペールゼンも初っ端からピンチの立場に追い込まれ、ウォッカムの前では大人しくやられ役だった。しかし、最後は爽快に大逆転。これまでのピンチも織り込み済みの用意周到な策略家の一面が見えたぜ。
ウォッカムの付き人のコッタ・ルスケというおっさんはロッチナだよな。顔も声もそのまんまだし。このエピソード後は名前を捨ててロッチナになる模様。
今回もキリコの人生に見るのはやはり悲哀。
共に戦った4人は、極めて異端な存在ながらも、最後には人間らしく散って行った。だから自分にも彼らのような安らかな眠りを、そう願うキリコの姿には、ただ悲しみを見た。
ペールゼンは絶対キリコラブだよな。入れ込み具合いがダンチだし。そんな彼の執念に見える物語にも面白さがあった。
集まってはまた散って行った5人小隊の戦いにも魅力があった。
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