こしのり漫遊記

どうも漫遊の民こしのりです。

地球人類よ選択せよ「地球の静止する日」

地球の静止する日」は、1951年に公開されたアメリカ映画。

 

 2008年にリメイク版が公開されている。そちらの宣伝だけは見たことがあったような気がする。リメイク版だとタイトルがちょっとだけ変わって「地球が静止する日」になっている。

 アニメ好きとしては、「地球が静止する日」と聞けばOVAジャイアントロボの副題を思い出すんだよな。そんな関係からタイトルだけは一度耳にすれば長く記憶出来るものだった。

 タイトルを知っているだけでずっと見たことがなかった映画のオリジナル版の方が先日BSプレミアムで放送された。これをバッチリ視聴。

 

 発色が良すぎてお目々への刺激が強めな昨今のコンテンツと比べ、なんて目に優しいクラシック仕様なんだ。白と黒オンリーの世界だな。50年代だとまだまだ白黒作品が多かったんだな。

 

地球の静止する日(字幕版)

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 最強の鉄人ゴート     友好的で紳士的な宇宙人クラトゥ

 (我がお気に)

 

 

 アメリカの大地に突如降り立った円盤には宇宙人の姿が。地球人類と宇宙のお友達、2つの生命が未知との遭遇を果たす。

 円盤でアメリカに降り立った宇宙人クラトゥは、極めて紳士的かつ友好的な男だった。これに出会って早々弾丸を撃ち込む軍人は賢明ではない。酷いだろうが。

 

 まずはクラトゥが円盤から登場。宇宙服に見える科学感は薄い。ふざけたもといシュールな出で立ち。

 クラトゥもそうだが、次いで登場する鉄人ゴートのインパクトよ。これはすごい。

 こんな二人が今日の昼にでもアメリカに出てきたら即世界トレンド1位になったことだろう。

 

 デザイン性において考えられる無駄を削ぎ落としすぎて逆にもっと何か足せば?と思えるくらいゴートのデザインはマイルドでスマートでめっちゃシュール。この色々足りていないようで実は完成されたデザイン性には衝撃を受けた。好きだな。

 見方によれば間抜けにも見えるが、元々ある虚無感に加えて言葉を発しない点からこれはこれで不気味にも思える。これ、子供なら泣くだろう。遠目に見るとゴツいアメフト選手って感じに見えないことも無い。

 ここからちょっとだけ何かをいじればゲームの「MOTHER」に出てくるスターマンになるんだな。もしかしてスターマンってゴートをモデルにしたのか。ちょっと似ている。

 

 ゴートが発するビームはめちゃ強力。射抜いた対象を消滅させてしまう。この見た目の割には分かりやすく危ないなぁ。ゴートのアクションには当時ならではの特撮技術が見られる。これは勉強になるな。

 今なら拙いSFの演出だろうが当時ならこれで良い。この頑張っているSF感は良し。コテコテな古典SFだったな。

 

「禁断の惑星」のロビーだってシュールだと思えたが、あちらの方がまだデザイン的にはロボロボしい。ゴートの方があっちよりも先輩なのか。

 

 円盤の入り口が開いたりスロープが出てきたりする点には工夫が見られる。ああいうのって子供心をくすぐるだろうな。得たいが知れないからこそ、いくつになっても円盤と聞けばワクワクする。

 

 宇宙から地球に伝えられたメッセージには、未来での平和を実現するアドバイスが一つ。そしてもう一つは、そのアドバイスを聞かない場合には地球の安全は保障出来ないという警告だった。未来へ向けての安全と危険、表裏一体を含むクラトゥの言葉が人類に重く突き刺さる。

 地球から去る前にクラトゥが行った演説には、どこのバカが聞いても考えさせられる深いメッセージ性含まれていた。

 

 不要な力を持ち、それを行使する事で人類は自滅するかもしれない。その力で宇宙にまで被害をもたらすなら消す。クラトゥの言葉にはそんな内容が含まれていた。

 大きな力を持てば自分にとっても人にとっても危なくて迷惑。文明は程良いペースで発展させるべきだなとか思えた。

 

 クラトゥの要請を受けても各国の代表が連携してすぐに会議が開けない点には、人類同士で争っていないで仲良くしろというメッセージ性を感じる事が出来た。

 

 時に人は、危険を肌身に感じないと学習出来ないことがある。クラトゥは暴力などの大きすぎる力がそれをスムーズに叶えると発している。暴力を好まない紳士的な彼がそれをしっかり知っていて、すぐに使う事も出来ると分かる点にゾクリとした。

 地球人を凌駕するとっておきのパワーを有する事の証明のため、クラトゥは全世界の電力を30分止めるという恐ろしい事をやってのける。こんな事をされたらセーブがまだのゲームデータが飛んでしまって大変だ。怖い。

 

 人類の愚かさにもスポットを当てた作品なんだと思う。

 得体の知れない何かを疑ってかかるのは当然の心理だが、それも過ぎれば愚行となる。

 紳士的なクラトゥを異質なる脅威と判断した軍はクラトゥに攻撃を仕掛ける。ここに分からないことに対する恐怖としっかり知ろうとしなかった愚かさという人間心理のあるあるが2つ含まれている。

 

 クラトゥを攻撃した事でそれまで沈黙状態にあった鉄人ゴートが遂に動き出す。推しキャラのゴートが動くこの辺は見所。

 クラトゥが撃たれるギリギリ前にゴートを静止させる合言葉をヘレンに教えていたから良かったものの、教えていない、またはヘレンが途中で忘れていれば今日の地球は無かったんだな。ヘレンは重要な役割を持つキャラだった、

 制限無く全てを消す能力がゴートには備わっている。本当の恐怖の大王はあのようにひっかかりのないフォルムなのかもしれない。

 地球を救った合言葉「クラトゥ・バラダ・ニクト」を私は忘れない。

 

 未知との遭遇には恐怖ばかりではなかった。クラトゥが地球の少年と心を交わすというマイルドなファンタジー性も含まれている。この点は子供が見ても楽しめる要素。

 

 古い作品だが、言いたい事をギュッとコンパクトにまとめた見やすい映画だった。これは面白い。ゴートと会えた事でお得な作品だった。

 

 地球の未来を考えようと思える作品だった。コロナで更に危なくなった今見るとなお胸に響くものがある。

 

 人類よ、鉄人ゴートを敵に回して母なる星が焦土と化す未来が嫌なら手を取って仲良くしよう。ゴートとも友達になろう。

 ゴートのフィギュアが欲しい。そんで部屋に飾りたい。

 

 

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