こしのり漫遊記

どうも漫遊の民こしのりです。

不滅のナンバーを心に刻め「大鉄人17(ワンセブン)」

大鉄人17」は、1977年3月18日から同年11月11日まで放送された全35話の特撮テレビドラマだとウィキペディアに情報が載っている。

 そうか~大昔のぴょんぴょんの日に放送が終了したのか。なんたるメモリアル。

 

 先日「鉄人タイガーセブン」というなかなかにトラウマを植え付けてくれる特撮を見て、そういえば大鉄人で数字ももっと上のが他にいたっけな~となりこちらも視聴。なんとも数奇な縁で繋がった2作品だな。

 

 タイトルを見て「鉄人28号」ぽいと思った人は少なくはないだろう。私としてもタイトルを見ればタイガーセブンと共に28号の事を思い出した。オマージュもあったのだろう。

 一説によると、鉄人よりもっとデカい大鉄人にし、偉大なる先輩作品にやや遠慮して十と一、それぞれの位から1を引いた17になったとか。というお話を古のオタクから聞いたことがある。思い入れと弁えのある良きタイトル付けエピソードではないか。

 

 そんな大鉄人はしっかり格好良い大型の最強ロボットだった。名前のワンセブンは「オートダイオード・ワンセブン」を搭載したロボだからとされている。

 

 巨大ロボがレギュラー化されたスーパー戦隊シリーズ作品の「バトルフィーバーJ」、それに先行して等身大ヒーロとロボで魅せる可能性を試した東映版「スパイダーマン」、それらよりも更に一年早くに登場した東映の巨大ロボットがワンセブンだった。

 ワンセブンを作ったことで東映は「自分達はもっとロボで戦える」と思って次年にはスパイダーマンの愛機レオパルドンを売り出したのだろう。それに更に自信を得て、バトルフィーバーJ以降ずっと巨大ロボットを作っている。

 この歴史を見るに、ワンセブンの立ち位置は重要にしてありがたい。とにかく格好良かったので作って良かったね。

 

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内容

 研究者の佐原博士は、災害などのピンチから地球を救うべく万能の電子頭脳ブレインを完成させる。

 そのブレインは、高い思考能力と分析力から、自分を作った人類こそが地球に最も有害だと判断した。以後ブレインは、悪のハスラー教授と手を組むことで人類殲滅作戦を展開させる。

 ブレインに搭載された能力には、何でも作れてしまう超生産能力がある。これによってブレインは、巨大ロボットを作って人間社会に送り込んでくる。

 ブレインによって作られたワンセブンは、人間は良いものと判断し、生みの親の思想と対立する形を取る。そのため封印されてしまったところを、偶然にも南三郎少年が復活させてしまう。

 ワンセブンは三郎をパートナーにし、人間を守るためブレインが放つ巨大ロボと戦うのだ。

 

感想

 調子こいていると、自分達が作ったメカに支配されて主従が入れ替わることもあるから気をつけろと言っているSF作品は今でこそたくさんある。まだパソコンも携帯電話も普及しない時分からもそのテーマ性が盛り込まれたワンセブンは割りと斬新だな。

 当時の子供達にこの設定は難しくはなかったのか。または分かったところでその怖さが理解出来たのかな。ブレインの判断には確かに考えさせられる物がある。

 

 地球を壊すものからの備えとして生まれたブレインが、自分を作った人間が1番の壊し屋と判断して襲いかかるとは、真実性もありつつの最大の皮肉になっている。今一度地球との向き合い方について考え、諸々気をつけようと思える作品設定だった。

 

 主人公少年の南三郎の生い立ちは残酷。

 一話冒頭の段階では、戦いなどまるで知らない平和な一家の長男として登場する。嫁入り前の姉貴を祝って家族まるごとハッピー状態からスタート。しかも嫁入り前も前の直前状態であり、嫁装束をまとってこれから式に出かけようと車に乗りこんだ幸せ絶頂期である。

 車に乗ってちょっと走った時点でブレインのロボットに遭遇し、両親、姉が殺され三郎のみが生き残る。

 式当日にあの世行きだなんて残酷。崖を転げ落ちて死んだ姉の嫁装束の白い布が、そこらの枝に引っかかっている描写は切なくて可哀想。

 これだけでなく、最初数話の内に佐原博士の娘の婚約者のレッドマフラー隊長も殉職することになる。

 敵はデカい、強い、そしてロボゆえ情がない。つまりはとっても怖いと教え込む冒頭の流れになった。

 

 復讐の戦士となって三郎はガキなのにプロの軍人集団レッドマフラーに入隊する。訓練はかなりスパルタ。ガキがついていけるレベルではない。主人公に厳しい展開が続くなぁ。

 三郎は13歳設定。丁度声代わりの時期なのか、幼く見える割にはドスの利いた声をしている。

 

 主人公ロボットのワンセブンは、ブレインの作った性能の高いロボゆえ、完全自律型で戦う。意志を持ったロボである点で他作品とはちょっと違っている。

 三郎には脳波を送る事でワンセブンを呼び出せるヘルメットを渡しているので、これでリンクは出来る。だが基本的には、三郎が操縦する、指示をするのではなく、ワンセブンが自ら動く。 

 最初の内のワンセブンは、キャラにも視聴者にも得体の知れない勢力として描かれている。敵ではないのだろうが、しっかり言う事を聞かせて操ることも出来ず、1番近い人間の三郎とだって意思疎通がしっかりと行えない。後には言葉を学習して話すようになるが、最初はノイズを出しているような鳴き声で何を言っているのか分からない。何を考え、どこから来てどこへ帰っていくのか、色々と謎が多いことで不気味な存在にも見えた点が印象的。ゆえに気になり、結果ワンセブンが好きになる。

 主役ロボットのことについて分からない事が色々と多い謎要素も興味を引く良いものだった。

 

 ワンセブンの活躍を描く特撮演出はなかなかのもの。

 コンパクトに折りたたまれた状態で空を飛んで来て、地上で変形して人型になる。膝関節の可動域がなかなかのもので変形ギミックは面白い。とにかく格好良く、飛んできて人型になる過程にワクワクした。

 

 お話は一話完結スタイルが基本ではなく、週を跨いで連続するエピソードが多くあった。東映にしてはこの点も結構珍しい。

 

 序盤は主役の三郎があまり目立っておらず、敵味方の大人達で盛り上げている感があった。脇の大人連中はかなり魅力的。

 こちら側ならまずは佐原博士、剣持隊長がかなりクールで男前。敵側はチーフキッド、ゴメスもそうだった。それぞれキャラ性も良し。

 剣持隊長はやり手で格好良すぎる。これはお母さん方が喜ぶ人材ではなかろうか。チーフキッドは結城丈二でお馴染みの山口あきら氏が演じているのでやはり華がある。

 敵側のハスラー教授、ゴメス、チーフキッドを見ると、スーパー1のヘンリー博士、死ね死ね団ミスターK、そしてライダーマンが顔合わせしているわけで、そちらで知った私としては不思議で豪華な並びに見えた。

 

 ボスのブレインも怖いけど、物言いは紳士で気になるキャラになっていた。いくら機械の怪物とはいえ、呼ぶ時には頭にミスターをつけろと礼節にうるさい。変に人間のマナーを重んじる点が興味深い。

 やはりボスで、ハスラー教授他悪のカリスマを従えている。メカが人を使う構図となっているので見れば怖い未来にも思える。

 メカに従うなどアホ臭いと思い、逆に支配下においてやると反逆に出たゴメスが返り討ちにされるエピソードは奥深いな。本編中で2歳の誕生日を迎えた若いメカのブレインだが、人間と違って2年あれば大人を圧倒できるだけの知恵と力をつけてしまう。メカの成長は恐ろしい。

 

 序盤はレッドマフラー部隊の活躍をプッシュした暑苦しくも重厚なミリタリー要素が濃く見えた。私としては序盤のテンションが好みだったが、中盤からはもっと子供に受ける柔らかさを重視してコミカル展開も入れて来た。

 中盤からの強いコメディリリーフとなったのが岩山鉄五郎。通称ガンテツさん。このお兄さんが大柄で男前で結構おバカで面白い。あとはクラシックカーにとても詳しい。愛せる好きなキャラだった。

 一昔前の番長スタイルの人なのかな。学ランに下駄で歩く浪人生。東大目指して4浪している。でもブレイン党と戦うレッドマフラー部隊の存在を知ると、唐突に進路変更してレッドマフラーに勝手に入隊してきた。勝手に志願してきたガンテツを上手いこと使ってあげてはいるが、制服はいつまでも渡さなかった。剣持隊長が制服をくれないとガンテツさんも文句を言っていた。

 

 後半は子供らしく過ごす三郎の日常に焦点が当たり、そこに用心棒や監督者の役割もあってガンテツがいるという構図をベースに物語が展開する。これは結構分かりやすいテコ入れ。ミリタリー色が濃い目の前半展開は大人向けで子供は怖かったのかもしれない。

 

 敵の方も後半からは新たに怪僧ブラックタイガーを導入。ウルージよりも先行して名前を上げた怪僧がいたのかと勉強になる。

 超能力を開花させたマッチョで強いグラサンをかけた外国のお坊さん。出で立ちからして只者ではない。

 これが普通にスキンシップを取ったら常人には暴力となり、その都合がタイガーとハスラー教授との間に見られる。ちょっとの握手、肩を叩くだけでも暴力として痛むので、都度ハスラー教授がタイガーに毒づくのが敵側のユニークな定番劇となった。面白い。 

 

 後にはタイガーの弟子としてピンクジャガー、ブルージャガーの女幹部も合流。ここへ来て敵側にもヒロイン投下となり華やかになった。おそらくこれが当時最先端のギャルなのだろう。軍人のチーフキッドやゴメスとはビジュもキャラもえらく異なるのが追加されたな。あんなお坊さんにギャルの弟子がいたのも意外。

 三郎の処刑を命じられた事で、ピンクジャガーが殺すのはさすがにやりすぎと思って三郎を逃してくれる展開は印象的。ムカつくギャルかと思いきや最後には人情を出したな。悪いことはたくさんしたけど殺しで手を汚したことはないというのがピンクジャガーの売りだった。最後はいいヤツで好きになった。

 

 中盤の盛り上がりは、ワンセブンの弟ロボット ワンエイトの登場。18を胸に刻みし鋼鉄巨人で、こちらもちょっと愛らしい感じもありつつの格好良いデザイン。残酷な兄弟対決も待っていることでドラマ性があった。弟を討つしかない兄の悲哀がそこにある。

 

 後半の印象的なエピソードに、金庫破りから足を洗ったお父さんが、息子達を救うためやむなく再び金庫破りの術を使うというものがあった。これは昔呼んだオー・ヘンリーの「よみがえった良心」とよく似た話だった。あの短編が好きだったのでこの回も良かった。

 

 ラストバトルでは、ブレインのチート能力が作動。近づくロボは支配下に置いてしまうチートフィールドを展開してしまい、ワンセブンも近づけない状態になる。やはりワンセブンの生みの親だけあって嫌がることは何でもお見通しだな。

 近づけば操られることから、ワンセブンは敢えて機能を全てオフにし、三郎に操縦させることで戦闘を可能にさせる。最後の最後になってやっと二人が一つになって共闘するこの展開は熱い。コクピットに乗り込んで三郎が操縦しているシーンを見れて良かった。

 ブレインに勝つには体当たりの道連れ爆発しかないとなり、三郎とワンセブンは一蓮托生で体当たりに出る。その直前になって三郎を助けるため、ワンセブンは強制的に脱出装置を作動させ、自分のみ特攻する。

 高い所まで飛び、後は操縦者無しでも出来る急降下攻撃に持っていったところまでワンセブンの計算だったらしい。最後にパートナーを助けた思いやりに泣ける。そういえばサポートロボのロボタ―も一緒に逝ってしまったな。

 

 ワンセブンの事は決して忘れない。爆発を見守る各員がそう想う中でガンテツが口にした「17(ワンセブン)は不滅のナンバーや!」は名台詞過ぎた。これは良いセリフをもらったな。

 そうして我々視聴者も不滅のナンバーを胸に刻んだところで明日からを楽しく生きるのである。

 

 マジでありがとう大鉄人。正義のナンバー17(ワンセブン)を我々はいつまも忘れない。

 

 

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