こしのり漫遊記

どうも漫遊の民こしのりです。

頼まれなくたって生きてやる!「ブレンパワード」

ブレンパワード」は、1998年4月から11月まで放送された全26話のテレビアニメ。

 

 あんなものからこんなものまで幅広いジャンルで楽しい作品を量産したWOWOW枠アニメである。リアタイで見れた者は結構限られているのではなかろうか。

 

 あの富野由悠季監督作品である。微妙な年代、視聴環境の制限があったことから富野アニメの中でもかなり世に知られていない部類ではなかろうか。

 この私もそういうアニメがあると知るのみで、長らく視聴していなかった。

 

 作品キャッチコピーの「頼まれなくたって生きてやる」とOPを飾る名曲「IN MY DREAM」だけはネットの海であれこれやっている内に知っていた。

 このキャッチコピーは格好良いし、OP曲はすごく良い。事前にそれだけ楽しみ、今年に入ってやっと本編を見る。ずっと見たいと思っていたヤツなので見れて嬉しい。

 

 丁度BD化されて一年が過ぎたくらいのタイミングとなった。綺麗なBDで見れたことで、私も頼まれなくたって生き抜いてやると活気づく結果になった。そのくらい色々なパワーを分けてもらえる快作だと思う。

 

 では、頼まれなくたって強く生き抜いた強き者達が織りなす素敵なドラマの感想を書き殴っていこう。

 

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内容

 人類は海底に眠る謎の巨大遺跡「オルファン」との邂逅を迎えた。

 オルファンは遺跡であると同時に生命体でもある謎の存在だった。そのオルファンは地球を飛び立って宇宙を目指す事が可能だと分かった。

 がしかし、オルファンが旅立つための燃料は地球にある生命のエネルギーだった。オルファンが飛び立つ時、あらゆるエネルギーが吸い付くされて地球は惑星として死んでしまう。

 

 これを受けて、オルファンと運命を共にして宇宙を目指す勢力、それを阻止したい勢力に別れて人類は戦争をおっ始める。

 

 時を同じくして、地上ではプレートと呼ばれる謎の円盤があちこちに出現する。そのプレートは光を発して巨大な人型兵器を召喚させる。この謎現象をリバイバルという。

 リバイバルによって誕生したブレンパワード、グランチャーの2タイプのロボットを乗り回し、人類はオルファンを巡る揉め事に終止符を打つため奔走するのだ。

 さて、人類の明日は一体どちらを向くのか。そんな揉め事を楽しむ全26話の物語が完成した。

 

感想

 まず最初になかなか難しい。噛み砕いて理解するのが何回な物語だ。作った側の富野監督も2021年に開催したトークショーにおいてなんでこんな難解なものを作ったのか自分でもゾッとすると語っていた。そんなちょっとややこしい富野ワールドもしっかり噛み締めて行けば味わい深いってもの。

 そのトークショーでは数ある富野作品のおすすめとして本作を上げることはしないとも言っていた。なぜって初手で見る分にはディープすぎて頭が疲れるからだ。そんなわけで全体的に玄人向け作品である。

 間違い無く良いものであり、実にパワフルな職人熱とメッセージ性を持ったものだが、そこそこのアニメ経験者でないと何をやっているアニメなのか分からない作りであるというのも事実である。

 

 そんな曲者アニメは、導入一発目からかなりパンチが効いている。

 まずはOP。OP曲はマジ素晴らしいのでめっちゃ聴いている。問題なのは、作品を彩る素敵ヒロインズの裸体祭り状態になっているOPアニメ。

 これは良い。美しいもので確かに良い。まるで宗教画のような神秘的美がぎっしり凝縮した90秒のお祭りだった。特にアイリーンの局部がノヴィス・ノアで隠れているあの構図はユニークかつ美があって最高。

 これは裸体の開放を自重しがちな今の世では出来ない演出かもしれない。

 若手ヒロインズ大集合のOPだったので、欲を言えばややミドル層のユウの母もいればよかった。あのお母さんも情熱でエロかった。

 主人公やロボは置いといて女子の裸だけ映すこんなOPだと、初見だと一体何のアニメなのがまるで謎だろう。何も知らず一話目をリアタイしたヤツはさぞビックリしたことだろう。

 

 そして始まる第一話。

 最初の盛り上げ要素はボーイミーツガール。だいたいの人間がコレが好きだから。

 主人公のユウ、可愛いヒロインのヒメが出会うシーンは印象的。

 二人が出会ってとりあえず1年が過ぎる。早々に時間が飛ぶのな。ちょこっと顔合わせしたくらいなのに、互いを覚えていて再会時にはユウからキッスをかます

 大空でブレンパワードコクピットハッチを開けての天空キッスはファンタジック。すごい近寄ってハッチを開けるから二体のハッチがちょっとぶつかっているのが印象的。

 

 まずヒメが可愛い。ユウもイケメン。

 作品を彩るキャラは美男美女ばかりだったな。おばさんのユウのママやアノーア艦長までイケてる。

 キャラデザはいのまたむつみが担当。ゲームのテイルズシリーズのキャラデザを行っている人だという。アニメよりゲームで慣らした人の絵だからそれを富野作品に投入すると他作品とは一味違った感じがする。富野作品の中で一番キャラ絵が美しくないか。

 なによりもキャラが美しいというのが最初の印象。

 

 ヒロインは抜群に可愛い。世紀末のアニメにしてはかなりキャラ絵が綺麗。

 メインヒロインのヒメはもちろん、カナン、ヒギンズ、アイリーン、クインシィと皆美しい。OPに出ているヒロインズは皆魅力的だ。

 

 カナンがエロ儚げない。着物をおしゃれに着こなすカナンは美しかった。まだ新人くらいの頃の朴璐美が演じていた。少年声のイメージが強いから、こんなに色っぽくて綺麗な声もイケるのかと発見出来た。

 

 胸に赤いバラを刻んだヒギンズもセンスが良いな。川村万梨阿の強気な女の声がとても好き。彼女は他の富野作品でもよく声を聞く。

 クインシィもお姉ちゃんヒロインで良かった。

 

 アイリーンが鍼灸師から艦長へと異例の出世を遂げるのも印象的。見事艦長を務めあげたのがすごい。アイリーンにちょっかいを出してくるモハマドさんは眩惑のセルバンテスと同じ格好をしている。

 

 とりあえず絵が良いので入りのイメージは良い。

 厄介なのは、導入時から他で応用の効かないここオンリーの専門用語が次々出てきて何のことやで混乱する。

 アンチボディ、リクレイマー、オーガニック・エナジーリバイバルなど、結構な数の新語がぶっ込まれる。

 BD特典に用語や世界観の解説動画があったので、それを見れば理解が速かった。

 

 人型兵器のアンチボディは、ちょっとダンバインとかバーチャロンぽい。一応生命体ということで、生物感がある。

 ヒロインに続いてこちらのロボデザインも美しい。

 後半に登場するジョナサン、クインシィの乗るバロンズゥが一番格好良い。

 

 パイロットと意思疎通が出来るくらいに知能がある。リバイバルされたのは最近ということで、パイロットから見たら年下の兄弟や赤ちゃんの感覚で接している。幼気な感じがするアンチボディの素振りがロボロボしいのにどういうわけでちょこっと可愛く見えるのも印象的。

 特にヒメがブレンパワードと接するシーンは可愛らしい。感受性豊かで優しいヒメが幼い子に話しかけるようにブレンパワードと関わるシーンにはスピリチュアルな美を見る。

 

 大筋としてやっていることは、オルファンきっかけで宇宙進出派と地上派で分かれて戦争を行うもの。戦争の設定はどこのロボアニメでもそうだが、きっかけの謎遺跡オルファンの存在は面白い。

 全長150キロもあるバカでかいものが、最初は海底、地上、空と段々昇ってくるから規模がすごい話。

 オルファンを巡っての戦いは激化を迎え、後半ではアメリカより核弾頭がぶち込まれる騒動も起きる。

 

 大筋はオルファンを巡って行う地球規模の戦いにあるが、もう一つ隠すことなくダブルA面でお届けした内容がイサミファミリーに見る家庭問題。地球がどうなるのかという大事件の前には小事に過ぎない家族の確執を全編に渡って濃く描いたドラマ性は私好み。

 

 オルファン側はイサミ家の両親、姉で仕切っていて、弟のユウはそこを脱して寝返った戦士として描かれる。かつての恋人、友人とも打ち合う過酷な運命に立ち向かうことになる。ユウの置かれた状況は常にストレスの中にあり、かなり苦労する。そんなユウもヒメと関係することでいくらかは癒やされていく。ヒメの存在がなんて清いのだと分かる作風。

 

 研究が楽しいばかりの愛が冷めきった学者の両親がいて、姉は強化人間みたく凶暴化している。そんなイサミファミリーの現状は痛々しい。「Zガンダム」のカミーユの家庭のような家庭内の冷えを見た。

 オルファンの能力も謎なもので、そこにいることで凶暴化し荒んだ人間性が見えるようにもなるっぽい。ジョナサンやクインシィもここにいることで段々おかしい事になっている。

 

 更に突っ込んで厄介なのは、イサミ家のおばあちゃんの直子さんも問題に絡むこと。親子の確執は直子ばあちゃんとその娘でユウの母でもある翠の頃からあるものだった。若いときのユウママもイケていた。 

 本作ではおばあちゃんもロマンスを忘れないヒロイン枠である。学生時代からの彼氏のゲイブリッジさんを連れてきて枯れないラブを芽吹かせていた。おばあちゃんの元彼でなく今の愛として描かれるのが珍しい。

 

 イサミ家の確執もそうだが、強烈なのはジョナサン、アノーアの母子関係の崩壊もそうだ。

 第9話では、息子ジョナサンの悲哀の記憶が強烈に語られる。一番楽しい盛りの子供時代のクリスマスに親がネグレクトはいけないことだ。

 ちゃんと愛せないなら男も子供も作るべきではない。そのような内容で母の罪を厳しく咎めるジョナサンのことはあまり恨めない。

 ジョナサンのキャラは強烈に印象に残る。悲哀と狂気を帯びて愛を求めるジョナサンには、正直な人間性が見える。起きるべくして起きたマザーコンプレックスの物語は胸に痛いものとして濃く記憶に残る。

 このジョナサンは心に傷と病を持っているが、イケメンだし正直なキャラでとても好きだった。

 ユウの母とジョナサンが寝たのはエグいからちょっと許せん。ユウママを狙うジョナサンは良い趣味している。

 

 これに対し、母として失格者の烙印を押されたアノーア艦長が、全てを投げ売って贖罪の物語を歩むのも心にグッとくる。息子に向けて全力で信用回復を行姿は痛々しくも甲斐甲斐しい。可哀想になる。腐っても母という意地を見せた彼女も良きキャラだった。

 最終回で二人の親子関係が復活したのは良かった。ジョナサンのママン呼びは意外。

 

 オルファン問題に家庭問題、これらの要素には、何があっても地球に、家族に絶望するな、全力で歩み寄れ、さすれば何とかなる的なメッセージ性を見た。とにかくいい事を言っているスピリチュアルなアニメなのだ。

 

 最終回でオルファンの取った進路は何だったのかしっかり分からない感じになっている。ちょっと謎な感じだが、オルファンに取り込まれたクインシィを助け出してその他死人が出なかったことでハッピーだった。ラッセが死にかけるヤバいところはあったが、彼も生還したし、富野作品必殺の「皆殺し」要素は無しだった。良かった。

 ユウとヒメのキッスシーンが数回あったが、最終回でのキッスは美しい。ヒメちゃんめっちゃ可愛いな。

 

 てなわけで地球も家族もずっと付き合うものだから、揉めても歩み寄ってなんとかしようという気づきを得られた。

 脳にガツンとパワーが注入される素敵オーガニックアニメでした。おすすめっす!

 

 

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