こしのり漫遊記

どうも漫遊の民こしのりです。

メタルヒーロー最高潮「ビーファイターカブト」

ビーファイターカブト」は、1996年3月から1997年2月まで放送された全50話の特撮テレビドラマ。

 

 前作「ビーファイター」からの流れをしっかりと引き継いだ続編である。世界観をガッツリ共有するものなので、初代ビーファイターを見たからにはこちらの続編も見るしかない。というわけで、年始めから半月程かけて楽しく視聴。

 

 今回もどうせそうだろうとは思ったけどめっちゃ格好良い。ヒーロー達はめっちゃ格好良く、しっかりと面白かった。

 虫をベースにデザインされたメタリックなスーツの出来はすごいな。令和時代に新作として上げて来ても普通に格好良いと思う。

 

 今作は前作の戦いから5年後の世界を描いている。

 新しいビーファイターが三人登場し、新ビーファイターチームが結成される。

 中盤、後半それぞれで初代ビーファイターの三人が帰還し、ビーファイター6人が揃い踏みになる。あそこはさすがに熱い。

 中盤からの盛り上がりは、謎の昆虫メダルにまつわる新展開にある。8枚の昆虫メダルそれぞれのパワーが宿る8人の戦士が登場。光の戦士4人はこちらにつき、闇の戦士4人はチーム名「ビークラッシャー」を名乗って敵につく。敵、味方、合計8人の新戦士の追加は何をどうやっても熱い。

 そして中盤からの更なる追加要素となるのが、巨大ロボのカブテリオス、クワガタイタンの登場。前作以上に戦いが派手に、そして規模も広くなって楽しい。

 

 キャラも増え、マシンも増え、そして老子グルの口から語られる「超次元昆虫伝説」なる神話級の設定も打ち込まれる。もうなんか色々とすごい。

 ちなみにこの時分に勢いを増した例のヤバいオカルト教団が「グル」という言葉を多用した関係から、今作においてはグルの呼称は一切無しで、皆彼の事は「老子」とだけ呼ぶ。後半で逝ってしまう老子に黙祷を。グルの墓参りに地球に帰ってくる息子の白いカブトの出番も後半にちょっとだけあるのでそこも注目。

 

 色々と見どころを詰め込んだメタルヒーロー最終にして最高潮の流れがココに見られる。後に続くカブタック、ロボタックはそれまでとは毛色が異なるのでメタルヒーローから仲間外れにすると考えるなら、ここが事実上最終作。というわけで、視聴するにも熱がこもるこもる。

 

ビーファイターカブト VOL.1 [DVD]

 

 初代ビーファイターのブルービートだった甲斐拓也は出世して組織の上役になっているっぽい。そんな彼ら知識人達の手によって、インセクトアーマーよりもっと強いネオインセクトアーマーの開発が進められる。今度はそれを身に着けて戦う新しいビーファイターが誕生する。そういえば拓也って昆虫学者で、科学者の顔も持っているインテリだったんだよな。

 

 新しい戦士誕生で要素としては初っ端からとても新鮮なものがある。で、もっと新鮮なのは、新戦士のビーファイタークワガー、テントウの次に出てくるセンターポジションのカブトが現役高校生だという点。これは意外。硬派な特撮から一気にファンタジーラノベに触れたような感じになる。

 前作の3人はそれぞれ生え抜きのエリートインテリだったし、クワガーの健吾、テントウの蘭は、組織で幾年か特訓を受けた身である。そこへ来てマジでペーペーの一般人がネオインセクトアーマーに選ばれるとは、これまでとは流れが違っていて興味深い。

 

 それからまだ意外なのは、カブトに変身する鳥羽甲平のボイス。カブトムシをモチーフにデザインされた威厳ある黄金のアーマーに身を包む戦士にしては声がガキ。声もリアルに高校生って感じ。あと甲平は生命力の強そうな顔をしているな~と思える。その点からも戦士に選ばれたのだろう。

 

 甲平の微妙に甲高いかすれ声を聞くと、リアルに同級生にこんな声のヤツいたっぽいと思えて親近感が湧く。ちょっと面白いけどなんだかんだ好きになる声。

 正義のヒーローと高校生を両立させながらのとにかく忙しい甲平の青春物語には面白みがあった。

 

 学校では色んな部活の助っ人になるというフットワークの軽さが必須の変わった活動を行っている。定番のサッカー部、バスケ部にも顔を出すが、変わり種だと茶道部にまで助っ人に出ている。甲平が茶道まで心得ているのは意外。

 ヒーローをしながら定期考査に苦戦し、退学のピンチになることもあった。物語後半になると大学入試、卒業を控えた状態で敵との最終決戦を迎え。とにかく大変な青春だった。

 

ビーファイターカブト VOL.3 [DVD]

  

 今回の良い要素は妹ヒロインが出てくることにもある。甲平の妹のゆいは可愛いし良く出来た妹。両親は海外赴任で留守であり、兄妹二人が協力しあって生活している。互いに支え合う兄妹愛、これは美しくて良いではないか。

 学園もの、妹萌えの要素も置いてくれたことで、戦いばかりの殺伐とした物語にならい清涼感が出て良かった。

 本作だとゆい以外にも、蘭、ソフィーもイカしたヒロインで目の保養になる。

 

 マシンに強い蘭の電子の相棒として、ビットくんというプログラムが登場する。栄光のシスプリ女優の一人 半場友恵が若き日に演じたキャラである。

 そろそろパソコン、インターネットも一般家庭にちょっとずつ普及し、持っていてもすごく珍しいこともない時代の作品だったと思う。お話しするコンピュータプログラムのビットの存在も、このくらいの時期ならファンタジー感の薄いものとしてちょっとは馴染めるものになっていたのかもしれない。 

 そんな観点から印象的だったのは、ビットが小学生とこっそりメル友になっていて、実際に会うことになる回。今はガキでも普通に出会い系サイトを使うとんでもない時代を迎えたわけだが、この時代の小学生がパソコン通信で他者と繋がっているのは新しい。ネットを介しての出会いというものも少しずつ増えた時代なのかなと思える。そんなわけで、ネット社会の時代の波を感じるものがあった。

 

 子供社会の面倒臭さに突っ込んだ回も印象的。

 学校のクラスにはいくつかのグループ分けがあり、自分の主義主張はとりあえず引っ込めて多数派に合わせて行動しないと孤独になる。その恐怖から、強いいじめっ子グループにいるために、自主性なくグループ全体の意志にただ合わせる困った子供が出てくるエピソードがあった。

 そんな生き方が良しとされるはずもなく、その子供は甲平兄ちゃんに説教を食らうのである。

 私などはマジで好き勝手していたからこういった悩みはなかったが、たかがガキでも狭い社会でのコミュニティを持ち、大人と同じように人間関係の悩みがあることが分かった。メインで番組を見るのは子供達だから、このエピソードは子供達に向けて教訓になったのではないだろうか。

 

 後半回では、自己犠牲の美徳について深く突っ込んで行く展開も見られた。

 命を賭け、自らを犠牲にしても強敵を倒す事は素晴らしく格好良い事。そう考える子供達がいて、それが正しい価値観として歴史に残って良いのかと考える甲平がいる。

 生き残ってこそ価値があるため、何であろうが命をかけるべきではないというフリオの考えには、こちらもまた考えさせられた。フリオの意見を受けて、英雄として歴史に残るにしても、残り方が重要だと考えて成長する甲平を描いた点は良かった。

 戦うこと、その中で重んじる正義のあり方について、ちょっと重くシリアスに突き詰める奥深い要素も見えた。

 

 ビーファイターの存在自体が、人類と昆虫の共闘関係の証明になっている。

 後半回では、人類が虫の棲む自然を削って都市開発を進め、自然の頂点に君臨しようとする事の是非を問うエピソードが描かれる。

 自分達の住処を奪う人類の暴挙に怒った昆虫は、昆虫パワーの提供を打ち切ってしまう。それによって戦士達はビーファイターの変身能力を失うことになる。

 地球の環境破壊や保全について、地球で暮らす多くの生命の共生について、これら深いメッセージ性も感じる物語展開が見られた。

 この作品は前作から通して「地球の仲間なんだから皆仲良くしよう」ということを言っているのだ。そんなわけでエコな作品。

 

ビーファイターカブト VOL.4 [DVD]

 

 ジャマール帝国崩壊後に地球に攻め混む次なる敵軍団はメルザード一族。

 ボスはマザーメルザード。敵怪人はこいつが生み出しているので、皆の頼れる怖いママでもある。古代生物の化石に悪さたっぷりの小細工をして新たな化け物を生み出すスタイルで地球侵略を進めて来る。

 マザーの表情はいつも怖い。これはヒーローショーに出てきたら小さい子供は泣くと思う。顔も声も凶悪だが、皆大好き蘭姉ちゃんと中の人は一緒である。山崎和佳奈のここまで凶悪な芝居も珍しい。結構はまり役だったな。

 

 息子で幹部のライジャはトリケラトプスが、その弟デズルは深海魚がデザインモチーフになっている。こういう古の地球のお友達が好きな人間にはハマるアイデアだな。

 デズルの声は今は亡き名優 塩沢兼人。令和になった今見るならここは強い注目ポイント。

 

 怪人達は兄弟関係にあるわけだが、出世を狙っていつでも互いが互いを出し抜く準備が出来ている。基本的に仲が悪くて共闘を良しとはしないっぽい。

 だがいつまでもいがみ合っていてはビーファイターは討てない。というわけでライジャ、デズルが仲良く共闘しようとしたことがあった。その時にマザーは、兄弟に協力関係など不要、むしろ憎しみあってそれを糧に任務にあたるべし的なことを言ってめっちゃ怒った。

 子供達の事は自分で産むことが出来れば、腹で消化することも出来る。甘いことを抜かすライジャ、デズルを脅すため、体内に取り込んで胃酸攻めにしたこともあった。怖いわ、このママ。かと思えば、ある時にはビーファイターに倒された子供達の無念を想って夜な夜な泣いていたりもする。良くも悪くも母である要素が結構見える困ったおばさんボスだった。

 

ビーファイターカブト VOL.5<完> [DVD]

 

 全体として面白くて好きだったが、特に後半からの方が楽しかった。

 中盤からはキャラも増やしてかなりテンションを変えて来たと思う。 

 

 敵、味方含め追加戦士8人はぶっこみ過ぎ。巨大ロボも出すとごちゃごちゃして大変。などの意見も地球の端っこの方に行けば聞くこともあるが、私としてはこれで良い。単純に強くて格好良いのがたくさん出てくると、それが人でもロボでもワクワクすっぞ。

 

 追加戦士のビーファイターヤンマ、ゲンジ、ミン、アゲハはどれも好きなデザインだった。ここら辺の昆虫戦士の存在は、後に世に出る「仮面ライダーカブト」のデザイン面での助けにもなっているのではないだろうか。ヤンマは仮面ライダードレイクっぽい。

 追加戦士の4人は皆外国からやって来た仲間達ということで、ビーファイターも実にグローバルな顔ぶれになったもんだと分かる。

 

 寿司は外国にも受けが良いと聞いたことがあるが、それを証明するかのようにマックが寿司をドカ食いするシーンは面白かった。マックのセリフは中の人が喋ることもあれば、遠近孝一が吹き替えをすることもあった。遠近孝一は良い声をしているな。イケボだ。というかこんなに昔からいたんだ。

 

 曲芸師のおじさんのリーががミンに変身するのは意外な配役だった。美男美女で揃えて来たヒーロー達だが、ここへ来て親しみの湧くおじさん戦士を出してくるとは、読めないものだな。

 個人的にリーの変身シーンにはグッとくるものがあった。ビーファイターに選ばれたリーだが、戦いは悲しいから嫌いと言って最初は戦おうとしない。葛藤の果には、悲しい戦いを終わらせるために自分が立ち上がると決意して超重甲する。苦悩する戦士の心の壁を乗り越えての変身は格好良かった。

 極度に戦いを嫌うリーの戦士像は記憶に残るものだった。おじさんだけど格好良くて好きなキャラだったな。

 ミンミンゼミをモチーフにしたことから、お腹に内蔵したスピーカーで音波攻撃を食らわすのも良い。お腹がパカッと開いて出てくるスピーカーでの攻撃はイカすなぁ。

 

 フリオは蘭と、ソフィーは甲平とちょっと良い感じの仲になっていたな。愛の都合は国境も越えると分かったぜ。

 

 追加戦士の4人のビーファイターだけでも画になるので、この4人でまた別個の作品をやるのも良かったかもしれない。メダルから誕生した戦士8人は中盤からの登場なので、せっかく作っても半年の活躍しかないのは勿体なかった。

 

 敵の4戦士のビークラッシャーも抜群に格好良い。皆格好良くてキレイなんだよな。それでもやはり闇の戦士らしく絶妙に漂う恐怖感もある。

 デスコ-ピン、ムカデリンガー、キルマンティス、ビーザック、4人の色合いも綺麗でこちらも戦隊みたくバエるのだ。めっちゃ強そうに見えるし、実際にしっかり強かったぜ。

 ムガデリンガーは鎧武者っぽいデザインになっていて、色合いからしても遠目に見れば「仮面ライダー鎧武」ぽい。あと、戦士たちのデザインになった虫の中でムカデが圧倒的に嫌いだな。ムガデリンガーは格好良いのだけどね。

 

 デスコ-ピンには稲田徹が声を当てている。稲田徹といえば、治安の悪い地区のチンピラをやれば映える悪者声というイメージが先行するが、デスコ-ピンの声はなんか綺麗。透明感ある稲田徹ボイスが良い一作だった。この役者もこんなに昔からも仕事をしていたのか。声優の歴史も知れる古き良き時代の特撮作品だ。

 

 メタルヒーローシリーズに人型の巨大ロボが出るのは珍しい。ジライヤに出て来た磁雷神以来じゃないのかな。

 後半にカブテリオス、クワガタイタンを投入した時には、「すげぇな、今作はやれる事を全部詰め込んだお祭り企画じゃないか」と興奮したものだ。

 クワガタイタンはそれまでデスコ-ピンが操っていたが、最終回のみは正義の戦士に目覚め、クワガーが乗り込んで戦う。それまで敵対関係だったカブテリオス、クワガタイタンが共闘してジャドーマザーラを討つラストバトルは熱かったなぁ。ジャドーマザーラのおどろおどろしくもイカしたデザインも良かったな。

 

ビーファイターカブト VOL.2 [DVD]

 

 ここで事実上はピリオドとなるメタルヒーローシリーズ作品だっただけに、派手で華がある一作になっていた。皆格好良くて痺れたぜ。

 新旧で6人、追加で4人、ビーファイターも合わせて10人もいたのか。このシリーズも横幅を広げたな。昆虫戦士達は皆格好良かった。

 

 この後の作品に、昆虫をモチーフにしたカブタックがいるのだが、そちらはDVD化されていないので視聴困難なんだよな。なんでDVDになっていないのだろう。ビーファイターカブト以降は、東映の隠したい歴史になっているのかな。いつか発売した時にはキレイな画像でカブタックやロボタックも見てみたいぞ。

 

 仮面ライダーのレギュラー放送ストップ時に東映特撮を牽引したメタルヒーローシリーズの歴史は特撮好きなら抑えておくべきだな。視聴してみて実に勉強になったぜ。マジで全部格好良かった。

 

 メタリックな彼らの勇姿を私はいつまでも忘れない。

 

 

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