こしのり漫遊記

どうも漫遊の民こしのりです。

東映の「スパイダーマン」を知っているか

スパイダーマン」は、大昔からアメリカを盛り上げるスーパーヒーロである。だが今回語りたい東映生まれの「スパイダーマン」は、1978年5月から1979年3月にかけて放送された全41話の特撮テレビドラマである。

 

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 実は日本版スパイダーマンがいたことを知る人間は一体どれくらいいるのだろうか。スパイダーマンといえば、ちょっと前にも映画でやっているし、ゲームも出てヒットした。そのくらい日本に馴染む海外の有名人だ。でも、日本生まれのスパイダーマンもいた。

 東映の30分特撮番組として大昔に放送していたのだ。もちろん作者にちゃんと許可を取っている。この番組だが、主人公が超人蜘蛛男であること以外は本当に好き勝手に設定変更して展開している。オリジナルと日本の両方をしっかり知る人なら、変更の幅が広い点で楽しめるのではなかろうか。ちなみに原作者からは海を越えて良い評価をもらった作品であるとか。変に流行りをパクったクソではないので、一見の価値アリだと言っておこう。

 

 随分昔に図鑑で見て本作の存在を知り、スパイダーマンがロボに乗ってデカい敵と戦うってどういうことやねんと気にはなっていた。だが長らく中身を見ることが叶わなかった。

 気になったまま死んだら未練なので、梅雨入り時のジメジメ空気にイラつくようになる前の今この瞬間に見ておかねば!と思いここ一週間で視聴。これが結構面白い。

 ナレーションがこの手の作品では常連の大平透なのでめっちゃ東映を感じた。

 

 あと仮面ライダーV3に出てくるミサイルヤモリとスパイダーマンってかなり似ているよね。

第16話「ミサイルを背おったヤモリ怪人!」 

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                        コレ  

 

内容

 モンスター教授率いる悪の軍団「鉄十字団」を倒すため、正義の戦士スパイダーマンが立ち上がる。構図はこんな感じで分かりやすい。

 しかし設定は結構凝ったもので、なんと巻き戻って関ヶ原の戦いをやっていた時くらいから物語は始まっている。日本でそんな合戦をやっていた時、宇宙でも大きな争いがあった。

 宇宙を股にかけるワルのモンスター教授は、スパイダー星を襲って壊滅させてしまう。その時留守にしていたスパイダー星人のガリアは、ボロボロになった母星を見て怒り復讐の戦士となる。

 

 モンスター教授は関ヶ原の戦いをやっている最中の日本に降りていて、ガリアもそれを追って地球に上陸する。モンスター教授を追い詰める中、ガリアは罠にかかって洞窟に閉じ込められてしまう。そこからもガリアの復讐の炎は鎮火せず、なんとその後約400年生き続ける。スパイダー星人は日本人よりもずっと長生きなのだ。

 400年後、同じ洞窟にやって来ることになったオートレーサーの山城拓也にスパイダー星人の力を託してガリアは亡き人となる。父を討ったモンスター教授への復讐とガリアの悲願のため、拓也は鉄十字キラースパイダーマンとなって戦うのだ。

 

 といった感じで設定が色々凄い。関ヶ原の戦いで鎧武者達がドンパチやっているその裏では、モンスター教授とガリアの激闘も展開していたというもう一つの歴史が分かった。スパイダーマン関ヶ原の戦いの要素が出てくるとか意外すぎてウケる。

 

スパイダーマン

 スパイダーマンのデザインは今と変わらずで、シンプルかつしっかり格好良い。今だったらパーティーグッズとしてこのマスクやスーツも苦労なく求められるようになったとか聞く。

 

 変身ヒーローではあるが、科学的な仕組みでラクラク変身するのではなく、背中にチャックのついたスパイダースーツを着るという地味かつリアルな仕組みになっていた。

 他のヒーローと比べたらスパイダーマンって装甲が薄めだよな。おしゃれで格好良いけど、柔らかいスーツだから敵の銃弾や弓矢がスーツを貫通することも結構あった。

 ガリアより受け継いだスパイダー星人の血には超パワーが潜んでいて、ちょっとした超能力が使えるようになる。その中には傷の回復が恐ろしく早くなる能力もあり、スパイダーマンは人間でいう致命傷を負ってもなかなか倒れない。

 

 スパイダーマンに変身する山城拓也はかなり男前。声もイケボで良い。変わったデザインのバイクに乗っている。

 毎度の戦闘シーンの見え切りの口上は都度変更があり、結構上手いこと言ってたりして面白い。結構聞くのが「鉄十字キラースパイダーマン」だったのでコレが1番印象に残る。これもイケボで言うので格好良い。

 

 強いスパイダーマンであることは家族や恋人、敵にも内緒のこと。見た目は格好良い拓也だが、人前では変身出来ず、本当は強いのに皆の前では基本的に三枚目でいる。情けないとか弱っちいとか言われても、スパイダーマンである事情を言えないので黙って受け止めるしかないシーンもいくつかある。この時には可哀想に思う。

 レーサーとして賞金を獲得したこともあるのだろうが、基本的には無給っぽい。鉄十字団の手によって葬られたオヤジの遺産やたまにやるバイトで稼いでるようだ。新聞記者の彼女がいるけど、諸々の都合からまともなプレゼントを用意できなくて困ったことになるシーンもあった。正義のヒーローをやっていれば夢や労働のために割く時間も減って困ると分かる。

 

 この時代にしてこのアクションは頑張っていると評価出来る。特撮番組だからそこは1番重視して作るわな。当時だとパソコンを使って何でも処理するわけにはいかないので、使える物の中でアイデアを絞るしかない。その努力が強く見られる。

 蜘蛛男のスパイダーマンのアクションとして外せないのは、手から出る糸の攻撃、そして壁を這うこと。手から出る蜘蛛の糸はロープや網を駆使して表現している。ロープなので蜘蛛の糸にしてはちょっと太いかなって感じがするが、工夫の産物として感心する。

 壁を這いながら体勢を上下にクルリと変換する見せ方などは結構スマートに見せていてすごい。
 何気にアクションがすごい。それにコレって結構危ないだろう。失敗すれば大怪我や死んでしまってもおかしくないシーンもあった。

 一昔前だらこそのスパイダーマンの魅せるアクションに注目だ。これに関しては古いからショボいなんて笑っていられない。素直に感心する。

 

巨大ロボットのレオパルドン

 1番衝撃的な要素はメカニック関連だな。

 かなりシャレたデザインが光るスーパーカーのスパイダーマシンGP-7、これに乗り込んだまま搭乗する宇宙戦艦のマーベラーと、スパイダーマンにしてはえらくSF的チックな乗り物達の存在は無視出来ない。

 

 そして1番凄いのはマーベラーが変形して人型ロボットのレオパルドンになること。まさかのスーパーロボットの登場に興奮と共にビックリする。このレオパルドンのおもちゃは当時かなり捌けたと聞く。

 

超合金魂 GX-33 レオパルドン&スパイダーマン

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  レオパルドン

 

 

 モンスター教授の繰り出すマシーンベムと呼ばれる毎度のゲスト怪人には、体が伸縮自在という特徴がある。で、だいたいのヤツは声が飯塚昭三

 おもちゃみたく小さくもなるので移動が簡単。そしてウルトラ怪獣のようにデカくもなれる。それに合わせてスパイダーマンも等身大で戦い、巨大兵器でも戦うことになる。

 これってスーパー戦隊シリーズでお馴染みの展開だが、実はスーパー戦隊よりも先に実験的にここで試された売り方だったのだ。スーパー戦隊シリーズで初めて巨大ロボットが巨大怪人が戦うようになったのは「バトルフィーバーJ」からのこと。バトルフィーバーは1979年放送で、スパイダーマンはそれよりも更に一年前の作品。そう考えると、レオパルドンバトルフィーバーロボから後に続く戦隊ロボットの超先輩となる。偉いぞレオパルドン

 そういえばバトルフィーバーロボは、レオパルドンの系譜を継いだだけあって、ちょっと似ている感じもする。それからスパイダーマンのOP曲とバトルフィーバーのOP曲のイントロもちょっと似ている気がする。ニ作の縁は深い。ちなみにバトルフィーバーならコサック推しだ。

 

 そんなレオパルドンだが、毎度の出番がマジで少ない。本編では魅せるドラマパート、そしてスパイダーマンの等身大でのアクションが締める割合が多く、ロボバトルパートはすごく短い。時にはマーベラーのまま攻撃してレオパルドンにならずに敵を倒しちゃうこともあった。

 まぁスパイダーマンが主役なので、ロボはおまけくらいに楽しむ感じ。スーパー戦隊でロボバトルが定番化する前の東映には、ロボアクションの魅せ方の手数があまり揃っていなかったのかもしれない。そんな都合から、巨大化した後の敵はサクッと片付けられて弱くも感じる。ラスボスの巨大化したモンスター教授さえ割とあっさり仕留めていた。回によっては、レオパルドンの出演時間が行1分を切るものもあったと思う。

 

ちょっと社会派なシリアスドラマも見所

 日本版スパイダーマンは、東映にしてはちょっと大人向けに作られている。社会派なメッセージ性があったり、シリアスな展開で強めな緊張感を持たせた回もあった。

 敵は悪いし強い。その都合からゲストキャラの中には殺される者が多くいた。スパイダーマンがゲストキャラを助けられない事から鬱要素もちょっとある。

 

 暴走族の息子を持つ父が悩む回では、息子はマシーンベムにされ、父は死んでしまう。マシーンベムになった者は当然人間には戻れずで親子揃ってこの世から消える。そして残った暴走族の仲間達は街をバイクで暴走する。暴走バイクが映ってその回は静かに終わる。これは悲しく後味も良くない。

 バイク暴走族の他に、ギャンブルににハマって身を持ち崩す若者、鉄十字団製のドラッグにハマる若者、夜間学校に通う迷える若者など、今でも昔でも社会問題として上がってくるようなネタを扱った回がある。

  写真小僧が大人の悪事を写真に撮る回では、写真に写ったマズイ都合を大人はもみ消そうと嘘をついて汚いと指摘している。こういう点にもちょっと考えさせられるものがある。

 

  特に厳しくて悲しかったと想える回が、FBI捜査官が敵に追われる中、海外留学に行く息子を見送りに空港に向かう回。

 スパイダーマンとFBI捜査官の男が共に空港を目指す最中、敵が猛追撃を仕掛けてくる。男は負傷して死にかけているが、根性で空港まで向かう。しかもギリギリ間に合わず、飛行機が丁度飛んだタイミングでの到着となる。息子には気づいてもらえていない。そんな中、息子の写真を握って絶命するのだ。可哀想で困る。そんな回だった。

 

 スパイダーマン自身も1話で父を殺され、その後の展開を見ても人が死ぬのは珍しくない。ゲストキャラ、モブに厳しいのが日本版スパイダーマンだった。それだけにドラマ性として強い要素があって楽しめたけど、中には子供向けでないものもあった。

 

 敵は狡猾で悪くて怖い。

 鉄十字団の幹部のアマゾネスは、ちょっと刺激的なセクシーなお姉さんだが中身はとても怖い女。気分で髪を黒くしたり赤くしたりおしゃれさんでもあった。

 こいつが人間社会では、新聞社の編集長の椅子に座している。拓也の彼女はこれの部下になる。だからこそアマゾネスは裏でも表でも悪さをするためにしっかり動ける。

 怖かった作戦が、分かりやすく暴力で攻めるのでなく、ターゲットを社会的に殺す方法を取った事。とある人を泥棒に仕立て上げて社会的に孤立させる。そして精神的に追い詰めて自殺に持っていく。この構造が出来るように裏で動いて人をはめる知略を用いることもあるのだ。怖い。

 それからアマゾネスの女優は、サンバルカンでもアマゾンキラーとして出演していた。あちこちでアマゾネスをやっている女優。

 

気になるゲストキャラ

 ゲストキャラは様々いたが、中でも気になるのは、特撮好きなら一般通過で当たり前の宮内洋氏が演じた子連れ刑事。

 ギターを持った渡り鳥な子連れ刑事で、見た目が完全にズバット早川健なんだけど。しかも好評にならない訳がないことから2回も登場する。これは素直に嬉しい。「快傑ズバット」はこれよりも1年前に放送しているから、当時の東映特撮リスナーは、ほぼ早川健のそっくりさんに会えて嬉しかったことだろう。宮内洋の顔はキレイ過ぎるから拝んでお得感がある。

 

 そして古い名前が連なる中、私でも知っていたのがアニマル浜口

 とある回では、プロレスラーの弟とそのサポートをする怪我をした兄貴がゲストで登場する。残念なことにこの兄弟は鉄十字団の悪事に巻き込まれてお亡くなりになる。

 そんな兄弟以外にも何人かのプロレスラーが映っているのだが、その中に若き日の浜口がいる。マジでちょっとの出演ではあるが、スパイダーマンに出たことがあるだなんて娘に自慢出来るだろう。この時分なら娘の京子はまだ産まれていないのかな。

 娘の京子がバラエティタレントとしてテレビに良く出るようになった頃に親子セットで知ったくらいだからレスリング自体に詳しくない。それにしてもアニマルってこんなに昔から仕事していたんだ。もっと最近の人かと思っていた。浜口京子って他に類を見ない意外性ある面白さと可愛さがあって良いよね。結構好き。

 

戦いの決着

 番組は41回という半端な数字で終わっている。3クールとちょっと分。4クール分やればよかったのにな。

 

 そんな物語のかなり後半に迫って女幹部が二人も追加される。最後らへんの登場で出番は短い。モンスター教授はアマゾネスを見限ってこちらの新顔二人にお熱を上げ、末にはアマゾネスを置いて三人で宇宙に脱出しようとする。

 闇のヒロインとして良い味を出していたアマゾネスが、最終回で上司から首を来られるなんてさすがに可哀想。モンスター教授が余計に許せない。

 

 そして待っていたラストはスパイダーマンとモンスター教授との一騎打ち。ここで戦士ガリアが存命だった時代から続く約400年越しの戦いに遂に終止符が打たれる。長い歴史だった。ガリアの事を思えば、ボスを討ち取ったことで得られる感動も一入。

 

 長き戦いの決着を見た最終回ラストシーンの夕日を浴びるスパイダーマンは格好良く、そしてどこか儚く切ない。ここでスパイダーマンがスーツを半分脱ぎ、拓也の顔が覗く。半端に変身を解いているこの状況でのカットは最終回にして初ではなかろうか。なんだかジワるラストシーンだった。ゴレンジャーのラストでもそうだったけど夕日に佇む英雄って画になる。

 

まとめ

 41話に渡って駆け抜けたスパイダーマンの戦いは見る価値のあるものだった。これは良いではないか。なんでもっとDVDを出すとかBDを出すとかしないのか。まぁ原作の権利は向こうの国が持っているので、日本で好き勝手に再発は難しいのだろう。

 かなり昔に一回切りの販売となったDVDは、今だと中古でも10万円くらいするらしい。最初で最後の一回切りのパッケージ化になると当時の東映が公式にアナウンスしたこともあったとか。勿体ないなぁ。もっと皆に見てもらえると良いのに。レオパルドンの事をもっと有名にしたい。

 それからOP曲はテンションが高くて格好良い。これは気に入った。

 スパイダーマンはグローバルなヒーロだが、日本生まれの独特な面白みを持ったものもあった。そう知っておくことで、人生を今よりもちょっとだけ楽しく出来るのかもしれない。そうオススメして日本版スパイダーマンの感想おわり。

 

 

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